世界最小で“しゃべる”新iPod shuffleを試す

-驚きの小ささと、普通に“使える”音声ナビ


3月11日発売

AppleStore価格:8,800円


 

ブラックとシルバーの2色を用意する
  13日よりAppleStoreの店頭でも販売開始された新iPod shuffle。shuffleとしては第3世代となるが、横長のデザインだった第2世代から一新し、本体からシャッフル兼用の電源スイッチ以外の操作部を廃した縦長のデザインとなった。 外形寸法は45.2×17.5×7.8mm(縦×横×厚さ/クリップ含む)と従来モデル(同27.3×41.2×10.5mm)から大幅に小型化し、重量は10.7g。内蔵メモリも従来の1GBから4GBまで拡張されている。Appleでは「単3電池よりもずっと小さく、最大1,000曲の楽曲を保存できる。世界最小のミュージックプレーヤー」と、小ささを強調している。

 小型化とともに操作ボタンを廃し、ほぼすべての再生操作を専用イヤフォンに備えたリモコンで行なうという新インターフェイスも採用。そこで注目されるのが、新搭載の「ボイスオーバー(VoiceOver)」機能だ。これは、iPod shuffleが読み上げる曲のタイトルやアーティスト名、プレイリスト名を聞きながら、リモコンから操作を行なうものだ。この新しい音声ガイドインタフェースがiPod shuffleの基本操作モードとなる。この使い勝手も気になるところだ。

 13日から販売開始されたiPod shuffleを早速購入し、試用した。ボディカラーはシルバーとブラックの2色を用意しているが、今回はシルバーを選択した。AppleStore価格は8,800円。



 ■ 世界最小ボディにあわせて、パッケージも小型化。イヤフォンに注意

パッケージも小型。単三電池×4本のケース程度だ同梱品。USB-ステレオミニのパソコン接続ケーブルなど

 小型ボディが特徴といえるiPod shuffleだが、パッケージも小さい。片手に十分に収まるサイズだ。中には本体のほか、リモコン機能付きのイヤフォン「Apple Earphones with Remote」と、USB-3.5mmミニプラグのUSB接続ケーブル、ユーザーガイドを納めている。

 ボディデザインは文字通り一新といった感じで、従来モデルと比べるとまったくイメージが異なっている。音楽プレーヤーというよりはUSBメモリという印象だが、背面のクリップ部に刻印されたAppleロゴや丁寧な仕上げでチープさは感じない。

 45.2×17.5×7.8mmという、板ガムより小さくやや厚いぐらいのサイズのなかにオーディオプレーヤー機能が集約されているというのは、CDやMDの時代から考えると隔世の感があるが、第3世代iPod shuffleでは操作ボタンの割り切りもすごい。本体上部に「電源OFF」、「シャッフル再生」、「曲順送り再生」を切り替えるスイッチと、同期/ヘッドフォン出力用のステレオミニ端子を装備するのみ。その他の操作はすべて付属イヤフォンのケーブル部にあるリモコンで行なう。


ボタンの全くないシンプルなボディ側面。クリップ部を含めて厚みは7.8mmヘッドフォン/PC接続用のミニジャックと電源スイッチのみを備えている
背面のクリップにAppleのロゴクリップ部で服などに留められる付属イヤフォンの「Apple Earphones with Remote」

 

In-Ear Hearphones with Remote and Micも利用できた

 逆にいえば、通常のイヤフォンを利用した場合は、再生開始とシャッフル/順送り再生モードの切替以外はなにも行なえないこととなる。最近はiPhoneで利用するために、マイクやコントローラを備えたサードパーティ製イヤフォンも発売されているが、これらが利用できるかどうかは現時点ではわからない。

 この点から、イヤフォンをいろいろ変えて楽しみたい、という人には新shuffleは、全くお勧めできないプレーヤーだ。とはいえ、iPhone対応イヤフォンが続々と各社から発売されているように、今後これらの機能に対応したイヤフォンが出てくる可能性は高いと思われる。

