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デノン、新世代DDFA搭載のコンパクトUSB DACアンプ「PMA-60」、5万円の「PMA-30」も

 デノンは、コンパクトかつスタイリッシュな“デザイン”シリーズのプリメインアンプとして、新世代の増幅回路「DDFA」を採用した「PMA-60」と、高音質なクラスDアンプを搭載した「PMA-30」の2機種を発売する。発売時期と価格はPMA-60が7万円で10月下旬、PMA-30が5万円で9月下旬。

新世代の増幅回路「DDFA」を採用した「PMA-60」

 どちらのモデルも、フルサイズに匹敵する音響性能と、現代的なインテリアにマッチするデザインの両立を目指したシリーズの新モデル。PMA-60は、QualcommのDDFA(Direct Digital Feedback Amplifier)を増幅回路に初めて搭載したプリメインアンプとして話題となったPMA-50(2015年発売)の後継モデルで、最新バージョンのDDFAを搭載。Bluetooth受信やUSB DAC機能も引き続き搭載している。

「PMA-60」

 PMA-30は、新たなエントリークラスの製品として投入されるもので、DDFAではないが、クラスDアンプを搭載。Bluetooth受信機能は備えているが、USB DAC機能は省き、価格を抑えている。

DDFAは使わず、USB DAC機能は省き、価格を抑えた「PMA-30」(右側※縦置き時)
PMA-30とPMA-60の比較表

新世代DDFA搭載のPMA-60

 増幅回路に、既発売のヘッドフォンアンプ「DA-310USB」と同様の最新版DDFAを搭載。クラスDアンプだが、高速かつ、高精度なデジタル・フィードバック・ループを備えているのが特徴で、クラスDアンプの課題である歪の多さや、電源変動による音質劣化を解消している。

 具体的にDDFAでは、出力されたPWM波形をフィードバックプロセッサがサンプリングし、“理想の形のPWM波形”と比較。その誤差成分を積分し、デジタル信号に変換、再びモジュレータ部に戻した後で、独自のエラー訂正処理をかけている。ローパスフィルタ後からの成分もフィードバックプロセッサに加え、計算処理しローパスフィルタの非線形性を補正する。

 こうした手法により、出力段と、電源変動の両方に対してエラー補正処理を実施。パルス幅や高さも補正、出力インピーダンスを極小にさせる処理なども行なっている。つまり、アナログアンプでよく使われる負帰還(NFB)回路の働きを、フルデジタルアンプで再現し、デジタルならではの手法で“音に磨きをかけてから”スピーカーに送るイメージだ。

 新世代DDFAでは、従来PWMモジュレーターとフィードバックプロセッサが個別のチップで、2チップ構成だったものを、1チップ化。これにより、周辺回路がシンプルになり、より音質を優先した回路設計と部品の選択が可能になったという。実際に設計したデノンのエンジニアも「ワンチップで回路構成がしやすく、その分、パーツ選びなど音質を高める部分に時間を費やせた」という。

「PMA-60」
赤線で囲われたチップが、新世代DDFA
左がPMA-50の回路構成、右がPMA-60の新世代DDFAを使った回路。ワンチップ化されている

 Qualcommで、DDFAの製品マーケティングを担当しているDamien Vandenbeyvanghe氏は、「振幅を見ているのではなく、誤差成分を取り出し、ADコンバータにフィードバックしている事や、その処理をパワーステージの後や、ローパスフィルタの後といったように、2段階に投入する事も可能。電源段では一定の電圧をキープするのが難しいが、揺れが生じた時にも常時モニターしているので、揺れに対して、補完も随時できる。どんなレベルの信号が来たとしても高音質に再生でき、電源効率の良さを維持しながら、高音質を実現できる技術」と紹介。

 1チップ化にあたっては、「デザインノウハウや複雑な設計が必要だった。それを活用した事で、オーディオ特性はそのままに、9×9mmのワンチップに仕上げる事ができた。さらに、384kHz/32bitにも対応できるようになっている。低周波から高周波まで、一定の特性を実現し、ノイズレベルも抑えている」と、特徴を説明した。

DDFAの回路図
Qualcommで、DDFAの製品マーケティングを担当しているDamien Vandenbeyvanghe氏

 電力を増幅する出力段やローパスフィルタには、デノン独自のノウハウを活用したディスクリート回路を採用。サウンドマネージャーの山内慎一氏が、徹底したチューニングを行なっている。

