特集
ついに始まったテレビの4K試験放送。どうすれば観られる?
チューナ先行発売、18日からW杯も。衛星/IP/CATVの4K対応まとめ
(2014/6/20 09:45)
6月2日13時、テレビの4K試験放送「Channel 4K(チャンネル ヨンケイ)」が始まった。現在のフルHDより高画質な4Kコンテンツや機器が普及するためのカギとして、最も期待されているのが4K放送。総務省の検討会が示した「2014年のサッカー・ブラジルワールドカップを目処に環境を整備する」というロードマップにも間に合った形だ。
ただ、最初の4K試験放送対応チューナであるシャープ「AQUOS 4Kレコーダー(TU-UD1000)」(オープンプライス/店頭予想価格12万円前後)の発売日は6月25日。NTTや、ケーブルテレビJ:COMなどの一部ショールームでは公開展示されているが、まだほとんどの家庭では観られていない“街頭テレビ”状態だ。本放送開始時期は、総務省のロードマップでは'16年。ただ、実は「AQUOS 4Kレコーダー」は一部量販店などで先行展示/販売が開始されており、先週末に目にした読者もいるかもしれない。
シャープ1社だけでなく、ソニーも今秋に4K対応チューナの発売を予告。今年の秋~年末商戦に向けて、他社を含め4K放送対応製品の登場に期待が持てそうだ。そこで、4K対応チューナの本格登場を前に、改めて現在の4K試験放送と、今後の4K本放送に向けた放送/配信事業者や機器メーカーらによる取り組みの状況をまとめた。
4K試験放送「Channnel 4K」って何? 。視聴の方法は?
「Channnel 4K」はスカパーJSATが持つ124/128度CS放送のプラットフォームを利用し、スカパーを含む放送局や機器メーカーらが加盟している「次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)」が主体となって放送している4K試験放送。チャンネル番号は「502」。対応テレビなどの機器を用意すれば、一般家庭でも観られる。
改めて説明すると、現在の地上/BS/110度CSデジタル放送は基本的にHD画質の1,440×1,080ドットや1,920×1,080ドット、60iで放送されている(マルチ編成などSD標準画質番組を除く)。これに対し、6月2日から始まった4K試験放送「Channnel 4K」は、3,840×2,160ドットの4K/60p。フルHDは「2K」とも呼ばれるが、4Kは解像度が4倍になって、より高精細な映像表現が楽しめるのがメリット。
また、地デジなどの映像コーデックにはMPEG-2(スカパーはMPEG-4 AVC/H.264)が使われているが、「Channnel 4K」には新しいHEVC/H.265を採用。HEVCはMPEG-2の約1/4まで圧縮できるという高い圧縮率により、映像を高画質化しても放送/通信の帯域幅を抑えられることが特徴。音声も、地デジの圧縮音声であるAACとは異なり、非圧縮のリニアPCMを採用。音質は48kHz/16bitで、ステレオだけでなく5.1chの番組も用意される見込み。
【訂正】記事初出時、HEVCの圧縮について「MPEG-2の約半分」としていましたが、正しくは「約1/4」でした。お詫びして訂正いたします(6月20日23時40分)
4K試験放送の受信に必要なものは、対応テレビとチューナ、ケーブルなど以下の機器。これらの機材を用意すれば無料で視聴可能だが、著作権保護のためのスクランブルを解除する目的で、視聴の際には次世代放送推進フォーラムのコールセンターに視聴の申し込み手続きが必要となる。申込み後、2~3時間で視聴できるようになるという。
- 4K放送に対応したテレビ
4K対応テレビの内、Channel 4K対応受信機の出力に対応したHDMI入力(HDCP 2.2対応)があるテレビ - 今後発売予定の Channel 4K対応受信機と、スカパー! ICカード
- チューナとテレビを接続するためのハイスピードHDMIケーブル(カテゴリ2)
- 124/128度 CSデジタル放送対応アンテナ
4K対応テレビは既にソニー、パナソニック、シャープ、東芝、LGから発売されている。なお、前述した通り「4K対応チューナから入力できる」ことが必要で、HDMI 2.0(4K/60p)と著作権保護のHDCP 2.2への対応が必須となっていることは注意したい。
