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ソニー、'12年度は営業利益2,300億円。エレキは赤字
テレビは696億円赤字。'13年度は「本業で黒字」へ
(2013/5/9 15:46)
ソニーは9日、2012年度の連結業績を発表した。売上高は、前年同期比4.7%増の6兆8,000億円。営業損益は2,300億円で前年度の673億円のマイナスから黒字回復した。税引前利益は2,456億8,100万円、純利益は430億円。
売上高の増加は、ソニーモバイルの連結子会社化や為替の好影響、金融ビジネス収入の増加などが寄与。ただし、エレクトロニクス主要製品については販売減となっている。
営業利益は、事業ポートフォリオの再編にともなう資産売却やテレビの損失縮小、デバイス分野、金融分野、映画分野の損益改善が寄与。一方で、MP&C(ゲーム、モバイル・プロダクツ&コミュニケーション)やゲーム、IP&S(イメージング・プロダクツ&ソリューション)は損益悪化している。
本業といえるエレクトロニクス全体では、営業利益は1,344億円のマイナス。前年度のマイナス1,702億円より改善したものの、黒字化には至らなかった。
執行役 EVP CFOの加藤優氏は、営業損益好転の理由について、「連結で黒字化を達成できたが、最も大きかったのは資産売却。エレクトロニクスは赤字で課題を残した」とした。
テレビは損益改善も696億円の赤字
テレビやBDレコーダ、オーディオなどを含むHE&S(ホームエンタテインメント&サウンド)分野は売上高が前年比22.5%減の9,948億円、営業利益は843億円のマイナス。赤字ではあるものの昨年度の2,032億円のマイナスから大幅に改善した。減収は主に液晶テレビの販売減によるもの。営業損失は、前年度には液晶合弁会社S-LCDの解消に関する投資損失641億円を計上していたことや、液晶パネル関連費用や営業経費の削減などから、損失幅を縮小した。
テレビについては、'12年度は台数を追うのではなく「安定的収益基盤確立」へ方針転換し、'13年度以降の黒字化を目指す方針。'12年度の販売台数は610万台減の1,350万台。テレビの売上高は前年度比30.8%減の5,815億円、営業損失は前年比1,379億円縮小し、696億円のマイナス。
「テレビ事業の収益改善施策は前倒しで進捗している」としており、'13年度は販売増と増収、コスト削減などで黒字化を目指す。'13年度の販売目標は250万台増の1,600万台。
高画質化や音質強化、スマートフォンなど他機器連携を進め、商品力を強化。為替の影響もポジティブに見ており、高付加価値モデルへの注力などで、黒字化を達成する目標。
デジタルカメラ、ビデオカメラなどDI事業が大幅減益
デジタルカメラなどのIP&S分野の売上高は4.1%減の7,304億円、営業利益は92.3%減の14億円。売上減は主にコンパクトデジタルカメラの大幅な販売減とビデオカメラの市場縮小/販売台数減少が響いた。営業利益の減少は、減収の影響と構造改革費用によるもの。
ビデオカメラの販売台数は前年度比70万台減の370万台。コンパクトデジタルカメラは同600万台減の1,500万台。'13年度は、ビデオカメラがさらに70万台減の300万台と予測している。
こうした中、レンズやイメージングデバイスなど、自社技術を活かせる製品開発に取り組む方針で、その例としてコンパクトデジタルカメラの高画質プレミアムモデル「RXシリーズ」について言及した。
PS Vita価格改定などでゲーム減益
ゲーム分野は、売上高が前年比12.2%減の7,071億円、営業利益は同94.1%減の17億円。PlayStation 3、PSPやPlayStation Vitaのハードウェア販売数量減少で売上が減少。営業利益の減少は、ハードウェア販売減と'13年2月に日本で実施したPS Vitaの戦略的価格改定の影響。
'12年度のゲームハードウェア販売台数はPS3が前年度比150万台減の1,650万台、PS VitaとPSPが同20万台減の700万台。
'13年度はPlayStation 4発売により、売上高は大幅増加を見込む。ただし、PS4導入で、研究開発費、広告宣伝費などが増加し、営業利益は前年度並みとする。'13年度のゲームハードウェア販売見込みは、PS3が前年度比650万台減の1,000万台、PS Vita/PSPが同200万台減の500万台。PS4についての台数予測は公表していない。
スマートフォンの年間販売台数は3,300万台
