マイクロフォーサーズの業務用AVCHDカメラが国内初披露

-パナソニックが12月発売。Inter BEE出展内容も紹介


AG-AF105(レンズは別売)

 パナソニックは2日、マイクロフォーサーズマウントのレンズ交換が可能な業務用AVCHDビデオカメラ「AG-AF105」を国内で初披露。様々なレンズを使用できる利点や、動画撮影機能の特徴などについて説明した。

 「AG-AF105」は9月13日に国際放送機器展「IBC 2010」で発表。世界で初めて4/3型(フォーサーズ)MOSイメージセンサーを搭載した業務用のHDビデオカメラ。マイクロフォーサーズ規格のデジタル一眼用レンズや、交換アダプタを介してプライムレンズなどのシネマ用レンズが利用できることが特徴。発売は12月より開始され、価格は837,900円。

 撮像素子は、デジタル一眼カメラ「DMC-GH2」と同世代4/3型MOSを搭載。総画素数は1,831万画素でGH2と共通だが、ドライブ回路など一部の仕様が異なるという。GH2と同様にセンサーから60コマ/秒で出力することで、滑らかなフルHD動画撮影が行なえる。

 「映画用35㎜フィルム(22×16㎜)とほぼ同じ撮影面積」という大型イメージセンサー(17.3×13㎜)の採用により、被写界深度が浅く、より広角な映像収録を実現。記録映像フォーマットは、1080/60i/50iと、1080/30p/25p/24p、720/60p/50p/24p/25p/30p。記録モードはPHモード(1,920×1,080/1,280×720ドット、平均21Mbps)、HAモード(1,920×1,080ドット、平均17Mbps)、HEモード(1,440×1,080ドット、平均6Mbps)を用意する。音声記録はドルビーデジタル/リニアPCM(いずれも2ch)。

 記録メディアはSD/SDHC/SDXCカード。カードスロットは2基備え、2枚のリレー記録も可能。HD-SDI出力やHDMI出力、XLRオーディオ2ch入力、アナログ音声出力、ヘッドフォン出力などを装備する。液晶ビューファインダは0.45型/852×480ドット、液晶モニタは640×480ドット。ハンドルとグリップは着脱可能となっている。外形寸法は163.4×209.4×195mm(幅×奥行き×高さ/ハンドル・グリップ含む)、重量は1.2kg。

「AG-AF105」本体操作ボタン部。左下側に十字スティック型の「FUNCTION」ボタンを備える液晶モニタ
記録フォーマットシネライクガンマやDRS(Dynamic Range Stretch)といった同社カメラの画質調整機能を継承グリップ部は着脱可能。取り外すと1/4インチのネジ穴として利用できる


■ スチルカメラと同世代のセンサーで「動画カメラに徹した」

各社のレンズとマイクロフォーサーズ用マウントアダプタ。写真左にあるのがカール・ツァイスのシネレンズ「Compact Prime CP.2」

 マイクロフォーサーズ対応による大きな魅力は、さまざまなレンズが装着でき、一眼レンズのボケを活かした撮影が可能なこと。フランジバックが他のレンズにマウント規格に比べ短いことから、ほとんどのスチルカメラ用レンズがマウントアダプタを介して装着できるという。

 装着できるレンズとしては、新たにカール・ツァイスのシネレンズ「Compact Prime CP.2」のマイクロフォーサーズマウントモデルも登場。IBC 2010で発表され、2010年第4四半期発売予定で、昨日パナソニックに届いたばかりという同製品が会場に展示された。

 そのほかにもチルト/シフト可能なホースマンのアダプタ「TS-pro」(12月発売/39万8,000円)では、レンズ面を動かすことで被写界深度が調整可能。こうしたチルト/シフトアダプタを利用して実際の風景を“ミニチュア風”にすることも可能となる。


動画撮影サンプル。被写界深度の浅い動画撮影を実現10㎜の広角レンズで撮影動画への最適化により、スチルカメラ(右)に比べ、偽色の発生を抑えていることがわかる
AF105対応レンズシフト/チルトコントロールシステムのホースマン「TS-pro」。駒村商会が発売樋野製作所のマイクロフォーサーズ用チルト・シフトアダプタを使った“ミニチュア風”動画撮影のサンプル映像

 前述の通り、「AG-AF105」はデジタルスチルカメラから派生したイメージセンサーを搭載するが、デジタルカメラの動画撮影機能に比べ、業務用機器として動画撮影に対する様々な最適化を行なっていることが特徴。

 スチルカメラとの違いの一つは、センサーの前に光学フィルタを備え、動画のエイリアシング(ジャギー)を抑えていること。「静止画に比べ低い解像度で記録する“動画カメラ”に徹して、画素に適した光の周波数を入れるべき」(同社AVCネットワークス社システム事業グループ システムAVビジネスユニット マーケティンググループ 営業企画チーム参事の宇郷法明氏)との判断から、光学ローパスフィルタや、動画撮影に最適化した信号処理回路により、偽色の抑制を追求したという。

 また、NDフィルタを本体に搭載し、ロータリースイッチで1/4、1/16、1/64、OFFの切り替えが可能。任意の絞りで撮影が行なえることを利点としている。そのほか、MOSの画素スキャンをスチルカメラのものよりも高速化させており、これまでの課題だったスキュー歪みも大きく改善したという。



■ Inter BEEでは「3D」、「P2HD」、「AVCCAM」の3本柱を訴求

パナソニックの下水流正雄氏

 11月17日からは千葉・幕張メッセにて放送機器展「Inter BEE 2010」が開催される。パナソニックからは「AG-AF105」などAVCCAM製品のほか、業務用の一体型二眼3Dカメラ「AG-3DA1」や、3D対応モニタ「BT-3DL2550」などの3D対応製品、P2HDシリーズなどを出展予定。

 8月よりワールドワイドで出荷開始された「AG-3DA1」の売上の地域別比率は10月末時点で北米が53.4%、日本が21.4%、欧州が13.3%となっている。

 業務用の3D対応機器は民生機に比べスタートが遅れた形となったが、AVCネットワークス社 システムAVビジネスユニットの下水流正雄ビジネスユニット長は「パナソニックらしく、End to Endで提供できる」とアピール。「Inter BEEでの展示スペースは昨年と同じくらいだが、『3D』、『P2HD』、『AVCCAM』の3本柱を中心に“中身勝負”で出展する」と意気込みを表した。


業務用3D対応カメラの出荷数の地域別割合と、業界別比率業務用3D製品のラインナップInter BEEの同社出展内容


(2010年 11月 2日)

[AV Watch編集部 中林暁]