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新レッグで高音質化、Dolby Visionにも対応するヤマハ「AVENTAGE」中級AVアンプ2機種

 ヤマハは、ミドルクラスのAVアンプ新製品として「RX-A770」と「RX-A870」の2機種を発売する。価格と発売時期は、「RX-A770」が6月下旬で88,000円、「RX-A870」が7月下旬で110,000円。どちらも「AVENTAGE」(アベンタージュ)仕様で、RX-A870のメーカー保証は5年。カラーはA770はチタンとブラック、A870はブラックのみ。

左の2台がRX-A770で、左がチタン、右がブラック。右端はRX-A870

 A770は、「RX-V781」の後継だが、実売が5,000円ほど低価格になっている。A870は、「RX-A860」の後継モデル。

RX-A870

 どちらのモデルもオブジェクトオーディオフォーマットのDolby Atmos、DTS:Xに対応。5.1.2chのスピーカー構成に対応し、プレゼンススピーカーはフロントスピーカー上方壁に設置する「フロントハイト」、天井設置の「オーバーヘッド」、天井に反射させる「ドルビーイネーブルドスピーカー」の3パターンから選択できる。

 DTS:X時もハイト使用を推奨し、DTSダイアログコントロールを使い、セリフ音量の単独調整もできる。

 進化点として、HDR方式のDolby Visionに今後のファームウェアアップデートで対応予定。さらに、脚部に新開発のレッグを採用。直線と曲線状の補強を備え、強度と制振性をさらに高めたというもので、楽器やボーカルの再現性、分離感の向上を実現したという。素材はABS樹脂で、手にすると、前の脚部より重量を感じるものになっている。また、AVENTAGEの特徴である「5番目の脚」も、筐体底部中央に備えている。

新形状のレッグ。直線と曲線状の補強を備えている
左が従来の形状

 フロントパネルはどちらのモデルもヘアライン仕上げのアルミ製。A870では前面端子類を内側に収めたアルミ製の前面カバー、アルミ製ボリュームノブ/セレクターノブも採用し、高級感を高めている。

RX-A770のシルバーモデル
RX-A770のブラックモデル

 HDMIはA770が6入力、1出力(前モデルは2系統)。A870が8入力、2出力。4K/60p/4:4:4映像のパススルーや、HDR映像(HDR10/ハイブリッド・ログ・ガンマ/Dolby Vision)、色域のBT.2020に対応。A870では3入力/2出力、A770では3入力/1出力が HDCP 2.2対応となる。入力映像の4Kへのアップスケーリングにも対応する。

ネットワーク再生機能も搭載

 Bluetooth受信機能を備え、スマートフォンなどから手軽にワイヤレス再生が可能。圧縮された音楽データの再生時に、16kHz以上の不足している高音域などを補完するミュージックエンハンサー機能を、Bluetoothと組み合わせて利用できる。

 IEEE 802.11b/g/nの無線LANも搭載。スマートフォンなどの機器とルータを介して接続できるほか、ダイレクト接続も可能。端末内の音楽ファイルをワイヤレスで再生したり、後述するアプリからの操作、NASに保存した音楽ファイルの再生なども可能。

RX-A870

 DLNAを使ったネットワークプレーヤー機能を用意し、WAV/FLAC/AIFFの192kHz/24bitまでのハイレゾファイル再生も可能。DSD 2.8/5.6MHzのファイルも再生できる。

 USB端子も備えており、USBメモリなどからデジタル再生する事もできる。AirPlayやradiko.jpにも対応。ネットワークモジュールはヤマハオリジナルのもので、高精細かつロージッタのクロックを導入。ノイズレベルを低減している。

 使い勝手を向上させるポイントとして、前面に備えた「SCENE」ボタンにコンテンツ登録が可能になった。入力が「NET」、「USB」、「Bluetooth」、「チューナ」の場合に、選択しているコンテンツやラジオ局も含めた登録が可能。従来通り、音場プログラムやミュージックエンハンサーの有無、出力先のHDMI端子なども登録できる。

