東芝、テレビ事業の黒字化で全社赤字幅が縮小

-2008年度通期業績の修正を発表

東芝本社ビル


4月17日発表

 株式会社東芝は17日、2008年度通期(2009年3月期)連結業績予想を修正した。

 2009年1月の公表値に比べて、売上高は500億円減の6兆6,500億円(前年比13.2%減)、営業損益は300億円増のマイナス2,500億円の赤字(前年は2,463億円の黒字)、税引前損益は500億円増のマイナス2,800億円の赤字(前年は2,650億円の黒字)、当期純利益は700億円減のマイナス3,500億円の赤字(前年は1,274億円の黒字)とした。

 営業損益は、テレビ事業が黒字化するなどデジタルプロダクツが50億円増、システムLSIやメモリの販売増により、電子デバイスで150億円の増益効果があり、当初予想よりも赤字幅が減少。一方で、地方税に関わる繰延税金資産の取り崩しを約850億円追加で行なったため、純損益では赤字幅が拡大した。

 セグメント別では、デジタルプロダクツの売上高は1月公表値に比べて100億円減の2兆4,700億円、営業損益は50億円増のマイナス150億円の赤字。電子デバイスは売上高100億円増の1兆3,200億円、営業損益は150億円増のマイナス3,250億円の赤字。社会インフラでは、売上高が据え置きの2兆4,000億円、営業損益は50億円減の1,150億円の黒字。家庭電器は売上高が100億円減の6,700億円、営業損益は50億円増加のマイナス250億円の赤字とした。

 テレビ事業の黒字化について、村岡富美雄代表執行役専務は「いばれるほどの黒字ではなく、ブレイクイーブンに近いものだが、2007年下期以降、3半期連続で黒字化している。当社より規模が大きい他社が赤字であることに比較すると、黒字化は評価できる」とした。

 なお、PC事業の売上高は50億円増加の9,550億円、営業損益は据え置きの140億円の黒字とした。だが、「4~12月までの9か月累計では242億円の黒字。それが通期で140億円となることから逆算すると、第4四半期は100億円の赤字になっている」と、手放しでは評価できないことを示した。


■ 液晶事業の抜本的な改革など、体質改善プログラムを推進

 一方、同社では体質改善プログラムを実施しているが、その進捗状況についても明らかにした。

 課題事業における事業構造改革については、デジタルプロダクツ事業において、テレビ事業における海外生産体制の見直し、プロジェクタの事業終息、携帯電話事業における海外生産拠点の活用などを推進することを示した。

 また半導体事業においては、四日市工場におけるNAND型フラッシュメモリ生産で、2~3月にかけて3割減産を行なったが、「4~6月も当面減産を継続する。7月以降は市況を見て判断することになる」(村岡代表執行役専務)としている。

 そのほか同事業においては、LCDドライバなどの不採算事業領域からの撤退または縮小の一方で、アナログ、イメージセンサー、ワイヤレス、テレビ用LSIに傾注。2009年度中には、北九州工場におけるシステムLSI生産を大分工場に移管。東芝コンポーネンツ、浜岡東芝エレクトロニクスにおける生産規模縮小などによる、ディスクリート後工程の海外生産比率の拡大などに取り組む。

 液晶事業では、今年3月までに深谷工場、魚津工場の製造ラインを4イラン停止したこと、東芝松下ディスプレイテクノロジーの100%株式取得による抜本的事業構造改革の実施などに取り組む。

 家庭電器事業では、愛知工場における製造を終息。ヒーポン洗濯乾燥機を中国・南海の東芝家電製造有限公司へと生産を移管するとともに、IHクッキングヒーターを新潟の東芝ホームテクノへ移管。一方で、家電事業の開発拠点としては、秦野工場を閉鎖し、クリーナーを愛知工場へ、調理機器を東芝ホームテクノに集約。これらを2009年度中に実行する。

 セグメント別での固定費の削減目標は、デジタルプロダクツでは研究開発費の削減を中心に500億円、電子デバイスでは1,600億円、社会インフラで400億円、家庭電器で300億円、その他事業で200億円の合計3,000億円の固定費削減を行なう。「社内ではこれに10%上乗せした目標を掲げている」(村岡専務)という。

 主要施策としては、減価償却費やリース料の見直し、研究開発費の削減、役員報酬の一部返上を含む人員関連費用の削減、社外委託業務の内部取り込み、オペレーション費用削減など製造間接費の見直しなどをあげた。

 設備投資では、2008年度の4,300億円から、2009年度は2,500億円とし、なかでも半導体事業の設備投資では、2008年度の2,300億円から、2009年度は1,000億円未満に縮小する。

 研究開発費では、2008年度3,900億円から、2009年度は3,200億円とし、重点投資分野として、環境、エネルギー、データストレージ分野に力を注ぐという。

 一方、人的施策としては、正規社員を中心に、電子デバイスや家電部門から、強化事業部門である社会インフラ、新規事業への人員シフトを3,000人規模で行なうほか、社外委託業務や有期限雇用業務の取り込みを行なう。有期限雇用社員は、2008年度末までに4,500人を削減。さらに2009年度中に3,900人の削減を行なう。

 そのほか、半導体事業、液晶事業を中心に2008年度実績で、2万6,000人を対象に、帰休、稼働調整を実施。2009年度は需要動向にあわせて適宜実施し、ワークシェアリングを行なう。

 成長事業への集中と選択の加速として、社会インフラ事業において、ウラニウム・ワン社への出資をはじめとする原子力事業のグローバル展開の加速のほか、環境に配慮した総合エネルギーシステム事業の強化を促進。

 さらに、HDD事業では富士通からの事業取得、NAND型フラッシュメモリ事業における32nm世代製品の9月の出荷、新照明事業においては、グローバルでのLED商品の拡充や、4月からの海外販売体制の強化に取り組み、グローバルシェアナンバーワンを目指すとした。

 なお、村岡専務は2009年度の業績にも言及。「売上高は横ばいを見込むものの、HDD事業の買収分が上乗せとなる。そのなかで、3,000億円の固定費の削減、半導体の微細化の加速によるコストダウンなどによって、利益確保を目指す」とした。


(2009年 4月 17日)

[ Reported by 大河原克行 ]