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マランツ「STEREO 70s」でお古のスピーカーが本領発揮!! DALI「MENTOR 2」を鳴らす
- 提供:
- マランツ
2025年6月2日 08:00
突然やってきたスピーカーDALI「MENTOR 2」。そしてアンプの死
先日、AV Watchでもよく執筆してもらっているライター 橋爪徹さんから「スピーカーを買い換えたので今まで使っていたお古のスピーカーをもらってくれないか」と連絡が来た。そのスピーカーは、DALIの「MENTOR 2」。ちょうどテレビと組み合わせる良いスピーカーが欲しいなぁと考えていたところだったので、願ってもいないメールに、画面を三回くらい見直した。
MENTORは、RUBICON、RUBICOREシリーズの前身となるシリーズで、リボンツイーターが特徴だ。MENTOR 2は2007年に登場したブックシェルフ型。
橋爪さん曰く、10年以上使い込んだものとのことだったが、発売当時の記事を見てみると当時のペア価格が294,000円……。今はオークションでだいたい7万円程度で取引されているようだが、懐の事情で「買うならエントリーの『OBERON 3』かなぁ」と考えていたところだったので、思いがけないことに、よりグレードの高い機種を頂けることになった。
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「実際に音を聴いてみて、気に入ったら」と、橋爪さんから嬉しいお言葉。オーディオ沼に片足を突っ込んだ友人を引き連れ、橋爪さん宅へ。リスニングルームで聴かせてもらうと、部屋全体を包むアタック強めの低域に、ボーカルは目の前に居るかのように感じるビシッと決まった定位感、広いホールみたいに抜けていくピアノの音……と、年季など感じさせない良い音。大喜びでそのまま譲り受け、友人の助けを借りて家まで持ち帰った。
そして我が家にやってきたMENTOR 2。
……なのだが、いざ部屋でテレビに繫いでいるアンプ「Amazon Echo Amp」と接続してみると、橋爪さんのところで聴いた音と比べ、なんだか気の抜けた音がする。まあドライブしているアンプの価格が違うので、仕方ない……。
デスクトップ環境で使っている、もうちょっと良いアンプで鳴らしてみようと、テレビの前に持ってきてみたら、なんとそのアンプが死亡。電源が入らなくなってしまった!
こちらのアンプも、PCと接続してほぼ一日中酷使する形で5年くらい使っていたので仕方ないかと思いつつ、移動させる前に電源を落としたのが最後になるなんて思ってもいなかったので、ガックリ肩を落とした。
なにより、せっかく譲ってもらったMENTOR 2の真のサウンドを、我が家で聴けないのが悲しい。編集長に相談すると、「だったらマランツのSTEREO 70sを使って、その真価を体験せよ」と言われ、気づいたら家にそこそこ大きめの箱が到着した。
マランツのアンプは、以前、NR1200を試用した事もあり、”手軽だけど高いクオリティ”は体験している。その進化版モデルであるSTEREO 70sがどんな音でMENTOR 2を鳴らしてくれるのか、ワクワクしながら開封した。
実際に使った感想を先に言うと、MENTOR 2の実力を十二分に発揮してくれただけでなく、使用感もさらに良くなっていて、欲しいアンプの最有力候補になった。
お手軽に設置できるアンプなのに、ガチなHi-Fi設計
まずはSTEREO 70sの概要からおさらいしよう。
STEREO 70sは、2023年に登場したHDMI入力搭載の2chアンプだ。高さが109mmと薄型で、重量も8.4kgと筆者の部屋のテレビスタンド棚板(耐荷重10kg)に載せられるサイズ感。
見た目もシンプルなので、棚の上に設置しても威圧感が無いのも良いポイント。特に、今回お借りしたシルバーゴールドは、黒い物体が集まりがちなテレビ周辺で映える色合いで、所有欲を満たしてくれる高級感も兼ね備えている。
特徴は、薄型アンプなのに6入力/1出力のHDMI端子を備えていること。出力側はARC対応なので、同じくARC対応のテレビとHDMIケーブル1本で接続するだけで、テレビの音をSTEREO 70sから、ぐっと良い音で楽しめる。動作も連動するので、繫いでしまえばテレビのリモコンで電源を入れるだけでSTEREO 70sも自動で起動してくれる。
「HEOS」によるネットワークオーディオ機能も備えているので、別途ネットワークプレーヤーなどを買わなくても、このアンプだけで音楽配信サービスやインターネットラジオ、LAN内のNASに保存したハイレゾファイルも再生できる。
機能だけでなく、内部もガチなHi-Fi仕様だ。
音質面で注目なのが、マランツ独自の高速アンプモジュール「HDAM-SA2」を用いた電流帰還型回路を採用していること。ハイスピードかつ、SN比が良く、歪も少ないといった特徴がある。これは後ほど体験しよう。
そんな本格的なHi-Fiアンプながら、テレビと手軽に組み合わせられるサウンドバーのような使い方もできて、価格は143,000円……なのだが、量販店での実売は99,000円前後とちょっと頑張れば買えそうなところまできている。
私のように、このアンプにスピーカーを組み合わせるだけで、ピュアオーディオの世界を体験できるアンプというわけだ。
スピーカーとアンプを接続……の前に、シングルワイヤ接続/バイワイヤリング接続って何?
