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ソニー、第2四半期のTV事業は損失改善するも93億円の赤字
エレキ通期黒字化は「達成できる」。エンタメ情報開示拡充
(2013/10/31 15:27)
ソニーは31日、2013年度第2四半期(7~9月)の決算を発表した。売上高は、前年同期比10.6増の1兆7,755億円。営業利益は同51.2%減の約148億円、税引前利益は同69.6%減の約60億円。純損益は約193億円の赤字となった。
増収の主な要因としては、為替の好影響や、スマートフォンの大幅な増収などを挙げている。一方で、'12年9月のケミカルプロダクツ関連事業の売却や、ビデオカメラ/コンパクトデジタルカメラの減収による影響もあったという。
営業利益は前年同期に比べ155億円の減少で、148億円の黒字。スマートフォンなどの損益改善や、為替の好影響があったが、映画分野での損益悪化が影響したという。
AV/IT市場の縮小や新興国の景気減速などを背景に、エレクトロニクス事業の環境は同社想定よりも悪化。これを受けて、液晶テレビやビデオカメラ、デジタルカメラ、PCの各製品について年間の販売台数見通しを8月時点の想定より下方修正した。その結果、通期の連結売上高と営業利益も8月時点の想定を下回り、売上高7兆7,000億円(前回予想より2,000億円減)、営業利益1,700億円(同600億円減)と見ている。構造改革費用はグループ全体で約500億円と見ており、8月時点から変更は無い。
テレビの通期見通しは2度目の下方修正
テレビやBDレコーダ、オーディオなどを含むHE&S(ホームエンタテインメント&サウンド)分野は、テレビの販売台数が減少した一方で、為替の好影響などにより、売上高は前年同期比11.8%増の2,638億円(前年同期の為替レートを適用した場合は12%の減収)となった。営業損益は前年同期から37億円改善し、121億円の赤字となった。改善の理由については、構造改革費用(純額)が前年同期に比べ31億円減少したことや、テレビの費用削減などを挙げている。
第1四半期に、2010年以来となる黒字化を果たしたテレビ事業については、第2四半期の売上高は前年同期比%18.7%増の1,741億円。為替の好影響や、4Kなど高付加価値製品へのシフトなどを主な要因としている。営業損益は、費用の削減などにより前年同期からは9億円改善したが、93億円の損失となった。
テレビ売上の通期見通しは、第3四半期以降の中南米、アジアなど新興国経済の不透明感などを慎重に見ていることから、8月予測の1,500万台から、今回1,400万台へ下方修正した。なお、8月の予測でも、5月時点の1,600万台から下方修正されているため、期初からは2度目の下方修正となる。
HE&S事業全体の売上高や営業利益の年間見通しについても、テレビの下方修正などにより8月時点の予測を下回るが、前年度比では大幅な増加を見込んでいる。「厳しい事業環境が続くが、年末商戦期に向けて戦略モデルの販売に注力し、引き続き収益性の改善に努める」としている。
加藤優 代表執行役 EVP CFOは、テレビやパソコン、カムコーダなどを下方修正した主な要因として、中南米地域の売上が当初想定より落ちたことなど景気動向に加え、従来型のビデオカメラがスマートフォンに市場を奪われている点など、カテゴリそのものの市場縮小を挙げた。
エレキ5分野の年度黒字化は達成できる
モバイル・プロダクツ&コミュニケーション(MP&C)分野の売上高は、前年同期比39.3%増の4,186億円。PCの販売台数は大幅に減少した一方で、為替の好影響や、スマートフォンの大幅な販売台数増加や、平均販売価格の上昇などにより、分野全体では大幅な増収となった。営業損益は前年同期から222億円改善となる9億円の赤字。
第2四半期のスマートフォン売上は1,000万台(前年同期は880万台)。スマートフォンの好調は、'13年春モデルの「Xperia Z」などが牽引しており、スマートフォンは約20カ国で金額シェアトップ3に入ったという。10月に発売されたばかりの新しいフラッグシップモデル「Xperia Z1」も大きな反響があったという。
通期見通しでは、売上はPCの下方修正により8月時点の予測を下回るものの、前年度比では大幅な増収と、利益計上を見込んでいる。
スマートフォンの通期販売台数は4,200万台で据え置いているが、PCは8月に続き2度目の下方修正を行ない、580万台を見込む。PC事業については「事業構造の抜本的改革を策定中」とのことで、具体的な内容は触れなかったが「来期には実行できるよう、改革プランを作っていきたい」(業務執行役員SVP 広報センター長の神戸司郎氏)とした。
デジタルカメラなどのイメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野の売上高は前年同期比6.9%減の1,755億円で、営業損益は前年同期の22億円の黒字から、23億円の赤字に悪化した。売上については為替の好影響があったものの、市場縮小の影響を受けたビデオカメラやコンパクトデジタルカメラの販売台数減少により減収。損益の悪化は主にビデオカメラの減収の影響によるものだという。
