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デジタルのままドライバ伝送する“至高のBluetooth”ヘッドフォン、オーディオテクニカから

 オーディオテクニカは、デジタル信号をデジタルのまま、ユニットまでダイレクトに伝送して再生する「Dnote」技術をBluetoothヘッドフォンに応用、“至高のBluetoothサウンド”が楽しめるという2機種を11月25日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は「ATH-DSR9BT」が6万円前後、「ATH-DSR7BT」が33,000円前後。

ATH-DSR9BT

 Dnoteは、デジタル音源をアナログ変換せずに直接スピーカー駆動できる技術。音源のデジタル信号にオーバーサンプリングとデジタル変調をかけ、複数のデジタル信号に変換。それをダイレクトにボイスコイルに伝達し、正確なコーンストロークを実現するというもの。D/Aドライバーのボイスコイル入力するまでアナログ変換しないため、劣化を抑えた再生ができるのが特徴。

ATH-DSR9BT

 新製品の2モデルは、Bluetoothで送られてきたワイヤレスのデジタル音声信号を、Dnoteを使い、アナログ変換せず、L/Rの信号をそれぞれ独立させた状態で専用のD/Aドライバーのボイスコイルに入力。純度の高いデジタル信号を空気振動で音声へとダイレクトに変換している。オーディオテクニカではこの技術を「ピュア・デジタル・ドライブ」と名付けている。

ピュア・デジタル・ドライブのイメージ図
上が通常のBluetoothヘッドフォンの流れ。途中でアナログ信号にして、アンプで増幅しているが、下のピュア・デジタル・ドライブではデジタルのままユニットに伝送される
ATH-DSR7BT

 Bluetoothのコーデックにもこだわり、SBC、AAC、aptXに加え、aptXの上位バージョンで、24bitの伝送が可能になるaptX HDもサポート。対応するスマートフォンなどと連携すると、より高音質なワイヤレス再生ができる。aptX HDを採用した理由としては、音質だけでなく、音切れの少ない、安定した通信ができる事も評価した結果だという。

コーデックによる情報量の違い

 PCとのUSB接続もサポート。96kHz/24bitまでのハイレゾデータを再生する、USBヘッドフォンとして使う事もできる。

 Bluetoothヘッドフォンにはアナログ入力を備えたモデルも多いが、それを実現するためにはA/Dコンバータなどの回路を搭載する必要があり、音質にも影響が出る。ATH-DSR9BTとATH-DSR7BTは、デジタルデータの高音質再生に特化した製品と割り切って開発されており、あえてアナログ入力は備えていない。

 2機種の違いは、ヘッドフォン部の仕様。ATH-DSR9BTは、同日発売の「ATH-SR9」(実売5万円前後)をベースに、ATH-DSR7BTは2014年発売の「ATH-MSR7」(発売当初実売約27,000円)をベースにしている。

aptX HDでスマホを通信した状態のATH-DSR7BT。紫色のライトが光っているが、aptX HD以外のコーデックでは白く光る。aptX HDで伝送できている事が目でもわかる仕組みだ、

ATH-DSR9BT

 専用開発した45mm径のトゥルー・モーションD/Aドライバを搭載。DSR9BTのドライバには、4芯撚り線構造の高純度7N OFCショートボイスコイルを採用。デジタル信号の情報量を余さず振動板に伝送するという。

4芯撚り線構造の高純度7N OFCショートボイスコイルを採用
専用開発した45mm径のトゥルー・モーションD/Aドライバ

 さらに駆動力を引き出すために、純鉄一体型ヨークを磁気回路に搭載。振動板には剛性を高めるためにDLC(Diamond Like Carbon)コーティングを施し、高域特性を向上させている。

 ハウジング内は、音響スペースと電気回路スペースを分けており、空気の流れをスムーズにすることで、リニアリティに優れた本来の振動板の動きを導くアイソレーション設計になっている。

 振動板前後の空間を仕切るダンパーを配置する事で、不要な低域成分の伝播を最適化。「高レスポンスで抜けの良い音を再生する」という。

 硬質なアルミニウムハウジングをネジ留めすることで、不要振動から発生する歪みを効果的に抑制。シンプルながら細部にも拘った理想的なハウジング構造を実現したという。アルミニウム製スライダーも採用するなど、装着感にもこだわっている。

