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「デジタル動画配信」の現状と成長への課題。DEGがセミナー開催

 映像コンテンツメーカーや機器メーカーが加盟するデジタル・エンターテイメント・グループ・ジャパン(DEGジャパン)は14日、今後の市場拡大が見込まれる「デジタル配信」に関するセミナーをメディア向けに開催。国内外の最新事情などが紹介された。

ゲストとして松井玲奈さんも登場

国内デジタル配信の現状と課題など

 国内デジタル配信市場の現状と今後について、野村総合研究所(NRI) コンサルティング事業本部 ICT・メディア産業コンサルタント部の放送・コンテンツグループマネージャー 上級コンサルタント 三宅洋一郎氏が説明。

野村総合研究所の三宅洋一郎氏

 NRIのアンケートによれば、有料動画配信の利用率は、今年度に大きく上昇。インターネット利用者のうち、過去1年間に有料動画配信を使った人は、'15年7月時点の11.1%に対し、'16年7月は13.6%まで上昇。男女ともに30代の増加が牽引する形となった。

有料動画配信の利用率
(出典:NRI)

 今年度は特に、有料VODサービスの中でも、定額制配信(SVOD)が伸び、テレビ、PC、モバイル(スマホ/タブレットなど)のいずれも利用率が増加。利用者の実態を見ると、これまでも映画館やセルBD/DVD、レンタルBD/DVDなどを利用していた“コンテンツにお金を払っている人”が、有料VODも引き続き使っているという。

有料VODの利用者層
(出典:NRI)

 ネット接続できるテレビでのVOD利用に焦点を当てると、現状では1,968万世帯にネット接続対応のテレビが普及し、放送通信連携のハイブリッドキャスト(Hybridcast)対応のスマートテレビは約671万台。2022年度には、ネット接続対応が3,255万世帯、ハイブリッドキャスト対応が2,069万世帯まで増えると予測している。こうした中でも、テレビのネット接続率は20%に届かず、'13年度の調査(16%)から大きく伸びていない。

ネット接続対応テレビの普及状況
(出典:NRI)

 こうした課題に対し、市場活性化に向けては、今後もモバイル視聴環境の整備や通信の高速化、配信事業者によるサービスの進化、独自コンテンツの増加などが見込まれ、競争の激化などで品質向上が進めば配信プラットフォームの価値が高まり、市場規模も拡大するとの見方を示した。

VOD市場の現状と予測
(出典:NRI)

配信が普及する米国などの動向と今後の予測

 続いて、ワーナー ブラザース ジャパンのワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント メデイア/リサーチ&カテゴリーマネージメント ディレクター 土屋隆司氏が、米国におけるデジタル配信市場の現状や今後を紹介した。

ワーナー ブラザース ジャパンの土屋隆司氏

 '16年第1~第3四半期の世界全体でのホームエンターテインメントへの消費者支出は1.6兆円で前年比では5.8%のマイナスだった。そのうちの割合は、デジタルはシェア28%(前年比プラス9.2%)、フィジカル(BD/DVDなど物理メディア)はシェア72%、マイナス10.5%だった。国ごとの市場を比較すると、約半数のシェアを持つ1位の米国(約8,000億円)に続き、2位が日本(約2,800億円、17%)、英国(8%)、ドイツ(7%)と続く。これら上位4カ国で世界全体の8割強を占めている。

 日本国内は特にレンタル利用の構成比が高く、約半数。前述のトップ4市場のうち、デジタルの構成比が低いのが特徴。日本を含め、アジア太平洋地域は依然としてフィジカルが強いという結果となった。

 デジタル配信は、米国でEST(Electronic Sell Through/ダウンロード購入など)がVODの2倍に近い規模となり、他の地域ではVODの方が優勢となった。

 今後の米国市場予測としては、今年は第3四半期時点では、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」などのビッグタイトルにより、'16年はBD新作やESTが伸長し、VODも増加したことで全体はプラスとなるものの、DVDセル/レンタルなどフィジカルが減少。通年では全体でマイナス7%になると見ており、配信ではケーブルが微減、インターネットがプラスとなると予測している。17年も同様の傾向が続くものの、タイトルの影響などで'16年に対しては微減になると見ている。

配信の普及に向けて必要な課題。ゲストに松井玲奈さん

 招待講演として登壇したのは、ジャーナリストの西田宗千佳氏。来場したメディアの中にも、まだ動画配信を使っていない、抵抗があるという人に向けて、配信サービスの基本的な種類や特徴などを説明しながら、最新の動向を紹介した。

西田宗千佳氏

 ネット配信において、前述した購入型の「EST」と、レンタルに近い「TVOD」(都度課金)、「SVOD」(定額制)の中で、最近はNetflixやAmazonなどのSVODが話題となりやすいが、ESTやTVODについても、テレビで見やすい点や、高画質なダウンロード視聴ができる点など利便性が高いポイントを解説。また、ディズニー「MovieNEX」のように、BDを買うと、スマホなどでデジタルコピーが視聴できるといった、ディスクと配信がもはや敵対ではなく連携した取り組みが進んでいることも説明した。

デジタル配信の種類と特徴

 より多くの人が配信を楽しめるための課題の一つとして「配信済みか否かがわかりづらい」という点を挙げ、リアルのレンタル店舗を歩いて作品を眺めるのに比べて、画面の中から好みの作品を新たに見つけるのは難しいことを指摘。配信サービスを横断して作品が検索できる「JustWatch」や、「映画ドットコム 映像配信検索」、「比較情報.com 動画配信サービス」といったサイトがあることを紹介した。コンテンツの権利者などは「配信に積極的になることだけでなく、どのサービスでどの作品がいつから配信されるのかという公式な情報を増やし、活用を促進すること」などの重要性を強調した。

作品を横断検索できるサービスの例
配信の定着に向けた課題など

 セミナーの最後には、ゲストとして女優・タレントの松井玲奈さんが登場し、自身のデジタル配信の活用などを紹介した。

松井玲奈さん

 普段、家ではPC、お風呂ではタブレット、外出先など様々な場所でスマホを使ってデジタル配信を楽しむという松井さんは、「観たいと思った時に観られるのが一番の魅力。昔のアニメやドラマもすぐ観られる」と語る。最近は、外出先での通信制限などを考慮し、家でダウンロードしておくことも多いというほど、本格的に活用。お風呂で映画1本や、アニメ2~3本を観るとのことで、「ケータイを触ったりゲームもいいですが、映画を1本観たほうが有意義と思える」とのこと。

 配信で楽しんでいるコンテンツは、「RENT」(ミュージカル版)や、「レミーのおいしいレストラン」などを何回も観るとのことで、アニメは「四畳半神話大系」や、「ユーリ!!! on ICE」がお気に入りだという。変わった楽しみ方としては、「SAW」シリーズを仕事の合間に観るとのことで、「(役作りなどで)落ち込まないといけない時に、『SAW 6』は最高のストーリー」だという。

時代劇の撮影の仕方など、マニアックな知識も披露した松井さん。「いつか映像美のある作品に出たいと思いながら観ている」とのこと