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J:COM、今夏にも4K VODトライアル配信開始へ
試験放送の一般公開は全国11カ所。STBからDLNA視聴も
(2014/6/3 18:10)
ジュピターテレコム(J:COM)は3日、4K映像のVOD配信トライアルを早ければ今夏より実施すると発表した。なお、トライアルは一般向けではなく、商用サービス開始時期などの詳細は未定。
同社は6月2日13時より東京スカイツリータウン内にある「J:COM Wonder Studio」で4K試験放送の一般公開を開始。翌日の3日に記者説明会を開催した。この説明会で上席執行役員 事業戦略部門 副部門長の田口和博氏がVODトライアルの計画を明らかにした。
現在J:COMが展開している、CATV加入者向けのVODサービス「J:COM オンデマンド」と、テレビ/PC/スマホ視聴が可能なIP-VOD「milplus」の両方で4K映像配信を予定。専用のSTBなどを使って4K対応テレビで視聴できるようにするという。
スカイツリータウンのショップで試験放送を一般公開。STBからDLNA視聴も検討
既報の通り、スカパーJSATの124/128度CS放送を利用した、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)による4K試験放送が6月2日13時よりスタートした。ケーブルテレビでもジュピターテレコムが「J:COM Wonder Studio」など、全国のJ:COMエリア11カ所で4K試験放送の映像を体験できるように一般公開する。
NexTV-Fによるスカパーの衛星を使った試験放送の映像を東京・練馬にあるJ:COMのマスターヘッドエンドで受信して各局に伝送。CATVのRFだけでなく、IPでの伝送も実施。J:COM以外のCATV会社(35事業者)にも配信予定で、RF伝送は日本デジタル配信(JDS)、IPはジャパンケーブルキャストを通じて配信する。なお、一般家庭向けの4K放送サービス開始は、'16年を予定している。
3日に行なわれた発表会では、4K試験放送が視聴できる全国のJ:COMショップなどの詳細を案内したほか、伝送/視聴方法の仕組みや、今後の計画などについて説明した。
4K試験放送が観られるのは、東京スカイツリータウンのJ:COM Wonder Studioのほか、札幌のジェイコムショップ札幌元町、千葉のジェイコムショップ柏、神奈川のジェイコムショップ湘南、宮城のジェイコムショップ仙台キャベツ、大阪のジェイコムショップ堺ショールーム、福岡のジェイコム福岡 本社ロビーなど。6月2日のJ:COM Wonder Studioを皮切りに、順次視聴できる場所を増やしていく。
4K試験放送の一般公開場所と開始日
東京 J:COM Wonder Studio 6月2日~
札幌 ジェイコムショップ札幌元町 6月12日~
東関東 ジェイコムショップ柏 6月16日~
湘南 ジェイコムショップ テラスモール湘南 6月19日~
西東京 ジェイコムショップ イオン東久留米 6月20日~
仙台 ジェイコムショップ 仙台キャベツ 6月26日~
堺 ジェイコムショップ 堺ショールーム 6月9日~
福岡 ジェイコム福岡 本社ロビー 6月13日~
大阪セントラル イオンモール鶴見緑地店 6月23日~
神戸芦屋 ジェイコムショップ 御影クラッセ 6月27日~
かわち(IP) ジェイコムショップ 近鉄八尾駅前 7月1日~
視聴できる番組は、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)による「Channel 4K」の再送信番組。加盟各社が用意した「ポール・マッカトニー アウト・ゼアー・ジャパン・ツアー」(スカパー)や、ドラマW「チキンレース」(WOWOW)、「THE 世界遺産」(TBS)など15番組を、順次上記のJ:COMショップなどでも視聴できるようになる。なお、2014 FIFAワールドカップについては「これからNexTV-Fと調整する」としている。
「J:COM Wonder Studio」は、東京スカイツリーの開業に合わせてオープンした同社コンセプトショップ。103型テレビ4台を使った巨大モニターなどを備えている。4K試験放送の映像は、パナソニックの65型4K対応テレビ「TH-L65AX800」を使用。試験放送期間中、毎日13時~19時の実施を予定している。入場無料で自由に視聴できる。
受信するSTBとして、J:COMはパナソニックとHUMAXの計2モデルを開発中。パナソニック製は既存STBの「TZ-HDW610F」を機能拡張したRF受信(256QAM)専用の試作機で、HUMAX製はIP/RF受信の両方に対応。今後一般向けのサービスが始まった場合、IP伝送エリアの場合はHUMAX製STBを使用する形になる。
いずれも3,840×2,160ドットの30pまたは60p映像に対応。HEVC/H.265(Main 10 Profile)の映像コーデックと、AAC 最大5.1chの音声コーデックをサポート。HDMI 2.0出力を装備する。なお、HDMI出力時はテレビ側がHDCP 2.2に対応していることが必要。
パナソニックのSTB試作機の特徴は、HDMI出力だけでなくDLNA経由でテレビに映像配信、テレビ側でHEVCをデコードして視聴することも可能な点。DLNA/DTCP-IP視聴の「お部屋ジャンプリンク」機能を使って、同社のテレビ「VIERA AX800シリーズ」との組み合わせで4K映像を再生している。本サービスに向けて、HDMI出力とDLNA再生の両方について検討しているという。
RF/IP両対応のHUMAX製STB試作機は、4K IP受信時のストリーム方式はTS over RTP/UDP/IP、HLS。IPマルチキャスト/ユニキャストに対応。DRMはMarlin IPTV-ES、PlayReadyをサポートする。
「4Kも8KもCATV」へ
前述の田口和博上席執行役員は、これまで同社がCATV業界の代表として、4K試験放送の開始に向けてNexTV-Fの加盟各社と協力してきた経緯を説明するとともに、総務省のロードマップに沿って「2016年に予定されている本放送開始時には、一般のお客様に見ていただける環境を整える」との方針を改めて示した。
技術本部 端末技術部の上園一知マネージャーによれば、現時点ではIPとRFの場合、パケットで伝送することなどからIPの方に遅延が発生することがあるという。トライアルのなかで、こうしたギャップを埋めていくことを目指す。
一方、夏のトライアル開始を目指すVODサービスについて田口氏は「商用時期は、放送と違って(J:COM側の)環境さえ整えばできるが、技術開発が大きなカギ。そのためにトライアルを早めに開始する。重要なのはコンテンツ。サービスを提供しても『映像が10本しかない』のでは商用といい難い」とし、技術開発とコンテンツの両方を見てサービス実現の時期を決めていくという。なお、J SPORTSを含む自社でのVODコンテンツ制作については「トライアルは一般向けではないため、既存コンテンツを活用する。見せられる段階になってきたところで、ビジネスベースの話を含めて検討していく」とした。
また、4Kの先に見据えている8K放送についても、NHKと共にCATV網での伝送実験を行なっている点などに触れ、2020年東京オリンピックに向けて、技術開発/製品開発を進め「4Kも8KもCATV」の環境実現を目指す考えを示した。