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ソニー、「ラストワンインチ」で次の成長を。平井社長が新PS4に言及。愛着ロボ開発へ

 ソニーは29日、経営方針説明会を開催。平井一夫社長は、15~17年度までの3年間を利益を創出と成長投資への「ギアチェンジ」の時期と位置づけ、株主資本利益率(ROE)を重視し、2017年度にグループ連結でROE 10%以上、営業利益5,000億円以上の達成を目指すことを強調した。

ソニー平井一夫社長

'17年度営業利益5,000億円をエレキが支える

 平井社長は、営業利益2,942億円、純利益1,478億円となった'15年度を振り返り、「'15年度は総じて良い結果になった。差異化と収益性を重視する姿勢がグループに浸透し、ソニーは再び成長に向けた歩みを進めている」と説明。「しかし、外部環境は常に変化しており、常に変化に対応していく」とし、熊本地震の影響と、その復旧が進み、8月末には熊本テックがフル稼働することを説明した。2016年度の連結業績見通しは、営業利益3,000億円、純利益800億円。

2017年度の経営数値目標

 また、'17年度の営業利益5,000億円という目標については、「ソニーとしては1997年の1度しか達成したことがない、大変チャレンジな目標。しかし、高収益企業への変革の重要なマイルストーン」とし、その達成を目指す。

2017年度の経営数値目標
'17年度にソニー史上2度目の営業利益5,000億円を狙う

 営業利益5,000億円を支えるのが、主要事業のエレクトロニクス。'15年度は、10年赤字が続いていたテレビや、前期に大幅な損失を出したモバイルコミュニケーションが黒字化。「'16年度はエレクトロニクスの全ての主要事業が黒字化する。徹底的に品質にこだわり、最適なマーケティング施策という基本動作の結果。2012年の就任以来、エレクトロニクスの復活には『商品力強化と差異化が不可欠』と言ってきた。BRAVIAやα、プレイステーション、ウォークマンなどのブランド商品が受け入れられ、それが営業利益5,000億円を下支えする」とした。

課題事業が改善
コンシューマエレクトロニクス復活

PS4やPS VRなどゲーム拡大。VRはグループで注力

 来季の2017年度に大きな伸びを見込むのが、ゲーム&ネットワークサービス事業。売上高は1兆8,000~9,000億円と、当初予測から約3~4,000億円上積みされ、営業利益率も5~6%から8~10%に上方修正された。

G&NS事業が大幅拡大

 平井社長は「'17年度の目標を上方修正したが、それが達成されると過去最高の実績になる。ディスクではなく、ネットワークサービスが軸になることで、ユーザー接点が広がっており、これを維持することでプラットフォームを強固にする。また、新しい、改良されたPS4でハードウェアの魅力もさらにアップしていく」と述べ、ハイエンド版PS4の投入を明言した。

 累計販売台数4,000万台を超えたPS4とともに、会員サービスの「PlayStation Plus」が伸長。ネットワークサービスの'15年の売上は前年比で約5割伸びるなど拡大が続いているという。このような会員基盤を活かし、定期的に収益を得ていくリカーリング型のビジネスを追求し、安定した事業基盤を確立するという。

 またPlayStation VRも10月に日本や北米、欧州、アジアで発売する。「チャレンジだが大きく育てていきたい。まずはゲームでVRに参入するが、カメラ技術や、コンテンツ製作力などソニーの資産が活かせる領域で、ノンゲームの領域でもアドバンテージがある。プレイステーションだけでなく、ソニーグループへ広げていく可能性もある」と、VRに力を入れていく方針を示した。

PlayStation VRに注力

 R&Dプラットフォーム担当の鈴木智行副社長は、「VRでは、360度の多視点映像を見ることになる。PS VRだけでなく、大画面型やドームなどでも展開できる。撮影から、信号処理、データ転送まで様々な事業領域がある」とした。

 音楽・映画においては、ストリーミングサービスの伸長と、それに伴うコンテンツ消費スタイルの変化に合わせた事業体制を構築。近年ソニーの事業に安定的な収益をもたらしてきた、デバイス分野においては、「スマートフォンの市場成長が止まり、その影響でイメージセンサーは大幅な下方修正を行なったことは反省点。大きな資本を投入しており、重く受け止めている。しかし、中長期ではまだ伸びる領域は残されており、例えば自社でも力を入れている監視カメラや、FA、ドローン/IoTなどでの採用を目指す。また、車載にも力を入れていく」とした。

「ラストワンインチ」がソニーの強み。愛着もてるロボットも開発

 就任以来掲げている「ユーザーに感動をもたらし、人々の心を刺激する会社であり続ける」というミッションに変更はなし。新たな感動体験を創出する企業として、エレクトロニクス、エンタテイメント、金融を中核に事業展開する。

ソニーのミッション。「ユーザーに感動をもたらし、人々の心を刺激する会社であり続ける」

 今後のテーマとして掲げるのが「ラストワンインチ(Last One Inch)」。平井社長は「『クラウド化が進み、ハードウェアはコモディティになる』、『全ての価値はクラウドに移る』という意見がある。クラウドは確かに重要。しかしお客様の接点となるハードウェアの重要性も変わらない。その接点に近く、お客様の感性に訴える製品を作ることにソニーの強みがある」と語り、感性に訴える、感動を追求する製品づくりにこだわる姿勢を強調。得意領域の映像、音響、センサー、メカトロ、AI、ロボット、通信などと組み合わせ、「住空間だけでなく都市空間、生活空間のすべてのラストワンインチで新しい提案を行なっていく」とアピールした。

「ラストワンインチ」がこれからのテーマに

 具体的な将来施策としては、ZMPとの合弁企業であるエアロセンスによるドローンを用いた産業用ソリューションやXperia スマートプロダクトに加え、「顧客との心のつながりを持ち、育てる喜びや愛情の対象になりうるようなロボット」の開発にも着手。'16年4月に、ロボットの事業化に向けた組織を立ち上げた。将来的には、製造工程や物流などを含めた、広範囲な領域でのロボティクス、AI関連の事業展開も検討するという。

AI×ロボティクスで、愛情対象になるようなロボットを開発

 また、開発スピード加速のために、外部研究者やベンチャー企業との協業を推進。コーポレートベンチャーキャピタル「Sony Innovation Fund」を'16年7月に設立。ソニーの戦略的重要性に応じ、アドバイザーやインキュベータを参画させ、投資先の事業成長をサポートし、将来を担うソニーの人材育成にもつなげるとしている。