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1~2万円台の最新カナル型ヘッドフォンを比較
ボーズ「インイヤーヘッドフォン」
オーディオテクニカ「ATH-CK9」
デノン「AH-C700
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11月中旬より順次発売
標準価格:15,540円~22,050円
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ポータブルオーディオ機器の普及が一段落したこともあり、ノイズキャンセル機能の搭載や、音質に重点を置いたモデルなど、プレーヤー各社の差別化競争が激化している。
そんな中、依然として高い注目を集めているのがイヤフォン市場だ。プレーヤーに標準で付属するイヤフォンを、好みの音質やデザインのものに変更し、音楽を屋外で楽しむというスタイルは、いまや一般的なものになりつつある。
最近ではソニーの新ウォークマン「NW-S700F」や松下電器のD-snap Audio「SV-SD800N」など、追加投資無しでノイズキャンセル機能が利用できるモデルが登場。標準で付属するイヤフォンの音質も向上しているため、付属イヤフォンからのグレードアップは、同梱品よりも大きなクオリティアップを求める傾向があり、1万円以上の高価なイヤフォン、特に音質面で優れるカナル型のイヤフォンに注目が集まっている。
今回は年末にかけてリリースされるカナル型イヤフォンの中から、1万円~2万円前後の価格帯にある注目度の高い3モデルをピックアップ。ボーズの「ボーズ・インイヤーヘッドフォン」(12月1日発売/15,540円)、オーディオテクニカの「ATH-CK9」(11月24日発売/22,050円)、デノンの「AH-C700」(11月中旬発売/18,900円)を比較試聴した。なお、ボーズのモデルは厳密にはカナル型ではなく、独自の方式を採用している。そこも注目のポイントと言えるだろう。
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ボーズの「ボーズ・インイヤーヘッドフォン」(12月1日発売/15,540円)
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オーディオテクニカの「ATH-CK9」(11月24日発売/22,050円)
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デノンの「AH-C700」(11月中旬発売/18,900円)
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【装着感】
【遮音性と音モレ】
【音質インプレッション】
■ 特徴と装着感をチェック
【ボーズ・インイヤーヘッドフォン】(12月1日発売/15,540円)
ボーズの「ボーズ・インイヤーヘッドフォン」は、製品名がそのまま装着方法というユニークな製品だ。一見するとカナル型のようだが、イヤーピースの形状が独自のもので、厳密にはカナル型ではない。通常のカナル型イヤフォンのイヤーピースは円形や円筒形だが、ボーズのそれは根元が膨らんだ独特の形状となっている。
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イヤーピースの形状が最大の特徴。根元が膨らんでおり、耳のくぼみに装着する
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そのため、カナル型(耳栓型)のつもりで耳の穴に押し込もうとしても、根元がつっかえて入らない。正しい装着方法は、耳の穴の手前にあるくぼみの部分に、根元の膨らんだ部分を「乗せる」というものだ。
この「乗せる」感覚が新しくて面白い。ついついギューギュー押し込みたくなってしまうが、イメージとしては耳穴の手前に「はめ込む」、もしくは「蓋をする」といった感じだ。膨らんだ部分だけに注目すれば、最も近いのは通常のインナーイヤフォンだろう。
初めはすぐ外れてしまいそうなイメージがあるが、イヤーピースのサイズを合わせれば思いのほかホールド性能は高い。コードを強めに引っ張っても外れない。遮音性もカナル型と比べれば劣るが、通常のインナーイヤフォンよりは大幅に高い。
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ついつい押し込みたくなってしまうが、耳のくぼみに乗せるように装着するだけでOK。装着後の負担は少なく、思いのほか外れにくい
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中途半端に聞こえるかもしれないが、実際に装着してみると、カナル型特有の圧迫感が無く、コードのこすれ音がそのまま耳に届く現象もない。スポンジのカバーを付けたインナーイヤフォンと比べても、耳と接している部分が柔らかいシリコンなので、長時間装着していて耳のくぼみの部分が痛くなることもない。カナルとインナーイヤーの“良いトコ取り”を狙った形状と言えるだろう。
イヤーピースは先細に尖っており、小さな穴が開いている。ここからユニットの音が放出されるわけだが、膨らんだ部分を耳のくぼみに入れると、ちょうど耳穴の入り口に突起が入るような形状になっている。細かいポイントだが、イヤーピースは大/中/小の3種類が付属し、それぞれ内側のカラーリングが異なる。ピースは半透明なので、装着した場合でもカラーの違いが透けて見えるようになっている。他社製品にはないオシャレな工夫だ。
