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CHORD、最上位CDトランスポート「Blu MkII」を3月発売。新FPGAで“CD再生の頂上”
2017年1月27日 11:00
タイムロードは、CHORDのフラッグシップCDトランスポート「Blu MkII」を3月下旬より発売する。価格は140万円(予価)。演算処理性能の高い新FPGAを搭載し、据え置き型DAC「DAVE」と組み合わせることでCD音源を最高705.6kHzまでアップサンプリング、トランジェントのより正確な再現で“CD再生クオリティの頂上”を目指したという。
初代「Blu」の性能をそのままに、操作パネルをシンプル化した日本市場用「Coda」('99年)から18年。新製品のBlu MkIIでは、FPGAを最新世代に刷新してDAコンバータの技術進化を採り入れ、44.1kHz/16bitで記録されたCD音源を正確に再生。心地よく自然な音を再生できるとする。
Xilinx(ザイリンクス)の「Artix-7 FPGA(XC7A200T)」を採用し、新開発の「WTA M-Scaler」技術を組み込んでアップサンプリングの精度を大幅に向上。Blu MkIIと、CHORDのフラッグシップDAコンバータ「DAVE」を2本のBNCケーブルでデュアル接続した場合は、CD音源を最高705.6kHzまでアップサンプリングできる。BNC1本のシングル接続時は352.8kHzまで。
本体背面に、アップサンプリング数値を切り替えられる3段階のスイッチを備え、デュアル時は4/8/16倍、シングル時は2/4/8倍を選択可能。BNC入力を備え、CD以外の192kHzまでの入力信号を最高384kHzまでアップサンプリングする、独立したアップサンプラーとしても利用できる。
デジタル出力はBNCと、光デジタル(角型)、AES/EBU。光デジタルとAES/EBU(デュアル時)は最高176.4kHzまで、BNCは352.8kHz(デュアル接続で705.6kHz)までをサポートする。その他、CDなどの16bit音源ではディザ機能のオン/オフも選べる。
本体はアルミ削り出しで、CHORDのCEOであるジョン・フランクス氏が設計。操作ボタンや外観デザインなどは、従来のCodaを踏襲している。消費電力は30W。外形寸法は335×170×105mm(幅×奥行き×高さ)、重量は7kg。リモコンが付属する。
新しいFPGAと独自アルゴリズムで“CDを完璧に再生”
CHORD製品のデジタル回路設計を担当するロバート・ワッツ氏は、CDの高音質再生にこだわり、トランジェント(音の立ち上がりや立ち下がり)の正確さを重視。人間の聴覚はこの情報に敏感で、その精度は楽器の音色や空間表現に大きく関わるという。
ワッツ氏は「FPGAのタップ数(フィルタの処理の細かさを表す数値)を上げるとトランジェントの精度が向上し、音が良くなることが分かった」とし、100万タップを「CDの完璧な再生のために理想的な数値」に設定。今回、新製品のBlu MkIIと、既発売のDAC「DAVE」を組み合わせることで、これを実現した。
Blu MkIIが採用したFPGAに、ワッツ氏が新開発した「WTA M-Scaler」技術を組み込むことで、101万5,808タップを実現。CD音源を最高705.6kHzにアップサンプリングしてデュアルワイヤで伝送可能とした。オーバーサンプリングフィルタも通し、ジッタも低減。こうした処理のために、740個のDSPコアと21万5,360のロジックセル、16MBメモリを装備した高性能なFPGA「XC7A200T」を採用した。
タイムロードの村上遼氏は、「デジタルカメラの映像処理用にも使われるFPGA。映像処理には高い処理能力が要求されるのが一般的だが、(高音質再生のためには)音楽にも映像に比類する処理能力が必要」と説明。
ただし、FPGAの演算能力が上がるとノイズ量が増える問題があり、音質にも影響が出るという。DAVEと組み合わせる時はこの問題を回避するため、「DAVEに内蔵された前段・後段2つのWTA(Watts Transient Aligned)フィルタのうち、後段のみに直接デジタルデータを伝送してDAVE側の負担を減らし、ノイズも抑えている」(村上氏)という。
試聴では、Blu MkII、DAVEと、CHORDのオーディオ用電源「SPM1200 MkII」、TADのブックシェルフ型スピーカー「TAD-CE1」を用いてクラシックCDなどを聴いた。
ヒラリー・ハーンの演奏に寄るブラームス「ヴァイオリンコンチェルト第3楽章」をまずは44.1kHzのままで聴くと、弦の響きなどが硬く感じられ、音も全体的に平坦で、狭いスペースで鳴っているという印象。これが705.6kHzにアップサンプリングされると、CD音源ながら音の立体感/情報量が増し、ヴァイオリンの独奏とバックのオーケストラなど、演奏者の前後配置がはっきり分かる。
パーヴォ・ヤルヴィの指揮者によるブラームス「ドイツ・レクイエム」を聴いた際も、合唱隊の歌声の響きが705.6kHzでの再生ではより立体的に、広大な空間に広がっていくように感じられた。
ワッツ氏は、「最近、Blu MkIIとDAVEで古いCD音源を聞くようになった。以前はPCM 96kHz/24bitの音源を好んで聞いていたが、Blu MkIIにしてからはサンプルレートなどを気にせず、分析的な聴き方もしなくなったことに気づいた。(古いCDは)ヒスノイズなどが含まれ、痛々しく刺々しい、耳になじまないものもあるが、Blu MkIIでは当時のみずみずしい音楽が蘇ってきて、音楽家が表現しようとしている世界観がストレートに伝わる」と語った。