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「8K大相撲」を450型生中継で体感! 22.2chで、力士のぶつかる“重低音”も

 8K映像を450型スクリーンで観覧できるパブリックビューイングイベント「スーパーハイビジョンシアター」が、11月25日~27日に東京・渋谷のNHKふれあいホールで開催。11月27日に千秋楽を迎える大相撲九州場所が、8K映像と22.2ch音声の生中継で観られる場となっている。優勝争いへ盛り上がりを見せる25日の上映を、会場で体験してきた。

 11月25日の8K上映内容は、事前申し込みが必要な「プログラムA」と、観覧自由な「大相撲九州場所」。注目は、8K試験放送で初めて生中継されることが決まった今場所の大相撲だ。「スーパーハイビジョンならではの超高精細で奥行き感のある映像で、ダイナミックな取り組みをお伝えする」と予告していただけに、普通のテレビ中継とはどれくらい違うのか、期待も高まる。

 もう一つのポイントは、22.2chの立体音響。「四股やすり足の音までもが聞こえ、土俵のそばで見ているような感覚で、大相撲の魅力を楽しめる」という。

 会場は、NHKみんなの広場 ふれあいホール(東京都渋谷区神南2-2-1)。4Kのレーザープロジェクタ4台をブレンディングした映像で450型スクリーンに8K投写している。1台で1万ルーメンという明るさで、会場に常設されているのは520型スクリーンだが、今回は新たな試みとして、マットな450型を専用にトラスで組んで用意。常設されたゲインの高いスクリーンに比べ、中央以外の場所からも高画質を体験しやすくしたという。

渋谷区にあるNHKのふれあいホール
4Kプロジェクタ4台を使用
スピーカーも22.2ch分、設置されている
スクリーンの周りにも、目に付かない形でスピーカーを配置

N響コンサート、大相撲九州場所を450型で体験

 最初に上映されたプログラムAは、「N響 巨匠ブロムシュテットのチャイコフスキー交響曲第5番(50分)」。こちらのプログラムは事前予約制で、NHKのサイトなどから申し込んだ参加者と一緒に視聴した。

N響 巨匠ブロムシュテットのチャイコフスキー交響曲第5番

 '14年9月にNHKホールで行なわれた、チャイコフスキー交響曲 第5番 ホ短調 作品64の演奏を8Kと22.2chで収録。50分間に渡って上映された。8K映像により、NHK交響楽団の各奏者の細かな動きは当然ながらしっかりわかり、それぞれの楽器の質感の違い、使い込まれた風合いなども感じられる。また、指揮を務めるヘルベルト・ブロムシュテットの、にこやかな表情が、時に力のこもった眼差しに変わる瞬間などが映像から伝わってくる。

 最大の魅力である音響については、ホールの残響感などまで22.2chで再現され、スピーカーの位置を感じさせない自然なサラウンド感を体験できた。楽章と楽章の間にホールの観客席から出た咳払いなどの声もあえて消さずに残されており、生に近い雰囲気を味わえた。

テレビとは全く違う、力士の迫力が映像と音で

 次のプログラムは、いよいよ大相撲。中入り後の午後4時~午後6時に渡って会場から生中継で上映された。

九州場所が行なわれている福岡国際センターは満員御礼

 映像は、ベースとしては8月から開始されている8K試験放送と同じものだが、放送を受信する形ではなく、福岡から専用回線で伝送。H.264/HEVCで280Mbps(140Mbps×2本)という高ビットレートで送られるため、大画面でも高画質で楽しめるようになっている。

 8Kカメラは正面と斜め方向の計3台と、4Kスーパースローカメラを用意。会場全体を写す“引き”の映像でも、力士や行事の姿はもちろん、観客席の人々の顔まで潰れずに映像で再現。取り組み中は、張り手を受けてもなお鋭い眼光を相手に向ける力士の様子もよく分かる。

 音声については、8K試験放送と同様に、実況や解説などは行なわず、現場の雰囲気をそのままに近い形で上映しているのも特徴。

 会場には60本ものマイクが用意され、土俵周りだけでなく、観客席や、天井から下がる“フサ"の中にまで用意。力士が自分のマワシや太腿などを叩く音は、体格や叩き方などによる違いがわかる。土俵の土を足で払う音なども鮮明だ。

