ソニー、初のデジタルノイズキャンセリング“イヤフォン”

-約3万円のカナル型。約1万円のアナログ型も


MDR-NC300D

6月21日発売

標準価格:9,975円~30,975円

 ソニーは、ノイズキャンセリング(NC)製品の新ラインナップとして、デジタルタイプのNC機能を搭載したカナル型(耳栓型)イヤフォン、「MDR-NC300D」を6月21日に発売する。価格は30,975円。騒音の約98.4%を低減するという。

 また、アナログNCタイプのカナル型イヤフォン新モデル「MDR-NC33」も6月21日に発売する。こちらは9,975円。カラーリングはブラック(B)、ホワイト(W)、バイオレット(V)、レッド(R)を用意する。


■ MDR-NC300D

 

MDR-NC500D
 ソニーは、デジタル信号処理でノイズキャンセルを行なう、世界初のデジタルノイズキャンセリングヘッドフォン「MDR-NC500D」(49,350円)を2008年4月に発売しているが、そのデジタルノイズキャンセル機能をカナル型イヤフォンに投入したのが「MDR-NC300D」となる。なお、2日には「MDR-NC500D」のマイナーチェンジモデル、「MDR-NC600D」も発表されている。

 従来、ノイズキャンセル機能はアナログ信号処理で行なっていたが、騒音をデジタル信号化して高速処理する「DNC(デジタルノイズキャンセリング)ソフトウェアエンジン」を採用しているのが特徴。イヤフォンに内蔵したマイクで検知した外部騒音にデジタル化信号処理を施し、高精度な逆位相の音を発生させ打ち消し。騒音を約98.4%低減している。

 アナログ方式と比べ、演算において外来電気ノイズの影響を受けないことや、処理が高精度でばらつきが無いこと、アナログでは不可能な複雑な波形の形状をデジタルフィルタで設計できることなどが利点となっている。

 

DNCソフトウェアエンジン、S-Master、ADC、デジタルサウンドエンハンサーなども集積

 ヘッドフォン型の「MDR-NC500D」では、このエンジンを汎用のDSPで走らせていたが、カナル型イヤフォンではケーブル途中のNCユニットで処理する必要があり、汎用DSPではサイズや消費電力がネックになる。そこで、新たに専用の「インテグレーテッドDNCプロセッサ」を開発。ここにDNCソフトウェアエンジンだけでなく、同社のフルデジタルアンプ「S-Master」なども集積。1チップ化することで、小型/省電力を実現している。

 

16mm径の大口径ユニットを搭載

背面マイク部

 

NCユニットの液晶にモードが表示される。周囲の環境に応じて自動的に切り替わる

 集音用マイクはイヤフォン部に装備。ケーブル途中のNCユニットは質感の高いアルミ製。電源は単3電池1本で、アルカリの場合は20時間の使用が可能。NC機能をOFF(電源OFF)にしたままで、パッシブイヤフォンとして音を出すことはできない。

 NC機能の利用方法も改良。NC500Dは、AIボタンを押すことで、航空機内用や、電車バス内用など、3つのNCモードの中から最適なものが自動選択されていたが、NC300Dはボタンを押す必要が無くなった。周囲の騒音に合わせ、A/B/Cの3種類から、常に最適なモードが選択される。用意されるモードは以下の通り。

  • NCモードA:主に航空機内の騒音を低減
  • NCモードB:主に電車やバス車内の騒音を低減
  • NCモードC:オフィスや勉強部屋などのOA機器や空調音を低減

 これにより、「航空機でも小型なので、騒音が電車などに近い」などという場合でも最適なモードが選択されるほか、「電車からホームに降りたのでBモードからCモードへ移行」など、ユーザーが操作しなくても細かなモード切替が自動で行なえる。モードの選択は3秒程度周囲の騒音を収集した後で行なわれるほか、異なる騒音環境になってから若干時間をあけて切り替わることで、モードがコロコロ変化して不快に感じることも防いでいる。

 

NCユニットはアルミ製操作部

背面。クリップは取り外し可能

 イヤフォン部の搭載ユニットは、カナル型イヤフォン「EX700SL」と同サイズとなる、大口径16mmを採用。専用設計で、イヤーピースはユニットの真横に配置する「バーティカル・イン・ザ・イヤー方式」。ハウジングの上部には集音用のマイクを内蔵する。再生周波数帯域は6Hz~24kHz。感度は103dB/mW。インピーダンスは16Ω。

