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社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)と社団法人日本オーディオ協会(JAS)は、サラウンドの認知と普及を目的として5月1日を「サラウンドの日」として制定。23日に制定記念大会を開催した。大会では、サラウンドの日のシンボルマークが発表された。 全国から一般公募した69件の応募作品の中から、東京都在住のグラフィックデザイナー、鈴木知美さんの作品を最優秀作品に選定。シンボルマークは、水の波紋のように広がるサラウンド・サウンドを表現したもので、サラウンドの日の体感試聴会などの各種イベントで利用する。 サラウンドの日 体感試聴会については、期間などに変更はなく、4月24日~5月31日に、JEITA、JAS会員各社らのショールームなどの施設やキャラバン会場にて実施する。会場などの詳細については同社特設ページにて紹介されている。 また、NHKとタイアップして、渋谷のNHK放送センターにて「NHK 渋谷 DE ど~も'08 タイアップ サラウンド試聴会」を開催する。期間は5月3日~5月6日の4日間で、開催時間は10時~17時。「渋谷DEど~も」会場内に5.1chサラウンドブースを設置し、多くの家族連れにサラウンドを体験してもらうとしている。
■ デジタル放送のサラウンド番組利用者は16% サラウンド関連動向報告では、JASが立ち上げたサラウンドサウンド・ワーキンググループによる2007年7月実施のサラウンドに関する一般ユーザーアンケートの集計結果を発表した。Webによる無作為アンケート調査を実施し、有効回答数は1,000サンプル。 「サラウンド」という言葉を知っている人は632人で、知らない人が368人となった。サラウンドという言葉を知っている人のうち、サラウンド音声を実際に聴いたことがある人は509人。 サラウンドを聴いたことがある人のうち、映画で聴いた人が最も多く363人。次いでDVDなどが280人で、放送が最も少なく166名だった。聴いたことがある人で、サラウンド再生機器を所有している人は296名となっている。 そのほか、サラウンドを聴いたことがある人への、フロントサラウンド方式を知っているかの質問に対しては、223名が知っていたが、286名が知らなかったと回答。JASでは、「手軽に設置できるフロントサラウンド方式の認知度が高まることで、サラウンドの普及に繋がるのでは」と推測している。
デジタルテレビ放送を視聴したことがある人は635人で、見たことがない人が365人。デジタル放送を見た人のうち、デジタル放送のサラウンド番組を試聴したことがある人は163名で全体の16%となった。 デジタル放送を視聴したことがない、またはデジタル放送のサラウンド番組を視聴したことがない人の理由として、最も多かったのは「デジタルテレビを持っていない」が67%を占めた。そのほか、「視聴の仕方が判らない」が24%、「番組の情報がない」が16%と続く。これらの人にサラウンド放送をデジタルテレビで視聴したいかを質問すると77%が視聴したいと回答している。 こうしたアンケート結果から、JASではサラウンド普及のポイントとして「サラウンドコンテンツの充実」、「使いやすい、購入しやすい機器の提供」、「サラウンド体験の場の提供」を上げている。
■ サラウンド機器の問題点は解消済み 続いて、JEITAのサラウンドサウンド専門委員会の蔭山恵委員長より、サラウンド再生機器の現状と展望に関する講演が行なわれた。 「現在のサラウンド対応機器は非常に豊富で、最近では携帯電話に搭載するなど、あらゆるジャンルで見られるようになった」と対応機器の広がりを語った。 「これまでサラウンドと言えば、パッケージメディアが中心で、テレビなどの放送にはあまり縁がなかったが、基幹放送である地上デジタル放送が5.1chサラウンドに対応することで、聴取者の裾野が広がり、一気に普及する可能性が出てきた」という。 CEATEC 2007のサラウンド放送体験ルームのアンケート結果などを見ても、サラウンド音声の評価は高く、今後の機器導入意向も高い結果が出ているとしている。
