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iPod、ウォークマンなどの携帯型音楽プレーヤーが多くの消費者の人気を集めるようになって久しいが、その拡大にあわせて、市場が拡大したのがポータブル向けのイヤフォン/ヘッドフォンだ。いつも携帯するものだけに、音質だけでなく、装着感やファッション性、使い勝手にも注目が集まっており、ノイズキャンセル、密閉型/開放型/カナル型といったさまざまな種類の比較的高価格な製品が続々と発売されている。 そんな中でも、昨年の発売以来ヒットモデルとなっているのが、ソニーの“EXモニター”イヤフォン「MDR-EX90SL」。モニターヘッドフォンのノウハウを導入しながら、独自の装着感とモニターライクな精緻な音質、実売で1万円を切る手頃感などが受けて人気を集めた。ソニーの調査によると、8,000円以上の高価格帯ヘッドフォン市場において、ボーズの「ボーズ・インイヤーヘッドフォン」と人気を2分しているのだとか。 そのMDR-EX90SLの上位モデルとして10月に発売されるのが、今回紹介する「MDR-EX700SL」。密閉型のインナーイヤフォンでは世界最大という16mm系のドライバユニットを搭載。再生周波数帯域4Hz~28kHzとインナーイヤ型としては異例の広域再生能力を得ているという。 EXモニターの最高峰と位置付けられているだけに、価格も36,750円と高価。実売でも3万円台が予想され、ソニーインナーイヤフォンのトップモデルとなる。他メーカーの同価格帯製品のトレンドは、ユニットを増やして音質向上を図る方向に向かっているが、ソニーはユニットを増やさず大きくするという手法で対抗してきた。EXモニターの最高峰を、MDR-EX90SLとの比較を中心にその実力を検証した。
■ 大口径ユニットを搭載した「EXモニター」
付属品はキャリングケースと、1mの延長ケーブル、7種類のイヤピース。 本体の形状もユニークだ。耳穴に挿入するイヤピース部の後ろに16mm径のドライバユニットを備えている。耳穴に並行して、耳穴を塞ぐようにユニットを配していたMDR-EX90SLとは異なり、EX700SLでは、耳穴に垂直に差し込むような形でユニットを配置している。 筐体の素材はマグネシウムだが、アルミボディのEX90SLのほうが高級感はあるように思える。振動板はマルチレイヤーダイアフラムを採用。ドライバー部には440kJ/m3の高磁力ネオジウムマグネットを使用している。内部には低音のバランスをとるフロントレジスターや、中低音のバランスをとるドライバーレジスター、レギュレーター、リアレジスターなどのパーツを組み合わせた複雑な構成となっている。また、筐体とユニットを一体化することで不要な振動を抑え、低音域のレスポンスを改善している。 大口径ユニットの採用により、再生周波数帯域4Hz~28kHzを実現(EX90SLは5Hz~25kHz)。低域から高域まで、バランスの良い再生が行なえるという。感度は108dB/mW。インピーダンスは16Ω。最大入力は200mW。 重量は7g。ケーブル長は0.5m。首掛け型のプレーヤーや胸ポケットにプレーヤーを入れる分にはちょうどいい長さだが、バッグにプレーヤーを収納して、音楽を聴く際などには延長ケーブルの利用が必要だ。 付属の7種類のイヤピースもEX700SL専用に開発されたもの。素材はシリコンだが、芯は硬い素材を採用し、音の通路を確保しながら、先端の潰れによる音質劣化を防止。外側は柔らかいシリコンを採用して、耳へのフィット感や密閉度の向上を実現している。
■ イヤーピースの選択が重要
EX90SLではイヤーピースを耳穴に入れた後、耳の凹凸にユニットを引っ掛けるような形で、耳穴をふさぐように配置されたドライバーユニットが音場感の向上に寄与していた。 EX700SLでは単純に耳穴にイヤーピースを差し込むだけ。垂直に配したユニットのためにハウジングが薄型化されており、差し込むだけでもきちんとホールドされる。
左右のハウジングにL/Rを色違いでプリントしてあり、左右を間違えなければ、問題なく装着できる。ただ、個人的にはEX90SLのほうが安定感があるようにも感じた。耳穴だけでホールドしているEX700SLは、若干不安感がある。 そのため、付属のイヤピースの選択が重要になる。3種類の大きさの違いだけでなく、耳穴の深さの違いも考慮して合計7種類も同梱しており、それぞれ色で判別可能としている。 音の傾向は大きく変わらないものの、イヤーピースの違いで、低域の音離れやこもり感も変わってくる。しっかりと自分にフィットするものを選びたい。 音漏れについては、カナル型(耳栓型)と考えると多めだが、それでもMDR-EX90SL程は多くない。電車内であれば、さほど周囲を気にすることなくボリュームは上げられそうだ。もっとも、遮音性能がMDR-EX90SLよりかなり高いので、電車や地下鉄、飛行機などでの利用時にはEX90SLよりかなり快適に利用できるだろう。
■ 音質チェック
音質や装着感については、個人差もあるので2名で聞き比べを行なった。また、比較用にMDR-EX90SLのほか、Shure「E2c」、オーディオテクニカ「ATH-CK9」なども用意した。
■ “最高品質”にいくら払うのか さすがにソニーの技術を結集したイヤフォンとして、音質面での満足度は高い。ただし、36,750円と高価なだけに、ポータブルプレーヤーの価格を上回る可能性も高い。たとえば、家庭用に2万円のヘッドフォンと、ポータブル用にMDR-EX90SLといった使い分けも考えられるわけで、どういったケースでどこまでインナーイヤフォンを利用するのかの見極めも必要だろう。 ポータブル用途だけに限れば、EX90SLには無い遮音性の高さなどの魅力もある。海外メーカーを中心に同価格帯の競合製品も出揃ってきたが、“ソニーの最高峰”として対抗できる実力を持っていることは間違いない。 □ソニーのホームページ (2007年9月14日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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