フジテレビ、無料動画サイト「見参楽」をスタート

-iTunes経由も。SNS活用で視聴者参加型番組


「見参楽」(みさんが!)のPC向けサイトイメージ携帯向けサイトのイメージ

 フジテレビは、無料の動画コミュニティサイト「見参楽」(みさんが!)を4月18日にスタートする。同社がネット配信用に制作したオリジナル映像作品を無料配信するサービスで、開始当初は5番組を用意。年内に常時20番組程度の配信規模まで拡充するほか、将来的にはユーザー投稿の動画を活用した番組なども検討されている。

 サービス開始時の配信プラットフォームはPCと携帯電話(ドコモのみ)。ストリーミング配信に加え、iTunes向けにも配信。ポッドキャスト番組と同様にPCでダウンロードし、iPod/iPad/iPhoneなどに転送して視聴する事もできる(一部コンテンツ除く)。iPhoneやiPadなどのブラウザから視聴する事はできないが、2011年内にiOS用の視聴用アプリを提供予定。同じく2011年内にはAndroidにも対応する予定。

 番組と視聴者のコミュニケーションを重要視しているのが特徴で、視聴者の意見や要望を番組に反映させるなど、視聴者対話型・参加型の番組作りに注力していくという。その一環として、TwitterやFacebookといった既存SNSとの連携も視野に入れている。




■配信番組

大杉漣の『漣☆写』でGO!
Say You Love!
つか金フライデーDOUGA

 配信番組はいずれもオンデマンド形式。4月18日にスタートするのは5タイトル。「大杉漣の『漣☆写』でGO!」は、視聴者から送られてきた一枚の写真を、何処から、どのようなアングルで撮影したのか? を、俳優・大杉漣が探す旅に出るもの。6月まで全12話配信予定で、7月以降もレギュラー化を検討中。配信期間は1話あたり6カ月間となる。

 「Say You Love!」は、超一流の声優になるために、4人の若手女性声優(小松未可子・小見川千明・葉山いくみ・森沢音)が様々な企画にチャレンジするという番組で、チャレンジ企画のアイデアを視聴者から募るなどの交流も実施。6月まで全12話で構成し、7月以降についてレギュラー化も検討中。1話あたり6カ月間の配信となる。

 「つか金フライデーDOUGA」は、番組パーソナリティ・つかちゃん(塚越孝アナ)が、高級バーのような雰囲気の中で、芸能界の美女達にインタビューを行なうというもの。バーのママ役として高木広子アナウンサーも参加する。9月末までレギュラー番組として配信。1話あたり3カ月間配信される。

 「お台場寄席DOUGA」は、これまでフジテレビのポッドキャスト「フジポッド」で音声番組として配信され、月間100万ダウンロードを超える人気となっている「お台場寄席」の映像版で、落語を中心に配信。視聴者から取り上げて欲しい落語家を募集する事もあるという。

 「カンニング竹山の『前向きコント! 一本勝負』」は、偉人、賢人達の明言を、カンニング竹山が自分流に解釈し、悩み・苦しむ同僚や若者たちに対して、教示していくという内容。12話構成で、4月18日に全話を一斉配信。全話6月末まで視聴できるという。

 4月~6月クールではほかにも、フジテレビのゲームサイトと連動した子供向けバラエティ「フジテレビ☆プラネッツ(仮)」や、新大久保で韓流イケメンを発掘するという番組、お笑い番組、グルメ番組、ファッション情報番組などを検討中。7月クール以降も、落語番組や、塚越アナが歯医者に扮して美女アスリートの歯を診断するという「つかちゃんのデンタルクリニック」(仮)、アイドリング!!! メンバーも出演する学園ドラマなどが予定されている。




■「お客さんと近い番組を」

クリエイティブ事業営業部 渉外統括担当部長の奥津信弘氏

 フジテレビでは、2005年9月に有料の動画配信サービス「フジテレビオンデマンド」を開始。2006年3月には、無料の音声ポッドキャスティングサービス「フジポッド」を開始。フジポッドでは2009年12月に、音声だけでなく、ビデオポッドキャストサービスも開始。ビデオ関連以外では、2010年4月にフジテレビ版ソーシャルアプリ「イマつぶ」サービスも開始している。