ここ最近のニュース記事でもお伝えしている通り、既発売の4K対応テレビを、基板交換などで4K/60pやHDCP 2.2対応にアップデートさせるメーカーの動きも活発化。4K放送対応に向けて、メーカー側も着々と準備を進めているといえる。なお、NexTV-Fの受信機技術要件で、アナログ映像の出力は禁止されている(アナログ音声は出力可能)。
項目 | 必須 | オプション |
解像度 | 3,840×2,160ドット | - |
フレーム周波数 | 60/1.001 Hz | - |
走査方式 | 順次 | - |
信号形式 | 輝度・色差信号 4:2:0 | - |
ビット深度 | 8bit | 10bit |
表色系 | ITU-R Rec. BT.709-5 | ITU-R Rec.BT.2020 |
項目 | 必須 | オプション |
符号化信号形式 | リニアPCM | - |
サンプリング周波数 | 48KHz | - |
量子化ビット数 | 16bit | - |
チャンネル数 | 2ch | 5.1ch |
試験放送は、当初1日6時間程度、13時から19時まで実施。試験放送に向けて用意された番組は、NexTV-F加盟各社が制作した15本の4K番組。試験放送なので次々に新しい番組が登場するわけではなく、これらが一定の間隔で何度も放送される予定だ。詳細な編成内容は、NexTV-Fのサイトで案内している。このほか、2014 FIFA ワールドカップの4K収録番組も放送される。なお、W杯は生中継ではなく、6月14日に行なわれた「日本 対 コートジボワール」(4K放送は6月18日17時~)や、7月13日の決勝戦(4K放送は7月16日17時~)など4試合が順次放送される。
これら4試合について、6月下旬から7月にかけて複数回の再放送も予定。再放送日時は別途案内される。また、東京・丸の内でのワールドカップ開催期間中に開催されるパブリックビューイングにNexTV-Fが協力。一般の来場者を対象に4Kの放送映像によるパブリックビューイングを実施する。会場内の85型4K対応テレビ3台で4K試験放送を受信し、視聴できる。
4K試験放送予定の番組
- 富士山 ふしぎ水紀行
- 観世流薪能
- プロ野球中継 巨人×ヤクルト
- フィギュアスケート GPファイナル2013
- ワールドプレミアムスポーツ
- THE 世界遺産
- 熊川哲也バレエ
- 大人の極上ゆるり旅
- フジサンケイクラシック2013
- ドラマW「チキンレース」
- 城と酒蔵
- 将棋棋戦特別対局 ~女流棋士対局
- ラグビー関東大学対抗戦2013「早稲田大学 vss 明治大学」
- アリスコンサートツアー 2013 ~It's a time~
- ポール・マッカトニー アウト・ゼアー・ジャパン・ツアー
ブラジルワールドカップの4K放送予定
【グループリーグ(1次予選)】
グループC:日本 VS コートジボワール
試合開始:6月14日(土)22時~4K放送開始:6月18日(水)17時~
【セカンドステージ(決勝トーナメント)
グループC・1位 VS グループD・2位(マッチ50)
試合開始:6月28日(土)17時~ 4K放送開始:7月1日(火)17時~
準々決勝(マッチ58)
試合開始:7月4日(金)13時~4K放送開始:7月7日(月) 17時~
決勝(マッチ64)
試合開始:7月13日(日)16時~ 4K放送開始:7月16日(水)17時~
家庭ではすぐに機器を揃えられないという場合でも、前述した通り一部店頭ではあるが試験放送を体験できるコーナーも登場している。映画館や大型商業施設などでパブリックビューイングとして4K映像を体験できるイベントは、今後も増えていくだろう。
改めて確認しておきたいのは、「4K放送は、今の地上デジタル放送(地デジ)からすぐ置き換わるわけではない」という点。NexTV-Fのサイト内でも「地上波でのChannel 4Kの放送予定はありません」としている。総務省のロードマップでも示されている通り、「関心を持つ視聴者が体験できる環境」が今の4K試験放送。今後、本放送となったときにどの事業者が主体になるかは正式に発表されていないが、プラットフォームを提供しているスカパーが主体となるのが自然な流れと言えそうだ。既報の通り、シャープ「AQUOS 4Kレコーダー(TU-UD1000)」は本放送の受信にも対応予定。
