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WinDVD BDでPCでのBlu-ray再生をテスト
-アナログRGB出力可能。“次世代”対応にPCを活用



 3月31日に東芝のHD DVDプレーヤー「HD-XA1」が発売され、いよいよ幕が開いた次世代DVD。Blu-ray陣営もPC用ドライブや、デジタル放送録画に対応した「VAIO Type R(VGC-RC72DPL9)」などPC側での対応が進んでいる。

 しかし、ビデオパッケージソフト用のBD-ROMについては、発表されているソフトは、11月1日発売の「『AIR』Blu-ray Disc Box(29,800円)」のみ。HD DVDに比較すると、ビデオソフトの準備という点では遅れをとっている。プレーヤーについても、ソニーのBlu-ray搭載VAIOや富士通の37型液晶一体型PCなど、“パソコンだけ”がBD-ROM再生に対応した“BDプレーヤー”として活用できるという状況だ。

 だが、米国ではすでにSamsungのBDプレーヤーが発売されており、BD-ROMソフトについても販売開始している。HD DVDと比較すると、ソフトの本数は少ないがこの秋に向けて準備が整いつつある。幸いにして、Blu-ray(BD-ROM)では、米国と日本のリージョンコードが共通、HD DVDにおいても現在のところリージョン再生制御は行なっていない(将来的には導入の可能性がある)。そのため、ソフトを個人輸入すれば、次世代ディスクの実力を日本でも体験できるのだ。

 しかし、“BDプレーヤー”は、従来、日本ではメーカー製パソコンを買う以外の選択肢は無く、より手軽にパッケージソフトとしてのBlu-rayを楽しみたい人には敷居が非常に高かった。

 敷居の高さにつながっているのが、BD-ROMの著作権保護の仕組みだ。まず、著作権保護が施されていないディスプレイ/ビデオカードからのデジタル出力が禁止されているため、デジタル出力のためには、著作権保護規格のHDCPに対応したディスプレイ/ビデオカードが必要になること。さらに、Blu-rayドライブや、ハイスペックのPC、プレーヤーソフトなどももちろん必須だ。

 Blu-rayのドライブは発売されているものの、現在のところバンドルのプレーヤーソフトはBD-ROM再生には非対応。また、ビデオカードについてはHDCP対応のDVI出力を備えた製品は単品販売されておらず、7月5日に発売されたアスクのHDMI付きSAPPHIRE製ビデオカード「SAPPHIRE X1600 PRO HDMI」以外の選択肢は無いようだ。

 しかし、プレーヤーソフトについては、28日にインタービデオがBD-ROM再生に対応した「WinDVD 8 Platinum」をVectorで販売開始した。今回、そのBD-ROM再生対応版を利用し、PCを活用したBD-ROM再生と注意点を検証してみた。


■ BD-ROM再生のための準備に一苦労

 まずは、PCでのBD-ROM再生に必要な環境を確認してみよう。BD-ROMをパソコンで高画質に再生/デジタル出力するためには、以下の要素が必要となる。

  • BD-ROM再生に対応したBlu-rayドライブ
  • 高性能なCPUやビデオカードの再生支援機能など、HD映像をデコード可能なPCの性能
  • HDCP準拠したDVI/HDMIビデオカード
  • BD再生ソフト
  • HCDP対応DVIもしくはHDMIを備えたディスプレイ

 WinDVD 8 Platinumの製品情報によれば、Blu-ray Disc/HD DVD再生時のPCの必要動作環境は、CPUがPentium D 3.2GHz以上またはCoreDuo T2500 2.0GHz以上、メモリ1GB以上。ビデオカードはインターフェイスがPCI Expressで、COPP対応ドライバを備えたもの。対応WindowsXP SP2以降、Windows XP MediaCenterEdition2005となっている。