ソニーモバイルなどMP&C分野は、売上高が前年比102%増の1兆2,576億円、営業利益は前年度の72億円の黒字からマイナス972億円と赤字化した。PCの販売減はあるものの、ソニーモバイル100%子会社化により大幅増収となった。営業損失が増えたのは、前年度はソニーモバイル支配権取得による評価差益が含まれていたことと、PCの減収、為替の悪影響などによるもの。
ソニーモバイルについては、'12年2月の完全子会社化とともに構造改革を進め、ソニーの技術を集約して商品力を強化。Xperia Zを全世界60カ国で導入し、高い評価を得たことなどを紹介。スマートフォン、タブレットについては引き続き市場拡大を見込み、'13年度の黒字化とビジネス拡大を目指す。スマートフォンの'12年度販売台数は3,300万台。'13年度販売目標は900万台増の4,200万台。
VAIOについては、市場の停滞やWindows 8立ちあげが想定を下回ったことなどで減収。'13年度は独自性あるPCで差異化を徹底するとともに、オペレーションの改善を進め、黒字化を目指すとする。
金融、エンタは好調
デバイス分野は、売上高が前年度比で17.8%減の8,486億円、営業利益は439億円で、前年度の221億円のマイナスから黒字化した。売上減は中小型ディスプレイ事業とケミカルプロダクツ関連事業売却の影響によるものだが、モバイル向けイメージセンサーの大幅増収や為替の好影響などで、売却事業を省いた売上ではほぼ横ばいという。営業損益はイメージセンサーの増収と、ケミカルプロダクツ事業の売却益91億円などが寄与した。
映画分野は、売上高が11.4%増の7,327億円、営業利益は同40.1%増の478億円。「007スカイフォール」と「アメイジング・スパイダーマン」などが劇場興行収入の増加に貢献。'13年度もテレビ番組向けで増収の予定だが、劇場公開予定の大型作品が無いため、米ドルベースでは前年並みを見込む。ただし、為替の影響で円ベースでは増収となる見込み。
音楽分野は、売上高が前年度並みの4,417億円、営業利益は前年度比0.9%増の372億円。パッケージは全世界的に縮小傾向だが、米ドルに対する円安の好影響と、デジタル配信売上の増加などで、前年度並みの売上高を確保した。
金融分野は前年度比15.6%増の1兆77億円、営業利益は同10.9%増の1,458億円。保険契約増や日本の株式市場の大幅上昇などで運用損益が改善した。
'13年度最大の課題は「エレキの黒字化」
加藤CFOは、「なんとしても黒字にするという目標は達成できた。特に金融とエンターテイメントは良かった。しかし、エレクトロニクスについては、市場環境もあり厳しい結果で、目標としていた黒字化は果たせなかった。数日前に業務執行役員は賞与を返上することを決めた。事務所の閉鎖など苦しい判断もあった。為替の好影響も出てきたが、それまでの3四半期はかなり厳しかった。収益確保のため、資産売却を行なってきたのが、12年度の概要」と説明。
'13年度の課題については、「言うまでも無く、エレキ黒字化が最大の課題」とした。
また、資産売却については、「ポートフォリオの入れ替え、事業の集中と選択という側面もある」として、成長のための投資資金を確保し、オリンパスとの医療合弁や、Gaikaiの買収などに言及。また、財務改善を果たしたことを強調した。
2013年度の連結業績見通しは、売上高が10.3%増の7兆5,000億円、営業利益が据え置きの2,300億円、税引前利益は14.5%減の2,100億円、純利益は16.2%増の500億円を見込む。想定為替レートは、ドルが90円前後、ユーロが120円前後。
円安とエレクトロニクス事業での増収を見込んでおり、前年度比で大幅な増収を予測。一方で、大きな資産売却などの予定は無いため、営業利益は据え置きとなっている。
エレクトロニクス事業全体での黒字化も見込んでおり、「エレキは1,000億円の営業利益をイメージとしては目指している」(業務執行役員 SVP 広報センター長 神戸司郎氏)と説明。加藤CFOも「今年は資産売却で収益を上げるのではなく、本業で上げる」と言及した。
なお、為替については、「円安は基本的にはポジティブ」としながらも、米ドルについては、「ドル建て債務、債券が多く、'13年度を見通すと、円安傾向は営業損益がネガティブになってくる可能性もある。特に、ソニーモバイルのスマートフォン製造は、コストベースでドルリンクの製造体系。全体ではドルが年間通じて1円動くと、営業損益へのインパクトはマイナス30億円と試算している」とのこと。一方、ユーロは1円の円安で70億円のプラスと想定している('12年度は60億円で想定)。集計して試算すると、現在の想定為替レートでは、13年度の売上で4,000~5,000億円、損益では600億円のポジティブな影響があるとしている。