なお、NHK技術研究所の「技研公開 2014」でもレポートした通り、4Kのさらに先である8K SHVの地上波を使った伝送実験なども進められるなど、地上波に関する技術も進歩している。ただし、現時点の送受信設備で考えると、既存回線を使った伝送実験も進んでいる衛星やIP/CATVを使った送受信の方が、地上波に比べて先行している。
録画は今まで通りできる? '20年に向け8Kも進行中
現在の地デジなどと同様に録画もできるかという点が気になる人も少なくないだろう。前述したシャープの「AQUOS 4Kレコーダー」は、内蔵の1TB HDDに約53時間分の4K試験放送録画が可能。現時点では4K試験放送の録画番組を光ディスク記録やネットワーク経由での出力を行なう規格が存在しないため、HDDに一時記録した番組をHDMI出力で視聴する以外の保存/出力方法はない。また、編集機能も備えていない。USB HDDへの4K録画もできない(地上/BS/110度CSデジタル放送録画は可能)。この製品は録画して長期保存するというよりは、タイムシフト視聴用のHDD搭載したチューナといえる。
ソニーが秋に発売予定のチューナは外付けHDDへの録画にも対応し、4K放送コンテンツを4K画質で録画/再生できる。さらに、4Kハンディカムで採用しているXAVC S(コーデックはMPEG-4 AVC/H.264)のデコーダも内蔵、4Kハンディカムで撮影した4K映像を外付けHDDに保存し、テレビなどに出力するといった利用も可能だ。
なお、地デジなどの「ダビング10」とは異なり、全てコピーワンス(1回録画のみ)で、実際にコピーワンスの信号を含めて放送されている。ただし、今後の本放送でダビング回数をどうするかといった詳細な規定は、NexTV-Fではなく各放送サービス事業者が決めていくことになるという。
なお、NexTV-Fの受信機要件で定めらた録画機(蓄積およびリムーバブル記録媒体への記録)については、「蓄積コンテンツには、デジタル映像音声出力の保護要件(=HDCP 2.2)と同程度以上の保護を施すこと」、「蓄積コンテンツは、ローカル暗号によって保護を施すこと」、「ローカル暗号の強度については、AES(鍵長128bit)と同程度かそれ以上の強度を有する暗号アルゴリズムでなければならない」といった規定がある。なお、「リムーバブル記録媒体への記録は、認定した保護方式に従うこと」とあるが、認定の詳細については未定だ。
また、AVアンプを使う場合も4K/60pパススルーやHDCP 2.2対応が必要。オンキヨーの「TX-NR838」や「TX-NR636」などが対応済みだが、まだHDCP 2.2対応機の数は少ない。AVアンプがHDCP 2.2に対応していない場合は、AVアンプを介さずチューナを直接ディスプレイに接続する必要がある。
総務省のロードマップでは4Kの先に8Kも見据えており、4K/8Kを合わせて「スーパーハイビジョン(SHV)」と呼称。既に8Kを本命と位置付けているNHKなどが実用化に向けた機材や放送技術の研究を進めている。
ロードマップでは2016年には「関心を持つ視聴者が8Kを体験できる環境を整備」、2020年に「4K8K双方の視聴が可能なテレビの普及を図る」と示されている。この発表後に、2020年オリンピックの東京開催が決まり、NHKを中心に「東京五輪は8Kで楽しむ」という環境の実現に向けた取り組みが進められている。'16年開始予定の8K試験放送は、その中でも4Kが含まれる可能性があるが、8Kでは衛星も110度CSに変更予定のためTU-UD1000では対応できないといった点は注意しておきたい。
スカパーやひかりTV、J:COMも放送とVOD配信に向け始動
4K試験放送にプラットフォームを提供しているスカパーJSATのほか、「ひかりTV」のNTTぷらら、ケーブルテレビのJ:COMといった有料放送事業者もそれぞれ4K放送/配信サービスを開始予定。4K試験放送の開始に合わせて今後の4Kサービスに向けたスケジュールを発表している。
【スカパー/NTT】
