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松下電器産業株式会社は、2007年6月から稼働したプラズマパネルの生産拠点である尼崎第4工場の内部の様子を公開した。 同工場は、現在、第2期生産ラインが稼働しており、来年度には第3期生産ラインが稼働し、フル生産体制となる。1ラインあたりの生産能力は約18万枚で、フル稼働時には月間50万枚の生産能力を持つ。 今回初めて内部が公開された同工場の様子を紹介しよう。 ■ プラズマ生産の主力拠点、尼崎第4工場を初公開
松下電器は、プラズマパネルの生産拠点として、国内に茨木第1工場、茨木第2工場、尼崎第3工場、尼崎第4工場の4つの拠点を持つ。茨木第1工場は、42インチで1面取りできる生産設備を持った拠点として、2001年6月にスタート。現在は、より生産効率の高い工場へとパネル生産をシフトしたため、同工場は研究開発用ライン、試作用ラインとして活用しており、実質的には3つの生産拠点での生産となる。 尼崎第3工場と第4工場は隣接する形で設置。さらに、2009年の稼働を目指して、第5工場がやはり隣接する場所に建設中だ。 第5工場は月産100万枚を予定。「年内には建屋が完成し、5月の稼働に向けて機材を配置する。稼働は3期に分割することになる」(白井正明工場長)という。 今回公開された第4工場は、42インチで8面取りが可能な生産拠点で、第5工場がフル稼働するまでは、同工場がプラズマパネル生産の主力拠点となる。 ■ 第3工場比で1.5倍の延床面積、約2倍の生産能力
第4工場の総投資額は1,800億円。縦116m、横270m、高さ60mの6階建て。建屋面積は3万5,000m2、延床面積は19万m2。隣接する尼崎第3工場は、縦116m、横290mと建屋面積は大きいものの、高さが4階建ての36mのため延床面積は14万7,000m2に留まる。また、生産施設も42インチで6面取りのサイズとなるため、月産能力は28万5,000台となる。 第4工場は、第3工場に比べると、1.5倍の延床面積で、約2倍の生産能力を持つというわけだ。 6階建てのうち、6階フロアは来年度稼働予定の第3期生産ラインを導入している最中。工場横には大規模なクレーンが置かれ、機器の搬入を行なっていた。4階、5階はそれぞれ第1期ライン、第2期ラインが設置されている。
このラインでは、まず、運び込まれたガラス基板を、背面板および前面板がそれぞれ隣接する形で、別々に投入される。 第4工場で生産されるパネルは、42インチで8面取り、50インチで6面取りという大きさであり、厚みは約1.8mm。一枚あたりの重量は約20kgとなっている。移送はすべて機械で行なわれており、人手は介さない。 投入された背面板、前面板は、それぞれ印刷、乾燥、露光、現像、割断、蛍光体検査、フリット塗布および乾燥という工程を経る。
ここでは、クラス10,000のクリーンルーム化を実現。実質的には1,000以下のクリーン度を実現しているという。「生産ラインのフロアにおいて勤務しているのは約15人。クリーンルームはワンフロアの4分の3程度の面積を占めており、機器そのものはクラス100以下。実力的には半導体生産も可能なほどのクリーン度になっている」と語る。 ほとんどの作業が自動化されており、前面版、背面板の生産ライン内では、人の姿を探してしまうほどだ。 焼成エリアを経たパネルは、3階および2階の仕上げエリアへと移送される。 ■ 仕上げエリアも効率化。パネルの9割は神戸港から出荷
仕上げエリアでは、1~3期ラインのすべてが並列する形で、生産が行なわれる形となっており、第3期ラインが割り当ててられるエリアは、まだ空きスペースがあったり、導入される機器がブルーシートに覆われていたり、といった様子を見かけることができる。 仕上げエリアでは、まず、前面板と背面板との貼りあわせが行なわれる。アライメント封排工程、MgO蒸着工程、発光ガスの封入工程などがこのフロアに集中しており、「プロセスや材料の見直しによって、この工程にかかる時間を大幅に削減している」という。 また、このフロアで利用しているカートは、第3工場では1カートあたり26枚であったものを、28枚へと増やし、ここでも作業効率を高めているという。このフロアには、封着のための炉があるため、フロア全体が暖かいという印象だ。 蒸着、封入などが終わると、2階フロアに移送される。ここでは、制御回路の圧着のほか、エージングやパネル検査が行なわれる。 パネル検査の工程では、第3工場の場合、2人程度の検査員をおいて、自動検査に加えて目視での検査を行なっていたが、第4工場では機械による自動検査のみとなっている。その後に行なわれるパネルの特性検査については、人と機械との両方で行なっている。 検査が完了すると、1階の出荷、梱包ラインに移され、ここからセット組立を行なう工場に運ばれる。松下電器では、パネル生産は日本での集中生産としているものの、テレビとしてのセット組立は消費地に近いところで行なわれている。 尼崎第4工場で生産されたパネルの9割は、トラック輸送で約15分の神戸港へと運び込まれ、そこから船便で全世界に出荷される。残りの1割のパネルも大阪港から輸送されるという仕組みだ。 ■ 2009年の第5工場稼働で一大プラズマ生産拠点に
最先端の技術が投入されている拠点だけに、見学はかなり限定された場所となった。だが、生産棟の縦と横との廊下を端から端まで、それぞれ歩く機会があり、その規模の大きさを実感することができた。横の270mという長さは、反対の端が見えにくいほどの規模である。 また、第3工場と第4工場が渡り廊下でつながっており、あたかもひとつの工場のように見えたことも、巨大な生産施設であることを実感することにつながった。 第5工場は、まさに、第3工場、第4工場をあわせたものであり、これと同等規模のものが、隣接する場所に建設されることになる。 2009年には、月間175万台のプラズマパネルが、この地域で生産される計算だ。2005年に尼崎第3工場が稼働して以来、わずか4年でプラズマパネル生産の一大拠点が完成することになる。 □松下電器産業のホームページ ( 2008年2月6日 ) [Reported by 大河原克行]
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