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平井ソニー第2期はデバイス/ゲーム/映画/音楽で成長へ
Xperiaやテレビは「事業変動リスクコントロール」
(2015/2/18 15:23)
ソニーは18日、2015-2017年度の中期経営計画を策定し、収益重視の経営や各事業ユニットの自立などを掲げ、株主資本利益率(ROE)を重視した経営に取り組む姿勢を表明。2017年度にグループ連結で、ROE 10%以上、営業利益5,000億円以上の達成を目標とし、「高収益企業へ変革する」としている。
あわせて、事業ごとの結果、説明責任の明確化や意思決定の迅速化を図るため、各事業の分社化を進める方針も打ち出した。その第1弾として、ウォークマンなどのオーディオ製品やブルーレイ関連製品などを手がけるビデオ&サウンド事業を2015年10月1日を目処に分社化することも発表した。ビデオ&サウンド事業以外の事業体においても、分社化に向けた準備を進めていく。
なお、4月1日付けで吉田憲一郎 代表執行役 EVP CFOが代表取締役 副社長 兼 CFOに就任するほか、デバイスソリューション事業担当の執行役EVP 鈴木智行氏も執行役副社長に就任する人事を発表。テレビ事業を担当するソニービジュアルプロダクツの代表取締役社長の今村昌志氏は退任し、本社の執行役EVP 生産・物流・調達・品質/環境プラットフォーム担当に就任。ソニービジュアルプロダクツの後任社長は、現執行役員SVPで、ビデオ&サウンド事業本部長の高木一郎氏が就任し、ホームエンタテインメント&サウンド事業と、コンシューマーAV販売プラットフォームとともに、テレビ事業を統括する。
第1期平井体制「エレクトロニクス再生」の評価は?
ソニー平井一夫CEOは、2012年度から2014年度までの中期計画について「第1次計画」と定義。第1期の最終年度となる2014年度は、売上高8兆円、営業利益率0.3%、ROEは-7.4%という成績で、「営業利益はかろうじて黒字だが、最終損益は1,700億円の赤字。目標(売上高8兆5,000億円、営業利益率5%以上、ROE 10%)には遠く及ばない結果で、配当も無配となった。株主の皆様にお詫び申し上げる」と切り出した。
平井体制第1次計画で取り組んだのは「エレクトロニクスの再生」。業績が未達となる理由は、「さまざまな要因があるものの、事業環境、競争環境に対する認識と変化の対応が甘かった。各事業において売上規模の拡大に解を求める楽観的な事業計画になっていなかったか? 適切な経営指標を設定したか? コスト削減の取り組みは充分だったか? 反省点がある」と総括。14年度には「強い危機感と、より抜本的な変革につながる改革に着手し、構造改革をやりきるを最優先した。大きな決断として、PC事業の撤退、テレビの分社化を実行した。本社30%や販売会社20%のコスト削減に取り組んでおり、来年度に実現できる見込み。組織数やレイヤー削減により、意思決定の速度も上げて、小さな本社の効果も実感している。モバイル事業については、1年遅れとなったが、構造改革を2015年度中に実施し、2016年度から着実な収益性向上を目指す。モバイル以外の事業については、大型の構造改革に一定の目処が付いた。しかし、エレクトロニクス事業の競争環境は一層厳しくなると見ている。事業の規模や環境変化を睨んで、常にコスト水準、収益構造の見直しを行なっていく」とし、エレクトロニクス事業に対する厳しい状況認識を示した。
事業ポートフォリオの変革については、「PCに加えて、グループ売上高の約10%の事業を終息、譲渡したことになった。一方、イメージセンサー投資や、Gaikaiの買収、オリンパスとの合弁会社設立など、強化するところは積極投資を行ない、成長に向けた基盤づくりを続けている」と説明。「ソニーの本質である商品力強化においては、ユニークな顧客価値を提供することで、厳しい競争環境を勝ち抜くことができると考え、地道な取り組みを続けている。PlayStation 4、CMOSイメージセンサー、ミラーレス一眼、4K、ハイレゾオーディオ商品群の例に代表されるように、高付加価値モデルへのシフトを進めており、収益面でも成果が出始めていると実感している。2015年度以降も商品力強化を続けていく」とした。
デバイス、ゲーム、音楽/映画を強化。Spotify提携は強みを活かす
2015-17年の中期経営計画で掲げる高収益企業への変革の取り組みとして、平井CEOは「一律には規模を追わない収益重視の経営」、「各事業ユニットの自立、株主視点の重視」、「各事業の位置づけの明確化」の3点を新中期経営計画の要とし、ROE重視経営への変革に着手。
そのため、事業ポートフォリオを、重点強化する「成長牽引領域」、成長はそこそこでも安定して利益を生む「安定収益領域」、リスクを低減しながら収益最優先で運営する「事業変動リスクコントロール領域」の3つに分類。成長領域に積極投資する一方、リスク領域では、事業売却も否定せず収益を最優先させる事業運営を行なう。
成長牽引領域としては、デバイス分野、ゲーム&ネットワークサービス分野、映画分野、音楽分野を、2015年度から3年間ソニーの利益成長を牽引すると位置づけ、重点的に資本投下。利益の拡大を図る。