スカパーJSATと東日本電信電話(NTT東日本)、西日本電信電話(NTT西日本)、日本電信電話(NTT)は、光ファイバーを使ったテレビ向け映像配信「フレッツ・テレビ」と「スカパー! プレミアムサービス光」の商用ネットワークを用いた4K/60pの放送サービスを展開予定。スカパー! プレミアムサービス光での開始時期は、「2015年度の春を目指す」(スカパーJSATの仁藤雅夫副社長)という。
伝送路に光ファイバーを利用するため、アンテナ不要で、CSでの視聴と同等の画質で視聴できることが特徴。既に伝送実験も行なわれており、地上/BSデジタル放送、専門チャンネルを視聴できる現在の「フレッツ・テレビ」や「スカパー! プレミアムサービス光」の商用ネットワークを用いて、「フレッツ光」1回線に既存のHDサービスと、毎秒60フレームの4K映像(映像は約35Mbps)を同時に伝送し、複数台のテレビで同時に視聴することに成功している。
映像とインターネット通信(上り/下り)を独立して伝送することも特徴で、大容量の4K映像の視聴と同時にインターネットを利用しても、インターネットの通信に遅延などの影響を与えることなく、高品質な4K映像を視聴可能になるという。
なお、4K映像の視聴には、フレッツ光の回線のほか、4K再生装置(将来の4K映像対応チューナに相当)や4K対応テレビなどが必要。放送は有料になる見込みで、番組については、NexTV-F加盟社が制作する番組だけでなく、独自チャンネルなどの配信も見据え、既にスカパーが4K撮影も実施しているサッカーのほか、映画などの供給も検討しているという。
【ひかりTV】
NTTぷららは、IPTVサービス「ひかりTV」において、放送よりも先にVOD配信で4Kコンテンツを提供する予定。10月の商用サービス開始を見込み、4月からトライアル配信を行なっている。その先に4KのIP放送も見越しており、6月からIP放送のトライアルも開始予定。
これらのトライアルは「Channnel 4K」とは異なり、家庭でも視聴できるのではなく、事業者などに向けた試験だという。NTTぷららやNTT東西本社のエントランス、大手量販店などでの公開は順次行なわれる予定だ。
このトライアルを通じて技術開発と検証を進め、10月からはNTTの光回線を利用した商用サービスの開始を目指す。ひかりTVの4K配信対応製品の第一弾として、シャープの液晶テレビ「AQUOS UD20」(52/60/70型)が発売。ひかりTVは今後も4K映像の自主制作を進めるほか、NHKエンタープライズなどとも協力し、4K配信コンテンツの拡充を図る。
なお、4K IP放送の商用化については2014年度中の開始を目指すが「まずはVODで4K映像配信することでマーケットを構築していく」(NTTぷららの板東浩二社長)としている。同社は既に現在の「ひかりTV」でもスポーツやバラエティなどの独自番組制作を進めており、4Kに関しても自主制作した「下町ボブスレー」、「宮里美香 Shot in 4K」など10作品をVODサービス開始に向けて用意している。
【J:COM】
CATV最大手であるジュピターテレコム(J:COM)は、6月2日13時より4K試験放送「Channel 4K」のCATC回線を使った再送信を開始。東京スカイツリータウン内にある「J:COM Wonder Studio」などジェイコムショップを中心に、一般公開を開始している。なお、一般家庭向けの4K放送サービス開始は、'16年を予定している。
現在は「Channel 4K」の映像を東京・練馬にあるJ:COMのマスターヘッドエンドで受信してグループ各局に伝送。CATVのRFだけでなく、IPでの伝送も実施。J:COM以外のCATV会社(35事業者)にも配信予定で、RFは日本デジタル配信(JDS)、IPは「JC-HITS」を展開するジャパンケーブルキャストを通じて配信する。
受信用のSTBとして、パナソニックとHUMAXの計2モデルが開発中。パナソニック製は既存STBの「TZ-HDW610F」を機能拡張したRF受信(256QAM)専用の試作機で、HUMAX製はIP/RF受信の両方に対応。今後一般向けのサービスが始まった場合、IP伝送エリアの場合はHUMAX製STBを使用する形になる見込み。
