トピック
レグザのプロジェクターは何が違う? TVチームが作り上げた映像に唯一無二のDNAを感じた
- 提供:
- TVS REGZA
2025年5月30日 08:00
プロジェクターのスタンダードになりつつある「スマートプロジェクター」市場に、あのTVS REGZAが参入するというニュースがホームシアターファンを驚かせた。
TVS REGZAは誰しもが知る“テレビの雄”であり、2025年度モデルの発売もスタートしたばかり。「有機ELテレビも本気、液晶テレビも本気という全方位2トップ戦略」を継続するとして、テレビの復権を目指して注力していくなかで、なぜスマートプロジェクターを手掛けるに至ったのか?
その狙いや、製品のアピールポイントなどを尋ねるべく、プロジェクター開発陣に話を訊いた。
スマートプロジェクターとして現代的な機能を網羅
インタビューに入る前に、まずは製品の概要を紹介しておこう。
TVS REGZA初のプロジェクターとしてラインナップされたのは、「RLC-V7R MAX」(374,000円前後)と「RLC-V7R」(297,000円前後)の2モデルだ。
DLP方式の4Kレーザープロジェクターで、光源には日亜化学工業製のRGB3色レーザー光源を採用している。色域はBT.2020面積比で約110%の広色域、かつ約98%のカバー率を実現。HDR規格はHDR10、HLG、Dolby Visionで、RLC-V7R MAXはHDR10+もサポート。Disney+のマーベル作品などが対応するIMAX Enhancedコンテンツも楽しめる。
両モデルの大きな違いは輝度と音響で、輝度はRLC-V7R MAXが約3,000 ISOルーメン、RLC-V7Rが約2,000 ISOルーメン。そして音響は、RLC-V7R MAXが実用最大出力40Wの2.1chスピーカーシステム+パッシブラジエーター、RLC-V7Rは実用最大出力20Wの2.0chスピーカーシステム+パッシブラジエーターを搭載する。
デザインは最近注目を集めるジンバル一体型構造で、上下約135度の可動域で天井投写も可能。自動台形補正、自動フォーカス調整、自動障害物回避、目の自動保護機能、壁面色自動補正といった補助機能で、スムーズな映像投写を実現している。
Google TV搭載で、NetflixやPrime Video、YouTubeといった映像配信サービスに標準対応。ネット動画で発生するバンディングノイズの補正量(振幅)を調整できる機能も備えるなど、「単体でネット動画を手軽に楽しめる」という、スマートプロジェクターらしい仕様を備えている。
レグザらしさを感じさせるのは、同一ネットワーク内の対応デバイスの録画コンテンツを視聴できること。レグザリンクではなく、デジオン社のアプリ「DiXiM Play」を利用するかたちではあるが、これまで録画してきた映像資産をより大画面で楽しめるのはメリット。映像配信サービスにラインナップされていないコンテンツであれば、なおさらその価値も高まるというものだ。
とはいえ、製品のスペックを眺めるだけでは、これ以上の“レグザのDNA“を発見できない。やはり、詳細な話を聞く必要がありそうだ。
TVS REGZAの新規事業研究院 副部長の岩野修氏、商品戦略本部 商品企画部の瓜生隆廣氏、R&Dセンター 副センター長の六車和彦氏に聞いていこう。
国内テレビ市場でトップシェアのレグザがなぜプロジェクターを?
