Dpa、地デジ化500日前の「ラストスパート」イベント開催
-難視対策BSが本放送に。共聴施設「加速プログラム」も
左から、NHKの島津アナ、日本テレビの山本アナ、テレビ朝日の上宮アナ、Dpaの間部会長、NHKの福地会長、小笠原総務審議官、民放連の広瀬会長、全国協の河合会長、TBSの竹内アナ、テレビ東京の森本アナ、フジテレビの大島アナ |
3月11日開催
デジタル放送推進協会(Dpa/ディーピーエー)は11日、2011年7月24日の地上デジタル放送への完全移行に向け、「アナログ放送終了まであと500日・ラストスパート500」と題したイベントを開催。マスコミや関係者ら約500人が集まった。
地デジ難視対策の衛星放送が11日正午より本放送を開始することに合わせて、会場でカウントダウンを行なったほか、総務省テレビ受信者支援センター(デジサポ)などの'09年度普及活動報告や、'10年度の事業計画を説明。また、会場には内藤正光総務副大臣をはじめ、放送やメーカーなど関係業界の代表者が来場し、今後の課題に対する取組みなどについて語られた。
■ 難視衛星放送は13万世帯以上に拡大。アンテナ無償貸出しは全国規模へ
内藤正光総務副大臣 |
内藤総務副大臣は、「デジタル放送波の世帯カバー率が98%に達し、受信機の普及率も7割に達しているが、早急に解決しなければならない課題が2つある。1つは都市部のビル陰難視問題、もう1つは山間地域の設備」と述べた。
ビル陰難視については「原口総務大臣からも対応策を考えるよう求められており、『共聴施設デジタル化加速プログラム』を公表する。山間地においては、12時からセーフティーネット(難視対策衛星放送)を開始する。総務省としては必要な予算措置を講じることはもちろん、500日後の7月24日にアナログ放送を停波できるよう、全力で取り組む」とし、関係者への協力を求めた。
総務省の「共聴施設デジタル化加速プログラム」では、デジタル化対応の成功事例を共有。受信調査や法律家相談など既存の施策に加え、助成金の拡充やCATV事業者との連携強化などを行なうことで、普及の加速を図る。
また、2月に南関東で開始されたアンテナキット無償貸出しについては、成果を踏まえ、'10年度からは全国で実施することが計画されている。
地デジ難視対策の衛星放送は、2011年7月の地アナ終了までに地上デジタル放送が送り届けられない地区の居住者を対象に、暫定的に衛星放送を利用して地デジ放送を行なうもの。地形的要因や、混信などで難視聴となる地域を対象としており、中継局や協同受信施設など地上系の放送基盤が整備されるまでの間の措置となっている。
スクランブルをかけているため対象地区以外は視聴不可となっている。BS17chを利用し、NHKおよび地域民放と同系列の東京キー局番組の放送を、2015年3月末まで実施予定。対象地区には、利用申込み書が順次配布。なお、BSデジタル受信機やアンテナを持っていない世帯に向けた、国の支援制度も用意されている。
対象地域のリストは、'09年度は栃木、東京、神奈川の一部(約5,400世帯)で、'10年度は全国に対象地域を追加する。今後の対象世帯については、「総務省と全国地上デジタル放送推進協議会(全国協)から1月29日に発表された『地デジ難視対策衛星放送対象リスト』(ホワイトリスト)は13万世帯。この数に、小笠原や徳島、佐賀の一部や、世帯以外の事業所や別荘などを含め、『13万+α』を見込んでいる。当初のシミュレーションでは『35万』と計画していたが、そこまではいかないのでは」(Dpaセーフティネット事業室の小池氏)としている。
なお、対象区域外でもBSデジタルの番組表には地デジ再配信チャンネルがテレビ局名で表示されてしまうため、2月22日から行なわれていた試験放送時に、視聴できない人から難視聴対策衛星放送受付センターへの問い合わせが急増するという問題があった。この点については「現在、混乱がないように案内チャンネルで内容を説明しているが、『分かりにくい』という声もあるため、この案内チャンネルを改善したい」(小池氏)としている。