ただし、機器導入における阻害要因も多く、アンケートで最も多かったのは「スピーカーなどの配線の見栄え」、次いで「スピーカーの設置スペースがない」などスピーカーの設置に関する問題。そのほか、「大きな音が出せない」、「商品知識がない」、「配線や操作が面倒」と続く。 蔭山氏は、こうした問題に対応する製品はすでに発売されているとし、各オーディオメーカーの製品例を紹介した。 スピーカーの設置に関する問題や、配線に関する問題に対しては、テレビメーカーが提供するHDMIリンク機能を備えるテレビと、ラック一体型オーディオシステムなどの事例を紹介。 設置スペースに関する問題や、商品知識がない人向けの事例としては、フロントスピーカーのみでサラウンド音声を体験できるフロントサラウンドスピーカー製品を紹介。そのほか、小型スピーカーシステムやレイアウトフリーのワイヤレスサラウンドスピーカーも向くとしている。また、大きな音が出せない人向けには、サラウンドヘッドフォンを提案した。 「いずれの問題に対しても解決するための製品が用意されている。そうなるとあとは、価格の問題とサラウンドの周知不足の解決が必要」とした。周知不足の解決策としては、今後も各イベント会場などで試聴会などを開催するなど、啓発活動を続けていくとしている。 2007年度のサラウンド機器の出荷実績は43万9,000台だったが、JEITAでは2008年度以降、薄型テレビの買換え需要とともに、サラウンド機器の需要も増加すると予測。2008年度予測は52万9,000台、2009年度は63万6,000台、2010年度は71万4,000台で、2011年度には80万3,000台と予測している。
■ NHKが放送したサラウンド番組は年間400本。今後の増加は困難 放送制作側として、NHKの放送技術局コンテンツ技術センター番組技術開発チーフエンジニアの深田晃氏が講演を行なった。 2007年にNHKが放送したサラウンド放送番組は400本で、放送時間は847.5時間。ジャンルは、ドキュメンタリー、ドラマ、音楽、スポーツ、映画。
2008年のサラウンド放送番組の予定についても決定しており、北京オリンピックは全種目5.1chサラウンド制作が決定しているほか、スポーツの生放送は出来る限りサラウンド放送とする予定。そのほか、スーパー大河ドラマが5本、映画5本、音楽番組などを含め、トータルの放送本数や時間数については、同等程度となる見込み。 深田氏は、今後のサラウンド番組の本数について「どんどん増えていくかと問われると、それは難しい」と回答し、「番組の制作予算や時間などに制限があるため、今以上に増やすのは難しい」と現状を語った。 現在のNHKの5.1chサラウンド制作の採択基準としては、「サラウンド化することがより効果的な音響になるような映像内容か」、「DVD化などの2次展開が保証されているか」、「生放送でかつダビングルーム使用によるリソース圧迫がないか」などを挙げた。 「番組のサラウンド制作は、技術面、コスト面などでのデメリットも多いが、サラウンド制作を行ないたいディレクターは現場にも多い。サラウンド音声では、現場感や感動などをよりリアルに伝えられるのが魅力。今後も積極的にチャレンジしていきたい」と語った。 ■ 地上デジタル放送とともに普及を期待
JEITAの町田勝彦会長の代理として登壇したシャープ取締役 千葉徹氏は、サラウンドの普及状況について「サラウンドの普及は、当初はスピーカーの置き場の問題などから、期待したほどの普及が進まなかった。しかし、最近では地上デジタル放送の普及率も上がり、一般ユーザにとって身近なテレビ番組でもサラウンドが楽しめるようになっている。また、メーカー側も容易に設置が可能なフロントサラウンド製品を発売するなど、環境は整いつつある」とした。 ただし、「薄型テレビの普及により、デジタル放送が楽しめる人は増加したが、サラウンドも含めて体験したことがある人はまだ少ないと感じる。より多くの人に如何に体験してもらうか、という点も考えて、今回サラウンドの日を制定した」という。 また、「デジタル放送はハイビジョン映像と、臨場感のあるサラウンドが大きな特徴。これら両方を体験することで、デジタル放送の素晴らしさが実感できる。そのためには、今後もサラウンド機器の普及に努めるとともに、サラウンドの認知度向上などに努めていきたい」と語った。
JASの鹿井信雄会長は、サラウンドの日制定について「2011年に控える地上デジタル放送への完全移行も考慮し、多くの人にサラウンドの理解を深めてもらえるように、普及推進のシンボルデーとして、5.1chにちなむ5月1日をサラウンドの日として制定することとした」とした。 具体的には、「現在もオーディオ協会では“音の日”を制定し、音を聞いてもらう機会を設けているが、これと同じ形で、サラウンドの日の前後の期間には、サラウンド体験会などを開いて、聞いてもらえるような機会を設けていく」とした。 そのほか「オーディオの世界というのは、音から情報を得るだけでなく、いかに心の感性に響くかという世界。サラウンドの普及には感動のあるコンテンツの拡充と、手頃で設置が容易な機器の双方が必要。ようするに音の持つ不思議な力“サウンドミスト”を体感することに尽きるのではないか」と語った。
□JEITAのホームページ ( 2008年4月23日 ) [AV Watch編集部/ike@impress.co.jp]
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