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イヤーピースの内側にはサイズによって色が付けられている。半透明のピースなので、表側からも色が透けて見える
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ユニットサイズは16mm径。ケーブルはY型で長さは126cm。Mサイズのピースを付けた際の重量は約20g。コードも巻いて収納できるキャリングケースを同梱している。非常にコンパクトに収納できるケースで、質感も高い。キャリングポーチよりもオーナー心を満足させてくれる、嬉しいオマケだ。
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からまるコードもスッキリ収納できるキャリングケース。このデザインならばスーツのポケットから出しても違和感がなさそうだ
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□ボーズのホームページ
http://www.bose.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.bose.co.jp/news/2006/110802.html
□関連記事
【11月8日】ボーズ、独自形状採用の同社初イヤフォン
-15,540円。「トライポート」技術採用
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061108/bose1.htm
【オーディオテクニカ ATH-CK9】(11月24日発売/22,050円)
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ハウジングの付け根が45度折れ曲がったような特徴的な形状を採用
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「ATH-CK9」は、オーディオテクニカのイヤフォンシリーズの最上位モデルだ。テクニカはこれまでヘッドフォンで様々な機種をリリースし、高い評価を得ているが、2005年11月発売の「ATH-CK7」(オープンプライス/実売1万円前後)でカナル型イヤフォンにも参入。CK9は、約1年後にリリースされた上位モデルという位置付けだ。
軽量かつ高域特性と感度に優れたバランスド・アーマチュア方式のドライバーを採用したことが特徴。ダイナミック型ユニット(11mm径)を採用したCK7よりも繊細な再生が行なえるとしている。
「CK7」は標準的なフォルムのカナル型だったが、「CK9」ではハウジングの付け根が45度折れ曲がったような特徴的な形状を採用。通常のイヤフォンのようにそのまま耳穴に挿入するだけでなく、折れ曲がった側を上向きにして、コードを耳の裏に通すような装着もできる。
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下位モデルの「ATH-CK7」
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コードの表面はツルツルした処理で、粘着性はほとんど無い。ゴムの質感がそのまま出ており、腕にからませてみると途中で引っかかるCK7に比べ、CK9はスルリとそのまま下まで落ちてしまう。耳の裏にコードを通しても、不快な肌触りにならないだろう。コードの擦れ音も少なめだ。
イヤーピースはS/M/Lの3サイズを同梱。球形タイプとなっており、そのまま挿入するとニュルリと耳穴から押し出されてしまうことが何度かあった。若干大きめのサイズを選び、かつ耳の裏にコードを通す装着方法にすると、耳の形状でハウジング部を押さえられるのでホールド性が向上する。コードを首の後ろに垂らしてテンションをかけるとなお良いだろう。
出力音圧レベルは104dB/mW。最大入力は3mW。インピーダンスは30Ω。コード長は1.2mでY型。コードを除く重量は約5g。
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軽量かつ高域特性と感度に優れたバランスド・アーマチュア方式のドライバーを採用 |
ユニットはハウジングから角度をつけて突出している。この角度が挿入しやすさにつながっているようだ
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普通に挿入するだけでなく、耳の裏に通す装着方法との2種類が選べる
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□オーディオテクニカのホームページ
http://www.audio-technica.co.jp/
□製品情報
http://www.audio-technica.co.jp/products/hp/ath-ck9.html
□関連記事
【10月30日】オーディオテクニカ、カナル型イヤフォン最上位「CK9」
-バランスド・アーマチュア方式採用。22,050円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061030/autech.htm
