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PCメーカー各社の2006年夏モデルにBlu-ray Discドライブ搭載モデルがラインナップされる中、ドライブ単体のリリースも6月上旬に迫ってきた。メーカー製PCのBlu-ray搭載モデルはいずれもハイエンドモデルで、30万円を超えるモデルも少なくない。反面、ドライブ単体では10万円前後と、それでも高価だが、メーカーPCよりも気軽に導入できることは確かだ。 今回、アイ・オー・データ機器のBlu-ray Discドライブの外付けモデル「BRD-UM2」の試作機をお借りすることができた。ドライブはパナソニック四国エレクトロニクス製「SW-5582」を採用。同時期にリリースされる松下電器、バッファロー、ロジテックの製品も同様のドライブを採用しているため、実質的な違いはバンドルソフトに集約される。 松下電器の内蔵型「LF-MB121JD」はBD対応ソフトとして、ライティングソフトの「Power2Go 5」とバックアップソフトの「PowerBackup 2」を同梱。いずれもデータ形式の書き込みになっており、ビデオ形式で書き出すソフトは付属していない。 バッファローの外付け型「BR-H2U2」と内蔵型「BR-H2FB」はBD対応のオーサリングソフト「PowerProducer3」。と、BD-ROMソフトの再生にも対応予定の再生ソフト「PowerDVD6 BD Edition」を同梱。ロジテックのドライブに付属するBD対応ソフトはバッファローと同じだ。
BDへのライティングは、パケットライト方式を含むデータ形式と、今後リリースされる据え置き型プレーヤーでも再生できるというビデオ形式の書き出し「BDAV」と「BDMV」が用意される見込みだ。 BDAVはDVDの-VRフォーマットにも似たシンプルなビデオフォーマット。BD MVは市販されるBD-ROMソフトの規格で、複雑なメニューやインタラクティブ機能を作成するためのフォーマットだが、現時点では記録用のアプリケーションフォーマットとして定義されておらず、一般ユーザーがどこまで市販のBD-ROMソフトに近いディスクを作成できるかは不明だ。また、定義されていないため、現時点で同形式での書き出しをサポートしているソフトウェアは無く、「後日アップデートで対応予定」や「対応を検討している」など、メーカーによって今後の予定は異なっている。 今回借用したアイ・オーのドライブは、BDAV書き込み対応の「BD DiscRecorder 2.5」を同梱。BDAV対応のBD再生ソフトとして「WinDVD 7 BD」も付属するのが特徴。なお、「WinDVD 7 BD」のBD-ROMソフトへの対応については「後日ユーザー登録者にメールにて案内する」としている。オーサリングソフトとして「DVD MovieWriter 4.7 BD version」も同梱しているが、こちらのBDオーサリング対応も検討段階。データライティングソフトとしてBD対応の「Burn.Now 3」も付属している。 PC用ドライブとしてデータ形式での使い勝手はPC Watchに譲るとして、ここではAV的な視点からBDAV形式の書き込みをテスト。HDVカムから取り込んだハイビジョン映像をライティングし、その使い勝手をレポートする。 なお、ドライブは試作機で、ソフトウェアも製品版のバージョンとは異なる。そのため、発売時には書き込み速度や機能などが改良される可能性が高いことをお断りしておく。
■ 筐体カラーはBlu-rayを意識 筐体の形状は同社の外付けDVDドライブとほぼ同じだが、カラーリングがBlu-rayを意識した濃いブルーになっている。紺色と言ったほうが良いだろう。独特の光沢があり、高級感が漂う。天面に大きく描かれたBlu-rayのロゴマークが印象的だ。ファンレス設計となっており、後部や側面にはエアフローを確保するためのスリットを設けている。縦置きにも対応しており、専用スタンドも同梱する。 背面はシンプルで、USB 2.0接続用端子とACアダプタ接続用端子があるのみ。ハードウェア電源スイッチも備えている。なお、試作機のトレーはホワイトだが、実際の製品版ではブラックに塗装される予定だ。
さっそくセットアップしてみよう。PCに接続するとプラグアンドプレイで認識。「MATSHITA BD-MLT SW-5582 USB Device」と認識され、マイクロソフトの標準ドライバが自動的に組み込まれた。プロパティの「デバイスの種類」欄は「DVD/CD-ROMドライブ」となっている。試しにCD-ROMやDVD-ROMを読み込ませたところ、問題なくリードできる。実用上は問題なさそうだ。 次に付属ソフトをインストールする。オーサリングソフト「DVD MovieWriter 4.7 BD version」、 BDAV形式対応ライティングソフト「BD DiscRecorder 2.5」、データライティングソフト「Burn.Now 3」、パケットライト用ソフト「Data-Add 2.5」、BDAV再生ソフト「WinDVD BD 」。BDには対応していないが、DVDプレーヤーソフト「WinDVD 5 for OEM」も同梱している。
