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ソニー熊本地震の影響は1,150億円。'16年度営業利益は前期並みに

 ソニーは24日、4月に発生した熊本地震の影響により発表を延期していた2016年度連結業績見通しを発表した。売上高は前年比3.8%減の7兆8,000億円、営業利益は2%増の3,000億円、純利益は45.9%減の800億円と予測。なお、熊本地震の悪影響は、デバイス分野を中心に約1,150億円。

2016年度連結業績見通し

熊本地震の影響は1,150億円。外販向けモジュール中止

 熊本地震による営業利益での悪影響は、デジタルカメラなどのイメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野と、イメージセンサーなどのデバイス分野が中心で、IP&S分野で約450億円、デバイス分野で600億円を見込む。加えて、売上高に応じて配賦される固定費約100億円が、その他/全社(共通)及びセグメント間取引消去から両分野へ配賦されなくなるため、連結営業利益への影響額は合計で約1,150億円になるという。ただし、デバイス分野で今年度に受け取ることが見込まれる保険金の受取約100億円により一部は相殺される。

 被災した熊本テクノロジーセンター(熊本テック)で量産準備に入っていた外販向けの高機能カメラモジュールは、長期的な事業性の観点から再検討し、その開発・製造の中止を決定。中止に伴う費用として、約300億円の損失をデバイス分野の見通しに織り込んでいる。同モジュールが想定していた用途については、「『高機能な外販向け』以上の説明は控えさせていただく(吉田CFO)」とした。

熊本地震の営業利益への影響額

 一部稼働再開した熊本テックは、下層階のウェーハ工程が8月にフル稼働に戻る予定。上層階のディスプレイデバイスも、投入ベースでは、7月に震災前の水準に戻す。全体的に下期には通常の生産ベースに戻る予定という。

 ゲームなどのゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野、映画分野、金融分野で増収見込みも、モバイル・コミュニケーション(MC)分野、IP&S分野、デバイス分野が減収で、売上高は前年比3,057億の減少し、7兆8,000億円。営業利益はIP&S分野と音楽分野で減益も、MC分野の損益改善やG&NS分野の増益により、前年比2%増の3,000億円を見込む。

 代表執行役 副社長 兼 CFO 吉田憲一郎氏は、「地震の影響がなければ、営業利益は4,000億円水準。“稼ぐ力”については、デバイスは市場変化にともなう減損等あったものの、商品力は上がってきている。また、PlayStation Networkに代表されるリカーリング事業が立ち上がってきており、G&NS分野の大きな増益の一因になっている」と説明した。

吉田憲一郎CFO

PS4は年間2,000万台体制。モバイルも改善

 セグメント別では、テレビやオーディオなどのホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)分野は、売上高が前年比10.3%減の1兆400億円、営業利益は146億円減の360億円。為替の影響や市場縮小による家庭用オーディオ・ビデオ販売台数減により、大幅な減収見込み。また、分社化やそれにともなう、本社費用、ブランドのロイヤリティの算出方式変更などにより、大幅な減益を予定。

 テレビは引き続きハイエンド4Kに注力。液晶テレビの2016年度販売台数見通しは、前年比20万台減の1,200万台。

2016年度セグメント別業績見通し

 G&NS分野は、PlayStation 4ソフトウェア・ハードウェアの販売増により、増収/増益見込みで、売上高は前年比8.3%増の1兆6,800億円、営業利益は463億円増の1,350億円。PS4の年間販売台数見通しは230万台増の2,000万台。

 MC分野は、普及価格帯スマートフォン販売減少や不採算地域の販売台数減少により、減収見込みで、売上高は9,400億円。製品ミックス改善により、営業利益は664億円改善し、50億円と黒字転換を見込む。スマートフォンの年間販売台数見通しは490万台減の2,000万台。

 IP&S分野は、デジタルカメラや放送・業務用機器の減収と、熊本地震での部品調達の遅れの影響などで減収見込み。売上高は前年比22.5%減の5,300億円、営業利益は前年比533億円減で160億円の予定。

 デバイス分野は、為替の影響により売上高がほぼ前年並みの9,600億円。熊本地震や為替影響などにより営業損失拡大予定で、前年比108億円悪化し、400億円の赤字を見込む。

 映画分野は売上高が前年比7.7%増の1兆100億円、営業利益は45億円改善の430億円。音楽分野は売上高前年比11%減の5,500億円、営業利益が243億円減で630億円。

(臼田勤哉)