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ヤマハ、ネットワーク再生強化、GUIとリモコンを一新したAVアンプ「RX-A780/A880」

 ヤマハは、ミドルクラスの「AVENTAGE」AVアンプ「RX-A780」と「RX-A880」を5月下旬に発売する。価格は「RX-A780」が88,000円、「RX-A880」が110,000円。カラーはA780がチタンとブラックを用意。A880はチタンのみ。

RX-A880

 どちらのモデルもオブジェクトオーディオフォーマットのDolby Atmos、DTS:Xに対応。HDR方式のDolby Vision、HLG(ハイブリッドログガンマ)もサポートするほか、ネットワーク音楽再生に利用している内部のモジュールを刷新。UIやリモコンも進化している。

RX-A780のブラックモデル
RX-A780のチタンモデル

 5.1.2chのスピーカー構成に対応し、プレゼンススピーカーはフロントスピーカー上方壁に設置する「フロントハイト」、天井設置の「オーバーヘッド」、天井に反射させる「ドルビーイネーブルドスピーカー」の3パターンから選択できる。DTS:X時にDTSダイアログコントロールを使い、セリフ音量の単独調整もできる。

 HDMIはA780が5入力、A880が7入力と、どちらも従来モデルと比べると前面の1系統が減ったが、出力は前モデル(A770)の1系統から、2系統へ増加している。また、全端子がHDCP 2.2対応となった。4K/60p/4:4:4映像のパススルーや、HDR映像(HDR10/HLG/Dolby Vision)、色域のBT.2020もサポート。入力映像の4Kへのアップスケーリングにも対応。eARC(Enhanced ARC)も、ファームウェアアップデートにより対応予定。

HDMI出力は2系統備えている

 2.4GHz/5GHzどちらもサポートした、IEEE 802.11a/b/g/n/acの無線LANも搭載。スマートフォンなどの機器とルータを介して接続できる。端末内の音楽ファイルをワイヤレスで再生したり、後述するアプリからの操作、NASに保存した音楽ファイルの再生なども可能。

 ネットワークモジュールを刷新。WAV/FLAC/AIFFの192kHz/32bitまでの再生に対応(従来は24bitまで)、DSDも従来は5.6MHzまでの対応だったが、11.2MHzの再生もサポートした。基板まわりも最適化されている。なお、32bitについてはinteger音源のみで、float音源は非対応。

ヒートシンクで覆われているのが、刷新されたネットワークモジュール

 独自の「MusicCast」にも対応。対応機器間での音楽コンテンツの配信・共有・リンク再生ができ、スマホ/タブレットのアプリ「MusicCast CONTROLLER」から制御できる。リビングの対応機器に入力した信号を、ワイヤレスで、別の部屋にあるMusicCast対応機から再生する事も可能。ネットワークモジュールの刷新により、同時接続台数が従来の10台から、20台に増加している。

 USB端子も備えており、USBメモリなどからデジタル再生する事もできる。AirPlayやradiko.jpにも対応。Spotify Connect、Deezer HiFiにも対応。

 Bluetooth受信機能を備え、スマートフォンなどから手軽にワイヤレス再生が可能。圧縮された音楽データの再生時に、16kHz以上の不足している高音域などを補完するミュージックエンハンサー機能を、Bluetoothと組み合わせて利用できる。

使い勝手も向上

 リモコンが新型になり、「?」ボタンを用意。わからない機能があった際に、ボタンを押すと、説明が表示される。

右が新しいリモコン
「?」ボタンを用意している

 さらに、GUIも変更。設定項目の画面で、各項目ごとに説明が表示され、使いやすさ・わかりやすさがアップしている。

よりグラフィカルになったGUI

 室内の初期反射音を制御し、左右スピーカーの設置環境の違いによる音質・音場の偏りなども補正する「YPAO-R.S.C.」をどちらも搭載し、A880は最大8地点での計測結果を解析して音質・音場補正に反映させる「マルチポイント計測」にも対応する。

 GUIの進化は、このYPAOでも活用されており、測定の結果、各スピーカーが、どの周波数ポイントで、どのくらいゲイン調整されたかなどの情報を、グラフィカルに確認できるようになっている。