デバイス分野はCMOSイメージセンサー増産に向けて集中的に投資、ゲーム&ネットワークサービスでは、プレイステーションプラットフォームやPlayStation Network(PSN)の顧客拡大に注力する。
映画分野においては、メディアネットワーク事業における視聴率向上や放送チャンネル拡充による視聴者拡大を目指すほか、テレビ番組制作事業の強化などに取り組む。
音楽分野においては、ストリーミング市場に注力する。自社で運営していた定額制音楽配信サービス「Music Unlimited」を3月を持って終息し、最大手のSpotifyと提携した新サービス「PlayStation Music」に移行する方針(日本での対応は未定)だが、平井CEOは、「Spotifyの提携は、我々のコアコンピテンシーはどこかを考えての決断。会員数やカタログの充実などは自信を持っていたが、サービスとしてのコアコンピテンシーとして、お互いが組むことで、強いところをさらに強くできるのではないかと考えた」と説明した。
ビデオ&サウンドの分社化は「自然な流れ」
安定収益領域として、イメージングプロダクツ&ソリューション分野や、ビデオ&サウンド分野を位置づけ。「市場成長は見込めないが、コモディティ化はしない」として、ミラーレス一眼や、ハイレゾオーディオに注力する。両分野においては、大規模な投資は行なわないが、「既存のアセットを活用し、着実な利益計上やキャッシュフロー創出を目指す」としており。売上は横ばい、利益微増といった事業環境を想定している。
なお、ビデオ&サウンド分野については、既報の通り、10月の分社化を決定。これは、結果責任の明確化や、事業スピードの向上を目指したものだが、ビデオ&サウンド分野以外の事業においても分社化を推進していく。
平井CEOは、「分社化は手段で万能薬ではない」としながらも、「株主、投資家視点をもって、結果/説明責任を明確化していく。どのように事業を伸ばしていくか、危機感を持って経営するか、本社に頼ること無く、自分たちで自立して取り組むことでより事業として強くなっていくことを希望している」と分社化の意義を説明した。
まず、ビデオ&サウンド分野(V&S)がその対象となったのは、「元々('14年7月にはテレビ事業を分社化した)ホームエンターテイメント&サウンドの中に、V&Sが合ったことで自然な流れ。また、ソニービジュアルプロダクツやコンシューマ販売とともに高木(現ビデオ&サウンド事業本部長の高木一郎氏)が担当するのでその意味でも自然」と説明した。また、人材登用についても、「他流試合経験を持つ人材を積極的に起用し、世代交代を加速する」とした。
テレビとモバイルは他社提携も選択肢に。カメラはリカーリング型ビジネス?
テレビ事業とモバイルについては、「事業変動リスクコントロール領域」と定義。事業の変動性や競争の厳しさを勘案し、リスク低減と利益優先の経営に取り組む。「いずれの事業も価格競争が激しく、さらなるコモディティ化が進むと予想されるが、市場規模が大きく、ソニーが得意なデバイスや技術で差異化が図れる領域でもある。戦う市場や領域を絞り、投下資本を小さく抑え、売上規模を下げてでも安定的に黒字が確保できる事業構造を創出する」と説明。
テレビおよびモバイル事業においては、投下資本を減らし、売上減少を見込む一方で、黒字化や収益改善を再優先する。また、他社との提携についても「選択肢の一つとして継続して検討していく」とした。ただし、他社提携について「今、具体的に計画があるという話ではない」とも語った。
金融分野においては、生命保険、損害保険、銀行、介護などの事業において、高い顧客満足度の実現と、安定的な業容拡大を目指す。また、ゲームや金融分野で成功している安定した顧客基盤を用いた「リカーリング型事業モデル」を強化。ゲーム機の普及台数や、PlayStation Networkの顧客基盤を活かしたサービスなど、継続的に収益を得られる事業のことで、この領域を拡大。カメラマウント&レンズ商品群というデジタルカメラのビジネスも“リカーリング型”と位置づけ、顧客基盤を活かした長期なビジネス創出に取り組むとした。
そのたの強化事業としては「医療」をあげ、オリンパスとの協業による内視鏡などを2015年度内に投入。新規事業創出としては、Life Space UXのほか、社内外の新規事業創出をスピーディに行なう「シードアクセレーションプログラム(SAP)」などを推進。平井CEOは「このような取り組みにより、スピード感を取り戻していく」と意気込みを語る。
これらの施策により、2017年度の経営数値目標をROE 10%以上、営業利益5,000億円とする。一方、売上目標は立てていない。
平井CEOは、「『感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社である続ける』という目標は変わらないが、まずは事業のサステイナビリティを確保し、充分な財務体質に戻す必要がある。第1次中期計画が、ソニーの変革であったとするならば、来年度からの第2次中期計画は、利益創出と成長への投資だ。ソニーの復活のため、手を緩めること無く、改革に邁進していく」と結んだ。