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日本テレビ放送網株式会社(日本テレビ)は、地上デジタル放送やワンセグなど、新しい放送に対する同社の取り組みや、最新の放送技術などを展示する「デジテク2008」を開幕した。業界向けの展示会となっており、会期は3月12日~14日まで。入場は無料。会場は東京・汐留の日テレタワー 2F。
■ デジタルテレビやワンセグ携帯でニコニコ動画的なサービスを実現
テレビやワンセグ対応携帯電話で、同じテレビ番組を観ながら、複数の人と文字によるコミュニケーションがとれるシステムの開発が進められている。PC用動画投稿サイト「ニコニコ動画」のようなサービスを通信機能を持ったデジタルテレビとワンセグ携帯で実現するもので、ARIBのデータ放送標準規格内で実現しているため、既存のデジタルテレビとワンセグ携帯で利用できるのが特徴。
サービス用のリンクサーバーが用意され、デジタルテレビの場合はB-CASカードの情報とメールアドレスを登録。ワンセグ対応携帯電話の場合も同サーバーへあらかじめメールアドレスなどを登録しておく。その上で、携帯のアドレス帳から、文字チャットルームへ招待したい友人などを選択。既に相手がワンセグ/デジタル放送を見ながらリンクサーバーに接続している場合は、リンクサーバーからその情報が通信経由で送信され、映像の下部に「太郎さん:視聴中」、「花子さん:視聴中」などの状態が表示される。
後は通常のチャットのように文字を打ち込むと、視聴中の全員の画面に表示され、その番組に対してのコメントなどで盛り上がれるという。テレビの場合もデータ放送画面から「個人でログイン」を選択すると、リンクサーバと接続され、他のメンバーのログイン状況やチャットメッセージが受け取れる。なお、招待した際に相手がワンセグ/デジタル放送を視聴していない場合は、視聴を促すメールを自動で送信することもできるという。
携帯電話やテレビのリモコンでチャットを行なうのはストレスがあるが、放送局がサービスを実施する強みを活かし、EPGの番組情報や番組メタデータとの連係も予定。番組の登場人物や番組内容を手軽にチャット欄にコピー&ペーストする仕組みを開発することで、入力の手間を低減できるという。具体的なサービス開始時期は未定だが、「データ放送画面の滞在時間を長くできるため、その部分に広告バナーを表示するなど、新規ビジネス展開も見込める」という。
■ 違法動画の投稿を効率的に削除するツール 利用者が増加する一方、著作権を侵害する動画のアップロードが問題となっている動画投稿サイト。コンテンツホルダによる違法動画のチェック&削除依頼にも手間がかかるため、角川GHDホールディングスがGoogleなどと協力し、違法動画の自動識別技術を開発するなど、動きが活発化している。そんな中、読売テレビが開発したのが「とりし丸」という違法動画のチェック&削除依頼を効率よく行なうソフトウェア。 検索ワードを入力すると、YouTubeやニコニコ動画、GUBA、TVbreakなど、チェックを付けた動画投稿サイトに対して検索を行ない、ヒットした動画をサムネイルで最大1,000件一覧表示。担当者が目視で違反していると思われる動画のサムネイルをクリックすると、通常のブラウザ画面で動画が再生され、中身がチェックできる。違法な動画だとわかったものはサムネイルにチェックを付け、最後に「メール作成」ボタンを押すだけで、チェックした違法動画の全URLと、削除を依頼する定型文が書かれた削除依頼メールが作成されるというもの。 従来は通常のブラウザで検索&チェックを行ない、メールソフトにそのアドレスを1つずつコピー&ペーストする手間がかかっていたが、同ツールの開発により、短時間で大量の違法動画に対する削除依頼ができるようになったという。「アップロードしている人は1人で何個も行なっている場合が多いので、アップロードしてもすぐに消されると“読売テレビのコンテンツはダメだ”と思うようになり、結果として違法コンテンツ自体は激減している。今後はNHKなど、他のテレビ局やハリウッドのコンテンツホルダなどにも、このツールを紹介していきたい」という。
■ ワンセグのEPGを1週間分送信 11日に発表された、ワンセグ放送のEPGを、従来の10番組分のデータから、1週間分(8日分)送信できるようになる技術のデモが行なわれている。詳しくは既報の通りだが、現在放送されているワンセグでは、EPGの情報量がARIB(社団法人電波産業会)の規定で10番組分に限られている。そのため、ワンセグ対応携帯電話では、EPGアプリを使い、通信経由でEPG情報を取得している。 日テレがACCESSと共同開発しているのは、信号処理の基準となる時刻情報(PCR)パケット内の空き領域を使って、1週間分のEPGデータを放送で送信するもの。空き領域を使っているため、ワンセグの映像や音声などのビットレートに影響を与えないのが特徴。受信には、PCRパケット内のEPGデータの受信に対応した新たな受信ソフトの開発が必要になるが、既存のワンセグ対応機器でEPG情報込みの放送を受信しても、そのデータ部分は無視し、動作には影響が無いという。1週間分のEPGデータ(約2万バイト)は、約30秒で受信が可能。
「ワンセグ独自の放送を開始する場合には、EPGデータの充実は必須。また、EPGデータの送信は1例で、技術としては“PCRパケット内の空き領域の活用”が重要。データ放送を使ったクーポン券の配信などが一般的になった場合、従来のデータ放送領域だけを使う場合と比べ、より高速にこれらのデータを送信できるようになる。通信機能を持たないカーナビやポータブルオーディオなどでもEPGやクーポンなどを受信できるため、サービスの幅も広がる」としている。今後はARIBでの標準化に向けた働きかけを行なっていくという。