TVS REGZAは2024年から、映像デバイスの枠組みを広げる取り組みをスタートしている。その第一弾としてリリースされたのがゲーミングモニター、そして今年発売が決定したのがプロジェクターだった。
しかし、TVS REGZAは国内テレビシェアでトップを走るメーカーだ。手を広げるリソースをすべてテレビに割く、という判断もあったはずだが、そうならなかったのはなぜだろうか。
「TVS REGZAとしては確かにテレビが大きなボリュームを占めていますが、もともと弊社は映像ソリューションを提供する会社です。ユーザーのライフスタイルをより便利で、楽しいものにするというのが経営ビジョンであり、今回の製品もディスプレイのトータルソリューションの一環となります」(岩野氏)
「近年、テレビというデバイスでの視聴時間が減ってきています。また、世帯でのテレビ保有台数が1台のみという動きも加速してきました。その背景には視聴デバイスの多様化など色々な要因が考えられますが、テレビという装置で観ることが減っても、コンテンツそのものを楽しむ時間はむしろ増えているのではと。それならば、我々としてはテレビ以外でも、レグザの高画質を楽しんでいただきたい。手軽さと高画質を両立できるものはなにか、と考えたときに、大画面を身近にするプロジェクターという選択肢が挙がりました」(岩野氏)
たしかに、スマートフォンと映像配信サービスの普及によって、映像鑑賞は時間と場所に縛られなくなった。筆者も家の中なのにスマートフォンで動画を観ることが多いが、そこに画質は求めず、手軽さを優先している。
だが、流石にスマートフォンと同レベルの手軽さは無理があるにせよ、もしテレビのような使用感で、テレビを超える大画面が楽しめるのであれば、その方法を選ぶ機会も多いと思う。
また、プロジェクターが“脱マニア化”していることも理由に挙げられた。「もともとプロジェクターは、ビジネスシーンや、ホームシアターマニア向けの製品だったかと思います。ですが、今は小型のスマートプロジェクターも登場して、より身近な存在に、それこそ“推し活”などにも使われるようなものになったと認識しています」(岩野氏)と語られるように、SNSを眺めるとオシャレな部屋のインテリアとしてプロジェクターが登場することも増えた。もはや100インチ級の大画面は、マニアだけの楽しみ方ではなくなってきてるのだろう。
しかし、そういった一般層に届けるには、正直なところレグザプロジェクターは高価だと思う。数万円台のスマートプロジェクターが市場を賑やかすなかでは、厳しい戦いを強いられるのではないだろうか。そんな疑問をぶつけると、次のように答えてくれた。
「レグザのブランドを掲げる以上、レグザを愛してくれる方に相応の価値を提供できなければ意味がありません。一方で、品質を追い求めるあまり、一部の方だけが購入できるような超ハイエンドモデルにしてしまうのも違う。もし我々の製品が市場に受け入れられて、シェアが拡大すれば、よりラインナップの幅を広げることもできるでしょう。ただ、そのためには最初に期待外れと思われてはいけない。レグザとして担保すべきクオリティと価格の折り合いをつけたのが、今回の2モデルとなります」(岩野氏)
安価なモデルでプロジェクターデビューしたら、その画質にガッカリして使わなくなってしまう、という話はよく耳にする。テレビトップシェアを誇る“レグザクオリティ”の安心感を考えれば、長く使い続けられるモデルとして価格設定にも納得がいった。
レーザー光源の良さをレグザの技術で引き出す
では、肝心の“レグザクオリティ”はどのように実現しているのだろうか。
「まず、光源は高画質を実現するための基礎的な部分ですが、吟味した結果、広色域で色が鮮やかに出るRGB3色レーザー光源を選びました。そして、テレビに使用される量子ドットよりもさらに色域が広いこのレーザー光源を用いて、どのようにレグザらしい画を実現するか。レグザのテレビチームが突き詰めて、映像を作り上げました」(岩野氏)
なお、採用されたレーザー光源は日亜化学工業製だ。映画館用プロジェクターへの導入実績も豊富な業界トップブランドであり、家庭用プロジェクターでも本格的な映像投写が実現できるレーザー光源として採用を決定したという。
「このレーザー光源の広色域を活かした、画の広がり感というのは大事にしていきたい。ただ、うまく調整しないと白が飛んだり、黒が普通よりも沈んだりしてしまいます。自然な画になるように、テレビ開発で用いる評価画像を使いながら作り込んでいきました。ものすごく派手に作ることもできるが、それだと違和感が出かねない。一方でテレビの画の枠に押し込んでしまうと、レーザー光源の良さがなくなってしまう。我々のテレビをデフォルトとしながら、レーザー光源の色彩をどう表現するかに気を使いました」(瓜生氏)
SoCにおいても、テレビと同様のものをベースに、プロジェクター用にチューニングを施したそうだ。とはいえ、ここでも一筋縄ではいかない。