BRD-UM2

 今回は、Blu-rayドライブにアイ・オー・データ機器のUSB 2.0外付け型「BRD-UM2」を、ビデオカードにアスクの「SAPPHIRE X1600 PRO HDMI」を利用。PCはCPUがAthlon 64 3500+(2.2GHz)、メモリ2GB、250GB HDDの自作PC。インタービデオでは、Intel CPUのみ正式サポートとなるが、基本的にはデュアルコアCPUが必須。Athlon 64 3500+では処理能力が足りないと予想されるので、相応の処理能力を持つと思われるAthlon 64 X2 4400+(2.2GHz×2)でも検証した。

 ディスプレイにはデルの24型/1,920×1,200ドット液晶モニター「2407WFP」を用意し、SAPPHIRE X1600 PRO HDMI付属のHDMIケーブル/DVI変換コネクタで接続した。ディスプレイについては松下電器の37型プラズマテレビ「VIERA TH-37PX600」も用意したが、映像表示できなかった。

 なお、アイ・オー・データの「BRD-AM2B」、「BRD-UM2」は、BD再生ソフトとして「WinDVD 7 BD」を同梱。後日、市販BD-ROMソフトの再生対応版の提供を行なう予定という。

SAPPHIRE X1600 PRO HDMI Silicon Imageのトランスミッタを備える デル 2407WFP

 PCの価格が10万円強としても、Blu-rayドライブが9~10万円、HDCP対応のディスプレイも10万円弱などと考えると環境を整えるのは、決して簡単ではない。しかし、PCでのBlu-rayやHD DVD再生に興味がある人は、これらのスペックを意識して、PCやディスプレイの買い換え時に役立てて欲しい。


■ プレーヤーとしての機能はシンプル。HDの解像度は圧倒的

 WinDVD 8 Platiumをインストール時はウィザードに従っていくだけ。ほとんど戸惑うことは無いだろうが、一点だけ注意したいのはWinDVD 8のインストール時に「WinDVD BD」、「WinDVD HD DVD」の選択を迫られること。インタービデオによれば、将来的にはWin DVD BD/HD DVDの共存、もしくは統合も検討しているとのことだが、現状ではWinDVD BD/HD DVDを同じPCにインストールできない。もっとも、HD DVDのPC用単体ドライブはまだ発売されていないので、全く問題はないのだが……。


WinDVD BD

 WinDVD BDは、DVDビデオ用のWinDVD 8とは別アプリケーションとなっており、BD再生時に利用する。DVDの再生時にはWinDVD 8を起動/利用する。

 WinDVD BDを起動してみると、インターフェイスデザインはWinDVDシリーズを踏襲しており、さほど目新しさはない。しかし、起動画面に「H.264」、「VC1」などのビデオコーデックや、「Dolby Digital Plus」、「Dolby True HD」、「DTS HD」などの新音声コーデックのロゴが現れ、“次世代対応”を感じさせる。


Blu-rayパッケージソフト

 今回、北米版のBD-ROMタイトル「The Fifth Element(フィフス・エレメント)」、「Underworld Evolution(アンダーワールド:エボリューション)」を購入して視聴した。購入価格はFifth Elementが19.99ドル、Underworld Evolutionが29.99ドル。

 起動後の操作は、従来のWinDVDとほぼ同じ。再生/停止や、スキップ/バック、音量調整などの操作が画面下部のウィンドウで行なえ、画面サイズの変更や全画面表示に対応する。ごく普通のPC用DVDプレーヤーソフトだ。BD-ROMを認識すると、プレーヤー部には[BDMV]と表示される。


BD-ROMソフトを入れるとBDMVと表示される 2本ともビデオコーデックはMPEG-2で、30Mbpsと表示

 BD-ROMディスクを5秒とかからず、ディスクを認識。WinDVD BDを起動するとすぐに再生が始まる。東芝のHD DVDプレーヤー「HD-XA1」の場合、起動に約1分弱、ローディングに40秒程度かかっていた。もちろんPCの起動時間を考えると、一概に比較はできないが、ローディングやディスク切替時のストレスは、PCでのBD再生の方が少ないといえる。

ポップアップ オンで再生しながらチャプタ選択可能

 なお、今回テストした2枚のディスクでは、本編映像再生中のメニュー表示に対応。WinDVD BD上で右クリックし、操作メニューを呼び出すと[ポップアップ オン]、[ポップアップ オフ]という項目が用意されており、オンでチャプタ選択メニューを呼び出せる。次世代ディスクらしい使い勝手が体験できる。