地デジ大使(代理を含む)の6人。左から、NHKの島津有理子アナ、日本テレビの山本舞衣子アナ、テレビ朝日の上宮菜々子アナ、TBSの竹内香苗アナ、テレビ東京の森本智子アナ、フジテレビの大島由香里アナ | 難視対策衛星放送の概要 |
難視対策衛星放送のEPG画面 | 難視対策衛星放送の対象地区 | 難視対策衛星放送の受付センター連絡先 |
会場では、正午の本放送開始にあわせて、各代表者が登壇してカウントダウンを実施。無事、各チャンネルの放送が視聴できる状態であることが確認された |
■ デジサポ認知は不十分。有名人の「地デジ化応援隊」結成も
引き続き、デジサポでの活動をはじめとする、Dpaの普及促進事業の総括が行なわれた。'09年度は地デジ推進キャラクターの草なぎ剛さんや地デジカ、地デジ推進大使のアナウンサーらによるスポットCMを行なったほか、「テツ&トモ」や「地デジ元気娘」らによるイベントを全国30カ所以上で実施。また、北島三郎さんが歌う「地デジで元気! 音頭」のCDには3,700枚の申込みがあったという。また、デジサポでは、高齢者などへの説明会を全国で7万回・計160万人に対して行ない、80万世帯への個別訪問も実施した。
しかし、デジサポの存在はまだ一般に浸透しておらず、'09年9月の調査ではデジサポの認知度が5.3%だったということが大きな課題。Dpaは'10年度も引き続きデジサポの補助事業者に応募しているが、これに採択された場合を想定した上での基本姿勢と事業計画を発表。事業のポイントとして「“働きかけるデジサポ”から“解決するデジサポ”へ」、「リサーチ&レスキュー」というキーワードを挙げた。
アナログ放送を視聴している世帯が、デジサポを有効利用できるようにするためには、特にアナログ放送画面上での働きかけを重要視しており、放送事業者への協力を求めた。また、「テレビ放送に加えて、ラジオや新聞、雑誌、ポスター、パンフレットなどあらゆる媒体を駆使して周知広報を行なう」とした。デジサポや地デジコールセンターで電話を受けた場合は、個別の課題に適切な方法で対応し、“ファイナルソリューション”を提供することを目指す。
新聞などでの告知の例 |
説明会は7万回開催。戸別訪問は約80万世帯に実施した | “解決する”デジサポへ | '10年度事業の基本姿勢 |
具体策としては、相談会や個別訪問の充実を図るほか、地域の電話番号による相談窓口の開設、電波測定車の柔軟な運用による迅速な対応、受信にはUHFアンテナが必要であることの徹底周知などを挙げた。特に、ビル陰により共同アンテナが必要なケースについては、これまで約5万件の施設管理者に働きかけたにも関わらず、改修方法や費用負担で協議が進まず、まだ26%しか地デジに移行していない。また、個別受信が可能な地域でもアンテナ設置の費用負担に対する抵抗は根強いことから、助成金制度や法律専門家による相談・調停といった国の支援についての周知の必要性も訴えた。
一方、政府の事業仕分けで予算が縮小されたことについては、「初年度は全国規模の網掛けで展開してきたが、新年度は、よりターゲットを絞り、費用対効果を上げていきたい」(高嶋光雪専務理事)とした。
ビル陰や、アパート/マンションなど個別の対策を説明。地デジ化ステッカーによる、対応済み施設の顕在化なども引き続き行なう |
'10年度の普及促進事業の概要 | 3つの新たな取組みを説明 | スポーツ施設などでの地デジスポットの上映を予定 |
そのほか、新たな取組みとしては、球場など大型スポーツ施設のスクリーンで地デジ普及促進の映像を上映することを紹介。プロ野球とJRA、Jリーグが協力し、スタジアムや競馬場で一定期間に渡り上映される。プロ野球での上映向けには、セ・パ12球団から各1選手が出演。巨人の内海哲也選手や横浜の三浦大輔選手などが登場する。
また、有名人による「地デジ化応援隊」を結成し、テレビ放送や新聞などへの露出を計画。隊員についてはまだ明らかにされていないが、「全国区著名人10名程度」としており、準備が整い次第、改めて発表するという。
プロ野球選手がスポット映像に出演 | 屋外大型ビジョンへの露出や、ポスター、懸垂幕などの例 | 有名人による「地デジ化応援隊」を結成する |
(2010年 3月 11日)
[AV Watch編集部 中林暁]