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有機ELテレビ、ソニー「XEL-1」の登場も記憶に新しいが、CEATEC JAPAN 2007会場では、シャープ、日立、ビクターなどの各社が厚さ5cm以下という液晶テレビの薄型化技術をアピール。液晶テレビにおける“薄型化”が「次のトレンド」として、各社の取り組みが確認できた。 そのトレンドをリードする製品といえるのが、日立のWooo UTシリーズ「UT32-HV700」だ。CEATECに出展されていたのは、いずれも参考展示だったが、UT32-HV700は、12月中旬より出荷を開始。超薄型液晶で初の製品化となる。特徴は35~39mmというディスプレイの薄さ。この薄さを実現するために、チューナーユニットの「Woooステーション」を別筐体としている。 同社の初期の「プラズマWooo」では、チューナユニット外付けモデルを積極的展開していただけに、Woooユーザーには懐かしいチューナ外付け型への回帰ともいえるかもしれない。 実売価格は23万円前後。「一般的な同型液晶テレビプラス5万円程度を目指した」とのことだが、薄型化によるレイアウトの自由度に加えて、iVDRへの録画機能も備えている。こうした付加機能を考えると、通常の液晶テレビと比べて割高感はあまり感じない。 なお、フルHDモデルについては、37型「UT37-XV700」が2008年2月に、42型の「UT42-XV700」が2008年4月に発売される予定。今回はいち早く投入された、超薄型テレビ「UT32-HV700」をチェックした。
■ 高級感ある仕上げ。チューナユニットは外付け Wooo UTシリーズは、ディスプレイ部とチューナユニット「Woooステーション」の2つの主要ユニットから構成される。 ディスプレイ部の外形寸法は、814×39×538mm(幅×奥行き×高さ)。付属のスタンド利用時には814×249×587mm(同)となる。スタンドは、薄型を意識したデザインのため、一般的な液晶テレビと比べるとかなり奥行きは短い。重量は10.9kgで、スタンド込みの重量は13.5kg。 ディスプレイのベゼル部や背面は、光沢仕上げ。なだらかにラウンドする背面は艶やかで、高級感は高い。入力端子は、背面にHDMI×1を装備するほか、液晶下部にアナログRGB(D-Sub 15ピン)、アナログ音声(ステレオミニ)を装備。ヘッドフォン出力も備えている。スタンドと設置面の間隔が短いため、HDMI以外の端子は非常に差しにくい。また、アナログRGB端子は、後述する「モニター単体動作モード」用となっているので、頻繁にテレビとPCを使い分ける人にとっては、使い勝手はあまり良くない。
Woooステーションには、地上/BS/110度CSデジタルチューナと、地上アナログチューナを内蔵。1080p対応のHDMI入力×3や、D4入力×1、コンポジット映像入力×1、アナログ音声入力×2を装備する。HDMI端子はHDMI-CEC機能「Woooリンク」に対応。CEC対応機器との電源連動や、対応シアタースピーカーなどの操作が可能となる。 出力端子はディスプレイ接続用のHDMI×1と、光デジタル音声×1を備えている。Ethernetや電話回線端子も装備する。 iVDR-S用スロット「iVポケット」も装備。新開発のローディング機能を備えており、iVDR-Sへのデジタル放送録画にも対応する。EPGは6/8番組の表示切り替えが可能で、裏番組チェック機能も装備。SD/MMCカードスロットも装備する。 Woooステーションの外形寸法は297×222×66mm(幅×奥行き×高さ)、重量は2.8kg。消費電力は15W(0.5W)。
■ 驚きの薄さと、しっかりした映像表現
驚きはなんといっても、その薄さ。ディスプレイの最厚部分でも3.9cmで、横や上から見た時のインパクトは絶大だ。スタンドは、通常の液晶テレビのものよりは小型で、存在を主張しないデザインになっている。 壁掛けやフロア置きなど、Wooo UTではさまざまな設置に対応した「レイアウトフリー」をアピールしている。重量は13.5kgで、スタンドを外すと10.9kgなので、壁掛け時の壁への負担などはだいぶ小さくなる。可変型の「TB-LKA0081(17,500円)」や固定型の「TB-LKF0081(9,800円)」の2種類の壁掛けユニットを用意。また、32/37型用のフロアスタンド「TB-LSZ008(19,800円)」をラインナップする。 また、オプションのワイヤレスユニット「TP-WL700H」も用意し、Woooステーションとディスプレイ間をワイヤレス伝送可能となる。これも「レイアウトフリー」提案の一例といえる。
