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AKMのDSD 22.4MHz対応DACやNC技術。イヤフォンケーブルが伸びる「ROBODEN」も

 旭化成エレクトロニクス(AKM)は、「CES 2016」に合わせて展示を行ない、7日に発表したDSD 22.4MHz対応プレミアムDAC「VERITA AK4497」や、スマートフォン/ポータブルオーディオ向けオーディオ技術などを紹介。また、イヤフォンケーブルなどを伸縮可能にする旭化成せんいのユニークな新素材「ROBODEN」も出展している。

DAC「AK4497」の新たなフィルタとは? 新LSIプロセスも採用

 「VERITA AK4497」は、ハイエンド/プロフェッショナルオーディオや、AVアンプ、ネットワークオーディオ、USB DACなどでの利用を想定した新世代の32bitプレミアム2ch DACで、'14年発売のAK4490のさらに上位となるフラッグシップ製品。サンプル出荷は2月より行ない、販売は'16年夏の予定。

AK4497

 全高調波歪率(THD+N)は-116dB、SN比は128dBに向上するなど、AK4490(THD+Nが-112dB、SN比120dB)などに比べて強化。また、デジタル入力は最大786kHzのPCM入力と22.4MHzまでのDSD入力をサポートしている点も特徴。

 内蔵デジタルフィルタでチューニングできる部分においては、これまでの5種類に加え「ハーモニックサウンド(低分散ショートディレイ/Low-dispersion Short Delay)」を備えた6種類とした。

 これまでも、プリエコーの無い特性として「ショートディレイ」というフィルタがあったが、その弱点として、高い周波数において、時間的に遅れるという特性があったという。今回のハーモニックサウンドでは「時間的にほぼフラットになるように開発した」(旭化成エレクトロニクスのオーディオマイスターを務める佐藤友則氏)という。

 また、既存フィルタの「ショートディレイ」に、他のフィルターの要素を組み合わせるなどして数値を改善「従来のフィルタの良いところを全部足していったらこのような形になった(笑)。今までのデジタルフィルタとは音の方向は変わり、新しい軸になっている」(佐藤氏)としている。

 従来は11.2MHzまでの対応だったが、倍となる22.4MHzに対応。現時点で22.4MHzの楽曲は存在しないものの、自社でテストデータを作ってチェックを行なった。22.4MHzについては、大学などの学術的な研究段階では進められているとのことで、「今後もしマーケットが倍になった場合の準備ができている」(佐藤氏)という。

評価ボード
AK4497の特徴など

 AK4490からのアップグレードという点では、自社工場で製造するLSIのプロセスも新しくしたのも特徴。AK4490に比べてノイズフロアもフラットな形を実現したという。特に新プロセスでは低音のノイズフロアを落とすことで低音の再現性向上を追求。この他にも、新プロセスでは信号が流れる部分のインピーダンスを下げ、全体の質を上げるための対策を行なってきたという。

 ブースでは実際の音を出すまでのデモは行なっていなかったが、メーカーなどの要望に応じて、システムのサンプルを試聴するための準備はできているという。

FFT測定結果
歪みなどの測定デモを行なっていた

ポータブル向けのローパワー32bit DACや、ヘッドフォンのNC技術

ポータブル向けローパワーソリューションの紹介

 前述のAK4497は、電力面などをカバーすればハイエンドなポータブルオーディオなどでも使用可能だが、その一方で、パッケージを小さくしてスマートフォンなどでも動作することを目的としたローパワーのソリューションも紹介。

 AK4375A/AK4376は、スマートフォンなどのポータブル向けにDACとヘッドフォンアンプを組み合わせたもの。数値的にも、従来のハイエンド機であるAK4490に近いものを出せるという。実際に、ZTEの「AXON」ブランド(北米向け)のスマートフォンに、4375Aが採用されている。

ポータブル向けの技術デモ。北米向けZTEスマートフォンに採用されている

 また、スマートフォン向けに、オーディオコーデックとDSPを一体にしたデバイス「AK4962」も展示。独自開発のソフトと組み合わせて、デジタルノイズキャンセリング(NC)機能を実現している。AK4962は、ヘッドフォン外部の音から、決まったパラメータでNCを行なうフィードバック式に加え、ハウジング内部の音などからさらに補正を可能とするフィードフォワード方式にも対応。

 NCヘッドフォンの場合、装着によってノイズの入り具合が異なる。今回紹介しているソリューションでは、フィードフォワード方式の補正をデジタルで比較的容易に調整できることを特徴としている。

AK4962を使ったデジタルNCのデモ
フィードフォワード方式にも新たに対応

 また、ADC/DACにDSPも搭載し、ソフトウェアを組み合わせた例として、声にエコーを効かせる「カラオケ機能」も紹介。中国の若者には、スマートフォンでカラオケしてながら、その映像を録画してSNSへアップロードすることを楽しんでいる人も多いという。

スマホでカラオケを楽しむ
車載向けでは、ハンズフリー通話や、音声認識の活用なども紹介している

イヤフォンケーブルなどが伸縮する「ROBODEN」

 グループの旭化成せんいからは、電気を通す伸縮性のある繊維「ROBODEN」も展示。Elastic electrical wireと呼ぶこの素材は、伸縮する繊維の中に、コイル状に巻いた電線を内蔵し、中心にも伸縮素材を通し、ケーブル全体で伸び縮みを可能にしたもの。ねじれなどの動きに強く、耐久性が高いのも特徴。狭いスペースに信号線を通すことも可能。ロボットアームなどの自由な動きを妨げないといったメリットもある。

「ROBODEN」の特徴

 製品名の通りロボットや、アシストスーツなどの用途に加え、イヤフォンケーブルやカメラ、ビデオなどのポータブル機器、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、スポーツ向けなどのウェアラブルにも活用できる。登録商標済みで、実際の製品にも使われているという。

 ブース内にはBluetoothイヤフォンや、USBケーブルなどの試作機を展示。スポーツ用のBluetoothイヤフォンでは、ケーブルが体にあたってノイズになることなどもあるため、こうした素材の活用によって新たな製品が生まれることも期待できそうだ。

試作品を展示
試作イヤフォンケーブルを伸縮させたところ

(中林暁)