 松鳳山と逸ノ城の取り組みでは、福岡出身の松鳳山を応援する「松鳳山! 松鳳山!」というコールで盛り上がる。惜しくも松鳳山が敗れたときに観客から漏れた「あー」という会場からの嘆息、大分県出身の嘉風が、追い込まれた土俵際で華麗に身をかわして上手出し投げを決めた瞬間の湧き上がる歓声も、会場の空気を伝えるのに十分だった。

 特に迫力が伝わるのは、立ち会いの頭と頭のぶつかり合う音で、思わず痛みが伝わってきそうな重低音が響く。張り手の音も、単にはたいているのではなく、厚みのある音であることが分かる。勝敗が決して、押し出された力士が土俵から落ちるときのズシンという音も、その重みが十分に伝わる低音となって伝わってくる。

頭と頭のぶつかる時は、想像を超えるほど痛そうな音がする
遠藤と隠岐の海の一番も盛り上がった

 13日目を迎えた取り組みの注目は、1敗の鶴竜と、それを追う2敗の日馬富士、稀勢の里、石浦の3力士。これらの取り組みでは更に会場が盛り上がった。

 2敗だった石浦、稀勢の里ともに土が付き、一歩リードしたのは1敗の鶴竜。横綱同士の一戦となった白鵬との戦いは、立ち会いのぶつかり合う音が、人と人の出すものとは思えないほどドスッと響く重い音で、横綱という格の違いを感じた。

 この日の結びの一番は、3敗の豪栄道と、2敗の日馬富士。過去の取り組みでは日馬富士が優勢だが、声援の大きさでは、豪栄道への方が圧倒的に大きい。土俵際でもつれる中、倒れた豪栄道と土俵を割った日馬富士の足が同時についたと見られ、取り直し。会場の盛り上がりは最高潮に達した。取り直しの一番は、勢いよく突っ込んだ豪栄道を、日馬富士がかわし、あっという間に勝敗が決した。この日は最終的に鶴竜1人が1敗を守って、土曜の14日目、日曜の千秋楽を迎える。

取り直しにまでなった結びの一番

 26日と27日に行なわれる8K上映のうち、大相撲の生中継は入場自由。九州場所の会場にいるかと錯覚するほどの迫力のある8K映像と22.2chの音を、多くの人に楽しんで欲しい。

【11月26日、27日の8K上映スケジュール】

11月26日(土)

【プログラムA】※要事前申込み(受付終了)
開場:午前10時30分 開演:午前11時 終演予定:正午
【プログラムB】※要事前申込み(受付終了)
開場:午後0時30分  開演:午後1時  終演予定:午後3時
【大相撲九州場所】 観覧自由
開場:午後3時30分  開演:午後4時  終演予定:午後6時

11月27日(日)

【プログラムA】※要事前申込み(受付終了)
開場:午前10時30分 開演:午前11時 終演予定:正午
【プログラムB】※要事前申込み(受付終了)
開場:午後0時30分  開演:午後1時  終演予定:午後3時
【大相撲九州場所】観覧自由
開場:午後3時30分  開演:午後4時  終演予定:午後6時

12月以降も8Kシアターを実施予定

 NHKふれあいホールでのスーパーハイビジョンシアターは、これまでも月1回のペースで行なわれており、12月にも実施予定。また、年末の紅白歌合戦も、昨年と同様にパブリックビューイングで上映されるとのこと。会場などの詳細は今後発表される予定で、NHKのサイトで掲載される。

 大相撲に関しては、'17年1月からの初場所も8K試験放送での生中継は決まっているとのことなので、パブリックビューイングでの生中継も引き続き期待したい。

 今回初めて8Kで大相撲の生中継を見て、体のぶつかる音の迫力は、普段テレビで観ている、“番組”としての大相撲とは大きく違うと分かった。まさに相撲が格闘技であることを再認識し、8Kで伝えるのに適したコンテンツであることが、身をもって感じられた。