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11月22日、Xbox 360用のHD DVDドライブ「Xbox 360 HD DVDプレーヤー」が発売される。Xbox 360にUSB接続する外付け型のHD DVDドライブだが、注目されるのはその価格。今までHD DVDドライブが単体発売されたことは無いが、20,790円と「次世代」の光学ドライブの初値としては破格の低価格だ。 もちろん、「Xbox 360(39,795円)」や、HDDやD端子ケーブルを省いた「Xbox 360コアシステム(29,800円)」との併用を前提としたドライブのため、合わせるとXbox 360+HD DVDプレーヤーで60,585円、コアシステム+HD DVDで50,590円となる。そうした意味では、20GBモデルで約5万円、60GBモデル6万円強でBlu-rayの牽引役として登場した「PLAYSTATION 3」と真っ向勝負する価格設定だ。 しかし、既にXbox 360のユーザーであれば、2万円程度の追加出費でHD DVDプレーヤーを購入できるというインパクトは大きい。
さらに期待がかかるのがパソコンでの利用だ。マイクロソフトは公式には「ドライバを提供していないので、利用できない」とコメントしている。 しかし、WinHECで示されたWindows VistaにおけるMicrosoftのHD DVDサポート要件を見てみると、HD DVDの再生においてOSの機能に加えて必要とされるのは、HD DVDの著作権保護規格である「AACS」のサポートは当然として、ファイルシステムとしてUDF 2.5、ビデオコーデックなどのようだ。このあたりは大抵サードパーティ製のHD DVDプレーヤーソフトに入っているものだ。 つまり、HD DVD対応のプレーヤーソフトを用意すれば、「HD DVDの再生も可能かもしれない」という期待がかかる。もし、再生できて、最近の高スペックPCを所有していれば、約2万円+再生ソフト(8,000円~1万円程度)で手軽にHD DVDの再生環境が手にはいることになる。 ということで、まずは「Xbox 360 HD DVDプレーヤー」をパソコンと接続してテストしてみた。なお、Xbox 360と接続した際の使用感については、明日レポートを掲載する予定だ。
■ PCのスペックに注意。アナログRGBでもとりあえず利用可能 まずは、PCでのHD DVD再生に必要な環境を確認してみよう。HD DVDをパソコンで高画質に再生/デジタル出力するためには、以下の要素が必要となる。
今回のテストで利用した「WinDVD 8 Platinum」の製品情報によれば、HD DVD再生時のPCの必要動作環境は、CPUがPentium D 3.2GHz以上またはCoreDuo T2500 2.0GHz以上、メモリ1GB以上。ビデオカードはインターフェイスがPCI Expressで、COPP対応ドライバを備えたもの。対応WindowsXP SP2以降、Windows XP MediaCenterEdition2005となっている。 今回は用意したパソコンは、ややスペックが足りず、Athlon 64 3000+、メモリ1GB搭載で、OSはWindows XP SP2。ビデオカードはHDCP非対応の「GeForce 6600」だ。要するに昨年DOS/Vパラダイスで購入した低価格PCなのだが、最近のPCとしてはありきたりなスペックといえるだろう。 HDCP非対応ということはつまり、デジタル出力はできない。以前のBDビデオのパソコンでの再生検証記事で詳細にレビューしているが、HDCP非対応のディスプレイ/ビデオカードの組み合わせで、デジタル出力を試みると再生開始後数秒で再生停止してしまうのだ。 もちろん、高品位な再生のためにはパソコンの性能や、デジタル出力のHDCP対応は必須ではある。しかし、まずはHDコンテンツ入門としてはアナログ接続でも利用できることは重要。以前レポートしたとおり、とりあえず最近のNVIDIA、ATI(AMD)のGPU搭載製品であればCOPPをサポートしているため、とりあえず2010年末まではアナログRGB接続でも出力可能なのだ。 ■ ドライバ無しでも利用可能に。安価なHD DVD再生環境を構築
Xbox 360 HD DVDプレイヤーの構成自体は至ってシンプル。外形寸法は実寸で178×230×54mm(幅×奥行き×高さ)とやや大きめで、重量もPC用の外付けドライブとしてはやや重い。 背面にAタイプのUSB端子を2ポートと、USBミニ端子を1ポート装備。このミニ端子をXbox 360やパソコンとの接続に利用できる。ACアダプタはXbox 360のものに比べるとかなり小型。また、Xbox 360の操作が可能なリモコンも付属する。
