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ソニーが'15年投入するTVの大半でAndroidを採用。“ヒットモデル作戦”も

 ソニーは25日、アナリストや報道関係者を対象にした事業説明会「SONY IR Day 2014」を開催。テレビ事業を含むホームエンタテインメント&サウンド分野における事業方針について説明し、2015年度から、プラットフォームにAndroid OSを採用したテレビを投入する計画についても言及した。

ソニービジュアルプロダクツの今村昌志社長

 ソニービジュアルプロダクツの今村昌志社長は、「2014年度のテレビ事業の黒字化は、事業存続のための入場券」と語る一方、テレビ事業の中期事業方針の基本的姿勢に、「『商品差異化』と『選択と集中』による安定的収益基盤の確立」を掲げ、「売り上げが2〜3割下がっても、利益の出る事業構造を目指す。それに向けて、基本性能の追求による商品の差異化、選択と資源の集中による固定費削減に取り組む」などと述べた。

 2017年度のモデル数は、2014年度比で3割削減。「社内では“ヒットモデル作戦”と称して、トップエンドの下に全世界でヒットする製品を用意し、それに向けて技術を投入していく。さらにその下に“ヒットモデル2”を用意する。従来は競合他社の製品とぶつける製品ラインアップとしていたが、そうではなく、ソニーが差異化部分を出せる製品を2種類作っていく。結果としてモデル数が削減される」と説明。

 出荷台数については、「高付加価値モデルに振るのか、大きな台数を見込むのかということにより、変動がある。だが、売上高やシェアを目指すのではなく、安定的な利益を目指すのが基本方針。中期的な台数目標は、年間1,500万台を中心に考えている」と述べた。

 さらに、2015年度から、Androidベースのテレビを投入する計画についても改めて言及。「2015年にソニーが投入するラインナップの大半にAndroidを搭載する。主力機種はほとんどがAndroidになる。スマートフォンやタブレットと、BRAVIAとの連携が劇的に進歩し、新たなテレビの楽しみ方が提案できる」などとした。

「商品差異化」と「選択と集中」による安定的収益基盤の確立を目指し、テレビにはAndroidプラットフォームを採用。売上が下がっても利益の出る事業構造を目指す
2017年度に、ホームエンタテインメント&サウンド分野で売上高1兆円〜1兆1,000億円、営業利益率で2〜4%を目指す

 なお、2017年度には、ホームエンタテインメント&サウンド分野の売上高で1兆円〜1兆1,000億円、営業利益率で2〜4%を目指すことを明らかにした。2014年度見通しでは、売上高で1兆2,300億円、営業利益率は1.1%。「売上高の減少の変動要因はテレビだといえる。売上高は下がっても、商品力の強化による収益改善などを通じて、営業利益率を高めていく」(ソニー業務執行役員 SVP ビデオ&サウンド事業本部長兼ソニービジュアルプロダクツ代表取締役副社長の高木一郎氏)とした。

ビデオ&サウンド事業本部長兼ソニービジュアルプロダクツ代表取締役副社長の高木一郎氏

Androidで効率化&差異化

 ソニーのテレビ事業の現状について、今村社長は次のように語る。

「テレビ事業は2011年度に1,475億円の赤字を計上し、同年11月には、2013年度のテレビ事業の黒字化を目指すプランを策定。事業規模の拡大路線を見直し、数量や売り上げ計画を下げ、オペレーションの歪みの是正に取り組んだ。当時のIT型の機能別組織は均一的な製品を大量に生み出すことに最適化されており、数量減少のなかで無駄と非効率性が表面化していた。そこで商品別の責任権限を明確化し、設計、製造、販売までの一気通貫型の組織とし、ロスと固定費の削減を行った。また、S-LCDの合弁を解消し、市場環境に則してパネルを自由に購入できるようにし、マレーシア、上海の自社工場への生産統合に加えて、ODMでの変動対応により、アセットライトと変動対応力を強化。他社製品の後を追うのではなく、顧客価値を創造。競合他社との競争の場を変える戦略により、高精細、大画面化の流れを、ハイビジョンから4Kへと軸に定め、業界の新たなトレンドをリードし、付加価値アップを果たした。しかし、それでも2013年度は黒字化を達成できなかった。そこで、2014年7月には、事業責任と権限をさらに明確化し、市場の変化に対する柔軟な意思決定と、実行スピードのさらなる向上を目的に、テレビ事業を分社化した。2014年度の黒字化は事業存続のための入場券であり、テレビ事業の中期的ゴールは安定的収益基盤の確立にある」