 入力端子としては、USB DAC用のUSB B×1、同軸デジタル×1、光デジタル×2、アナログアンバランス×1を装備。DDFAを採用しているため、デジタルソースを入力した場合は、入力から補間処理、ボリューム調整、増幅、フィードバック処理まで、全てデジタルドメインで行なえる。これにより、アナログアンプで問題になる外来ノイズの影響を排除。透明感や分解能に優れた空間の描写を可能にしている。

PMA-60の背面

 音量は1dBステップで精密に調整でき、デジタル・ドメインで処理するため、左右チャンネルの音量差が生まれるギャングエラーやクロストークを排除している。

 USB DACとしては、DSD 11.2MHzまで、PCMは384kHz/32bitまでに対応。DSDはASIOドライバによるネイティブ再生と、DoPをサポート。PC側のジッタを多く含んだクロックを使わず、PMA-60の超低位相雑音クロック発振器によって生成されるマスタークロックで制御するアシンクロナスモードにも対応している。同軸デジタル、光デジタル入力は192kHz/24bitまでのPCMに対応する。

 USB-B入力に接続したソース機器からの高周波ノイズ流入を防ぐため、高速なデジタルアイソレータも搭載。ICチップ上に組み込まれたトランス・コイルを介して磁気によりデータ転送を行なう事で、音楽データのみを伝送。ノイズをシャットアウトしている。

一番上が従来のクラスDアンプ、その下がPMA-30の回路構成、その下がデジタル・フィードバック・ループを備えたDDFA採用のPMA-60
デジタル・アイソレーターで外部からのノイズを排除

 独自のデータ補間アルゴリズムを使った、アナログ波形再現技術の最新バージョン「Advanced AL32 Processing Plus」も採用。PCM 384kHz/32bitまでの入力に対応しており、「補間ポイントの前後に存在する多数のデータからあるべき点を導き出し、限りなく原音に近い理想的な補間処理を行なう。デジタル録音時に失われたデータを精巧に復元することで、歪みのない繊細な描写、正確な音の定位、豊かな低域、原音に忠実な再生を実現する」という。

 DACをマスターとしてクロック供給を行ない、デジタル回路を正確に同期させるDACマスター・クロック・デザインを採用。マスタークロックをD/Aコンバーターの直近に配置することで余分なジッタの発生を抑え、高精度なD/A変換を実現したという。位相雑音を大幅に低減したクロック発振器も搭載。44.1kHz、48kHz系ごとに、個別のクロック発振器も搭載している。

DACマスター・クロック・デザイン

 ヘッドフォンアンプも、スピーカー出力用パワーアンプとは別に、専用のものを搭載。電圧増幅段にはハイスピード&ローノイズな高速オペアンプを、出力バッファにはディスクリート回路を使っている。また、300Ωや600Ωなどのハイインピーダンスなヘッドフォンでも最適な音量が得られるように、3段階のゲイン切り替えも備えている。なお、ヘッドフォン出力にプラグを差し込むと、スピーカー出力はOFFになる。

ヘッドフォンアンプ回路図

 上位NEシリーズにも採用されている、オーディオ用電解コンデンサや、抵抗器、フィルムコンデンサなどを多数投入。山内氏が試聴を重ねて、最適なパーツを選定。音質を磨くために、電解コンデンサにはパーツメーカーと共同開発したカスタムパーツを使っている。

 Bluetooth受信も可能。コーデックはSBC、AACに加え、aptX Low Latencyもサポート。側面にNFCマークも備え、対応機器と、ワンタッチでペアリングが可能。最大8台までの機器とのペアリング情報を保持できる。同時に3台までのマルチポイント接続も可能。

 本体は横置き、縦置き、どちらにも対応。縦置き時には、ねじ込み式のフットを付け替える事ができ、前面のディスプレイも自動的に表示の向きが回転する。

 既存の「デノン・デザイン・シリーズ」と同様に、不要な装飾を廃し、ミニマルなデザインを採用。本体上下のパネルには3mm厚のアルミニウムを使用し、表面仕上げはサンドブラスト加工。外部振動による音質への影響の抑制にも効果を発揮している。

 定格出力は25W×2ch(8Ω)、50W×2ch(4Ω)。スピーカー負荷は4~16Ωまで対応。ヘッドフォン出力は標準ジャック。サブウーファプリアウトも備えている。

 付属のリモコンは、CDプレーヤーの「DCD-50」も操作可能。ソースダイレクト機能、トーンコントロールなども用意する。電源ケーブルは着脱可能。横置き時の外形寸法は、200×258×86mm(幅×奥行き×高さ)。重量は2.7kg。消費電力は35W。

「PMA-60」
背面

PMA-30

 定格出力は20W×2ch(8Ω)、40W×2ch(4Ω)。増幅回路には、クラスDパワーアンプを搭載。1チャンネルにつき、2つのパワーアンプを使ってパワフルに駆動するBTL構成を採用。

