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テレビ春商戦は、3月末「CATVデジアナ変換終了」に焦点。シャープが“縦横無尽”販促

 シャープは20日、'15年の春商戦に向けた液晶テレビの販売促進に関する説明会を開催。この中で、CATVデジアナ変換が'15年3月で終了することによる“アナログテレビ完全終了”に伴う買い替え需要や、画面サイズアップに向けた新しい提案などについて、デジタル情報家電事業本部 国内営業統轄の居石勘資氏が説明した。

シャープ デジタル情報家電事業本部 国内営業統轄の居石勘資氏。テレビは「LC-40H20」(右)と「LC-32H20」(左)

縦サイズもインチアップで“買い替えた感”

 日本国内のテレビ市場について、JEITA(電子情報技術産業協会)の統計を元にした同社推定では、基本需要が'98年度前後と同等の900万台まで回復すると見ている。ブラウン管テレビから買い替えた'04~'07年度の薄型テレビから、現在の薄型テレビへの「買い替え」や、'10~'11年度のエコポイント/アナログ停波の特需からの「置き換え」の本格化に合わせて、これらの需要の取り込みを図っていく。

春商戦は、買い替え/置き換えマーケットの本格化を予測

 具体的な購入者層の対象としては、亀山第2工場の稼働開始('06年8月)当時の、'06~'07年のハイグレードモデル「GX1/2」('06年9月から発売)や、「RX1」('07年3月から発売)など、最初に“世界の亀山モデル”や“吉永小百合のCM”といったキーワードで印象付けた製品からの買い替えを主に想定。

買い替え対象として想定するAQUOS

 新たな施策として居石氏は「“縦横無尽”販促」を提案。これまで同社を含む業界共通の販売促進手法は、現在使っているテレビの横幅を考慮したもので、例えば7~8年前の37型サイドスピーカー搭載「LC-37GX2W」(幅1,109mm)からの買い替えの場合、46型「46G9」だと画面サイズが約1.5倍で幅1,061mmと省スペースになるが、52型4Kの「52US20」だと、横幅プラス約7cmで画面サイズが約2倍になるとする。

 これに加え、春商戦では縦(高さ)のサイズも考慮。例えば7~8年前の46型アンダースピーカーのモデルは、高さ853mmだったが、これを52型「XL10」に買い替えると、画面は約1.3倍ながら約80mm低くなることから、家族から「小さくなった」と言われるなど、“買い替えた感”や“満足感”が得られない場合があると指摘。この場合は「60UD20」にすれば、画面が約1.7倍で高さが約5cmアップすることから、60型を推奨。「サイズ選びを間違えないようにすることをきちんと提案する」としている。具体的には、店頭などで従来モデルの実寸大POPや、サイドPOPなどを用意することで、サイズの違いを分かりやすく訴求するという。

従来は横幅のインチアップを提案
新たに高さのアップも訴求する
店頭販促の例

 「以前、『20型から22型に買い替えた時に画面が小さくなった』という生の声があった。これは、当時きちんとしたヒアリングができておらず、ミスマッチが起きていたから。大画面を勧めることは、メーカーや作り手のエゴと言われる場合もある。だが、当時30~40万円を出して最先端の商品を購入した方に、新しいテレビで今後の節目の年を過ごすために、後悔しないテレビ選びをしてもらいたい」との考えを示した。

 同社製品からのサイズアップの例としては、32型(16:9)や29型(4:3)からは40型を、28型(16:9)や25型(4:3)からは32型への買い替えを提案。4:3の21型/17型からは24型、15型/14型からは22型や19型を提案するという。

 これらのサイズをカバーするスタンダードモデルとしては、2月10日より発売する直下型LED搭載の「LC-40H20」(実売9万円前後)や「LC-32H20」(同6万円前後)、地デジダブルチューナの「LC-40/32J10」(5月発売)を用意。付加価値モデルとしてはBD+HDD内蔵の「LC-40/32DR9」('13年発売)を、2台目用途などもカバーするプライベートモデルは「LC-24/22/19K20」をラインナップする。