【10月5日】オーディオテクニカ、約2万円のカナル型イヤフォン最上位モデル
-同社初となるバランスド・アーマチュア方式を採用
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061005/autech1.htm
【デノン AH-C700】(11月中旬発売/18,900円)
デノンのAH-C700は、前述した2モデルと比較すると素直なデザインと言えるだろう。特徴はハウジングがアルミ削り出しになっていること。質感の高さは3機種中トップで、手にするとヒンヤリと冷たい。このハウジングの響きが、音にどんな味や影響を与えるか気になるところだ。
振動板の上下の音圧バランスを調整し、音響特性を最適化するという「アコースティックオプティマイザー」構造が特徴。プラグの根元には、ハウジングと似たデザインのアルミカバーを搭載していてオシャレだ。感度は104dB/mW。重量は6.6g(コード含まず)。
形状が標準的なこともあり、装着感は普通のカナル型だ。耳穴に合わせてL/M/Sの3サイズから選んだイヤーピースをしっかりと押し込み、固定する。形状が横に長いためハウジングの重みで抜けてくるイメージもあるが、ホールド性能は悪くない。
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アルミ削り出しのハウジングは質感が高い
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振動板の上下の音圧バランスを調整し、音響特性を最適化するという「アコースティックオプティマイザー」構造が特徴
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□デノンのホームページ
http://denon.jp/
□ニュースリリース
http://denon.jp/company/release/ahc700_350.html
□関連記事
【11月6日】デノン、アルミ筐体採用のカナル型イヤフォン
-18,900円。エントリーモデルも用意
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061106/denon1.htm
■ 遮音性と音モレ具合
オフィスや深夜の自宅、電車内で遮音性を比較してみた。最も優秀だったのはオーディオテクニカの「ATH-CK9」、次いでデノン「AH-C700」、「ボーズ・インイヤーヘッドフォン」という順序となった。
CK9とC700は完全なカナル型なので、耳栓としての能力はボーズと比べるとやはり高い。C700ではハウジング内部からの「コーッ」という小さな音が聞こえるが、CK9はハウジングの内部容積が小さいためか、ほぼ無音。CK9はハウジングがプラスチックなため、高域の共鳴音も少ないようだ。
ボーズはカナル型の遮音性能には及ばないが、インナーイヤフォンよりはノイズをカットしてくれる。シリコンのイヤーピースが柔軟に耳をふさいでくれるためだろう。ハウジングからの共鳴音も聞こえない。
なお、圧迫感では評価が逆転する。ボーズは耳栓をしている感覚はほとんどなく、耳穴に異物を入れている感覚もないため、しばらく付けていると気にならなくなってくる。外からの騒音はある程度入ってくる反面、頭が詰まったような違和感も無いため、イヤフォンそのものが苦手だという人にお勧めしたい。
次に音モレだ。各モデルをポータブルプレーヤー「HD20GA7」(ケンウッド)と接続。フルボリュームで山下達郎「アトムの子」冒頭のドラム乱舞を再生した。1mほど離れた場所で2人に漏れた音を聞いてもらったところ、漏れが大きな順で「ATH-CK9」、「AH-C700」、「ボーズ・インイヤーヘッドフォン」という結果になった。
構造的には「ボーズ・インイヤーヘッドフォン」が漏れが大きいイメージがあるが、実際は逆という意外な結果。これにはイヤフォン自体の能率が関係しており、CK9とC700は同じ104dB/mWと能率が高い。インピーダンスはCK9が30Ω、C700が17Ωだ。ボーズは能率もインピーダンスも明らかにしていないが、かなり低めだと思われる。満足できる音量を出すためには、CK9/C700の1.6~1.7倍の出力が必要なようだ。そのため、ボーズから出る音はそもそも小さいのだ。
そこで、感覚的に同程度の音量になるまでボリュームを上げて比較したが、それでも順位に変更はない。「ボーズ・インイヤーヘッドフォン」のイヤーピースはかなり優秀だと言えそうだ。ちなみにCK9でも常識的な音量ならば、電車内の席でも隣の人に気を使わなくて済むだろう。
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ボーズ・インイヤーヘッドフォンには、密閉型ヘッドフォン「TriPort」と同様に、ハウジング部に計3つの穴を設け、ハウジング内部の空気を制御する「トライポート」技術が使われている。メシュの中に2つ、上部に1つ穴が設けられているが、ここから音モレすることがないよう対策がとられているという
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■ 音質インプレッション
音質は人によって評価が大きく変わる部分でもあるため、2名で聴き比べを行なった。なお、イヤフォンはエージングによって音が大きく変化するが「ATH-CK9」と「ボーズ・インイヤーヘッドフォン」は1週間程度使用。「AH-C700」はスケジュールの関係で鳴らし始めて2日目だが、丸1日アンプと接続して鳴らしっぱなしにしていたため、いずれも開封直後の硬さは取れ始めていると思われる。