ゲーム分野は、売上高が1,557億円で前年同期比5.1%の増収。前年同期の為替レートを適用した場合は14%の減収となるが、これはPS2とPS3、PSPの販売台数減少などによるもの。PS3のソフトウェア販売数量は、前年同期に比べ増加した。営業損益は、前年同期の23億円の黒字に対し、8億円の赤字に悪化した。これは、主にPS Vitaの価格改定や為替の悪影響を要因としている。
通期の売上予測については8月時点から変更は無く、PS4/PS3/PS2は合計1,500万台、PS Vita/PSPの合計は500万台、ソフトウェアは3,600億円。「PSNを基盤としたネットワークサービスにより収益源の多様化を図り、豊かなユーザー体験を可能とするPS4の早期の収益貢献を目指す」としている。
デバイスの売上高は、前年同期比16.7%減の2,081億円。モバイル機器向けのイメージセンサーは需要増により大幅な増収となった一方、ゲーム向けシステムLSIの減収や、2012年9月に売却したケミカルプロダクツ関連の売上が計上されなくなったことにより、全体でも減収となった。営業利益は、前年同期に比べ179億円減少となる119億円。為替の好影響があった一方で、前述のケミカルプロダクツ関連事業の売却益が計上されていたこと、2011年度のタイにおける洪水に対する保険収益が前年同期に比べ大幅に減少したことなどから減益となった。
IP&S、ゲーム、MP&C、HE&Sを合わせたエレクトロニクス5分野の、上半期(4~9月)の営業利益は103億円の黒字を計上。前年度はマイナス177億円の赤字だったが、280億円の改善となった。「当年度のエレクトロニクスの収益は前回の想定を下回るが、黒字化は達成できる見込み」としている。これら5分野の2013年9月末の棚卸資産合計は、前年同期末比1,112億円(14.8%)増の8,622億円となった。これは主に円安の影響によるもの。2013年6月末比では1,106億円(14.7%)の増加となる。
映画・音楽のエンタメ事業は、より詳細な情報開示を実施
映画分野は、円安の好影響により前年同期比9.1%増加の1,778億円(米ドルベースでは13%減収)だったが、営業損益は前年同期の79億円の黒字から悪化し、178億円の赤字となった。
減収は、主にテレビ局向けライセンスと映像ソフト、劇場興行の各収入の減少によるもの。前年同期には「21ジャンプストリート」の映像ソフト収入や、「アメイジング・スパイダーマン」の劇場興行収入などが好調だったのに対し、第2四半期は「ホワイトハウス・ダウン」の劇場興行収入が想定を下回ったことや、米国テレビネットワーク向け新番組の制作エピソードが増加して制作費が増加したことなどが影響した。「キャプテン・フィリップス」や「くもりときどきミートボール2 フード・アニマル誕生の秘密」は期待通りの興収を上げているという。
メディアネットワーク事業については、テレビネットワーク事業の拡大に加え、デジタル配信の強化も図っている。主に女性層をターゲットとした「Kalixta」や、日本のアニメを放送する「アニマックス」のデジタル配信サービスを、それぞれブラジルと英国で開始している。4Kコンテンツの制作や配信にも引き続き注力し、「ソニーの4K対応テレビの購入者向けにコンテンツを提供するなど、エレクトロニクス商品の価値をさらに高めていく」としている。
音楽は、売上高が前年同期比15.9%の1,150億円、営業利益が同23.5%増の97億円と好調。米ドルに対する円安の好影響や、デジタル配信売上の増加などが貢献している。一方で、アニメ作品の映像ソフトが減収したことに伴い、映像メディアプラットフォームの売上が減少し、前年同期の為替レートを適用した場合の売上高は、分野全体でほぼ前年同期並みとなった。第2四半期の主なヒット作品は、ジャスティン・ティンバーレイク「20/20エクスペリエンス 2/2」、西野カナ「Love Collection~pink~」、「Love Collection~mint~」、いきものがかり「I」、マイリー・サイラス「バンガーズ」など。
なお、今回サイトなどで公開されている決算資料には、劇場興行収入の上位作品や、今後米国で公開予定の主要な映画作品、今後のBD/DVD発売予定日を掲載するなど、主にエンタテインメント事業を中心に情報開示の拡充が行なわれている。
映画分野と音楽分野については、「新設開示カテゴリー別売上高」(四半期別)や、「減価償却および償却費・構造改革費用控除前営業利益」(四半期別)、「エンタテインメント事業補足情報」を開示。さらに、米国で11月21日、日本で11月26日に投資家向けにエンタテインメント事業の説明会を行なう。そのほか、全セグメントにおいて減価償却費と償却費、構造改革費用(四半期別)を開示している。
既報の通り、ソニーは大株主である米ファンドのサードポイントから、エンタテインメント部門の分離と株式上場を求められていた件で、同部門を今後も100%所有し続けると返答。一方で「市場参加者がエンタテインメント事業の業績を分析し、その成果をモニターしやすくなるよう、2013年度第2四半期の決算より、エンタテイメント事業についての情報開示をより充実させていく」としていた。
今回の情報開示拡充は、平井CEOからサードポイントに対して情報開示の考え方を示したものに沿った内容になっているという。加藤氏は「それが十分かどうかは投資家の判断によるが、業界の皆さんがフォローしているものと同じくらいの開示はできていると思う」と述べた。