チューナ外付けで、iVDR-Sへの録画機能を備えていることを除けば、機能的には普通の液晶テレビ。リモコンは、10キーやカーソルキー、放送切り替えなどの各種ボタンに加え、下部にiVDR録画/再生関連の機能をまとめている。なお、リモコンはWoooステーションでなく、テレビ側に向けて操作する。 超薄型ということで、気になるのが画質への影響だ。Wooo UTの薄型化を実現するにあたり、従来比で厚さが約1/2という新開発の薄型液晶モジュールを採用。バックライト機構についても、新方式の拡散板を開発し、バックライト光源とパネルの距離を短縮ながら、ムラのない映像表現を目指したという。 実際に、地上デジタルテレビ放送やBDビデオを中心に視聴してみたが、薄型化による目立った影響は感じない。パネルは1,366×768ドットだが、BDビデオ「レミーのおいしいレストラン」の艶やかなレミーの毛並みも見事に細部まで描写され、解像度の不足は感じない。厨房の中のまばゆいばかりの色とりどりの食材や、暗いランプの上のネズミたちを質感などを繊細に再現してくれる。 正面から見ている限り、目立った輝度ムラなどは感じなかった。ただ、少し斜めから見たときなどは、画面の一部分の色にムラができているようにも見える。視野角の違いに応じてリニアにコントラストが変化するのではなく、画面の一部分だけ、コントラストが低下するように見えるので、単色の画面などを表示して、斜めから見ると色ムラとして見える。テレビ放送だとほとんど違和感はないが、3DCGアニメーション視聴時や、無信号時などは、時折気になった。
テレビチャンネルの切り替えや入力切替のレスポンスも不満なく、チューナ外付けであることを意識することはあまりない。画質モードは、スーパー、スタンダード、リビング、シネマティックの4モードを用意している。これらの画質モード切り替えには専用ボタンがなく、メインメニューの[各種設定]の[映像設定]から選択するのが少々面倒だ。なお、画質モードは入力端子ごとに管理され、HDMI 1を[シネマティック]、HDMI 2を[スタンダード]などの入力ごとにメモリしておくことができる。 スーパーは、色温度が高く、バックライト輝度も非常に明るいモード。明るい部屋などでのテレビ視聴にはいいが、映画の視聴時などには黒浮きがやや強く出てしまう。ただし、3Dアニメの視聴時には、ピーク輝度を生かし、コントラスト感が高くなるため結構見やすいと感じる事もある。 スタンダード、リビングでは、スーパーに比べると色温度が落ちつく。基本的な画調は同傾向だが、リビングのほうが輝度が高くなっている。汎用的なのはスタンダードで、部屋の明るさにあわせてリビングを選択するといった感じだろう。 映画モード[シネマティック]は、色温度がより低く落ち着いた画調になる。ぐっと黒がしまり、暗部のリニアな階調も再現できるので、実写系映画はこれでいいだろう。ただし、ピーク輝度がかなり落ちるので、映画の種類によっては、コントラスト感が物足りなく感じることもあるかもしれない。なお、シネマティック選択時は黒補正やLTI、CTI、YNR、CNRの各詳細設定が可能となっている。
■ iVDR録画機能も充実 リムーバブルHDD「iVDR-S」への録画機能も備えている。日立のデジタルテレビ、チューナ製品では、すでに採用例があるiVDR録画機能だが、UT32-XV700では、テレビの機能としてうまく作りこまれている。今回はアイ・オー・データ機器の160GB iVDR-S「iVDR-S160(実売35,000円前後)」を利用してテストした。
iVDR用に電動のローディング機構を搭載。iVDR-Sの初回利用時にフォーマットを求められるほか、抜き差しした際には、認識まで20秒弱かかる。その他はHDD内蔵テレビのように利用できる。 最大8番組表示の電子番組表を備えており、録画予約は、EPGから任意の番組を選択して、決定するだけ。更新録画、毎回予約設定なども可能となっている。また、任意のフォルダを作成して番組名や、自分の名前などでiVDR内の番組を管理できる。 録画モードはMPEG-2 TSのストリーム記録モード「TS」のみ。同社の薄型テレビXR01シリーズやiVDR-S録画対応チューナ「IV-R1000」などで採用しているMPEG-2トランスコードによる長時間記録モード「TSE」には対応していない。
