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ベルリン・フィルとパナソニックが4K/HDR配信で協力。Technicsの新小型オーディオも

 パナソニックとベルリンフィル・メディアは、世界でもっとも重要なオーケストラのひとつとして数えられるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートをインターネット配信する「デジタル・コンサートホール」を4K/HDRへと拡張するシステムを共同開発。9月分のコンサートから4K/HDRでの撮影を行ない、10月からアーカイブ映像として会員向けにサービスを開始すると発表した。来シーズンが始まる2018年8月14日以降は、4K/HDRでのライブストリーミングも行なう。デジタル・コンサートホールの視聴料は従来と変わらない(月額14.90ユーロ)。

VIERAなどパナソニック製品に、「デジタル・コンサートホール」で独占配信

 視聴可能な機器はパナソニック製テレビ「VIERA EZ、EXシリーズ」全機種('17年発売製品(アップデートによる対応)、BDレコーダ「DMR-UBX7030/4030、UX7030/4030」、UBZ1、BDプレーヤー「DMP-UB900/90/30」。今後発売される4K/HDR対応製品の対応も順次進めていく。

 10月の配信開始後、120日間はパナソニック製品のみにエクスクルーシブ(独占)配信されるが、その後は各メーカーにも仕様を公開する。デジタル・コンサートホールは、ソニー、サムスン、LG、フィリップス、OPPO Digitalなど多くのメーカーが対応しているため、来年以降の新製品では、パナソニック以外のテレビやプレーヤー/レコーダで受信可能になる可能性がある。

ベルリン・フィル活動拠点のベルリン・フィルハーモニー

 同管弦楽団の活動拠点であるベルリン・フィルハーモニーで会見したベルリンフィル・メディアのロベルト・ツィンマーマン氏は「我々がこの場所で何らかの発表を行なうとき、それは音楽芸術に関連することでした。しかし今回は、技術の発展に関する発表をします。我々はこれまでも最先端技術に感心を寄せてきましたが、自分たちだけで解決はできません。昨年、パナソニックとの協業を開始し、ここに4K/HDRでのコンサート配信を開始できることを嬉しく思います。我々は8年前にデジタル・コンサートを開始しましたが、その理由はオーケストラと聴衆の間に介在する人間を可能な限り減らし、自分たちが届けたい音楽をそのままの形で伝えるためでした。そのサービスが、最新の技術によってさらに進化しました」と話した。

ベルリンフィル・メディア ロベルト・ツィンマーマン氏

 一方で、パナソニックはベルリンフィル・メディアにテクニクスの若手オーディオ技術者を派遣。ツィンマーマン氏は「パナソニックのエンジニアは、我々がどのようにコンサートホールの音をマイクで拾い、ミキシングしているのか。どのようなフィロソフィーで音作りをしているのかに感心を持ち、録音をして、どのようなフィロソフィーで音を作っているかに関心を寄せていた」と話す。

 パナソニック役員でテクニクス事業のトップを務める小川理子氏は「物理的なスペックを求めるだけでなく、指揮者のメッセージ、演奏者のエネルギー、情熱や技術を感じながら、アートマネージメントスタッフの思い、音楽に込められているものを総合的に理解しながら、音楽・芸術を科学し、深く理解しながら製品を開発するプログラムを進めている。ホームオーディオはもちろん、今後、自動運転が進化する中、第二のエンターテインメント空間として車載オーディオなどにも、ベルリンフィルとともに作り上げるノウハウを盛り込んでいきたい」と話した。

テクニクスブランド事業担当執行役員の小川理子氏

 デジタル・コンサートホールは、すべて電動治具を用いた集中管理操作で撮影され、最大数10にのぼるマイクの切り替えやミキシング、カメラのズームやパンなどがコンソールルームで行なわれる。これは演奏者が撮影を気にせず、演奏そのものに集中できるようにとの配慮からだ。カメラには広ダイナミックレンジを特徴とするパナソニック製が用いられているが、これもライティングを最小限にすることでホール内の気温上昇を抑制、発汗などによるコンディション変化を抑えるため、暗部の階調再現性の高さを要求した結果とのことだ。

デジタル・コンサートホールの撮影・録音を集中管理。撮影機材の操作もコンソールルームから行なう

 4K/HDRに求められる広いダイナミックレンジを、低照度の環境でも実現できるカメラに切り替えることで、金管楽器の持つ輝きから背景の暗部ディテールまでを自然に、S/N感よく再現する。先日発表されたばかりの4K/HDR液晶VIERA「TH-60EX850」を用いたデモでも、リアリティ溢れるコンサート映像が再現されていた。

 さて、4K/HDRで撮影しながらもライブ配信ではフルHD/SDRとなる現在のデジタル・コンサートホールだが、これを実現するためにパナソニックはカメラのファームウェアを専用に開発。4K/HDRとフルHD/SDRの同時出力に対応することで、4K/HDRの録画とフルHD/SDRのライブ配信を両立させた。

 今後、両者は開発を進め、4K/HDRに対応したビデオミキサーを導入することで、来年以降の4K/HDRライブ配信を実現させる。なお、HDRフォーマットとしてはハイブリッド・ログガンマ(HLG)を採用しているため、4K映像ストリームをSDR対応製品でも、そのまま楽しむことができる。

 また、パナソニックはベルリン・フィルと共同で音質チューニングをした製品もデモンストレーション。上記の液晶VIERAEX850もそのひとつで、これまでの液晶テレビの常識を覆す迫力あるコンサートホールの大きさを感じられる、スケールの大きな音場が楽しめる。実際にベルリン・フィルに開発機を持ち込み、具体的にどの音域をどう調整していくのかを指示しながら生まれた音質だという。

 また、このIFAで発表されたテクニクスブランドのコンパクトオーディオ新製品「OTTAVA f S-SC70」も、同じくベルリン・フィルと音作りを共にした製品とのことだ。日本未発表だが、追って日本でも発表される見込みだ。

Technics「OTTAVA f S-SC70」