「テレビは独自OSだから実現できる映像技術があるので、Google TVを採用したプロジェクターでは、同じプロセッサーであってもすべての技術を使えるわけではありません。たとえば映像配信サービスを利用される方は多いであろうことから、ノイズを改善するバンディングスムーザー機能は入れよう、などレグザのテレビから応用できる有用性の高い技術を選定して導入しています」(六車氏)
こうして仕上げられた映像は、「ひと言でいえば、画面の見栄えがテレビに近いんです」とのことだ。「プロジェクターの映像を見慣れた方には違和感があるかもしれませんが、レグザの画を好まれる方には、テレビの画が良いだろうと。特に人の肌の発色にはこだわっています。自然な色合いで、肌の質感が出るように、コントラストを細かく調整しました」(岩野氏)という言葉からも、レグザがテレビの画作りでこだわるポイントと共通していると感じられる。
レーザー光源という素材の良さを活かしつつ、テレビで培われたレグザの技術を投入し、プロジェクターという形式に落とし込む。こうして生まれた“レグザプロジェクターの画”についてのインプレッションは後述するが、唯一無二のものになっている。
エントリー層には使いやすく、マニア層には使いこなしが楽しめるように
使い勝手への配慮、そして“細かすぎる機能”もレグザ流だ。
「こだわったのは、設置の自由度の高さです。日本の家屋では、なかなか自分の置きたいポジションにプロジェクターを設置することが難しい。また、カジュアルに壁面投写されることも多いと想定しています。そうした使い方に対応できるよう、台形補正で斜めからの投写を可能にするなど、自動補正機能を充実させました。特にズームは上位機種(RLC-V7R MAX)だけになりますが、デジタルズームではなく画質の劣化が少ない光学ズームを搭載しています」(瓜生氏)
設置しやすいジンバル一体型構造と便利なサポート機能によって、プロジェクター導入のハードルとなる、映像投写までの大変さをクリア。本格的でありながら、細かなことを気にせず使えるのはありがたい限りだ。プロジェクターに慣れていない方にとっても、迷いなく大画面が投写できるようになっている。
また音響設計を疎かにしていないのも、利便性を考慮してのこと。「RLC-V7R MAXには20Wのバズーカウーファーを、RLC-V7Rにも対向のパッシブラジエーターを搭載しています。AVアンプにサラウンドスピーカーをつないで、といったシステムを組まなくても良いように、プロジェクター単体でも満足できるようにと考えました」(岩野氏)と、“ポン置き”で問題ないような仕様を取り入れた。
こうした使いやすさと相反するようだが、映像調整機能については、初心者には優しくないかもしれない。安価なモデルにありがちな謎フォントや、感覚的ではないUIなどの問題はないのだが、とにかくカスタマイズ項目が多いのだ。好みに応じた追い込みができるというのはメリットだが、マニアックな仕様とも言える。
使いこなしについて尋ねると、「多様なニーズに応えるために、ある意味で機能をつけすぎなところがあるかもしれません。一概にこれがオススメとは言いにくいですが、デフォルトの状態がテレビ風な画を楽しんでいただけるかと思います。もっとプロジェクターらしい映像が観たいという方は、映像制作者の意図した画を再現するFILMMAKER MODEモードを試していただいたり、映像調整機能を触っていただけたらと思います」(六車氏)との回答を得た。
また、スマートプロジェクターでありながら端子数も「レグザの2Kテレビ並につけています」というほど充実。映像モードは入力コンテンツにより切り替わり、ゲームプレイでは専用UIも表示できるなど、使うほどに色々と試したくなるような奥深さがある。
レグザとして、いまプロジェクターに参入するのはチャレンジではあるだろう。だが、『日常を変える、もうひとつのレグザ。』というキャッチフレーズがついた2モデルに対して、「それに相応しい機能、拡張性を入れたつもりです。プロジェクターはテレビとも親和性が高く、ゲーミングモニターよりもレグザの世界観を出しやすい。テレビのような高画質を大画面で楽しむ、ライフスタイルに変えていくというのが、我々がたどり着きたいゴールシーンです」(岩野氏)とコメントする担当者からは、自信と市場への期待が見て取れた。
100インチの“レグザの画”に圧倒される
今回、上位機のRLC-V7R MAXを自宅で試させてもらった。早速電源を入れてみると、これまで観たことのあるプロジェクターの映像とは少し異なる印象を受けた。
ハイコントラストで色鮮やかな描写は、プロジェクターというより、まるでテレビを観ているような感覚だ。インタビューで語られたように、まさに“レグザの画”が超大画面で楽しめるのが、本機の最大の特徴と言っていいだろう。
レーザー光源の能力が遺憾なく発揮されているようで、色彩の鮮明さは特筆モノ。特に人の肌が極めて自然に再現されているため、リアリティが高い。映像は明るく、部屋の照明をつけた状態でも十分に鑑賞に耐える。
