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クリプトン、卓上“箱庭オーディオ”向けに、小型オーディオアクセサリ開発中。効果を体験してみた

新スピーカー「KS-11GN/W」と、試作中の本格スタンドを組み合わせたところ

小型かつ高音質なアクティブスピーカーを長年展開し、デスクトップオーディオに注力しているクリプトン。そんなクリプトンが、人気モデル「KS-11G」に、木目調パネルを採用したニューフェイス「KS-11GN/W(ウォールナット)、O(オーク)」の2モデルを23日発表したが、同時に、デスクトップで使えるスピーカースタンドや、小型の調音パネルといったオーディオアクセサリを開発している事も明らかになった。

発表会において、その効果を体験したので、木目調パネル「KS-11GN/W/O」のサウンドと共にレポートする。

なお、これらのオーディオアクセサリは、まだ正式に製品化が決まったものではなく、試作中のものとなる。また、東京国際フォーラムで6月21日、22日に開催される「OTOTEN2025」にも参考出品する予定で、そこで効果を体験する事も可能。来場者の意見なども聞きながら、製品化に向けて検討していくという。

デスクトップで使える小さなオーディオアクセサリ

オーディオアクセサリというと、部屋の壁に置いて、音の反射や吸音を行なう調音パネルや、ブックシェルフスピーカーを設置するスタンド、フロア型スピーカーの下に配置するオーディオボードなどを連想するが、そうしたアクセサリーを、デスクトップでも使いやすいように小型化しているのが、クリプトンが試作している製品群の特徴だ。

具体的には、3種類の製品が試作されている。なお、試作品の名称は、編集部が呼称しているもので、実際の製品名とは異なる。

本格スタンド

1つは、KS-11Gなどの小型アクティブスピーカーを卓上に設置する際に、ユニットと耳の高さを合わせつつ、振動を机に伝えないなどの効果も発揮する「本格スタンド」。

この本格スタンドは、底板に、クリプトンのオーディオボードでも使われている技術である鉄球サンドを封入。防振効果を向上させた本格的なもの。KS-11Gよりもサイズの大きなアクティブスピーカーも設置できるように、天板などのサイズが一回り大きなモデルも試作されており、ADAM Audioの話題のスピーカー「D3V」も設置できるようになっている。

一回り大きなサイズも試作中
「D3V」の紙模型を載せたところ

2つ目は、上述したスタンドのより低価格なバリエーションで、アクティブスピーカーを上向きに配置できる、斜めになった「小型スタンド」。スピーカーを斜め上向きに固定する事で、リスナーの耳に、スピーカーのユニットを向かせる事ができる。

スピーカーを斜め上に向けられる「小型スタンド」

素材には比重の大きい“ゴムの木”ランバーコア材を使っている。手掛けた、クリプトンの渡邉勝氏によれば、ゴムの木は、樹液が出なくなると20年に一度、プランテーションで伐採されてしまうが、切られた木材の内部にはまだ樹脂が残っており、比重は大きく、板としても硬く、オーディオ用として理想的な材料だという。

3つ目は、「小さな調音パネル」。クリプトンは、自立する調音パネルとして「AP-R50」などを手掛けているが、その技術を使いつつ、サイズを小さくしたもの。デスクと密着している背後の壁に立てかけたり、別途用意したレフ板を固定するクランプなどで、デスクに固定して使うことを想定している。

「小さな調音パネル」
このような大型の調音パネルが既に発売されており、それを小さくしたものと言える

背面部分に、スピーカーの吸音材にも使われるミスティックホワイトを入れつつ、前面には穴あきボードを配置。吸音するだけでなく、このボードが適度に音を反射させる事で、デスクトップの音響環境を改善できるという仕組みだ。

背面部分に、スピーカーの吸音材にも使われるミスティックホワイトを配置
表面には穴あきボードを配置している

使い方としては、アクティブスピーカーの背面に配置し、リアのバスレフダクトから放出された低音が、壁に反射して膨らまないよう吸音したり、ユニークな提案としては、スピーカーの間にあるPCディスプレイの前に調音パネルを立てかけ、ディスプレイに反射する音を整え、音場などを改善するといった提案もしている。

付属はしないが、このようなクランプなどを活用して固定するイメージだという

効果を体験してみる

発表会場に用意された机に、小型だが本格的な「本格スタンド」を用意。その上に、木目調パネルを採用した新スピーカー「KS-11GN/W(ウォールナット)」を置いて、サウンドを体験した。

新スピーカー「KS-11GN/W(ウォールナット)」

なお、新スピーカーについての詳細は、本日掲載したニュース記事を参照して欲しい。スピーカーとしての機能は既存のKS-11Gと同じだが、サイドパネルを木目調にしているほか、明快な低域再生などの実現を目指し、新たに音のチューニングを行なっているのが特徴だ。

本格スタンド

本格スタンドにKS-11GN/Wを置いて「ジェニファー・ウォーンズ/Rock You Gently」を再生すると、雑味の少ない、非常にクリアなサウンドになる。スピーカーからの振動が、机に伝わると、机自体が振動して音を出すため、それがノイズになる。本格的なスタンドに設置すると、鉄球サンドを封入したボードなどで防振効果を高められ、机の“鳴き”が抑えられる。