 

イヤーピースと耳の隙間から騒音が入る

 なおNC機能では、個人の耳の形状によってイヤーピースと耳の間に隙間ができ、そこからの空気漏れが耳に届く騒音の大小に影響するという、大きな問題があるが、NC機能を微調整する「NC OPTIMIZE」ボタンを搭載。これを押すと、空気漏れによる騒音増減をカバーするキャンセル信号の量が調整できる。具体的には装着後に「NC OPTIMIZE」ボタンを押し、「騒音が少なく聞こえる」数値まで調節するという使い方になる。また、NC性能を良くするため、低音量が増加しがちなNCヘッドフォンの再生音をフラットにするため、デジタルイコライザで再生音に対するNC機能の影響(低域のブースト)も抑えている。

 

背面に備える「NC OPTIMIZE」ボタン

「NC OPTIMIZE」ボタンを押して調節しているところ

 この機能とは別に、サウンドモードも搭載。ノーマルモードに加え、映画鑑賞を想定し、小さな音を大きく、大きな音を小さくコンプレッションし、セリフの中音域をわずかに強調する「Movie」モード、低音重視の「Bass」モードが選べる。

 イヤーピースは、音道の形状を変化させない堅めの素材と、耳に触れる部分の軟らかい素材の両方を取り入れたハイブリッドイヤーピース。7種類のサイズを同梱しており、ハウジングの高さが高めで、径がノーマルな「ML」、径が太い「LL」と、高さが普通ので径が小さい「S」、普通の「M」、太い「L」、高さが低くて小さい「SS」、通常径の「MS」を用意する。

 コードはU型で、NCユニットから左イヤフォンまでが約120cm。NCユニットの縦は約7cm。NCユニットからステレオミニの入力端子までは30cm(合計コード長1.5m)。約1mの延長コードも付属する。なお、NCユニットとイヤフォン部は脱着できない。重量はヘッドフォン部が約8g、電池を含むNCユニットが約53g。キャリングケース、ポーチ、航空機用アダプタ、クリップ、コード長アジャスターなどを同梱する。

 

電源は単3電池1本付属のイヤーピース高さが違うのに注目

 

キャリングケースも付属するパッケージ

□関連記事
【2008年4月11日】【AVT】世界初デジタルNCヘッドフォンの高音質の秘密
-ソニー「MDR-NC500D」のノイズ低減技術を探る
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080411/avt023.htm
【2008年3月28日】ソニー、デジタルNCヘッドフォンを仕様変更
-「MDR-NC500D」のバッテリ駆動時間を約15時間に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080328/sony.htm
【2008年3月13日】ソニー、騒音を99%低減するノイズキャンセルヘッドフォン
-世界初のデジタル信号処理を採用。49,350円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080313/sony.htm


 ■ MDR-NC33

 2006年に発売した「MDR-NC22」の後継モデル。アナログ処理方式のNCイヤフォンで、新回路を採用したことで、NC機能を前モデルより向上。総騒音抑制量が約9dB(約87.4%)から、約10dB(約90%)にアップしている。

 また、消費電力も大幅に削減。単4電池1本を使用するが、アルカリ電池の利用で従来は50時間だった電池持続時間が、2倍の100時間にのびている。

 

MDR-NC33左が前モデルのNC22

カラーリングはブラック(B)、ホワイト(W)、バイオレット(V)、レッド(R)を用意

 ユニットは13.5mm径。形状も「バーティカル・イン・ザ・イヤー方式」を採用した。再生周波数帯域は10Hz~22kHz。音圧感度は98dB/mW(NC ON時)、99dB/mW(NC OFF時)。イヤーピースはハイブリッドタイプでS/M/L。キャリングポーチ、航空機用プラグアダプタ、30cmの延長コードなどが付属する。

□製品情報
http://www.ecat.sony.co.jp/avacc/headphone/acc/index.cfm?PD=34655&KM=MDR-NC33
□関連記事
【2006年10月6日】ソニー、ノイズキャンセルイヤフォン新モデル
-NCユニットを小型化、騒音を1/4まで低減
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061006/sony1.htm
【2006年9月13日】ソニー、新ヘッドフォン/イヤフォン10機種以上公開
-NCや低価格「EXモニター」、2万円のヘッドフォンも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060913/sony2.htm


(2009年 6月 2日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]