パナソニック、姫路の液晶パネル工場で竣工式

-5年後に改修される姫路城を、姫路の液晶パネルで


兵庫県姫路市のIPSアルファテクノロジ姫路

6月2日竣工式


IPSアルファテクノロジ姫路の竣工式は、午前10時から開かれた
神事の様子
 パナソニックは6月2日、兵庫県姫路市のIPSアルファテクノロジ姫路において、竣工式を開いた。午前10時から行なわれた神事および直会では、IPSアルファテクノロジ姫路の米内史明社長、パナソニック AVCネットワークス社の森田研社長や、宮田賀生上席副社長が参加したほか、兵庫県の吉本知之副知事、姫路市の石見利勝市長も駆けつけた。

 IPSアルファテクノロジ姫路の米内史明社長は、「IPSアルファ液晶パネル技術を進化させるとともに、世界トップの生産コストを追求。圧倒的なコスト競争力を持つパネルを、パナソニックの世界の液晶テレビの組立工場に供給し、これらの組立工場と連携することで、液晶テレビのトータルコストを引き下げていきたい」と挨拶。

 パナソニック AVCネットワークス社の森田研社長は、「IPSアルファテクノロジ姫路の稼働によって、40型以上のプラズマパネルに加えて、中小型向けの液晶パネルも自分たちの思いで作れるようになった。両方を持つことで、今年度数100万台の上乗せが期待できる」とする一方、「一度稼働を延期したものを、また前倒しにするというように、前後運動したことは反省している。もう少し早く稼働させて需要に応える必要があった。長期的視点で見る必要があった」と語った。

IPSアルファテクノロジ姫路の米内史明社長パナソニック 代表取締役専務 AVCネットワークス社 社長 森田研氏
神事に出席するIPSアルファテクノロジおよびパナソニック関係者など神事で玉串奉奠を行なうIPSアルファテクノロジ姫路の米内史明社長玉串奉奠を行なうパナソニック 代表取締役専務 AVCネットワークス社 社長 森田研氏

乾杯の音頭をとった、日立製作所 三好崇司執行役副社長
 また、乾杯の音頭をとった日立製作所・三好崇司執行役副社長は、「薄型テレビの事業は、グローバルに広がり、需要変化も激しい。ロジスティックの整備や、重要部材の安定的な確保、効率的な確保が大切であるが。その点でも姫路は最適の地であると考えている。最新の設備を備えた工場として大きく発展することを期待したい。日立としても、できる範囲で協力したい」と挨拶した。

 一方、兵庫県の吉本知之副知事は、「2008年2月に、姫路での工場建設が発表されてから今日まで道のりを考えると大変な努力、苦労があったと思われる。兵庫県は優れた交通環境と技術集積、優秀な人材が揃っており、将来性の高い企業の誘致に適している。兵庫県内には、尼崎のプラズマパネル工場、太陽電池の工場もある。IPSアルファテクノロジ姫路は、県内に立地した先端企業の中核として、地域の経済発展のみならず、日本の経済をリードする拠点としても期待したい」と語った。

 姫路市の石見利勝市長は、「この工場で生産した液晶パネルが、世界市場における厳しい競争のなかで、すばらしい成果をあげるものと期待している。また、姫路城は、昨年10月から改修作業に入っており、5年後に真っ白な姿を見せることになる。IPSアルファテクノロジ姫路で生産された液晶パネルで、世界遺産の姫路城を楽しんでもらえる日がくることを祈っている。円滑な操業環境、社員の生活環境などの基盤整備に努力する」とした。

兵庫県の吉本知之副知事姫路市の石見利勝市長

万歳和唱の音頭をとった竹中工務店の辻宏副社長
 さらに、万歳和唱の音頭をとった竹中工務店の辻宏副社長は、「世界的にも液晶パネルの需要が拡大している。IPSアルファテクノロジ姫路最先端の設備を駆使した工場であり、この工場が拡大する需要に対応し、世界に戦いを挑んでいく工場になることを期待している」と語った。

 IPSアルファテクノロジ姫路は、IPSα方式の液晶パネル生産を行なうパナソニックが全額出資する生産拠点。2010年4月12日から第8世代の液晶パネル基板による量産を開始しており、32型で18面取り、42型で8面取りが可能となっている。

 第1期の生産能力として、今年7月には、32型換算で月40万5,000台のパネルを生産。2011年2月には、32型換算で月産81万台の生産規模に拡張する計画。IPSアルファテクノロジの茂原工場の月60万台の生産体制とあわせて、月産141万台の体制が整うことになる。

 同工場が立地しているのは、出光興産兵庫製油所の跡地で、2008年7月に着工。当初の計画では2010年1月に稼働を予定していたものの、経済環境の変化から2010年7月に稼働を延期。だが、薄型テレビの世界的な需要回復にあわせて、予定を3カ月前倒しして量産稼働していた。敷地面積は、約36万1,000m2。4階建ての生産棟を持ち、投資額は2,350億円。

姫路駅からタクシーで約20分程度の距離にあるIPSアルファテクノロジ姫路の看板敷地内には、まだ空きスペースがある

ガラス基板の投入ラインの様子
 IPSα方式の特徴を生かし、液晶パネルの露光工程の処理回数を削減した高効率ラインを実現したのが特徴で、生産リードタイムの短縮のほか、第6世代パネルを生産する茂原工場に比べて1.6倍の投資生産性を達成しているという。

 さらに、工場の水使用量を茂原工場に比べて35%削減するほか、CO2排出量を23%削減。32型1台あたりの生産エネルギーコストを約2割削減するなど、「最新鋭の循環型eco工場」を目指すという。

 また、姫路市湾岸部の郷土種であるウバメガシを緑地計画に取り入れて全敷地の約22%を緑地化。約1,200台が収容可能な駐車場には透水性アスファルト舗装を採用。外周歩道には廃ガラスをリサイクルした床ブロック材を採用し、雨水の流出抑制、ヒートアイランド現象の緩和、車の走行音の軽減を図っている。

姫路市湾岸部の郷土種であるウバメガシを緑地計画に取り入れて全敷地の約22%を緑地化外周歩道には廃ガラスをリサイクルした床ブロック材を採用約1,200台が収容可能な駐車場には透水性アスファルト舗装を採用している

兵庫県姫路市のIPSアルファテクノロジ姫路。現時点では、まだPanasonicのロゴは入っていない
 そのほか、高強度コンクリートを充填した鋼管柱による躯体構造システムおよびコンクリート充填鋼管柱構造を採用。構造材にセメント製造工程で発生する産業廃棄物を適切に処理・再資源化したものを混合利用。外壁には光触媒コーティングを施すといった環境に配慮した建物としている。

 照明に関しては、人感センサー連動制御により、不必要な照明の点灯をなくし、消費電力を節約。自己発電機能付き自動水栓の採用により、省エネルギー化を実現しているほか、雨水の貯留槽の設置により、緑地への潅水に雨水を利用して水資源の有効活用を図っているという。CASBEE(建築物総合環境性能評価システム)においては、最高基準のSランク評価となっている。

生産棟のメインエントランスの様子エントランスを入ったところにあるホール照明は人感センサー連動制御により、不必要な照明の点灯をなくしている

 


 


(2010年 6月 2日)

[Reported by 大河原克行]