 クリエイティブ事業営業部 渉外統括担当部長の奥津信弘氏によれば、今回の「見参楽」は、「フジポッド」の流れの中から誕生した新サービスだという。「フジポッドの開始時は規模が月間10万~20万ダウンロード程度だったが、徐々に増加し、落語番組では月100万ダウンロードを突破するまでになった。しかし、広告ビジネスとしてまだアクセス数は十分とは言えない。また、そもそも音声のCM素材を出せないクライアントも増えてきた。そこで、ビデオポッドキャストを開始したところ、リッチなCMも展開できるようになり、広告主からの引き合いも増えてきた。今後も良いコンテンツを出していけば、まだまだ伸びるのではないかと考え、『見参楽』という形になっていった」という。


サービスプラットフォームの説明図

 オリジナル番組を揃えた理由について奥津氏は、「権利処理の関係で、地上波で放送している番組をネットで配信するのは難しい。しかし、我々には映像制作のノウハウがあるので、“それならばオリジナルコンテンツを作れば良いじゃないか”と考えた」という。

 その際、最も注意した点として「コンテンツを見てもらうだけでは、視聴者は増えない。SNSなども活用し、視聴者と出演者、スタッフがコミュニケーションして、創り上げていく事が大切。それら全体を“ひとつの番組”ととらえ、コミュニケーションを重視した番組を基本スタンスとして揃えた」という。

 同時に、オリジナル番組であれば、動画CMを合間に入れるだけでなく、スポンサーとタイアップした番組の制作なども柔軟にでき、多用な広告サービスをスポンサーに提示できるようになる。「こうしたフジテレビらしい付加価値を設け、強力な媒体パワーのあるサイトにしていく事で、ネット広告ビジネスの最大化していく。また、番組としてはコミュニケーションの活性化を進め、視聴者が投稿した動画を使った番組などにも発展させたい。目標としては、2年後を目処に現在50万程度のユニークユーザ-数(フジポッド)を、10倍の500万に。将来的には1,000万といった数字も狙っていきたい」と展望を語る。なお、こうして作られた番組は見参楽での配信だけでなく、他の動画配信サービスやCATV事業者にも、コンテンツとして提供する考えだという。


フジポッドの実績と、問題点。実績を伸ばし、問題点を克服する事を見参楽のテーマにしているという見参楽の狙い。オリジナルコンテンツを用意することで、SNSとの連携といったコミュニケーション重視の番組を作る事ができ、多用な広告サービスにも対応できる番組になるというサービスのコンセプト。ステップ1として、視聴者参加型、対話型の番組作り。ステップ2として、スタッフ、出演者、視聴者のコミュニケーションの活性化、最終段階として視聴者自身による番組づくりに発展させたいという

 執行役員クリエイティブ事業局長の大多亮氏は「ネットでも、基本的には中身が勝負。テレビのような大きな制作費をかけたものを、見参楽で配信できないし、それをする事が良いとは言えない。(テレビとモバイル、PC、スマートフォンなど)それぞれのデバイスに合った作品が必ずある。広告型のサービスで、制作費は本当に安いが、営業と編成、制作が一箇所に集まってフットワーク軽く、テレビで培ったノウハウを活かし、面白いものを作れるかどうかが鍵になる」と説明。

 見参楽の番組に多く登場する塚越孝アナウンサーは、長年ニッポン放送で活躍した後、フジテレビに移籍した経歴の持ち主。発表会の司会を務めた塚越アナは最後に、「見参楽の“コミュニケーションプログラム”という考え方は、ラジオの番組に近い。私がテレビに移籍して一番最初に感じたのは、作ったコンテンツを提供するテレビは、“お客さんと遠いなぁ”という事。見参楽ではこうした技術を活用して、お客さんに近づいた番組を作っていきたい」と抱負を語った。

執行役員クリエイティブ事業局長の大多亮氏発表会の司会も担当した塚越孝アナウンサー塚越アナと共に「つか金フライデーDOUGA」に出演している高木広子アナウンサーも、司会として発表会に登場

(2011年 4月 18日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]