ファイナル、クロム銅採用のカナル型「heavenVI」

-実売約45,000円。下位モデルと聴き比べも


「heavenVI」

 ファイナルオーディオデザイン事務所は、バランスド・アーマチュア(BA)ユニットを採用したカナル型(耳栓型)イヤフォン「heaven」シリーズの新モデルとして、「heavenVI」を10月上旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は45,000円前後。

 BAのシングルユニットを採用したカナル型で、採用しているユニットや基本的な仕様は、「heavenIV」(オープン/実売14,800円前後)と同じだが、筐体の素材が異なり、「heavenIV」がステンレス削り出しのところ、「heavenVI」はクロム銅の削り出し(イオンプレーティング仕上げ)になっている。


「heavenVI」左がステンレス削り出しの「heavenIV」、右がクロム銅削り出しの「heavenVI」「heavenVI」の内部構造

 BAユニットは、独自にカスタマイズしたものを採用。音圧感度は112dB/mW。インピーダンスは16Ω。

 空気の流れを作り出し、筐体内部の空気の流れを最適化するBAM(Balancing Air Movement)機構も採用。「heavenIV」と同様に、このBAM機構は新しいバージョンで、よりシンプルな機構とする事で、細身の製品を実現しているほか、後部に設けていた空気を調節するための穴も不要となり、音漏れも軽減している。

 イヤーピースはゴム製で、2種類を同梱。遮音性の高いAタイプと、共振音の少ないBタイプがあり、ピースによる音の違いが楽しめる。各種類にS/M/Lの3サイズを同梱。スチール製のキャリングケースも付属する。

 ケーブルはフラットタイプで、タッチノイズを低減。長さは1.2mのY型。重量は約16g。

イヤーピースは2種類。左が遮音性の高いAタイプ、右が共振音の少ないBタイプケーブルはフラットタイプ。スチール製のキャリングケースも付属



■「heavenIV」と「heavenVI」を聴き比べてみる

「heavenVI」

 試聴にはiBasso Audioのミュージックプレーヤー「HDP-R10」を使用。下位モデルとなる「heavenIV」と聴き比べてみた。

 どちらもシングルのBAユニット採用タイプ、筐体のサイズやデザインも同じなので、基本的な音の傾向はよく似ている。各社でBAイヤフォンのマルチウェイ化が進む中、ファイナルは音の繋がりの良さにこだわり、シングルドライバを高価格帯でも採用しているが、どちらのモデルも、ダイナミック型のような自然なワイドレンジ再生が実現されている。同時に、BAらしい解像感の高さも維持され、量感とクリアさが両立している。

 2機種の主な違いは筐体の素材。それだけで、どこまで音が変化するのかが気になるところだが、クロム銅を使った「heavenVI」は、音場の奥行きがより広く、さらに、個々の音の響きが“深く”なっていると感じる。そのため、音楽がよりドラマチックに、味わい深く聴ける。この音を聴いた後で「heavenIV」に戻ると、音楽がスッキリしてしまったように感じる。筐体の違いで、ここまで音が変化するのは驚きだ。

 響きが深く、多くなると、反響音が増えて明瞭度が低下する懸念もあるが、そこまで極端にボワボワした音になるわけではない。注意深く聞くと、響きの余韻の尾が長くなっている……という印象。解像感の高さも、絶妙なラインで維持されている。上品ながら、よりリッチな音を楽しませてくれる上位モデルだ。


(2012年 9月 20日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]