中期事業方針

 一方で、今後の取り組みについては、「テレビ市場は、数量ベースでは微増ながらも、単価下落により金額ベースでは数%の縮小。そのなかでも4Kテレビは着実に浸透するとみている。コンパクトデジカメに対するスマートフォン、PCに対するタブレットといったように、業界コンバージェンスが起きるなかで、テレビは全世界に2億台の市場が継続して存在する特異な市場。これは、各国の放送方式や居住環境といった地域特性に密着しているためである。しかし、新たな価値創造ができない場合にはコモディテイ化が促進され、市場金額の縮小は避けられない。このようななかで、基本性能の追求による差異化として、利益率の向上を図り、選択と資源の集中による固定費を改善し、売上高が2割強下がっても、利益を出せる事業構造を目指す」などとした。

 また、「テレビの本質的価値は、画質、音質、機能を体現するデザイン、そして使い勝手にあると考えている。こうした本質価値を愚直に磨き、変わりゆく環境に対応していくことが、顧客ニーズに対応した商品を生み出すことにつながると信じている。画像信号処理技術、パネル、LED、バックライト、光学デバイスを、製品に組み立てあげる構造や、制御領域にエンジニアリングリソースを集中する。パネルの4K化はすでにコモディティ領域と言われており、オープンソースとして最適な条件で各社から調達する。そこで、ネット配信コンテンツを含めた新たな基準の流れのなかで、ピーク輝度を従来のパネルの3倍近くに高め、色の再現領域を飛躍的に広げるHDRや、液晶バックライトの構造や駆動方式といった新たな技術を活用し、ソニーがトレンドを作っていきたい」と述べたほか、「Androidの採用によって、放送やネットコンテンツを通じた新しいテレビの楽しみ方を広げていくことになる。このようにソニーの技術で差異化する領域と、共通プラットフォームで使い勝手を向上させる領域を織り交ぜて、魅力的な製品を生み出したい」と語った。

 Androidの採用に関しては、「ソニーは、これまではすべてを自ら作るという垂直型の体制であったが、Androidの採用によって、研究開発費の削減が行える一方、世の中の標準にあった形で商品を作り込めるというメリットもある。内部で作り込んでいたり、外部のオフショアで開発していた体制が変わり、大幅な効率改善が図れると考えている。また、スマートフォンやタブレットの設計、開発部門との知識の共有化も進んでいる。Androidという共通環境においても、ソニーが持つ画像信号処理技術やバックライトの制御などの部分で差をつけることができ、エンジニアリングリソースも質を変えていくことになる。また、BRAVIAとXperiaを連動したサービスが利用できるAndroidアプリも提供できる」などと述べた。

 今回の事業方針で明確化したテレビ事業の基本姿勢は、「選択と資源の集中によって、売り上げ拡大に頼らずに、利益を出せる事業構造の確立」である。

 今村社長は、「差異化した製品力強化とともに、モデル数を削減。モデルごとに特徴を持たせ、どういった地域のどういった顧客に対して届けるかということを明確化していく。これによりメリハリのついた地域販売戦略を推進する」と語る。

 米国においては、今年度から流通チャネルの絞り込みと、ショップ・イン・ショップの活動を積極化。「このインチサイズのテレビはいくらだということではなく、ソニーの商品が画質、音質、デザイン、使い勝手の価値を、お客様にお届けすることを、丁寧にコミュニケーションすることで、単価アップ、売り上げ向上につなげる。これにあわせて再編したシンプルな販売組織によって固定費の削減が可能になっている」という。

 また、欧州、日本では4Kを中心した高付加価値戦略を打ち出しながら、販売体制の構造改革に取り組むという。「欧州では約20%の売り上げ向上を目指しており、日本でも46型以上の液晶テレビで上期はナンバーワンシェアを獲得した」と語った。

 さらに、設計、製造、調達、CSの観点からは、マレーシアの製造、開発拠点を通じて、効率改善を図る考えで、バックライトや光学デバイスをオープンセルに組み合わせる構造設計および製造機能を、マレーシアにブラックボックス化して集約。設計、製造、調達機能を有する利点を生かしながら、部品レベルでの在庫管理を徹底することで、在庫削減と全体的なコストダウンを図るととともに、市場環境の変化に柔軟に対応する。