RX-A770

 独自の「MusicCast」にも対応。対応機器間での音楽コンテンツの配信・共有・リンク再生ができるもので、スマホ/タブレットのアプリ「MusicCast CONTROLLER」から制御できる。リビングの対応機器に入力した信号を、ワイヤレスで、別の部屋にあるMusicCast対応機から再生する事も可能。

 ゾーン2機能も強化。ゾーン2で再生している音声をマスターとし、他のMusicCast対応製品でリンク再生できる。「Zone 2 Link Master」と呼ばれる機能で、メインゾーンの電源がOFFになっている場合でも、同機能は利用できる。

 音楽配信サービスのSpotifyもサポートし、スマートフォンのSpotifyアプリでリモコンのように操作し、ストリーミング配信をAVアンプで受けられる「Spotify Connect」にも対応。

AVアンプとしての機能も充実

 フロントプレゼンススピーカーを使用したシネマDSP 3Dモードの7.1ch再生と、サラウンドバックスピーカーを使用した7.1ch再生とを、フロントプレゼンス/サラウンドバックの自動切り替えによって再生する、独自の「デュアル7.1chシステム」を装備。

 仮想のプレゼンススピーカーをリスニング空間に生成する「バーチャル・プレゼンススピーカー」機能、仮想のサラウンドバックスピーカーを生成する「バーチャル・サラウンドバックスピーカー」機能も装備。5.1ch環境で、最大9.1ch相当のシネマDSP 3Dモードを利用できる。シネマDSPの信号処理には、AVENTAGEの上位機種と共通のヤマハオリジナルDSPデバイスを採用している。

 室内の初期反射音を制御し、左右スピーカーの設置環境の違いによる音質・音場の偏りなども補正する「YPAO-R.S.C.」も搭載。最大8地点での計測結果を解析して音質・音場補正に反映させる「マルチポイント計測」、これらの計測結果に基づいて設定音量に応じた均一なサウンドバランスを保つ「YPAO Volume」も投入。

RX-A870の背面
RX-A770の背面

 最大出力はどちらのモデルも160W×7ch(6Ω)。入力端子は、アナログRCA×5、光デジタル2、同軸デジタル2、コンポジット×1、コンポーネント×1。

 パワーアンプはフルディスクリート構成。電源用ブロックケミコン、オーディオ入力部と、DAC部の電位差を解消し、微小信号の再生品位を高める「D.O.P.G.」(DAC on Pure Ground)コンセプトを導入。DACチップはバーブラウン製で、384kHz/32bitに対応。外部デジタル入力に含まれるジッタを軽減するロージッターPLL 回路も備えている。

 電源部はデジタル系/映像系/表示系をアナログオーディオ系から独立させた4回路分離型。電源部を巡るノイズを抑えたクリアな音質と、安定した電源供給に支えられたという。A870には専用の音質チューニングも施しており、「スペックには現れない音の違いにこだわったとのこと。ロームと共同開発したオリジナルの高精度ボリューム素子や、ルビコンと共同開発したオリジナルのPMLコンデンサなども備えている。

 HDMI以外の音声出力はスピーカーターミナルに加え、ZONE2×1、ヘッドフォン×1など。A870は7.1chのマルチチャンネルプリアウトを備えているが、A770は非搭載。消費電力は360W。外形寸法はA770が、435×380×171mm(幅×奥行き×高さ)。重量は10.5kg。A860が435×382×171mm(同)、重量は10.5kg。

RX-A870のリモコン
RX-A770のリモコン

音を聴いてみる

 A870とA860のサウンドを比較してみた。大きな進化点としては、新開発のレッグが挙げられる。直線と曲線状の補強を備えることで、強度と制振性をさらに高めたという。

 A860から聴くと、流石はAVENTAGEという迫力の低域が感じられる。音圧が豊かで、吹き寄せてくるような低音のスケール感を感じる。

 A870に切り替えると、この音圧の豊かさがありながら、より低域内の描写が細く、シャープになっているのがわかる。吹き寄せる音圧の透明度がアップして、その中身が見えるような感覚だ。

 また、高域がスッと上へ伸びていく開放感もアップ。2chソースを聴いても、サラウンドのように音場が広く感じられる。細かな進化点ではあるが、音には着実に磨きがかかっている印象を受けた。