【IFA 2010】欧ソニー西田社長が語る、3DとQriocityの将来
-ソニーが目指すネット配信の形、Google TV連携など
ソニー・ヨーロッパの西田不二夫プレジデント |
IFA 2010開幕前の9月2日(現地時間)、前日のプレスカンファレンスで新製品群を披露した欧ソニーの西田不二夫プレジデントが、3Dテレビやネットワークサービスなど、ソニーの2010年戦略について記者向けに説明を行なった。
西田氏は3Dテレビなど新製品の戦略と、欧州における普及状況を説明したほか、ハードウェアがネットワークに対応した次のフェーズと位置付ける配信サービス「Qriocity」についても語った。
■ 3Dテレビの出足は予想通り。普及に向けた課題も
3Dテレビについては、「各社が(6~7月に開催された)FIFAワールドカップを目指して発売してきた中、ソニーは欧州で5月に発売したが、店頭でのデモなどの効果で印象が良かったが、W杯が終わってスローダウンしている。ただ、年内にいきなり液晶テレビの2~3割が3Dになるとは思っていない。最初の年は5%、その次は20%と見ており、その通りにきている」という。世界全体では2012年度にBRAVIAの40%を3D対応にすることを目指している。
3D事業全体としては「期待しているのはPlayStaion 3のゲーム。今年末には3D対応ゲームがでてくるだろう。また、映画についても来年は業界全体で30~40タイトルが想定されている」としたほか、デジタルカメラにおける「3Dスイングパノラマ機能」などユーザー自身が作成する3Dもを含め、コンテンツの充実への期待を表した。
このように普及へのカギとしてのコンテンツの重要性を指摘しながらも、「全部の放送が3Dに対応することはないだろう。サッカーでも90分全てを3Dで観ると疲れてしまう。通常は2Dのみで、リプレーなど面白いところだけは3Dにするといいのでは」との見方も示した。
3D普及のカギを握るコンテンツとして、前日のプレスカンファレンスではサッカーなどのスポーツが挙げられた。また、ゲストとして来場したラン・ランの演奏が3Dでリアルタイム撮影/上映された |
3Dテレビのような新しい製品に対する欧州の国民性の違いについて、西田氏は興味深い見方を示す。世界全体でみると「最も3Dの普及が早いのは日本人だろう。新しいものが好きだし、隣が買ったからうちも……というのもある。その次は欧州だと思うが、米国も同じくらい」とする。
欧州の中での違いとしては「一番がスイス。その次はオランダ。スイスはお金があるからかもしれない」と指摘する。そのほかにも「英国は米国を追いかけ、ドイツは“いいもの”か“めちゃくちゃ安いもの”の両極端。フランスも高いものに飛びつく」との印象を語った。
「モノリシックデザイン」をアピールする展示 |
Blu-ray Discプレーヤーの欧州での普及については、今年に全世界で1,600万台販売された中、欧州は400万台だった。ソニーの欧州におけるシェアは2位。西田氏は「業界全体でBDプレーヤーは年率約60%ずつ増えており、欧州のシェアで20%(PS3を除く)くらいは取れる。普及のカギとしてはまずネットワーク対応を挙げ、「いち早くBRAVIA Internet VideoのサービスをテレビとBDプレーヤーの両方で始めた。その次は3D化をやっていきたい」としている。
■ Google TVとQriocity
IFAで参考展示されたGoogle TV |
一方で「Google TVはソニーだけの製品ではないオープンアーキテクチャ。AVとネットワークが融合して一番いい商品を作るため、立ち上げは一緒にやっているが、その後は他社も参入してくるだろう」とする。
また、前日に行なわれたプレスカンファレンスでも注目されたオンライン配信サービス「Qriocity」(キュリオシティ)についても説明した。
同社は4月に米国で開始された動画配信サービス「Video On Demand powered by Qriocity」を、欧州でも秋から開始。さらに、具体的な地域は明かされなかったものの年内にクラウドベースの音楽配信サービス 「Music Unlimited powered by Qriocity」も開始予定であることを明らかにしていた。
Qriocityの音楽配信サービスを年内に開始予定 |
Qriocityというサービスの構想として、「ソニーはハードウェアのネットワーク対応を謳ってきたが、つながった後の提案として立ち上げる」と説明している。これまでもソニーグループ内にはPlayStation Network(PSN)やBRAVIAでの動画配信など、複数の配信サービスが存在している。QriocityもアーキテクチャとしてはPSNのエンジンを使っているため、全くの新しい技術ではないという。
早期にこれらのサービスを統合すべき、という意見もある一方で、ユーザー層に合わせた訴求の重要性も西田氏は指摘する。「ゲームユーザーは年齢層などのセグメンテーションがはっきりしている。Qriocityはソニーのネットワーク配信のプラットフォームであり、テレビだけでなくVAIOなど他の機器にも将来的にはつながるだろう。米国と欧州の一部で始まっている電子書籍『Reader』のコンテンツについても、今は個別サービスで配信しているが、それがQriocityに統合することも考えている」と述べた。
また、現在はソニーの独自サービスとして展開しているQriocityだが、「将来的に、サードパーティが参入する意向があればどんどん受け入れる」とし、「Google TVの強みは検索機能。QriocityとGoogle TVが、検索機能などでシームレスにつながる、という形にも将来的にはなるかもしれない」と話した。
こうした配信サービスが、日本国内より先に米国や欧州でスタートされることについては、私見と断った上で「英BBCの番組が無料で配信されているなど、IPTVに関しては米欧が先行している。著作権処理などの環境整備が進まない限り、日本は米欧と同様には始められないだろう」としている。
(2010年 9月 7日)
[AV Watch編集部 中林暁]