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「Technicsを次の50年も」。ベルリン・フィル協業など進化を続けるブランドの今後

 パナソニックは、オーディオブランド「Technics」(テクニクス)を海外の特派員らに向けて紹介する「Technics Evening」を20日に開催。ジャズピアニストであり、パナソニック役員 アプライアンス社 常務 テクニクス事業推進室長の小川理子氏が、自らの演奏と共に、テクニクスブランドのこれまでの道のりや今後について語った。

パナソニック 役員 テクニクス事業推進室長の小川理子氏
「リファレンス R1シリーズ」(右)などのテクニクス製品
小川氏がブランドのこれまでと今後について説明

 '14年に復活第1弾モデルを発表し、'15年に50周年を迎えたテクニクスのコンセプトは「Rediscover Music(音楽の再発見)」。小川氏は、自身の音楽との出会いについて、5歳の時にチャイコフスキー「白鳥の湖」に心を強く動かされた経験をきっかけに、音楽が人生の一部になったことを説明。デジタルとアナログの両方の技術を活かし、音楽を愛する全ての人に新たな発見を届ける製品として、これまで3クラス/14モデルをリリースしてきたことを紹介した。

初代モデル「Technics 1」など、'65年から始まったかつてのテクニクスシリーズ
復活したテクニクスのコンセプト
3クラス/14モデルを展開中

 これらの製品の中でも、ターンテーブル復活モデルとなった「SL-1200GAE」が、特に国内外で高い評価を受けたことに触れ、ロンドンのアビーロードスタジオに導入されたことを説明。また、新たな展開として8月31日に、ベルリン・フィルとの協業を発表。4K映像/ハイレゾ音声でコンサートの配信を行なう。「音楽の全てを知り尽くしているベルリン・フィルとともに、映像/音楽ともに妥協せず、家庭や自動車向けに提供する」とした。

ターンテーブルの「SL-1200GAE」
オールインワンシステムで、広い指向性のスピーカーもユニークな「OTTAVA SC-C500」
ベルリン・フィルとの協業を発表

 小川氏と、製品開発を務めた開発四部 第一課 主任技師の奥田忠義氏、オーディオビジュアル評論家の山之内正氏によるトークセッションも行なわれた。山之内氏から、昔のテクニクスと新しいテクニクスの違いについて尋ねられた小川氏は「LPレコードを中心に、アナログ全盛だった時代から、2000年を境に劇的にオーディオが変わり、多様な音楽を皆が経験できるようになった。時代に適応した新しい価値観を、今の技術を使って、商品だけでなく奏でる音楽の感動を全ての皆さんに届けたい」との想いを語った。

前列左から小川理子氏、山之内正氏、奥田忠義氏

 テクニクスのターンテーブルでアナログレコード再生のデモも行なわれ、ダイアナ・クラール「I Love Being Here With You」を聴いた山之内氏は「エモーショナルなサウンド。プレーヤーは外見が以前のモデルと似ているが、変わった点は?」と開発担当の奥田氏に尋ねると、「ダイレクトドライブで課題とされたコギング(回転ムラ)問題への対策として、モーターを新開発した」と説明。小川氏の開発陣への音への要求は常に高く、「音を生み出すエネルギーを確実に届ける」ことや、「何十年も使い続けてもらう製品であるように、聴けば聴くほど愛着を持ってもらえる」といった点を確実にクリアするよう求められるという。テクニクス製品は、小川氏が実際に音をチェックしており、「1回でOKになることはまずない」(奥田氏)とのこと。

 前述したベルリン・フィルとの協業について「テクニクスとベルリン・フィルとの共通点」を尋ねられた小川氏は、「ベルリン・フィルは伝統のある楽団だが、常に新しい技術を取り入れている。そこはテクニクスも共感するところ」とした。クラシックへの深い知識で知られる山之内氏は、今後のテクニクスに対し「ハードウェアだけでなく、オーケストラを含めて音楽そのものにも息長く携わって欲しい」と述べると、小川氏は「テクニクスに関わる者は、技術者もデザイナーも企画、マーケティング担当も含めて“行動指針”があって、その中に『音楽文化とともに成長する』という項目がある。それを肝に銘じる」と答え、最後に「テクニクスは50年を迎え、これからの50年も輝き続けるブランドでありたい。主役はテクニクスが奏でる音楽。それを楽しんでいただきたい」とした。

 イベントに参加した海外特派員らからは「ブランドのポジショニングは?」との質問があり、小川氏は「(復活)以前のテクニクスは幅広い製品があったが、それに比べると高いレベルを狙っている。パナソニックブランドでもオーディオビジネスは展開しているため、憧れを持っていただけるポジションを目指す」とした。

 また、ターンテーブルの「SL-1200GAE」について、「かつてテクニクスのターンテーブルは、多くのディスコなどでDJがハードな使い方をしていたが、新しいターンテーブルでも同じように使っても大丈夫か」と質問があると、テクニクス事業推進室 CTOの井谷哲也氏が「『ターンテーブルを復活して欲しい』と数多くの署名が寄せられたが、その中でも多くはDJの方で、“楽器”として使われていた。それを変えることはできない。ルックス/フィーリングはかつてのSL-1200と同じで、中の音質に関わるものはハイグレードにした。Hi-Fiマニアの方にも使えて、DJの方にも同様に使っていただける」と自信を見せた。

テクニクス事業推進室 CTOの井谷哲也氏

 ジャズピアニストである小川氏は、'14年の「テクニクス復活」を宣言する発表会において自らの演奏で華を添え、話題となった。今回も、音楽を楽しんで欲しいというイベントにちなみ、ジャズのスタンダード・ナンバーから「Autumun Leaves」を演奏。さらに、「What a wonderful world」ではピアノとともに力強く美しい歌声も披露し、会場は大きな拍手に包まれた。

小川氏がピアノと歌声を披露

 さらに、ゲストを招いてピアノとバイオリンの生演奏も行なわれた。ハイレゾ配信などでも人気のバイオリニスト・寺下真理子氏と、国内外のオーケストラと数多く共演するピアニスト・米津真浩氏による演奏を間近で楽しめるイベントとなった。

バイオリニストの寺下真理子氏と、ピアニストの米津真浩氏が共演