 PWMプロセッサには、広帯域に渡ってローノイズな高音質タイプを採用。PWMプロセッサ、パワーステージの電源回路には、パーツサプライヤーとサウンドマネージャーが共同で開発した、デノン専用の高音質カスタムコンデンサを使っている。

 ローパスフィルタ回路には、カスタムの無酸素銅線と、マンガン亜鉛コアによるインダクターとHi-Fiオーディオグレードの高音質フィルムコンデンサを採用。湿度特性に優れ、安定したパフォーマンスを発揮できるという。

 入力端子としては、同軸デジタル×1、光デジタル×2、アナログアンバランス×1を装備。デジタルソースを入力した場合は、入力から出力まで、すべての処理をデジタルドメインで行なえる。これにより、アナログアンプで問題になる外来ノイズの影響を排除。透明感や分解能に優れた空間の描写を可能にしている。なお、「Advanced AL32 Processing Plus」は搭載していない。

背面の入力端子

 音量は1dBステップで精密に調整でき、デジタル・ドメインで処理するため、左右チャンネルの音量差が生まれるギャングエラーやクロストークを排除している。

ボリューム部分

 デジタルオーディオインターフェイスの近くに配置した、超低ジッタクロックから供給されるマスタークロックで、デジタルインターフェイス、クラスDパワーアンプを動作させる、マスタークロックデザインを採用。ジッタを抑えた再生ができるという。

 ヘッドフォン専用アンプも搭載。電圧増幅段に、ハイスピード&ローノイズな高速オペアンプを、出力バッファにはディスクリート回路を使っている。3段階のゲイン切り替えも装備する。なお、ヘッドフォン出力にプラグを差し込むと、スピーカー出力はOFFになる。

 上位NEシリーズにも採用されている、オーディオ用電解コンデンサや、抵抗器、フィルムコンデンサなどを多数投入。山内氏が試聴を重ねて、最適なパーツを選定。音質を磨くために、電解コンデンサにはパーツメーカーと共同開発したカスタムパーツを使っている。

 Bluetooth受信の対応コーデックはSBC、AAC、aptX Low Latency。最大8台までの機器とのペアリング情報を保持でき、同時に3台までのマルチポイント接続も可能。NFCには対応していない。

 本体上下のパネルには3mm厚のアルミニウムを使用し、表面仕上げはサンドブラスト加工。外部振動による音質への影響の抑制にも効果を発揮している。

 ヘッドフォン出力は標準ジャック。サブウーファプリアウトも備えている。付属のリモコンは、CDプレーヤーの「DCD-50」も操作可能。ソースダイレクト機能、トーンコントロールなども用意する。横置き時の外形寸法は、200×258×86mm(幅×奥行き×高さ)。重量は2.7kg。消費電力は35W。

音を聴いてみる

 サウンドマネージャーの山内氏は、「PMA-50はデノン初のDDFA採用アンプとして、開発陣にとって思い入れの深いモデルだった。その甲斐もあり、市場で好評だった。その次のモデルとしてPMA-60は、さらに力を込めたモデル」と説明。

 開発にあたっては、「PMA-50の後に開発した製品で蓄積したノウハウを、PMA-60に入れ込んだ。さらに、PMA-2500や1600といった上位機種で使ったカスタムコンデンサやカスタムパーツを投入した部分もある。シャーシが小さいのでスペース的な制約は若干あったが、メーカーに依頼し、それに合わせてコンデンサを少し小さくするなど工夫している」という。

 音の進化については、「PMA-50と比べ、分解能が向上し、細かいディテールも出て、よりクリアな音になった。キレの良さもあり、上位機種のスペーシャスなサウンド、広がりのある音に近づいた。サウンドステージもより洗練されている」という。

 PMA-30については、「使いやすく、気軽に高音質を楽しみたい人に向けた製品。音質としてはPMA-60譲りの部分もある」とした。

 実際に試聴すると、山内氏の言葉どおり、PMA-30/60のどちらも、音場が広く、クリアでハイスピードなサウンドだ。30は押し出しがやや強めで、躍動感のあるサウンド。60は空間の広さが30よりもさらに広大で、奥行きも深い。SN比が良く、無音の空間に、輪郭がクリアなシンバルやボーカルが浮遊するように浮かぶ様子がクッキリと見える。DDFAらしいサウンドにより磨きがかかり、新たなステージに昇華した事を感じさせるクオリティだ。

サウンドマネージャーの山内慎一氏
試聴デモの様子