では、さっそくMENTOR 2とSTEREO 70sをスピーカーケーブルで接続しよう……と思ったところで、手が止まった。
MENTOR 2の背面を見ると、スピーカーターミナルに4つの端子がある。これは、高域用スピーカー(ツイーター)と低域用スピーカー(ウーファー)の端子が別々に用意されたもので、“バイワイヤリング接続対応のスピーカー”という意味だ。実は筆者、バイワイヤリングのスピーカーを扱うのは今回が初めて。
バイワイヤリング対応ではない、普通のスピーカー(シングルワイヤリングのみ対応のスピーカー)の場合、スピーカーターミナルには、プラスとマイナス、1組の端子しかない。
また、アンプ側のスピーカー出力端子も、シングルワイヤリング対応のアンプであれば、1組しかない。スピーカーケーブルで、それぞれ対応した端子に繫げば、スピーカーから音が出る。非常にシンプルだ。
一方で、バイワイヤリングは単純にそのターミナル部分の数が多い。ツイーター用と、ウーファー用でターミナルを分けているのには理由がある。
シングルワイヤリングの場合、低域用のウーファーが動いた時に、その動きによって発生した逆気電力が戻ってきて、高域用のツイーターにも流れ込んでしまう。バイワイヤリングではそれを防ぐ事で、音質向上が図れるそうだ。
ちなみにバイワイヤリング対応のスピーカーには通常、低域用と高域用の端子を繫ぐ「ジャンパープレート」という器具が付属している。このジャンパープレートを使うことで、アンプ側のスピーカー出力が1系統しかない場合や、スピーカーケーブルが1組しかない時でも、スピーカーを鳴らせる。つまり、バイワイヤリング対応のスピーカーを、とりあえずシングルワイヤで接続するための便利なプレートがジャンパープレートというわけだ。
ただ、このジャンパープレート、オーディオマニアの中では評判が良くないようで、MENTOR 2を受け取ったときも、橋爪さんから「プレートは使わないほうが良い」と言われていた。
そして、嬉しいことにSTEREO 70sはバイワイヤリング接続に対応している。スピーカーターミナルを見ると、2系統搭載されている。これで我が家でもMENTOR 2を、バイワイヤリング接続して実力が発揮できるわけだ。
余談だが、編集長によると、「ジャンパープレートを使わなければならない時は、プレートを使うより、使っているスピーカーケーブルを短く切ったものを“ジャンパーケーブル”として、プレートの代わりにするとプレートよりも音が良い事が多い」とのこと。
なるほど。では、MENTOR 2×STEREO 70sのサウンドを体感すると共に、ジャンパープレート、ジャンパーケーブル、バイワイヤリングでどう音が変わるのかも、聴き比べてみよう。
まずはシングルワイヤ接続してみる
シングルワイヤ接続の場合は、STEREO 70sのAと書かれた出力端子と、スピーカーを接続すればOK。出力設定もデフォルトでAになっている。MENTOR 2の方はジャンパープレートを使っている。
先日使えるようになったQobuz Connect機能を使い、Qobuzの楽曲を、STEREO 70sから再生する。STEREO 70sはLANケーブルを使って有線接続したので、特にネットワーク設定をしていないが、Qobuzアプリの出力先として「STEREO 70s」が表示され、音楽を再生できた。
さっそく「HACHI/ばいばい、テディベア(Acoustic Live)」を再生すると、これまでのテレビ用アンプとは世界が違うサウンドが、MENTOR 2から流れ出した。
まず、音の聴こえる空間が段違いに広い。音量を目一杯上げているわけじゃないのに、自分が音に包み込まれて、広いライブ会場にいるような感覚がしっかりと味わえる。
これまで使っていたEcho Link Ampでは、ちょうどアンプが置いてある辺りを中心として、ドーム状の空間は展開するのだが、そのドーム自体が狭かった。また、柔らかい響きが魅力のDALIのスピーカーとはいえ、サウンド自体もフォーカスが甘く、やや眠い音だった。
これが、STEREO 70sでドライブすると、目が覚めるようなスッキリとしたボーカルが出現。その声が、ダイレクトに感じられる。ぶっちゃけこの段階でも「ジャンパープレート使っても、全然良い音じゃん!」と思った。