 なお、Appleのカナル型イヤフォン「In-Ear Headphones with Remote and Mic」は、編集部で試した限りでは問題なく利用できた。ソニーのイヤフォン「MDR-EX500SL」を挿したところ、とりあえず電源スイッチのON/OFFで音楽の再生はできたが、ボリュームやスキップなどの操作はもちろんできなかった。


iPod nanoと比較USBメモリとサイズ比較

 
■ シンプルな操作系。日本語は微妙だが普通に使える「VoiceOver」

 

iTunes 8.1
 第3世代iPod shuffleへの楽曲転送のためには、12日より公開されたiTunes 8.1が必要となる。iTunes 8.1では、レスポンスの向上が図られたほか、iTunes DJ(旧パーティシャッフル)の機能改善などが図られている。対応OSはWindows XP/VistaとMac OS X v10.4.10以降。

 iPod shuffleとパソコンの接続は付属のステレオミニ-USBケーブルを利用する。複数の個所で利用する場合は、このケーブルをなくさないように注意したい。iTunesとの最初の接続時にshuffleの基本設定画面とともに、「VoiceOverを有効にする」というチェックボックスが現れる。ここをONにするとVoiceOver KitがiTunesに組み込まれ、VoiceOver機能を利用可能になるという。今回約3.44GBの楽曲を転送したところ、約27分で転送が完了した(CPU Intel Core 2 Duo 2.66GHz、メモリ4GB、Windows Vista 64bitのノートPC)。

付属のケーブルでiPod shuffleとパソコンを接続iTunes 8.1にを接続するとVoiceOver有効のチェックボックスが現れるVoiceOver Kitをダウンロードし、iTunesに組み込む

 

本体の操作手段は、電源/再生モード切替スイッチのみ
 前述の通り、スイッチで電源を投入し、再生モードをシャッフル/順送りのいずれかを選択する以外の操作は本体ではできない。再生/一時停止やボリューム、曲スキップ/バックのいずれも操作もイヤフォンケーブルに備えたコントローラで行なう。

 このリモコン部には、ボリューム操作につかう上下ボタンと中央ボタンを用意している。中央ボタン1回クリックで再生/一時停止、2回で次の曲を再生、3回クリックで前の曲を再生となる。さらに、リモコン中央のボタンを長押しすると、ボイスオーバーで曲名とアーティスト名を案内。そのまま押し続けると、転送されているプレイリストを読み上げてくれる。

 気になる操作性だが、慣れてしまえばすぐに使えるようになる。最初はスキップのつもりで停止してしまうといったことがあるが、基本的なボリューム、曲送り/戻し、再生/停止操作にはすぐに慣れることができた。早送り/戻しについてはマニュアルには記載がないが、2回クリックの2回目を長押しすることで早送りになった。同様に早戻しは3回クリックの3回目の長押しとなっている。この早送り/戻しは少々難しく、誤って曲スキップ/バックしてしまうこともあった。

 ただ、個人的にはコントローラの位置がかなり上のほうに固定されているのが気になった。右ユニットから10cm程度の位置に備えているのだが、オーディオプレーヤーとして使う分には、胸元あたりにコントローラがくる位置につけてほしいと感じた。通話を考えるとこの位置なのかもしれないが、スライダーなどで調節もできないので、操作よりこの位置に馴染むほうが難しい。

クリップでシャツなどに留められるコントローラの位置が上過ぎるようにも感じる

 VoiceOverは、14カ国語に対応。基本的に取り込んだ楽曲の言語はタグ情報を元に自動認識されているようだ。Appleでは、英語の場合はMac OS X Leopardのほうがより優れた読み上げが可能としているが、今回はWindows環境でテストした。

 VoiceOverを使うのはまずは楽曲/アーティスト名の読み上げだ。楽曲再生中に中央ボタンを長押しすると楽曲/アーティスト名を読み上げてくれる。

 英語楽曲の場合は、非常に流暢に読み上げてくれる。分節の切り方に若干違和感を感じることもあるが、ほぼ正しく読み上げてくれるので、何の曲かわからないということはほとんどない。

 ただし、邦楽については、分節の区切りがおかしい、正しく漢字を読めない、発音がおかしい、などの楽曲が結構ある。たとえば、CDから取り込んだPerfumeの「ポリリズム」は、平板に“ポリリズム”と読み上げた後、“パーフメ”と発音するので思わず笑ってしまった。

 日本語楽曲については、基本的に抑揚なく平板に、“ロボット喋ってます”風に読み上げてしまうので、何を聞いても違和感が残る。また、分節もおかしく、“みあげてごらん夜の星を”が“みあげて、ごらん夜の星を”と発音してしまう。ちなみに“一青窈”は“いちせいせつ”、“初戀(はつこい)”を“はつれん”、“てぃーんずぶるーす”は、“ていんずぶるーす”といったように読み上げていた。とはいえ、慣れれば何を言っているかはわかるので実用上は大きな問題はなし。というか、上記の例のように「これは読めるのか?」的な興味が出てきて、意外と楽しめた。