 今回用意したPCのCPUがシングルコアのAthlon 64 3500+のため、デコードが追いつかずにフレーム落ちしてしまうこともあった。特にThe Fifth Elementsのメニュー画面ではカクカクになってしまった。本編再生時は常駐アプリケーションなどを外せば、それになりにBlu-rayの再生が楽しめたが、1分に数回「フレーム落ちた」と知覚できてしまった。

 CPUをAthlon 64 X2(2.2GHz×2)に変更したところ、フレーム落ちは確認できず、再生中に処理遅延が気になることはなくなった。今回の環境では、ディスプレイ側の性能が今ひとつのため、画質については簡単なインプレッションに留めるが、それでもハイビジョンディスクの精細な映像が堪能できた。「Underworld Evolution」は暗闇の古城に、松明などで照らされる明かりなど、MPEG圧縮には厳しそうなシーンが多いのだが、ソースに起因すると思われるノイズは皆無で、解像感も高い。

 一方のThe Fifth Elementsは、もちろんHDならではの解像感はそれなりにあるのだが、フィルムグレイン以外にも、ソースに起因するノイズ成分が多い。Underworldに比べると明らかに解像感に劣っている。

 なお、[セットアップ]の[ビデオ]から、ビデオカードの再生支援機能も利用可能。今回のビデオカード「SAPPHIRE X1600 PRO HDMI」では、ATIのGPUを利用したデコード支援が行なわれる。また、オーディオについてはアナログサウンドカードへの出力と、外部プロセッサへのデジタル出力が選択できる。今回はDVI接続のため、マザーボード(ASUS ABN-SLI)のオンボードの光デジタル出力を利用し、シャープ「SD-SP100H」と接続したが、特に問題なく再生が行なえ、リップシンクにも問題がなかった。

 今回のディスクの音声は、英語やフランス語のドルビーデジタルの5.1chのほか、リニアPCM 5.1chも収録しているが、S/PDIFからは2chのリニアPCMが出力されていた。

ビデオの設定でハードウェアの再生支援を選択 オーディオ設定画面

画質設定は項目が用意されているものの変更できない

 WinDVD 8 BDでは、画質設定画面もあるが、ビデオウィンドウのノーマル/常に前面に表示と、デインターレース設定、ワイドスクリーン設定以外の詳細設定は行なえない。

 [カラー]の設定画面では、明るさ/コントラスト/色相/カラー/ガンマなどの調整項目や、CRT/液晶/プロジェクタなどのディスプレイタイプ選択画面が用意されているのだが、これらを変更することはでいない。



■ 最近のビデオカードであればアナログ出力も可能

 もう一点気になるのは、アナログRGB接続でのPCディスプレイ出力。Blu-rayやHD DVDで採用されたAACSの規格化作業では、アナログでのHD出力を禁止し、SD出力のみとするようコンテンツホルダが強く要求しており、HD出力がHDMIのみに限られるのでは、との観測もあった。結果、2010年末まではアナログ出力が可能となったのだが、実際に発売された初のプレーヤーソフトでは、どうなっているのだろうか?

 結論は、特に問題なく出力できた。さすがにやや描写はあまくなるものの、ハイビジョン映像を十分に体感できる。つまり、アナログRGBであれば、通常のディスプレイ/ビデオカードも活用できるわけだ。

 インタービデオによれば、アナログRGB出力の場合でも、ドライバ側でHCDPをディスプレイに送るための「COPP(Certified Output Protection Protocol)」に対応している必要があるという。ATIやNVIDIAの最新のドライバではCOPPをサポートしているので、両社の比較的新しいビデオカードのユーザーであれば、アナログRGB出力は可能だ。ただし、マザーボードのオンボード機能など利用している場合は、別途ビデオカードを用意するなりの対応が必要だ。なお、ビデオカードのインターフェイスはPCI Expressが必須となる。