■ データ形式よりも大幅に遅いBDAV書き込み まずはデータ形式でライティングしてみよう。オーサリングソフト「DVD MovieWriter 4.7 BD version」は現時点ではBDのオーサリングには対応していないが、統合ソフトとしてランチャ機能を搭載。BD関連機能をクリックすると、「ビデオBDの作成」と「データBDの作成」が選択できる。データBDの作成を選ぶと、「Burn.Now 3」が、ビデオBDを選ぶと「BD DiscRecorder 2.5」が呼び出される。 「Burn.Now 3」の使い方はDVDのライティング時と同じで、下部のウインドウに書き込みたいファイルをドラッグ&ドロップし、ライティングボタンを押すだけ。ちなみに、「BRD-UM2」にはTDKのBD-REメディア(1層/25GB)「BDD-RE25S」が付属する。1枚のみだが、秋葉原でも実売価格2,800円程度と高値なので嬉しいオマケだ。以下のテストは全てこのBD-REメディアで行なっている。テストに使用したPCのスペックは、Pentium 4 2.6GHz、メモリ2GB、OSはWindows XP SP2だ。
まず、使用前にディスクをフォーマットする。BD-RE 25GBメディアの場合、約8秒で完了した。進行バーが100%になるまではあっという間で、ストレスはほとんど感じない。書き込み可能なサイズの目安は25GBのディスクを使った場合、23.28GBとなる。
909MBのMPEG-2(HDV)ファイルの場合、書き込み所要時間は3分43秒。24個のファイル計21.95GB(ディスク上サイズ23.56GB)の場合は1時間35分46秒かかった。なお、ドライブスペックとしての書き込み速度はBD-R/REともに2倍速。ただし、BDの1倍速は4.5MB/s(36Mbps)で、DVDの1倍速である1.385MB/sの約3.25倍速。そのため、DVDのスピードイメージで考えると6倍速以上となる。
なお、パケットライト用には「DATAadd」というソフトが利用可能。同ソフトをインストールすることで、DVD-RAMやHDDのようにエクスプローラー上でドラッグ&ドロップするだけで書き込みが行なえる。909MBのファイルの書き込み時間は3分32秒で、「Burn.Now 3」使用時よりも約11秒高速だ。 次いで、BDAV形式でライティングする。「ビデオBDの作成」を押すと「BD DiscRecorder 2.5」が起動する。主な使い方はDVDの際と同じで、書き込みたい動画ファイルを指定。映像方式を指定し、ライティングする。読み込み対応形式はAVI、DVR-MS、QuickTime、MPEG、WMVだが、書き込めるフォーマットはMPEG-2のみで、MPEG-2以外のファイルは再エンコードされる。
MPEG-2の設定として用意されているテンプレートは下表の通り。マニュアル設定も可能だ。「HD BDAV-高画質」はHDV 1080iと同仕様で、ソニーのHDV HDR-HC1からキャプチャしたMPEG-2ファイルを同モードでBDAV方式で書き出した。なお、2GB程度のWMVファイルを登録しようとしたところアプリケーションが強制終了してしまうなど、若干動作が不安定な面もあった。
先ほどと同じ909MBのファイルをBDAV形式で書き込むと9分6秒と2倍以上時間がかかる。さらに、計21.95GBファイルでは3時間51分32秒もかかってしまった。ファイルの再生時間は約2時間3分なので、実時間以上かかった計算になる。 BDAV作成時の機能面では、メニューを作成する機能は無く、各動画のチャプタを設定することもできない。ただし、開始/終了点を指定してシーンを抜き出すトリム機能は利用可能だ。
また、HDVカムなどのデバイスからキャプチャを行ない、そのデータをリアルタイムにBDAV形式でライティングすることもできる。同モードに入るとPCからi.LINK接続したビデオカメラを制御でき、録画ボタンを押すとそのままカメラ側で再生がスタートし、ディスクへ書き込まれる。その場合は当然実時間で書き込みができるので、ファイルを使った書き込みが実時間よりも遅いというのは納得がいかないところだ。このあたりの問題は製品版、もしくは発売後のアップデートで改善されることを期待したい。