YPAOでの調整結果を確認できる

 また、音楽ファイルを保存したサーバーにアクセスすると、最後に再生したコンテンツを自動的に再生する機能を備えているが、同機能のON/OFFが可能になり、「電源をスタンバイにした時に再生中だった場合のみ、そのコンテンツを自動再生する」という「自動」も選択できる。

 ヤマハAVアンプの特徴であるシネマDSPのプログラムも、順番にプログラムを選択していく操作時に、特定のプログラムをスキップする設定を追加。頻繁に使うプログラム以外をスキップして、プログラムを選択しやすくできる。

 音量調整時の表記を、dB(デシベル)単位にするか、0~97までの数値にするかといった、細かなカスタマイズも可能。

シネマDSPの各プログラムについて、スキップする、しない、を設定できる

5番目の脚を搭載

 最大出力はどちらのモデルも160W×7ch(6Ω)。HDMI以外の入力端子は、アナログRCA×5、光デジタル2、同軸デジタル2、コンポジット×1、コンポーネント×1。

 フロントプレゼンススピーカーを使用したシネマDSP 3Dモードの7.1ch再生と、サラウンドバックスピーカーを使用した7.1ch再生とを、フロントプレゼンス/サラウンドバックの自動切り替えによって再生する、独自の「デュアル7.1chシステム」を装備。

 仮想のプレゼンススピーカーをリスニング空間に生成する「バーチャル・プレゼンススピーカー」機能、仮想のサラウンドバックスピーカーを生成する「バーチャル・サラウンドバックスピーカー」機能も装備。5.1ch環境で、最大9.1ch相当のシネマDSP 3Dモードを利用できる。シネマDSPの信号処理には、AVENTAGEの上位機種と共通のヤマハオリジナルDSPデバイスを採用している。

 パワーアンプはフルディスクリート構成。電源用ブロックケミコン、オーディオ入力部と、DAC部の電位差を解消し、微小信号の再生品位を高める「D.O.P.G.」(DAC on Pure Ground)コンセプトを導入。DACチップはバーブラウン製で、384kHz/32bitに対応。外部デジタル入力に含まれるジッタを軽減するロージッターPLL 回路も備えている。

 電源部はデジタル系/映像系/表示系をアナログオーディオ系から独立させた4回路分離型。電源部を巡るノイズを抑えたクリアな音質と、安定した電源供給に支えられたという。ロームと共同開発したオリジナルの高精度ボリューム素子や、ルビコンと共同開発したオリジナルのPMLコンデンサなども備えている。

 通常の脚部に加え、AVENTAGEの特徴である「5番目の脚」も、筐体底部中央に備えている。

 HDMI以外の音声出力はスピーカーターミナルに加え、ZONE2×1、ヘッドフォン×1など。A880は7.1chのマルチチャンネルプリアウトを備えているが、A780は非搭載。ただし、A780は2.1chのプリアウトを搭載、サブウーファ用モノプリアウト×2として利用できる。消費電力は360W。外形寸法はA780が、435×380×171mm(幅×奥行き×高さ)、重量は11kg。A880が435×382×171mm(同)、重量は11kg。

A780の背面
A880の背面
RX-A880
RX-A780

音を聴いてみる

 どちらのモデルも、分解能に優れたワイドレンジなサウンドだ。A780は、中低域が肉厚で、音圧も豊か。マルチチャンネルだけでなく、2chでも、低域がズシンと沈む重厚さとパワフルさを兼ね備えている。

 A880は上位モデルだけあり、重低音はさらに深く、サウンドに安定感を感じる。中低域の張り出しはそれほど強く主張するタイプではなく、A780と比べると、大人っぽいというか、マニア好みなバランスになっている。

 輸入盤だが、「ハンス・ジマー:Zimmer: Live in Prague」のBlu-rayをA880で再生すると、オーケストラが奏でる、スケール感豊かなサウンドに全身が包まれる。それと同時に、ストリングスや金管楽器など、個々の楽器の音像や音色がシャープに描き分けられ、まるで、濃厚なのに超微細な粒で構成された音の風を浴びているような感覚だ。

 一方のA780も、「ブレードランナー 2049」冒頭の、地響きするような重低音をパワフルかつ安定的に再生できる。音の移動感も明瞭で、こちらも基本的なアンプとしての再生能力が高い。