というよりも、照明のある視聴環境での発色の良さはスマートプロジェクターのなかでもトップクラスかもしれない。暗部のディテールは照明を落とせば現れてくるし、細かすぎるほどに用意されている映像設定の調整でどこまでも追い込むことができる。
ちなみに、映像調整機能が非常に豊富なので各種それぞれを紹介するのは難しいが、とりあえずAIがシーンに応じて最適な画質にしてくれる「AIシーン」をオンにすればOK、とはいかないことはお伝えしていきたい。
正確には、普通に観る分には問題ないのだが、AIシーンがオンだと一部の項目がいじれなくなるので、細かい部分が気になっても調整できないのだ。レーザー輝度調整のメニューなどいじりがいがあるので、慣れている方はどんどん触ってみていただきたい。
なお、映像モードの選択肢は入力されるコンテンツによって変わるが、「標準」が最もレグザらしさが感じられるようになっている。一方で、ホームシアターらしさを感じたいのであればフィルムライクなバランスの「映画」もしくは「FILMMAKER MODE」を選べばいい。この再現性の違いを1台で楽しめるのは、まさに“1粒で2度美味しい”といったところだ。
レグザはアニメにも強いが、本機の再現性もまた、アニメにマッチする。古い時代のセルアニメから最新のデジタルアニメまで、精細かつ滑らかに描写してくれる。
またアニメでは派手なシーンはとことん派手に、実写よりも容赦のない光の使い方をされることもあるが、それを破綻なく描き出す。画面全体が覆い尽くされるような激しい爆発も、その光のなかの情報が潰れずに再現される。そして光が眩しいほどに、黒が引き立つ。
宇宙空間を貫く光線も、リンクを舞うスケーターの演技も、スポットライトに照らされたライブシーンも、どのシーンでも明暗の対比が素晴らしく、作品の世界に引き込まれてしまう。
続いてYouTubeのSnow Man公式アカウントから、「Snow Man 'BREAKOUT' Live Performance Video 〜Dome Tour 2024 RAYS〜」を再生してみる。大画面とライブ映像との相性は抜群だ。本機の高コントラストが活きて、レーザー光線の演出が映える。目線やわずかな口角の動きなど表情がハッキリとわかり、激しいダンスパフォーマンスもブレなく滑らかに描写される。
音声モードは「標準」「映画」「スポーツ」「音楽」「ニュース」「深夜」の6種類が用意されている。「深夜」はぐっと音圧が下がるので、コンテンツにあわせて選択するのは5種類となる。また広がりあるサウンドになる「DTS Virtual:X」がオン/オフできる。オフにすると音にインパクトが出るが、大きな画面に合うのはオンの状態のように思う。
Snow Manのライブ映像では「音楽」も良いが、案外「映画」がライブ感が出てマッチした。MVを見るなら「標準」や「音楽」、ライブ映像ならしっとりした楽曲は「音楽」、激しい楽曲なら「映画」を好みに応じて使い分けるといっそう楽しめそうだ。
本機を視聴してつくづく思うが、「普通に使えて高画質」というのは実に素晴らしい。
安価なプロジェクターではそもそも明るさ不足だったり、明るくてもディテールが潰れていたりすることがある。また色鮮やかを履き違えてけばけばしい色使いになっているものもある。さらに、UIが使いづらくなっていて、ストレスを感じることも。
本機はそういった問題は一切なく、直感的な操作で、ただただ高画質な大画面映像を堪能できる。当たり前のようでいて、これができているモデルは決して多くない。
先に映像のクオリティについて述べたが、本機は使い勝手が優れているのもポイント。ジンバル一体型で角度調整は簡単、自動フォーカス&台形補正でピタッと画面が決まる。普段は片付けておいて、使いたいときに持ち出せばいいので、本格的なのに導入のハードルが低いのが嬉しいところ。
ゲーム機をつないで大画面ゲームをプレイするのも楽しいし、まだ配信されていない作品をディスク再生すれば、好きな作品のまた違った一面が見えてくるはずだ。真上を向けて夜空の映像を天井投写すれば、たちまち部屋がプラネタリウムになる。アイディア次第で本機が活躍する場面はいくらでもあるだろう。
レグザのDNAが投入されたプロジェクター
インタビューと実機視聴を経て、RLC-V7Rシリーズがレグザらしさを盛り込んだ、テレビのような視聴体験ができるプロジェクターであることが理解できた。
大画面を身近にすることを目指しつつ、マニアを切り捨ててはいない。初めてのプロジェクターとしては思い切りが必要かもしれないが、少なくとも購入して後悔することはないはずだ。
RLC-V7Rシリーズは、テレビで培われた“レグザの画”を100インチ級の大画面で楽しめるという、これまでのスマートプロジェクターにはない価値を持っている。レグザというブランドを背負った期待値の高いモデルだが、そのハードルを超えてきたと言っていいだろう。