【音質インプレッション】
編集部:山崎(常用イヤフォンATH-CK7)
常用しているケンウッド「HD20GA7」をメインにテストした。
■ ボーズ・インイヤーヘッドフォン
ボーズ初のイヤフォンだが、「イヤフォンになってもボーズサウンド」といった印象。モニター調とは異なり、入力された音を積極的に調整している印象だ。ふわっと広がる独特の音場。各楽器も個々の音が主張するのではなく、その音場にゆったりと音がたゆたっているかのようなBGM的音調。反射音を使ったバーチャルサラウンドスピーカーや、AVアンプのDSPでホールモードを選択したような音と言えばわかりやすいだろうか。
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ステレオミニジャックの根元部分にパッシブのイコライジング回路を内蔵
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イヤフォンによって音が変化するのは当然だが、ボーズの場合は変化具合が明らかに他の製品より大きい。それもそのはず、ステレオミニジャックの根元部分にパッシブのイコライジング回路を内蔵しており、入力信号をイヤフォンに最適になるよう周波数特性を自動調整しているのだという。
明確なキャラクターのある音なので、その傾向さえ気に入ってしまえば、どのソースでも好みの音質で楽しめそうだ。バランスは中域から低域の元気が良く、ロックやHIP-HOPに向いている。また、ふんわりとした音調を活かしてフュージョンなどをのんびり聴くにも適しているだろう。
装着感に優れており、長時間の使用でも苦にならないため、聴き疲れのしないこの音質は、製品に良くマッチしていると言える。量販店などでも販売されるため、購入前には視聴し、このキャラクターが好みに合うかどうか試してみると良いだろう。同社のシアターシステムやコンポを利用しているユーザーならば、「いつものボーズサウンドを屋外でも楽しめる」という価値も見出せるだろう。
■ オーディオテクニカ ATH-CK9
一聴してまず感じるのは、驚くほどの解像度の高さ。自分の耳が良くなったと錯覚するほど、ギターの弦の動き、ピアノの左手の動きも手に取るようにわかる。バランスド・アーマチュア方式のドライバーを採用したことで、トランジェントが良く、音の立ち上がり/下がりも極めて早い。余計なものを全部そぎ落として音楽を解析するような、小型のモニタースピーカーをニアフィールドで聴いているようなイメージ。CK9を聞いてから他のイヤフォンを使うと、全てナローに感じられてしまうほどだ。
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ケンウッド「KH-C701」
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その反面、独特のキャラクターやエンクロージャの響きなどはまったく感じられない。下位モデルの「ATH-CK7」はチタンハウジングがきらびやかな響きを音楽に乗せることで個性を出していたが、CK9はソースそのままの音が出て来る。似た音質としてはケンウッドの「KH-C701」だろう。
正しい音だと感じるのだが、“音楽を楽しむ”という面ではとっつきにくいイメージ。ゴンチチの「Abel」を再生しても、ギターのボディをダンプしてしまったように芳醇な響きが減っている。ケニー・バロン・トリオのJAZZ「Fragile」では、ルーファス・リードのベースがかつてないほど微細に描写されて驚愕するが、彼のベースの旨味である「ゴーン」と下まで伸びる倍音がバッサリと消える。響きが重要になるギターやヴァイオリン、アコースティックベース、ピアノ、シンバルなどは、楽器が安くなったように感じてしまう。
迫力の低音が欲しいロックのライヴ盤などには向かない。だが、エレキギターの再生音も今まで聞こえなかった部分まで描写してくれるため、別の魅力が発見できそうだ。フュージョンやポップスなどは解像度の高さが清涼感を産み、心地よい音が楽しめる。最近流行の ジェイムス・ブラント「You're Beautiful」を再生すると、彼のハイトーンボイスが冬空にどこまでも伸びていくようだ。
音の素性は極めて優秀なため、プレーヤー側のイコライジングで追い込むことで、より理想的な再生音を追求できるだろう。45Hzあたりを持ち上げると音に厚みが出てウェルバランスに近づく。解像感はそのままなので非常に凄みのある音だ。エージングを進めれば艶のある音もこなせそうだ。ただ、もとから存在しない響きの成分は後付けできないだろう。
■ デノン AH-C700
カナル型の標準的な再生音に近いが、キャラクターは濃い目だ。印象的なのは低音の豊富さで、芯のある低音がガツンと再生でき、気持ちが良い。ルーファス・リードのベースがモリモリと迫ってくるようで、ATH-CK9と比較すると「同じカナル型でこうも違うのか」と驚くほど対照的な音だ。
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松下電器「RP-HJE70」