スピーカーの振動を机に伝えない。なお、底板には鉄球サンドが入っているので、スタンドを手に持って揺すると、サラサラと音がする

さらに、スピーカー自体の固定位置が高くなり、ユニットと耳の位置が揃うため、よりバランスの良い音を聴くことができ、音像定位も改善される。スピーカーの位置が低いと、どうしても音像や音場がキーボード付近やディスプレイの下部など、低い位置にとどまってしまうが、スタンドに設置すると、中央のボーカル音像がまるで立ち上がったように目線の先に定位。ディスプレイの中央も超えて、ディスプレイの上に定位する。

さらに音場もグッと広くなり、ディスプレイの奥まで空間が広がっているように聴こえる。このように、音場がリッチに、定位が明瞭になる事で、音楽の楽しさがアップするだけでなく、聴いている時の姿勢にも変化が起こる。スタンドに設置していないと、音楽を聴いている時も前のめりになりがちだが、スタンドに設置すると、上昇したボーカルの音像につられて、斜め上を見る姿勢になり、いつの間にかデスクチェアの背もたれに背中を預けてリラックスした姿勢で音楽を楽しむ体制になっている事に気がつく。

音質だけでなく、音楽を聴く姿勢も変える効果がデスクトップ用スタンドにはありそうだ。

「小型スタンド」

本格スタンドほどではないが、スピーカーを斜め上向きに固定する「小型スタンド」でも、同じ傾向の効果が期待できる。また、最近では昇降デスクを使っている人も増えているので、この小型スタンドと、デスク自体の高さを上げる機能を組み合わせて、耳の位置に揃えてみるのも面白いだろう。

昇降デスクと組み合わせて、耳とユニットの位置を揃えるというのも面白い

「小さな調音パネル」も試してみる。机と壁が近い環境では、スピーカーの背後に設置するのが一般的であり、また効果的な使い方になるだろう。さらにユニークな使い方が、“PCディスプレイの前に立てかける”というもの。

ピュアオーディオ/ホームシアターでは、左右のスピーカー間に置いたテレビを使わない時に、布などをかけて、テレビ画面の音の反射を防ぐ事があるが、それと同じことを、PCディスプレイでもしようというわけだ。

もちろん、立てかけるとPC画面が見えなくなるが、プレイリストを再生したり、スマホアプリで操作するなど、音楽鑑賞に専念する場合であれば問題はないだろう。

ディスプレイの前に立てかけてみる

実際に試してみると、効果は絶大だ。

ディスプレイそのままの状態で音楽を聴くと、ボーカルの音像は中央に定位するものの、輪郭がボワッと広がり、他の楽器の音像ともくっつき、“音のカタマリが中央にある”という聴こえ方になる。

しかし、ディスプレイの前に小さな調音パネルを配置すると、余分な膨らみが抑えられ、音像の輪郭がクッキリシャープになり、ボーカル、楽器の位置関係もわかりやすくなる。左右や前後の音場の広がりも自然になり、音が空間に広がっていく様子も聴き取りやすくなった。

なお、試しに小さな調音パネルを裏返しして、ディスプレイに立てかけてみた。

こうすると、吸音効果がメインになる。聴いてみると、確かに中低域の音の膨らみがタイトになり、音像もクリアになるのだが、中低域の芳醇な響きや、ベースがグッとこちらに迫ってくる音圧感もゴッソリ消えてしまうので、音楽自体の熱気、美味しさ、胸に響く情感といった部分も削がれてしまう。体験としては面白いが、やはり正しい向きで使ったほうが、良い効果となった。

これらデスクトップ用オーディオアクセサリーを体験して感じるのは、効果が非常にわかりやすいという事。もちろん、広いオーディオルームでも、オーディオアクセサリによって音は変化するが、狭いデスクトップ空間では、ニアフィールドで聴くこともあり、その効果がより大きく、また明確に体験できるように感じた。

手掛けた渡邉氏も、「実際に試作してみて、デスクトップ環境でも効果の大きさに驚いた。広いリスニングルームで比較するよりも、アクセサリーによる効果を体感しやすい」と語る。また、「小型スピーカーによるニアフィールドだからこそ、スタンドなどのアクセサリーを使って、耳の位置をユニット同じ軸上に合わせる事が大切。その効果を、デスクトップでも、多くの人に体験して欲しい」という。

クリプトンの渡邉勝氏

浜田正久会長は、同社が2009年にハイレゾ音楽配信サービス「HQM STORE」を開始。ハイレゾなどの音楽ファイルを、手軽に、デスクトップでも楽しんでもらうためのオーディオとして、2010年からKSシリーズを開発・発売。現在までに、14機種、22種類のKSシリーズを展開してきた事を紹介。

その上で、「最近では(配信サービスの普及により)音楽の聴き方が変わってきた。あらゆるジャンルの音楽を、縦横無尽に聴ける時代が来た。そして、(それを楽しむユーザーの環境として)、机の上というスペースが注目されており、そこが“自分創造空間”のようになっている。では、その空間に、音はどのように存在すると面白いのか?そんな考えで、作り上げた」と、新スピーカーの「KS-11GN/W/O」や、試作しているデスクトップ用オーディオアクセサリへの想いを語った。

浜田正久会長
山崎健太郎