 難しい漢字などを間違えるのは愛嬌があるが、違和感を感じるのは、邦楽で曲名が英語の時。英語では流暢に発音できるのに、アーティスト名が日本語だと、日本語風に読み上げてしまう。そのため、宇多田ヒカル「Be My Last」を“びーまいらすと”と無理やり平板にしたように表現する。

 

VoiceOverの言語設定は楽曲ごとに指定できる

 なお、VoiceOverの言語設定は楽曲やアルバム、アーテイスト単位で変更できるので、言語認識の誤りが気になる場合は修正も可能だ。たとえば、CD(日本盤)から取り込んだテレサ・テンの「何日君再来」を自動にしておくと、“なんにちきみさいらい”と日本語風に発音するが、これを楽曲プロパティのVoiceOver設定画面で「中国語(北京語)」に変更すると、中国語風に“ホーリィチュンツァイライ”というように読み上げてくれた。中国語がわからないので何とも言えないが、それ風には聞こえる。

 前述の”パーフメ”も、VoiceOverの設定を英語にすると流暢に読み上げてくれた。ただし、カタカナの”ポリリズム”のほうはきちんと発音してくれない。いずれにしろ、英語楽曲の場合、ここで設定を変えるとさまざまな言語で同じ楽曲を読み上げてくれるので、いろいろ試すのも面白い。

 VoiceOverの採用によりiPod shuffleでは初めてプレイリストに対応したのもトピックだ。中央ボタンを長押しすると楽曲/アーティストを読み上げるが、さらに押し続けると、転送されているプレイリストを読み上げてくれる。ここで任意のプレイリストを読み上げた時に、任意のプレイリストを読み上げたところでクリックすると、そのプレイリストに移行できる。たくさんプレイリストを転送していると都度読み上げるのでやや待たされてしまうが、基本的な使い勝手はいい。

 音質も良好で不満はない。いくつかのライブアルバムなどを再生したところ、ギャップレス再生も行なえているようだ。対応フォーマットはMP3(16~320Kbps)、AAC(16~320Kbps)、WAV、AIFF、Audibleに加え、Apple Losslessも新たにサポートしている。

 連続再生時間は約10時間で、従来モデルより約2時間短縮された。操作部がリモコンになったこともあり、電源の切り忘れには注意したい。なお、電源スイッチをすぐにON/OFFするとVoiceOverでバッテリ状態を75%、50%などと通知してくれる。スイッチ脇のインジケータの色でも電池残量を確認できる。


 ■ 使って楽しいエントリーiPod

 新iPod shuffleの魅力は、やはりVoiceOverによる音声ナビゲーションの導入によりボタンを省き、大幅に小型化したことだろう。さらにVoiceOverとコントローラで本体内の楽曲制御もある程度可能になったため、4GBに拡大したメモリ容量をある程度使いこなしやすくなったことも大きなポイントだ。

 個人的には非常に魅力的なモデルチェンジと感じたが、一方でイヤフォンを変えることができないのは残念。サードパーティから魅力的な対応イヤフォンが発売されることを期待したい。

 また、一点気になるのが、この操作体系が多くの人に受け入れられるのか、ということ。shuffleはiPodシリーズの入門機で、ユーザーもこうした製品にさほど詳しくない人が多い。リモコンでしか操作できず、VoiceOverのナビゲーションという使い方がどこまで浸透するか、にも注目したい。

 とはいえ、製品の仕上げや新しい操作方法の提案など、随所にiPodらしさ、Appleらしさが感じられる魅力的な製品だ。4GBで8,800円という価格も、かつてのように驚くような安さではないが、マニアックなユーザーでも楽しみながら使える製品になっている。

【2006年9月13日】アップル、世界最小のプレーヤー「新iPod shuffle」
-1GB内蔵で9,800円。アルミ筐体を採用
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060913/apple3.htm
【2005年1月12日】アップル、シリコンメモリ採用の小型「iPod shuffle」
-512MBが10,980円、1GBが16,980円。USB端子を一体化
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050112/apple1.htm

(2009年 3月 13日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]