パナソニック、フルHD・3D対応50型PDPの発表会を開催

-2010年商品化に向け大きく前進。大型化と中小型化も


9月28日発表


 

3D映像の視聴に利用する高精度アクティブシャッターメガネ
 パナソニックは、家庭のリビングルームにおいて、3D(立体)映像の視聴を可能とするフルHD・3D対応50型PDP(プラズマディスプレイ)および、3D映像の視聴に利用する高精度アクティブシャッターメガネを開発。2010年度に商品化する計画を明らかにした。

 同社では、103型PDPと、Blu-rayプレーヤーによる試作品を公開していたが、これをさらに進化させ、ホームシアターのボリュームゾーンとして期待される50型で3D化を実現した。

パナソニックが開発したフルHD 3D対応50型PDP

 

パナソニック 常務役員 AVCネットワークス社 上席副社長 宮田賀生氏
 9月28日に、大阪府茨木市のパナソニックプラズマディスプレイで行なった会見で、パナソニックの常務役員 AVCネットワークス社 上席副社長 宮田賀生氏は、「パナソニックは、新しい、エキサイティングなテレビ体験の創造を目指す。これを具現化するのが3Dテレビということになる。発売時期や価格は、現時点では明確にはできないが、来年稼働する尼崎第5工場において生産するNeoPDP ecoパネルを使用することで、3D映像を実現する上での課題を解決した。50v型というリビングサイズで製品を投入することで、家庭における3D時代が到来することになる」とした。

 AVCネットワークス社技術統括センター高画質高音質開発センター所長 宮井宏氏は、「本物の3D画質を実現するには、高臨場感、劇場品位の奥行き感、実物の質感およびリアリティが求められる。PDPは、大画面化が容易で、漆黒の黒の表現、伸びのある輝きに代表される白の表現に優れており、高いコントラストを実現できる。3D映像にはプラズマが最適であり、プラズマならではの高速表示性能を生かした新開発の超高速表示技術によって、二重像を最小化することができた。さらに、消光比1000:1以上という漏れ光を最小限に抑制した高遮断特性を持ち、不要光を遮断する高精度タイミング制御技術を採用したアクティブシャッターメガネを採用することにより、さらに二重像を最小化した」という。

 

パナソニック AVCネットワークス社技術統括センター高画質高音質開発センター所長 宮井宏氏
 パナソニックの3D再生技術は、フレームシーケンシャル技術を用いており、3D専用のカメラで右眼用、左眼用にそれぞれ撮影された映像を再生。これを専用のシャッターメガネで見ると、視差による奥行き感を脳が認識し、3D映像を視聴できるというもの。片眼で毎秒60コマの表示を左右交互に高速再生するため、高速で、かつ明るいパネルが必要になる。

 パナソニックでは、NeoPDP ecoパネルによる高発光効率技術を生かすとともに、電子放出特性と壁電保持機能を両立した新素材による新ダイナミックブラックレイヤーおよび120Hz高速駆動を可能にする新LSIの採用によって短い時間でも明るさを確保できる高速駆動技術を実現したほか、残光時間を従来比3分の1とした新蛍光体の開発やパネル発光重心位置を制御し、残光の少ないパネル発光とする高速インパルス表示により、左右の映像間の二重像を低減できる二重像低減技術を実現。

 

パナソニック 上席理事 AVCネットワークス社主席技監 佐藤陽一氏
 さらに、計測限界値である1080本の動画解像度を実現するパネルと、高精度動き適応型ベクトル予測により、動きのある映像でも事前に予測して発光を制御する新アルゴリズムの採用によって、3Dの高速表示でも高い動画解像度を実現する高速動画処理技術を確立。「これらの技術は、3D映像を見る上で最適な技術といえるが、2D映像においても、さらにきめ細かで、クリアな映像で視聴できるようになる」(上席理事 AVCネットワークス社主席技監 佐藤陽一氏)とした。

 パナソニックでは、2008年10月のCEATEC 2008でフルHD×2ch方式の3D映像システムを提案。2009年1月のCESでBlu-ray 3Dタイトルオーサリングセンターをハリウッドに発足したことを発表。4月のNAB 2009においては、プロ用3D制作機器の開発に着手すると発表するなど、3Dに対する取り組みを加速してきた。

 

 「6月にはHDMIによる3D伝送規格が決定し、BDAでは、Blu-rayの3D規格の統一が年内に出ることになる。パナソニックでは、規格化の活動に務める一方、ハリウッドとの協業、プロAV機器事業、半導体プラットフォームの開発、そして、家庭用AV機器事業においても3D化を進めている」(宮井氏)としたほか、「3Dテレビは、業界で一番乗りでやっていきたい。今回、50型を発表したが、市場動向を見ながら大型化の方向と中小型の方向にも取り組んでいく。当社には、液晶パネルでは、IPSα方式という優れたパネルがあり、これを活用することで、サイズにおいてもスケーラビリティを追求したい」(宮田氏)として、将来的には液晶テレビにおいても、3D化を図っていく姿勢を示した。

 なお、今回発表したフルHD・3D対応50型PDPおよび、高精度アクティブシャッターメガネは、10月6日から千葉市の幕張メッセで開催されるCEATEC JAPAN 2009のパナソニックブースで展示される。


(2009年 9月 28日)

[Reported by 大河原克行]