ブラウン管テレビから液晶テレビへの買い替え提案
画面サイズの提案例
春商戦におけるAQUOSスタンダードモデルのラインナップ
スタンダードモデルのLC-40/32H20
BD+HDD内蔵の高付加価値モデルとして提案するLC-40DR9
地デジダブルチューナのLC-40/32J10
プライベートモデルとして19/22/24型も提案

CATVデジアナ変換終了に伴う需要の50%獲得へ。「4K/8Kも全て提供」

 '15年の春商戦が従来と異なるポイントの一つは、3月末の「CATVデジアナ変換終了」が迫っているという点。地上アナログ放送の停波後も、地デジが受信できない地域において、アナログテレビを使って視聴できるように、CATV局がデジタル放送を変換して提供する暫定措置で、3月末をもって終了する予定。シャープは「アナログテレビがついに終焉を迎える」として、3月末までのデジタルテレビ移行需要のカバーを狙う。

CATVデジアナ変換に伴うテレビ需要予測

 CATVデジアナ変換終了については、Dpa(デジタル放送推進協会)などが周知活動を行なっており、一部地域では前倒しで終了しているが、一部ではデジアナ変換で観ていることを知らない家庭や、寝室などの2台目、3台目のテレビのみアナログテレビでデジアナ変換で観ているケースもあるとして、「ある日突然テレビが映らなくなったということが起こらないように、3月末までにアナログテレビをデジタルテレビに換えていくのが我々の使命。そのために、販売店と協力してマーケットをとらえていきたい」と説明。'13年に前倒しでデジアナ終了を行なった愛知県・知多半島などの例もあるが、いくら終了告知を行なっていても、実際の買い替えは、かつての地アナ停波時と同様に、終了直前まで、あるいは終了後に駆け込みで購入するケースが多くなると見ている。

 総務省の'14年2月調査によれば、CATVの総接続世帯数は2,693万世帯で、その内デジアナ変換視聴可能世帯数は2,532万世帯。この中でデジアナ変換のみを利用しているのは4.2%となり、計算すると世帯数では105万世帯となる。この数字は、'12年2月の調査に比べると年間57万世帯減少したことになるが、3月末という期限までに100万を超える世帯が残っていることになる。一方、BCNによる'14年12月の調査では、デジアナ変換での視聴者のうち、50%が「買い替える予定がある」という。先ほどの総務省のデータで計算すると「約50万台がデジアナ変換によるマーケット」とみており、シャープは春商戦でその半分以上を獲得することを目指すという。

 同社は、1月に米国ラスベガスで行なわれた「2015 International CES」において、“8K相当”という「Beyond 4K」のAQUOSや、「フルスペック8Kディスプレイ」などの次世代モデルを提案している。こうした高付加価値製品については、3~4月以降もメインに取り組むとした上で、「今は3月末(のCATVデジアナ変換終了)というタイムリミットがある」として、それぞれの需要に応じた提案を行なうことを説明。

 国内市場について居石氏は「液晶テレビは、'01年にゼロから切り開いて、15インチ、20インチから積み上げてきた。マーケットがある限り、19~80インチまで、4K/8Kもすべて提供するのが我々の責務。国内で作ったマーケットは、我々の商品で守る」との意思を表した。

 3月を超えた先には、さらに4K普及の加速を見据え、「これまで(マーケットの開拓などで)ヤマ場を作っており、また大きなヤマ場が来ると想定している。我々が切り開いたマーケットを、今度は4Kに切り替えていくのは宿命。4Kは『人間の目がついていけない』という意見もあったが、我々は“目の前に切り開いた窓”を作りたい。そのためには、世の中に存在する全ての色を表現するパネルが必要。立体感については、誰が目の前にいるのか、難しい内臓の手術でどの血管が手前にあるのかが、明確に見えなければならない。今後、4K/8Kでこういった情報の窓がどんどん広がっていくと思う」と述べた。

(中林暁)