PCに接続してみる。すると、「Xbox 360 HD DVD Memory Unit」というドライバを捜しに行くが、当然用意されていないので認識されない。付属の「Xbox 360 プレーヤー ソフトウェアインストール用ディスク(Xbox 360にHD DVDプレーヤーを認識させる際に利用)」をトレーに入れてみたが、当然PC用ドライバは入っていない。やはり専用のドライバが必要なのだろうか……、と不安になった。 しかし、とりあえず、通常のCD/DVD-ROMドライブとしては認識しているようだ。Windowsのエクスプローラからは、「TOSHIBA DVD/HD X807616 USB Device」と認識される。Windows XP SP2であれば、この型番でOSから認識されるようだ。
そこで、WinDVD 8 Platinumをインストールしてみた。WinDVD 8ではBDとHD DVDの選択項目が現れるので、当然HD DVDを選択する。UDF 2.5のファイルシステムを認識できるはずなのだが、HD DVDのはずのEドライブがなぜか[CDドライブ]と表示されてしまう。 このままではHD DVDの再生は無理か? と思ったが、WinDVD 8 HDを起動してみると、HD DVDドライブからディスク読み出しをスタートし、再生できた。ローディングにかかる時間は約20秒で、実際に再生を開始すると通常のDVDビデオと変わらず再生が可能だった。 今回はPCのスペックが足りないためH.264収録の「ネバーランド」と「夜桜」はフレームが落ちが発生し、音声がとぎれることもあった。特にネバーランドはほとんどコンテンツ内容をきちんと確認できなかったほど。しかし、VC-1収録の「The Phantom of the Opera(米国版)」はほぼ全編問題なく再生が行なえた。同じくVC-1の「Milion Dollar Baby(北米版)」も問題なく再生でき、WinDVD 8 HDの各メニューからほぼ全ての操作が可能となった。
なお他に試した「The Phantom of the Opera(北米版)」、「Milion Dollar Baby(北米版)」、「ネバーランド」などのHD DVDソフトでは、ポップアップメニューの操作を画面上から行なえかった。BD再生対応のVAIOなどではマウスでメニュー部をクリックすると選択して、再生するなどの操作が可能だったため、最初は戸惑ってしまった。 もちろん、WinDVD 8 HDの操作画面や各チャプター選択画面、音声設定などから、設定変更が可能。DVDビデオとナビゲーション的にはほとんど変わらない。 シネマスコープサイズの「The Phantom of the Opera」を、17型のWXGA液晶ディスプレイで見ると、大画面テレビでの視聴と比べると迫力不足。さらに、アナログ接続のため、ハイビジョンの本来の精細感と比較すると物足りなさも残るが、それでもDVDとは異なる圧倒的な密度の映像を手軽に楽しめ、今までのパソコンの映画鑑賞とはひと味違った感動がある。 なお、今回試した環境の場合、一度再生を停止すると、WinDVD 8 HDを再起動しないとディスクを認識してくれないこともあった。また、CDやDVDドライブとしては認識され、音楽CDの再生やDVDビデオの再生は可能。しかし、今回の試用機では「リージョン1(北米)」のDVDドライブと認識された。WinDVDからドライブのリージョン変更も可能となっている。 結論を言えば、Core 2 DuoやAthlon 64 X2などのデュアルコアのCPUを搭載したパソコンと、COPPやHDCPに対応したビデオカード、WinDVD 8などのHD DVD対応プレーヤーソフトさえ用意すれば、「Xbox 360 HD DVDプレーヤー」で、HD DVDを楽しむことができる。 おそらくサポートなどの関係からMicrosoftからは公式に対応を謳わないのだろうが、OSからドライブさえ認識できれば、各プレーヤーソフトの機能を生かして、再生できるということだろう。 もちろん、メーカーのサポート外の使い方なので、ヘビーな自作パソコンユーザーや、AV環境の中心をパソコンにしたいという人が、自己責任で導入するしかなく、メーカーのサポートを期待してはいけない。 何はともあれ、Xbox 360のみに用途を限定せずに利用できるため、HD DVDの普及拡大にも大きく寄与しそうな製品だ。インストールベースを増やしてBlu-rayに対抗するという意味でも期待できる。なによりPLAYSTATION 3と2つのプラットフォームをそろえても10万円程度で収まるので、フォーマットの立ち上げ期の安価なソリューションとして重宝しそうだ。HD DVD/Blu-rayのフォーマット争いの行方が不透明なだけに、積極的にHDコンテンツを楽しみたい人が、安価に楽しめる環境が増えることを歓迎したい。 □マイクロソフトのホームページ ( 2006年11月21日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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