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“ダイヤモンドより硬い”グラフェンコート振動板を使ったハイレゾイヤフォンを聴いた
2016年8月25日 22:34
ダイヤモンド以上の硬度を持つという「グラフェンコート振動板」を業界で初めて採用した、日立マクセルのハイレゾ対応イヤフォン「Graphene(グラフェン)」2モデルが、8月25日から発売開始された。店頭予想価格は、筐体にステンレス合金を使った「MXH-GD200」が11,800円前後。アルミ合金の「MXH-GD100」が8,980円前後。発売日当日に開催されたマスコミ向けの試聴会で、その音を実際に聴いてみた。
既報の通り、密閉ダイナミック型の10mm径ドライバを搭載したイヤフォン。カラーはGD200がシルバー、GD100はブラックとホワイトを用意する。
製品のコンセプトとして、ハイレゾ音源にこれから親しもうというハイレゾエントリー層をターゲットとしている。1万円程度で購入できるコストパフォーマンスの良さを活かしながら、ハイレゾならではの高精細で解像度の高い音をしっかり鳴らせることがポイント。
ドライバは2モデル共通で10mm径ダイナミック型。最大の特徴は、「ダイヤモンドよりも硬い」という、炭素素材のグラフェンをPET素材の振動板にコーティングしていること。炭素原子が6角形のハチの巣状に結合したシート状の極薄構造をしており、平面方向において炭素同士の結合がダイヤモンド以上に強く、引っ張り強度や、熱伝導率、電気伝導率の高さはトップクラスとされる。この特性を活かし、歪みのないクリアな音を追求した。
さらに、ハウジングに2つのバスポートも設け、引き締まった低音を再生できるとする。
GD200とGD100の違いは、フロント/リアハウジングの素材と、ケーブルの芯線の構造。GD200はリアに振動に強いステンレス合金、フロントにカーボン充填ABS樹脂を使用。固有振動数が異なる素材によって不要な共振を抑えている。GD100はリアにアルミ、フロントにABS樹脂を使用。素材の違いによる音の違いを選べる。
ケーブルはY型で、長さは1.2m。GD200はプラグ部から左右のユニットまでを4芯化したグランド分離仕様とし、クロストークを抑えて繊細な音を鳴らせるという。プラグはどちらもL型ステレオミニの金メッキ仕上げ。重量はGD100が15g、GD200が20g。
どちらもイヤーピースはS/M/Lの3サイズで、密閉性や装着感が異なる2タイプを同梱。キャリングポーチも付属する。
光学ディスクの金属蒸着技術を応用。音も聴いてみた
イヤフォンの高域再生能力を伸ばすには音の伝播速度の向上が必要。振動時に変形すると音を歪ませる分割振動が発生するため、変形しにくい硬さが求められる。また、振動板を素早く動かすための軽さも重要となる。
日立マクセルでは、こうした条件をクリアするために、自社の光学ディスク面用の金属蒸着技術を応用し、グラフェンをコーティング素材に採用した振動板を開発した。
ライフソリューション事業部 マーケティング事業部の河原健介副主管は、チタンやアルミ、マグネシウム、ダイヤモンドといった他の素材の物性比較の数値を元に、グラフェンの速さや硬さがいずれの素材よりも優れることを紹介。これをCCAWボイスコイルと組みあわせて歪みの少ないクリアな再生音を実現したという。
河原氏は「グラフェンコート振動板を採用したのは業界初の試み。炭素の結合の強さに着目して、音響特性がどうなるか試行錯誤した。グラフェンはイヤフォンだけでなく、透明導電性フィルムや海水淡水化プラントへの採用など、多くの分野で応用が期待される注目の素材でもある」としている。
手持ちのスマートフォン「Xperia Z3 Compact」に入れたハイレゾプレーヤー「NePlayer」を使い、まずGD100で渡辺香津美「ギター・ イズ・ビューティフル」から「ザ・カーブ・オブ・ライフ」(96kHz/24bit)を聴いてみた。
ギターの音の立ち上がりが明瞭で、運指など細かな音も微細に描写され、分解能の高さを感じた。個々の音がスピーディーに現れて消える。高域がきつく聴こえることはなく、中低域も肉厚でしっかり出ている。オンキヨーのハイレゾプレーヤー「DP-X1」で再生すると、音の解像感の高さに加えて広い音場も再現され、音の迫力が増す。
GD200に変えて同じ音源を聴いてみると、基本的な音の解像感や鳴り方はGD100に近いが、スマホ単体との組み合わせでも、音がより豊かに響く印象。弦のかすれなどの細かい音に気付きやすくなったほか、低域の沈み込みが深くなったように感じられた。
個人的には、スッキリした音が好印象だった。専用のハイレゾプレーヤーはもちろん、スマホでも十分にハイレゾ音源を楽しめるイヤフォンだ。
ダイヤコーティングよりグラフェン。「音の再現性に自信」
日立マクセルでは、これまでBA+ダイナミック型のハイブリッドドライバイヤフォンや、2.5mm/4極のバランスケーブルを採用したハイレゾイヤフォンなどを、同社オーディオ製品にラインナップ。いずれもシンボルマークの「m」を冠しているが、その中にMXH-GD200/100を新たに加えた形だ。
同事業部の芝仁史主任技師は、グラフェンコートにたどり着くまでのドライバ開発の取り組みを紹介。独自に開発した、アルミやチタン、マグネシウム、ベリリウムといった金属コートを振動板に採用した機種を開発してきたが、イヤフォンの再生能力をさらに伸ばすため、'15年にはダイヤモンドコーティングの振動板開発に着手した。
しかし、「ダイヤモンドを使った振動板の開発は現在の技術では困難だった。1年続けたが、製品化には至らなかった」(芝氏)。その後、グラフェンを振動板のコーティングに採用することに成功。フィルム単体や、金属素材のベリリウムよりも優れた周波数特性が得られ、ハイレゾ対応となる40kHzを超える、70kHzまでの高域再生能力を実現した。人間の耳の可聴帯域外ではあるが、「音の解像度やレスポンス、余韻に良い影響を与えている。音の再現性にも効果がある」と、グラフェンの仕上がりに自信を見せた。
なお、8月28日には東京・有楽町のビックカメラ有楽町店で、店頭試聴会を午前10時から午後6時まで実施。同社の説明員の説明を受けながら、新イヤフォンの音を実際に聴くことができる。
MXH-GD200 | MXH-GD100 |
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