硬質なアルミニウムハウジングを強固にネジ留めしている

 再生周波数帯域は5Hz~45kHzで、インピーダンスは38Ω。BluetoothのプロファイルはA2DP、AVRCP、HFP、HSPに対応。SCMS-Tもサポート。マイクも搭載している。

 内蔵のリチウムポリマーバッテリでの連続音楽再生は約15時間、待受は最大約1,000時間。充電時間は約4時間。重量は約315g。

側面に操作スイッチなどを備えている。アナログ入力は無い

ATH-DSR7BT

 専用の45mm径トゥルー・モーションD/Aドライバーを搭載。各音域のバランスを調整するデュアル・アコースティックレジスターを搭載。ドライバの特性に合わせ、最良の位置に2つの音響抵抗材(センター/アウター・レジスター)を配置する事で、バランスの取れた自然なサウンドを再生できるという。

ATH-DSR7BT

 また、フランジの空気穴を均等に設置する事で、空気の循環を妨げず、音の歪みを抑制するというトップマウントPCB方式も採用している。

専用の45mm径トゥルー・モーションD/Aドライバーを搭載
側面

 ハウジングはアルミ製。内部では電気回路スペースと音響スペースを独立させた、デュアルレイヤー・アイソレーション・ストラクチャーを採用。独立した音響スペースの最適なポジションにベントを配置し、滞留のない空気の流れをコントロールし、深みのある低域を再生できるという。

 再生周波数帯域は5Hz~40kHzで、インピーダンスは35Ω。BluetoothのプロファイルはA2DP、AVRCP、HFP、HSPに対応。SCMS-Tもサポート。マイクも搭載している。

 内蔵のリチウムポリマーバッテリでの連続音楽再生は約15時間、待受は最大約1,000時間。充電時間は約4時間。重量は約300g。

これまでのBluetoothヘッドフォンとは一線を画すサウンド

 会場に用意されたaptX HD対応のスマートフォンとワイヤレス連携して聴いてみた。

 どちらのモデルも、情報量が多く、鮮度も抜群。今までのBluetoothヘッドフォンのイメージを大きく覆している。“Bluetoothの真の実力”を見た想いだ。

 ギターの左手が弦の上を移動する時のわずかな音、アコースティック・ベースの低域内部の弦の動きなどもよく聴き取れる。

 音の傾向としては、「ATH-DSR7BT」は明瞭でハッキリしたサウンド。特に中高域の抜けの良さが持ち味だ。2014年に発売されたハイレゾヘッドフォンで、ベースモデルとなった「ATH-MSR7」と似た傾向だ。

 「ATH-DSR9BT」はそれよりも、よりワイドレンジ再生が可能。高域の質感描写も丁寧で、価格相応の余裕を感じさせる。

「ポータブルとホーム」どちらも良い音で

 松下和雄社長は、昨年に「ハイレゾとアナログ」をテーマとした新製品を投入、海外も含めてヘッドフォンなどが高い評価を受けた事を報告。その上で、今年は「ポータブルとホームユース」をテーマに、場所やスタイルにとらわれず、常に高音質を楽しめる製品群を用意したと説明。

松下和雄社長

 日本でも右肩上がりのアナログレコード市場の盛り上がりを受け、VM型カートリッジ9機種やターンテーブル2機種を新たに投入。針の交換で音が変化する、オーディオならではの楽しみや、手軽にレコードをデジタル化できるUSBキャプチャ機能を備えたターンテーブル2機種も紹介した。

 また、グラミー賞やサマーソニックといった音楽イベントに加え、リオオリンピックにも同社のマイクが採用された事を紹介。「選手や監督の声を我々のマイクで届けられた事は大変素晴らしい事だと自負している。東京オリンピックに向け、より素晴らしい製品、技術サポートに磨きをかけて最高の舞台に臨みたい。グローバル化を今後も進め、日本メーカーとして世界と渡り合えるように進んでいきたい。ブランドコンセプトを明確にするため、世界共通のガイドラインも作成した。社員全員の気持ちや意識を統一し、お客様との繋がりをいっそう深くしていきたい」と抱負を語った。

発表会のMCは、今回もサッシャ氏が担当