HDCP非対応のディスプレイにDVI接続すると、ディスプレイがコンテンツ保護に対応していない旨のメッセージが現れる

 つまり、アナログ出力の場合は、Blu-rayドライブと再生ソフト、COPP対応の最近のビデオカード、デュアルコアCPUを搭載した最近のPCがあれば、普通のディスプレイでもBlu-rayを楽しめる。敷居もぐっと広がるだろう。なお、HDMIとアナログRGBの2画面同時出力はAACSの仕様で禁止されている。

 一方、HDCPに非対応のディスプレイとしてナナオ「FlexScan L365」を接続してみたところ、再生開始後5秒も経たずに再生を終了。オンスクリーン表示では、「使用しているディスプレイはコンテンツ保護に対応していない」メッセージというメッセージが現れた。

 また、ビデオカードも変更してみた。GPUにNVIDIA GeForce 6600GTを搭載し、HDCP非対応のDVIを備えた「GIGABYTE GV-NX66T128D」をPCに装着。HCDP対応のデル「24W07」に接続したところ、アナログRGBに関しては特に問題なく出力可能。一方、DVI出力については即座に再生を停止した。


HDVをキャプチャして作成したBD-REディスクも再生可能

 HDVを取り込んで、VAIO type Rの「Ulead BD DiscRecorder for VAIO」で作成したD-REについては問題なく再生できた。このディスクは、BD-ROMのBDMVと異なり、BD-REではシンプルにビデオ/オーディオストリームを記録するだけのBDAV形式で記録しているため、メニューやチャプタなどがつけられず、番組は[タイトル]として管理されている。そのため検索/操作性はイマイチだ。

 また、VAIO Type Rでデジタル放送を録画/ムーブしたBD-REディスクの再生にも対応する。同様にBDAVで記録しているため、番組名などが確認できない。



■ 次世代両対応にPCの活用も検討したい

 ディスプレイ環境やビデオカードの数、PCへの要求の高さなど課題はあれど、民生用プレーヤーの国内発売がまだ見えない段階で、一足先にBlu-rayを楽しめるソリューションが出てきた意義は大きい。

 特に、アナログRGB出力可能という点で、専用ディスプレイを用意せずに、Blu-rayを体験できるというのは、多くのユーザーにBlu-ray体験の可能性が広がったと感じる。もちろん最高の品質を体験するためには、ディスプレイ側での対応やディスプレイの品質向上も待たれるが、Intel Core 2 Duoの発売や、Intel/AMDの大幅CPU価格改定などにより、デュアルコアCPUの価格も下がっている。デスクトップPCのリプレースを検討している人は、将来的なBD/HD DVD再生に向けて、スペックを検討しながら、ディスプレイやビデオカードなどを強化していくのもよいだろう。

 もっとも、Blu-rayドライブの価格が10万円近く、HD DVDプレーヤー「HD-XA1(99,800円)」が購入できてしまう。こうして比較してみると、HD-XA1にお買い得感が出てくるのも事実だ。

 パッケージビデオソフトにおいても、分裂しまった次世代ディスク。それぞれの言い分はあれど、ハイビジョンコンテンツを見るために、2つの異なる規格のプレーヤーを購入を強いられるのは、消費者としては残念。フォーマットに依存せずに、好きなコンテンツを楽しみたいところだ。そうした意味では、お気に入りの多いフォーマットはプレーヤーを購入し、もう片方のフォーマットはPCでという応用もいいだろうし、PCを強化しながら、お気に入りのタイトル販売を待つ、というのもありだろう。

□インタービデオのホームページ
http://www.intervideo.co.jp/
□VectorのWinDVD 8 Platinum販売ページ
http://shop.vector.co.jp/service/catalogue/sr087190/
□アイ・オー・データ機器のホームページ
http://www.iodata.jp/
□アイ・オー・データ「BRD-UM2」のニュースリリース
http://www.iodata.jp/news/2006/04/brd-um2.htm
□アスクのホームページ
http://www.ask-corp.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sapphiretech.com/jn/media/pressview.php?pid=24
□関連記事
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-HDV動画をBD化。BDAV書き込みは25GB/4時間
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060519/bd.htm

( 2006年7月28日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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