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かといって全てが低音に埋もれることはなく、高音はきっちりと突き抜ける。解像度もATH-CK9に次いで高いため、ナローなイメージはない。アルミ製ハウジングの鳴きも加味されているようで、高域は金属質で派手目。能率も高いので、イーグルス「Get Over It」が笑ってしまうほど楽しく聴ける。キャラクターとしては松下電器の「RP-HJE70」に近いが、個人的にはデノンの方がウェルバランスだと感じた。
低音寄りのバランスはデノンのオーディオスピーカーやAVアンプにも似た傾向が感じられるため、同社のキャラクターを踏襲したイヤフォンと表現できそうだ。
個人的には若干低音が過多だと感じるのだが、今回比較した3モデルの中では最も幅広い層にお勧めできるモデルだ。ロックやポップスをメインに聴くというユーザーは、一度試聴してみて欲しい。
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!-- 山崎 -->
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編集部:臼田(常用イヤフォンKH-C701)
常用している「gigabeat S」や第5世代iPodをメインにテストした。
■ ボーズ・インイヤーヘッドフォン
ボーズ初のイヤフォンで、カナル型ではなく、独自の「インイヤー」型としている。カナル型のように「耳に押し込む」というよりは、耳に「あてがう」といった変わった装着方法だ。
実際に付けてみると、思いのほか耳にしっかりとフィットしてくれる。独自の形で耳穴に沿った形状のため、装着の向きがあらかじめ決まっており、左右を確認すれば戸惑うことなくしっかり装着できる。最初は、やや耳から浮いている感触があり、不安なのだが、軽く動くぐらいでは外れず、圧迫感はほとんど無い。装着感は非常によく、通勤電車などで活用できそうだ。
ボーズらしく、低域を強調した迫力あるサウンド。スピード感よりも重さで聞かせる低域で、HIP-HOPやテクノなどの強烈なバスドラやベースも迫力十分に響かせる。カナル型のダイレクトな音とは違い、ライブ的な響きを持った独特な音作りだ。
ダイナミックレンジはさほど広くないが、クラシック系のソースも思いのほか、しっかりこなせる。ロック系のソースは迫力十分で、細かなニュアンスよりは、音像のパワーで押し切るという熱いサウンド。低域が重く、ややブーミーな印象もあるが、ロック系であれば勢いでうまくカバーできる。ただ、アコースティック系の楽曲でその傾向が出ると、ちょっと気になってしまう。
■ オーディオテクニカ ATH-CK9
プラスチックのボディを採用しているため非常に軽い。装着感も良好だが、ボディの質感がイマイチ。耳から外して歩くと、左右のハウジングがこすれてカチカチと鳴るなど、3製品の中で一番価格が高いにもかかわらず、製品の質感という点では一番チープ。
中高域の解像度が高く、非常にクリアな音質。低域は他のカナル型イヤフォンより明らかに薄く、すっきりしている。常用しているケンウッド「KH-C701」と似た傾向だが、よりクリアでモニター的という印象。奥行きはあまりないのだが、すっきりとした帯域バランスが楽器のタッチやニュアンスをしっかり伝えてくれる。汎用的で使いやすいという意味では、3モデルで一番だ。
分解能が非常に高く、音楽そのものはもちろん、ライブ盤を聞いてみると、演奏前のざわつきや曲間の観衆の声など、今までわからなかった微細な音まできちんと伝わってくる。また、SP盤時代のソースの“パチパチ”という音が、やけにクリアで驚いた。
案外ロック系のソースとも相性がよく、ディストーションの効いたギターでもその細かな音の粒が感じ取れるような印象。迫力重視のイヤフォンでは感じられない魅力を持っている。ただし、ジャズピアノの打鍵音や、電子的なクリック音が耳に痛いときもあった。
低域を重視する人には物足りないかもしれないが、さまざまなソースに適応するバランスの良さと、クリアな音質は個人的には一番好み。ただし、いざ購入するとなると、2万円を越えるイヤフォンとしては高級感が不足しているように感じてしまう。
■ デノン AH-C700
やや重めのアルミ筐体には高級感がある。装着してみると、至って普通のカナル型だが、重さゆえか耳のフィット感はカナル型にしては高くないように感じる。少なくとも「ATH-CK9」や普段使っている「KH-C701」のほうが装着感は好みだ。
音質はパワフルで、低域から高域までスピード感のあるサウンドが楽しめる。特に低域の力強さが印象的だ。音像で聞かせるボーズよりも、音に力があり、分解能も高い。カナル型としては音に広がりがあり、使いやすそうだ。
ボーズと異なり、硬質でスピード感のある低域で、メリハリある音作り。ロック系のタイトなリズム隊や、音の隙間の多いヒップホップ系のソースなど、ハマると非常に気持ちいい。ただし、低域が張り出しすぎて、中域の旨みを相殺しているように感じることもあった。解像感と迫力の両立を求める人にはよい選択肢になるだろう。
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!-- 臼田 -->
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(2006年11月17日)
[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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