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■ 携帯電話をコンテンツ視聴の鍵に 日テレがフェイス、NTTスマートコネクトと共同で開発している、携帯電話を鍵として活用するVODサービスのデモも行なわれた。「その番組を観た人だけが再生できる特典映像」を実現できるもので、視聴者がワンセグ放送を携帯電話(おサイフケータイ対応)で視聴すると、特典として用意されたVODコンテンツの視聴権利情報が携帯電話に自動的に保存される。 視聴者はその情報を使って認証を行ない、通信を経由して、VODコンテンツを携帯電話でストリーミング視聴できる。さらに、その携帯電話をPCに接続したFeliCaポートにかざすことで、視聴権利情報をPC向けのVODサービスでも使用。前述の携帯向け特典コンテンツのハイビジョン画質版を、携帯電話をかざすことでPCで再生できるようになる。視聴権利管理にはフェイスの「NFRM」を使用している。
サービス開始時期は未定だが、今後ソリューションとして各社へ提案していく。iアプリを使っているため、NTTドコモ以外への対応は未定。PCにFeliCaポートが付いていないと利用できないという制約はあるが、「将来的にはFeliCaポートを内蔵したテレビが増加してくれると、PCレスで携帯電話をコンテンツ視聴の鍵として使えるようになる」という。 また、ワンセグのデータ放送でクーポンを送信する実験も進められている。2007年9月に実施されたのは、日本コカ・コーラと日テレが共同で行なったもので、缶コーヒーのGEORGIA新製品が1本無料でもらえるクーポンを放送で配信。クーポンから専用サイトにアクセスし、携帯電話1台につき引き換え用のQRコードが生成される。その携帯を対応する自動販売機にかざすと、缶コーヒーが受け取れるというもの。 現在はワンセグのデータ放送欄でクーポンを受信したことをアナウンスしているが、4月以降はワンセグを全画面表示していても、クーポン取得をアイコンで知らせる機能を提供予定(NTTドコモ905iTV以降の機種で対応)。また、トルカ機能とクーポンを連携させることで、クーポンを取得した携帯電話を店舗のレジシステムにかざすと、割引されるというシステムも実現可能。「番組を観た人だけ100円引き」などの販促サービスを、より厳密かつ、店舗側に負担をかけずに行なえるという。
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■ データ放送の伝送量をVBRでアップ
データ放送を活用したサービスの提案が行なわれる一方、そのデータ放送をより快適に受信するための技術も紹介されている。ワンセグのデータ放送にVBR装置を導入するもので、限られたワンセグ帯域(約416kbps)のうち、Nullパケット(何のデータも含まれていないパケット)となっていた約5%の帯域を、新たにデータ放送に割り当てられるという。 ワンセグの映像/音声はCBRでエンコードされているが、映像に大きな動きが無い場面などでは帯域に空きが発生し、Nullパケットになっている。この映像/音声データと、データ放送の情報を多重化する段階で、そのNullパケットを検知。データ放送の処理段に新たに追加したVBR装置に空き帯域の情報を通知することで、その部分をデータ放送に追加。伝送容量のアップを実現している。
映像/音声データに変更は無いため、画質の劣化などは無く、アップした伝送容量幅もデータ放送の規定を超えるものではないため、既存のワンセグ対応機器でも、VBR装置導入後の放送は問題なく受信できるという。データ放送画面表示速度の高速化などが期待でき、「1秒とは言わないが、スピードアップは体感できるレベル」だという。実験は既に行なわれており、放送でも順次採用していきたいという。
■ 読むワンセグ
「読むワンセグ」は、シャープが開発している新しいワンセグ受信ソフトで、通常は2~4行が表示され、すぐに消えてしまうワンセグの字幕表示をログとして残して表示できるというもの。画面の右側に字幕ログが表示され、新しいものが下から順次追加される。表示行数やフォントサイズはカスタマイズ可能。
屋外の移動時にニュース番組などを視聴する場合は、イヤフォンを付けなくても、字幕だけでニュースの内容が把握できるのはワンセグの利点だが、ログを残すことで見逃しても後で“まとめ読み”できるという、新しい番組の楽しみ方を提案している。放送自体に変更を加える必要が無く、受信ソフトだけで実現できるのも特徴。今後は保存するログの量などを詰めていくという。
■ その他 会場ではほかにも、地上デジタル放送の家庭内再送信を実現する小型ギャップフィラーシステムを参考展示。コンセントに刺すことで、電力線をアンテナとして使用し、受信した地上デジタル放送波を、コンセントから2~3m程度の範囲へ再送信。室内アンテナなどで受信し、テレビを表示するという。イメージ展示となっており、デモ機は実働していない。
また、既報の通り、在京民放キー局4社と電通、博報堂DYホールディングスが実施している、ワンセグのデータ放送を利用した広告運用実験も紹介された。データ放送表示部分の上部に、解像度などの規格を統一した広告用のバナースペース(試験では240×32ドット)を試験的に設置。規格を統一することで、広告素材の受け渡しの効率化や、広告価値の向上についての研究を進めるという。 しかし、ワンセグ対応携帯では、ディスプレイを横向きにし、映像を全画面表示にして視聴するスタイルが人気を集めているため広告枠そのものが表示されないパターンも多い。「縦向きの画面で観てもらうためにも、データ放送の価値を向上させる必要もある。今後の端末の進化の方向も含め、具体的な広告運用開始時期は未定」だという。
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(2008年3月13日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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