 また、テレビの商品力強化については、「これまでは放送の規格によって画面サイズが決まっていたが、今後はネットコンテンツをはじめとする様々な情報が表示され、放送コンテンツに縛られないサイズになっていく。また、テレビが従来のフォルムとは異なるものにもなっていくだろう。そして、サイネージといった分野でもエンターテインメント性を持った使い方が出てくることになる。こうした新たなテレビを出したい。分社化した会社名にテレビという名前をつけなかった理由はそこにある」などとした。

 今村社長は、「テレビ事業の中期的目標は、売り上げを追うことではなく、シェアを追うことでもない。安定的な事業基盤を確立することになる。ソニーの技術と世の中のプラットフォームを組み合わせ、ニーズにあった魅力的製品による付加価値向上と、それに則した形で事業部、販売会社、本社機能の固定費の改善を行っていく。テレビの分社化によって、やるべきこととが明確化された。あとはこれらを確実に実行することによって結果を出したい」と述べた。

 質疑応答では、分社化のもう一歩先として、ソニーグループからの独立を指摘する声もあったが、高木業務執行役員SVPは、「テレビ、ビデオ、オーディオという販売プラットフォームを有効に使っていくという意味や、SONYのブランド価値を高め、付加価値を提供するという意味でも、ソニー傘下でやることによって、中期的な結果を得ることができる」とコメント。今村社長は、「分社化は経営のスピードをあげるための手段である」と前置きし、「ソニーがエンターテインメント分野で感動を与える会社であり続ける上で、テレビが占める役割は重い。ソニー全体への貢献、ソニーの付加価値を生むという点でも、テレビ事業は、ソニーグループのなかでやるべきだと考えている」と述べた。

 一方、オーディオおよびビデオ事業の中期事業方針については、商品力の強化と、収益性の高い採算構造の構築を掲げ、3つの事業戦略を示した。

オーディオの強化策

 ひとつは、「ハイレゾを中心とした高付加価値化により、最高の音と映像を提供する」ということ。

 ソニー業務執行役員 SVP ビデオ&サウンド事業本部長兼ソニービジュアルプロダクツ代表取締役副社長の高木一郎氏は、「MP3をはじめとした圧縮音源の世界に留まらず、よりよい音、より臨場感のある音で楽しみたいという人が増えた。よい音を追求するのはソニーの務めである。ハイレゾを中心とした高付加価値化による収益性向上を図る」とする。また、「中南米では、よい音というよりも、大きな音が鳴る大型オーディオ製品が人気を集めている。こうした市場では競合を見据えた地域戦略の見直しによる採算性向上を図る」と語った。

 2つめは「設計・オペレーションのさらなる強化」である。

 「市場全体が伸びないという前提のなかで、効率の追求は欠かせない。基幹事業所との設計、製造一体運営の強化を図り、固定費の改善およびロスコスト削減を目指す」とする。

市場の見通し。ヘッドフォンやサウンドバーは伸長

 そして、3つめが「音と映像のブランディング強化」だ。

 ハイレゾを軸として、音と映像のブランドとしてのソニーブランドの向上を図るのが狙いだ。「40代、50代にはソニーブランドが浸透しているが、今後は、若い世代へのソニーブランドの浸透を図る必要がある」とする一方、「日本やアジアではハイレゾが浸透しはじめており、日本ではすでに30%がハイレゾになっている。今後欧米への展開強化を図りたい」とする。また、「今後は、モバイルからリビングへという形で、ソニーならではの高音質体験を広げていきたい」とした。

ハイレゾで収益拡大

 なお、ソニーの代表執行役EVP兼CFOである吉田憲一郎氏は、「ソニーでは、構造改革と並行して、来年度以降を見据えた中期経営計画を策定してきた。今回の内容は、各事業分野における外部環境、内部環境の分析に基づき、利益の安定的確保を狙ったものであり、各部門における議論、検討をベースに事業責任者が準備してきたものである。年度内に経営方針説明会を開催する予定であり、ソニー全体の経営戦略、経営数値目標はその場で発表する」としている。

ソニー 代表執行役 EVP CFOの吉田憲一郎氏

(大河原 克行)