STBに関して注目したいのは、視聴方法にDLNA経由のネットワーク再生も検討しているという点。他の放送サービスと同様にチューナ(STB)と直接HDMI接続して観るだけでなく、STBからのDLNA配信に対応すれば、家庭内の他の部屋からも観られるなど視聴の自由度が広がりそうだ。ただし、その場合は受信側の機器がHEVCのデコードに対応することが必要。J:COMのパナソニック製STB試作機はHEVCデコード機能も搭載される見込み。
放送だけでなくVOD配信も「早ければ今夏より実施する」(上席執行役員 事業戦略部門 副部門長の田口和博氏)としている。現在J:COMが展開している、CATV加入者向けのVODサービス「J:COM オンデマンド」と、テレビ/PC/スマホ視聴が可能なIP-VOD「milplus」の両方で4K映像配信を予定。専用のSTBなどを使って4K対応テレビで視聴できるようにする予定。
4Kコンテンツの柱に。「4Kテレビ」登場にも期待
大画面テレビの売上においては、既に4K対応テレビの割合は好調に推移している。GfK調査では4K対応テレビの販売台数は31,000台で前年の55倍。また、BCNの調査によれば、'14年5月の4K対応テレビの全サイズに占める販売台数の割合は2.4%だが、50型以上に限れば20.2%。初めて2割を突破した。
さらに、'14年のトピックとしては、50型やそれより小さな画面のモデルへの4K対応の拡大も挙げられる。ソニーBRAVIA「X8500B」シリーズの49型、パナソニックのVIERA「AX800/AX800F」の50型のほか、東芝REGZAからは「Z9X」の50型に加え、ついに「J9X」で40型モデルも登場した。コンテンツよりも機器が先行して広まりつつあるが、せっかく購入しても観るものが無くなれば、すぐ飽きられてしまうだろう。まだBlu-rayなどで4Kのパッケージメディアが登場していない現時点では、4K放送はコンテンツ不足解消のために欠かせない存在だ。
受信機器関連で気になるのは、4K放送(試験放送)対応チューナを内蔵したテレビはまだ発表されていないということ(ひかりTVの4K受信はシャープ「AQUOS UD20」が対応)。JEITA(電子情報技術産業協会)のガイドラインによれば、3,840×2,160ドット以上の解像度を持つテレビを「4K対応テレビ」、4K放送に対応したテレビを「4Kテレビ」と分類されている。番組の4K化に遅れることなく、4Kテレビが世に出ることも望みたい。
4Kの先に8Kもあることを考えると、なかなかテレビ購入やサービスの導入に踏み切れないという人もいるだろう。ただ、最終的に8Kの普及を目指すNHKにとっても、4Kが世の中に受け入れらければその先が明るいとは言えない。
5月に行なわれた「iVDR EXPO」でも4Kコンテンツが大きなトピックになっており、その中でNHKエンタープライズの長谷川隆 執行役員が興味深いコメントを残していた。長谷川氏はかつてNHKでも番組を作っていたベテラン。そこでの話題は「NHKはどこまで4Kに本気か?」という内容。数多くのプロデューサーを抱えるNHKの中でも「番組を作っていた人間からすると、名前を聞いただけで番組が面白いかそうでないか分かる。(NHKで4K番組を制作しているのは)今の段階でNHKでベスト5に入るトップクラスのプロデューサー」と話していた。
長谷川氏によれば、2015年以降のNHKによる4K番組は「“国民的番組”と言われる大型シリーズドラマ」や、「日本の大物アーティストによる記念碑的公演」を4K制作していくとのこと。「ダーウィンが来た!」などネイチャー番組も「“ほぼ”4K化する」という。これらの取り組みからも、NHKが4Kに積極的なことがうかがえる。
店頭の4K対応テレビなどで4K映像を観たことがあるという人の多くも、これまでは“デモ用に制作された環境映像”のようなコンテンツしか観る機会が無かった。試験放送が始まり、ようやく自分の好きな番組なども4K化される可能性が高まってきた。例えばネイチャードキュメンタリーなら、より実際の風景に近い高精細な映像になることで、見知った番組も違った楽しみ方ができるだろう。まだ試験放送を観ていない人も、ショールームや店頭、パブリックビューイングイベントなどで体験してみてはいかがだろうか。