■ BDAVで利用できる機能は少ない 完成したBDAVディスクを見てみよう。デフォルトボリュームラベルは「BDAV」。中を見てみると、「BDAV」フォルダが作られており、その中にサブフォルダとして「CLIPINF」、「PLAYLIST」、「STREAM」が作られている。動画データは「STREAM」に拡張子「m2ts」で格納されている。なお、同拡張子を「mpeg」などにリネームしたが、Windows Media Playerでは再生できなかった。また、後述するBDAV再生ソフト「WinDVD 7 BD」はドラッグ&ドロップの再生に対応していなかったため、ファイルを直接再生することはできない。
BDAVディスクは「WinDVD 7 BD」で再生する。現時点ではBDAV形式のディスク再生専用ソフトとなっており、DVDの再生もサポートしていない。ソフトウェアの起動までは27.4秒、22.2GBのデータを書き込んだBD-REメディアをマウントした状態で、メニューからドライブを選択、再生がスタートするまで10.7秒かかった。 HDVカムからキャプチャした25MbpsのMPEG-2ファイルをBDAV形式でライティングし、再生したところCPU負荷は79~85%程度と高く、激しく揺れるシーンなどでは90%に達することもある。元のデータファイルをWindows Media Playerで再生した場合の負荷は54~60%程度、PowerDVD 6の場合は25~30%程度。ただし、再生が最も滑らかなのは「WinDVD 7 BD」だった。 再生機能はシンプルで、BDドライブを指定すると自動的に再生がスタートする。作成していないので当然だがメニュー画面などは表示されず、またメニューを表示するためのボタンなども見あたらない。チャプタ選択メニューは用意されているが使用できず、タイトル単位のジャンプ機能は利用可能だ。 そのため、強引な方法だがライティング前にチャプタを切りたい場面で元の動画データをトリム機能で分割しておくことで、ジャンプ機能をチャプタの代わりとして利用できなくもない。いずれにしろ、再生時の利便性と、書き込み所要時間を考えるとデータ形式でファイルとして書き込む方が利点が多そうだ。現時点のBDAVディスク作成の自由度は低く、「将来的に据え置き型BDプレーヤーでも再生できるであろうBDAV形式で書き出せる」という最低限の機能のみサポートしていると考えた方が良いだろう。
■ バッファローではBDAVのチャプタ切りが可能 バッファローのドライブにも触れるチャンスがあったため、BDAVの機能を検証してみた。BDAVは「PowerProducer3」で作成する。左側のメニューから動画ファイルを読み込み、登録していくのだが、こちらのソフトではメニューのオーサリングが可能だ。DVDと同様に各コンテンツを配置し、下部にタイトルなどを付けることができる。また、動画だけでなく静止画の登録も行なえた。ただし、背景画像の変更はできなかった。
登録可能な動画ファイルはASF/AVI/DAT/DVR-MS/MOD/MPEG/VOB/WMV。さっそくHDV動画や静止画を登録してライティングし、付属の「PowerDVD6 BD Edition」で再生。しかし、メニューボタンがグレーアウトしてしまい、メニュー画面を表示することができない。ディスクを挿入すると頭のクリップから順次再生されるだけだ。なお、チャプタ設定は反映されているようで、ジャンプ機能で目的のチャプタに飛ぶことができる。
作成できたようでメニュー画面がディスクに書き込まれていないのか、PowerDVD側がBDAVのメニュー表示に対応していないのかはわからないが、結局のところできることはアイ・オー・データのモデルと大きく違わない印象だ。このあたりの機能は今後のバージョンアップで充実することに期待したい。また、BDAVでもDVDと同じようなメニュー画面が作れそうだということはわかった。 以上のように、単体Blu-rayプレーヤーが発売されていない現時点では、大容量のストレージメディアとしてデータモードのライティングを利用した方が利便性は高い。メニューなどを盛り込んだBDディスク作成を期待して購入するのは時期早尚と言えるだろう。 だが、ストレージャとして25/50GBという容量は魅力的。HDV動画も1層なら約2時間、2層ならば約4時間保存できる。旅行や運動会などのイベントで撮影した映像なら、25GBディスク1枚で十分収録できるだろう。
オーサリングなどの機能については今後のバージョンアップに期待したい。メーカーごとに対応の違いはあると思われるが、Blu-rayプレーヤーが国内リリースされる頃にはソフトウェアの改良が進んでいるはずなので、とりあえずデータストレージとして利用し、環境が整うのを待つというのもアリだろう。
□アイ・オー・データのホームページ
(2006年5月19日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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