だが、プレートを取り外し、スピーカーケーブルを短く切ったジャンパーケーブルを使ってみると、様子が変わった。
ピアノの響きがより鮮明に、HACHIのボーカルもより立体的で浮かび上がるような聴こえ方になる。
低域が心地良い「HACHI/異星から」を再生すると、スピーカーから出てくる低音が力強く、身体の中心まで響いてくる感覚が心地良い。大きなエンクロージャーがしっかりと役割を果たしているように感じられて、「ちゃんと鳴らせることができた」と実感できる音になる。
ちなみに、ケーブル高価なものではなく、1m/260円くらいで購入できるオーディオテクニカの「AT6157」を使っている。確かに、ここまで違いが出るのであれば、プレートよりも、ジャンパーケーブルを使おうと思う。
バイワイヤリングで本領発揮。部屋が丸々音の空間に
では、本命のバイワイヤリング接続はどうだろう。
スピーカーのジャンパーケーブルを外し、今度はSTEREO 70sの「B」と書いてあるスピーカー出力端子も使って、左右のスピーカーにケーブルを2本ずつ接続。そして、STEREO 70sのスピーカー出力をA+Bのモードに変更うれば準備は完了だ。
さっそく同じように「HACHI/ばいばい、テディベア(Acoustic Live)」から再生したのだが、もう音の空間がドーム状ではなくなった。
筆者の部屋はちょうど立方体に近い間取りなのだが、部屋の立方体が音の空間に丸々飲み込まれているような感覚。リスニングポイントに居ない状態でも、部屋全体が音の空間になっている。なるほど、これがシングルワイヤリングとバイワイヤリングの間の超えられない壁か……。
HEOSアプリからAmazon Musicでも再生してみる。音質の比較ではなく、単純に筆者の最推しVTuber 猫又おかゆ(おかゆん)の楽曲がQobuzに入っていないためだ。2ndソロライブ開催に先駆けて発売された2ndアルバム「ぺるそにゃ~りすぺくと」を再生する。
ちなみに、おかゆんの声はやや低めでハスキーな印象が強いが、声の高い部分が演奏などに埋もれてしっかりと再生されていないと、魅力的な声の伸びや響きの余韻が全く味わえなくなってしまう。
ちなみに、自分用に何かを買うときの音質チェックには、いつも全神経を耳に集中させて「琥珀糖」を再生している。2ndアルバムでは「大嫌いがもっともっと積もるまで」と「キスだけでいいからね」の2曲も、試聴曲にオススメ。さらに「ガザニア」の歌い出しが埋もれなければ満点だ。
ちなみにこの条件、ポータブルオーディオではかなりハイエンドイヤフォンを使わないと満足できない。なんならEcho Link Ampでは、正直楽しめる音ではなかった。
だが、STEREO 70s×MENTOR 2のバイワイヤリング接続では、素晴らしい音がする。正直もう満足しすぎて何も言うことがない。演奏は部屋を取り囲むように響き、すぐそこにおかゆんが居るかのようなビシッと決まった定位感が気持ちいい。
「謙虚っち」「青い傷」と今回は打ち込みの激しい曲調の曲も入ってきたが、開放型ヘッドフォンでも味わえない演奏との分離感が、ハッキリと聴こえる。ボーカルの旨味を十二分に味わえて最高の気分だ。
許される限りまで音量を上げればもう疑似ライブ会場だ。音質だけで言えば、ライブ会場よりもこっちの方が良いかもしれない。もちろん現地には現地の良さがあるので参戦するわけだが。
正直に言って、STEREO 70s×MENTOR 2の組み合わせを変えたくない。STEREO 70sを返却したくない。レビュー記事を書きながら「どのくらい貯金すれば購入できそうか」という試算するほど、すっかり虜になってしまった。
同時に、バイワイヤリング接続の効果も実感できたので、「例えばAVアンプでバイアンプ接続したらどうなるんだろう?」などと、いろいろ考えてしまった。
また、STEREO 70sはMMカートリッジ対応のPhono入力まで備えていて、フォノイコライザーを内蔵していないレコードプレーヤーを直接接続もできる。筆者のように、今しか買えないレコードを勢いに任せてポチったは良いものの、再生環境を持っていないという人も、STEREO 70sであれば、とりあえずレコードプレーヤーを買うだけでレコードも楽しめるのも魅力的だ。
テレビの音が超リッチに。ソシャゲのPS5版がアニメ映画風に変貌