録画した番組は、チャプタ設定が可能。オートチャプタ設定機能も備えており、番組とCMの境界を自動で検出し、CMスキップなどに利用できる。全ての番組でオートチャプタが反映されるわけではないが、便利な機能だ。部分削除やプレイリスト作成/編集などの編集機能も備えている。 録画した番組は、リモコンの[録画番組]ボタンから呼び出して、再生できる。早送りや巻き戻し、スキップなどのレスポンスにも不満はなく、レジューム再生にも対応している。シンプルながら、良く作りこまれた録画機能だ。2万円のiVDRを買えばレコーダにもなるというのは、なかなか魅力的。録画したiVDR-Sは他の機器でも利用できるため、他社製品やパソコンなどで採用が進むと、非常に面白くなると思うのだが。
裏番組の確認機能も面白い。リモコンの[裏番組]ボタンを押すと画面下部に番組情報があらわれ、カーソル上下を押すと、視聴中の放送波の各局の番組を確認できる。カーソル左右を押すとBS、CSの各放送波とiVDRを切り替えられるため、テレビを見ながら、現在放送中の各局の番組や、iVDR内の録画番組を確認できるのはうれしい。
リモコンにはHDMI連携「Woooリンク」用のボタンが用意されている。対応機器は、ヤマハのサラウンド「YSP-4000」と日立のDVDレコーダ「DV-DH500H/500VH/250VH」。今回、松下電器のBDレコーダ「DMR-BW200」とHDMI接続してみたが、連携はできなかった。
液晶部とWoooステーションをHDMIで接続して、テレビとして利用するのが、基本的な「UT32-XV700」の利用方法。しかし、HDMI機器やアナログRGB出力機器を直接ディスプレイに接続する「モニター単体機能」も備えている。 ディスプレイ側のD-Sub15ピンとHDMIの各入力端子のみの映像を扱うモードとなり、Woooステーションの各入力端子は操作できなくなる。なお、ディスプレイ下のアナログRGB(D-Sub 15ピン)入力については、この「モニター単体機能」のときのみ利用でき、Woooステーション利用時には入力選択できない。 このモードへの切り替えは、メインメニューの[初期設定]-[外部機器接続設定]-[モニター接続設定]から行なう。通常はテレビとしてUT32-XV700を利用して、PC接続時にモニター単体機能に切り替えるなどの利用も可能だが、正直かなり面倒だ。 入力はD-Sub15ピンとHDMIを順送り式に切り替えるだけ。設定メニューや調整項目もWoooステーション接続時とは全く異なった専用モードとなる。一般的な家庭における利用シーンがいま一つ思い浮かばないが、機能としてはユニークだ。
■ 誰にでもわかる“薄さ”の衝撃 とにかく、“薄さ”のインパクトは大きい。11型有機ELテレビの「XEL-1」でも驚いたが、32型の画面サイズで4cm以下だと、「これで大丈夫なの?」と不安に感じるほどだ。それでいて、画質も抜かりなく、機能的にも充実している。背面の処理など、デザインの美しさも所有欲をくすぐり、Wooo UTだけのプレミア感を確かに感じさせてくれる。 もっとも、AVラックなどを利用したり、AVシステムやレコーダと連携を考えている場合には、システム全体として、薄型化を生かす方法を考えないと、メリットを享受できないともいえる。そうした意味では、今後テレビ市場における薄型化のトレンドが、関連製品市場にも及ぼす影響も大きそうだ。 とはいえ、画質や、機能は店頭などでは、あまり分からないぐらい各社が拮抗している中にあって、このデザインと薄さは、一目で違いが明確にわかる。テレビの買い替えを検討しているのであれば、ぜひ一度実際に見て、体験してみることをお勧めしたい。 □日立製作所のホームページ
(2007年12月20日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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