音楽でSTEREO 70s×MENTOR 2の実力を体験したが、HDMI搭載のSTEREO 70sは、テレビの音も再生できるのも魅力だ。
前述の通り、HDMIは6入力、1出力となっており、この出力部分がHDMI ARC対応なので、テレビのARC対応のHDMI端子とケーブルで接続すれば、テレビのリモコンで電源を入れるだけで、STEREO 70sにも自動的に電源が入るようになる。
ちなみに入力3系統と出力は8K/60Hz、4K/120Hzのパススルーに対応。HDRはHDR10、Dolby Vision、HLGに加え、HDR10+、Dynamic HDRをサポート。HDMI ARCは、192kHz/24bitまでのリニアPCM(2ch)の入力が可能だ。
なお、STEREO 70sのHDMI ARCは音質にもこだわっており、一般的な機器では、HDMIケーブルを通して伝送されるオーディオ信号(SPDIF)は、コントロール信号などと一緒に、筐体内のHDMIインターフェースデバイスに入力される。
しかし、STEREO 70sではコントロール信号はHDMIインターフェースに入力するが、音声信号はこれをすっ飛ばして、直接デジタルオーディオセレクター(DIR)に入力している。こうすることで、余計な回路を経由せず、音の劣化が抑えられるという。
実際にテレビの音を聴いてみると、流石に部屋全体を包み込むような音場にはならないのだが、やはりテレビ内蔵スピーカーで聴くよりも段違いに情報量が多い。
バラエティ番組を見るだけで、スタジオの人の気配がだいぶ生々しい。ちょっと臨場感がありすぎるかもしれない。とくに人の声が非常に聴き取りやすいのだが、声にしっかりと厚みがあって、テレビの音声でもここまでの情報が乗っているんだ、という気づきがあった。
そして、ドラマや映画、アニメを観るときはやはりより一層引き込まれる。地上波の「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」もバイワイヤリング接続で観てみたが、感覚は映画館で観た「-Beginning-」の続きを、映画版のまま家で観ているような感覚だ。爆発するシーンも、部屋全体で揺れるような低音を感じられるので、もうサラウンドとか考えずに、2chで良いんじゃないか?と思えてくる。
PS5でゲームの「崩壊:スターレイル」もプレイしてみた。このゲーム、映像のクオリティが高いのだが、ちゃんとアンプに繫いでスピーカー出力すると音もすごい。最近は必殺技に派手な演出も増えたので、好きな声優が担当しているキャラクターのド派手な技をテレビの大画面と良い音で聴くと、スマホやPCのディスプレイでのプレイとは、別次元の体験になる。
ちょうどボスキャラクターが登場するストーリーが実装されたタイミングなので、STEREO 70sと繫いだ状態でストーリーを進めたのだが、何度も目の前に現れる敵の不気味な気配や、形態変化する毎に勢いを増すボスの威圧感、巨大な足場が落下する中でのバトルなど、まるでアニメ映画を観ているような感覚だった。
スピーカーの魅力マシマシになるSTEREO 70s。ピュアでもテレビでも
筆者のリスニング環境は、あまり良い状態とは言えないものだが、STEREO 70sは、そんな状況でも十分心が動く音を再生してくれた。まるで、サウンドバーをポンと置くような手軽さでセッティングできて、そこから想像を越えるクオリティの音を出してくれた。
MENTOR 2との相性も良く、今まさに喉から手が出るほどSTEREO 70sが欲しい状況に陥っている。また、一度バイワイヤリング接続で聴いてしまったらもう戻れない。
もっと高価なアンプならもっとスゴイ世界になるのか、AVアンプならどうなのかと、気になる事もあるが、正直STEREO 70sを購入して、部屋を整理すれば、もう10年単位で満足して使い続けられそうなポテンシャルも感じている。
価格帯的にはピュアオーディオのエントリー的なアンプなのだと思うが、筆者宅のテレビ周りで使うアンプとしては、もうゴールでも良いのでは?と思えるほど、魅力的なアンプだ。
最新スピーカーと同時に購入すると、それなりの出費になるだろうが、古いスピーカーを活用したいとか、筆者のように誰かから譲り受けた名機の実力を引き出したいという人には、一度STEREO 70sを検討して欲しい。きっと新しい世界が見えてくるだろう。