B&W、45周年記念のブックシェルフ「PM1」発表

-ペア32万円。「805Sを超える高音質を目指した」


新ブックシェルフスピーカー「PM1」

 ディーアンドエムホールディングスは、英B&Wの新ブックシェルフスピーカー「PM1」を8月に発売する。価格はペアで32万円。スタンド「FSPM1」はペアで76,000円。

 B&Wの45周年記念モデルで、PMは「プレステージ モニター」を意味する。「新たなシリーズの一員として生まれたスピーカーではなく、ワン・アンド・オンリーのアニバーサリー・モデル」とされている。価格帯としては、Nautilus(ノーチラス)800シリーズのブックシェルフ型として発売されていた「805S」(17万3,250円/1本、2本で34万6,500円)と同程度。「805Sを超える高音質」をテーマに開発されたという。現在の「800 Diamond」シリーズのブックシェルフ「805 Diamond」(294,000円/1本/チェリーウッド or ローズナット/2本で58万8,000円)よりも低価格になる。

 外形寸法は191×250×331mm(幅×奥行き×高さ/キャビネットのみ)。重量は9.3kgで、805Sのサイズ(238×351×418mm/11.5kg)より小さい。ユニットサイズはツイータが25mm径、ウーファが130mm径(805Sは25mm径と165mm径)であり、ユニットのサイズやエンクロージャの容積は、「CM1」とほぼ同じ。


CM1805S805 Diamond

 なお、これまでのアニバーサリーモデルの多くは、ケネス・グランジ卿がデザインを担当してきたが、PM1は、B&Wのレギュラー製品をデザインしているMorton Warren氏が担当。デザイン的には「音の綺麗な広がりや、小型スピーカーとしての強度を追求した結果、人間の頭のような形状になった」(B&Wのシニア・プロダクト・マネージャーMike Gough氏)という。


「PM1」の使用イメージ

 フロントバスレフのブックシェルフスピーカー。ツイータはお馴染みのノーチラス方式テーパリング・チューブを使ったもので、振動板に工夫がある。最上位の「800 Diamond」では素材としての硬さや軽さからダイヤモンドドームを採用しているが、コストが高いという問題がある。「PM1」では従来からのアルミニウムドームを採用しているが、アルミの振動板が振動する過程でどのように変形するかを解析。ドーム周辺が最初にたわむことを突き止め、それを防ぐためのカーボンファイバー製リングをドームの周辺に配置し、補強している。これにより、高域の共振周波数が30kHzから40kHzにシフト。20kHz以下の可聴周波数域での音質改善を実現したという。

ツイータはお馴染みのノーチラス方式テーパリング・チューブを使ったものツイータの分解図。左から3つ目がアルミ振動板だが、その右隣に黒い紐のような輪っかがある。これがカーボンファイバー製リング赤線が従来のアルミニウムドームツイータ。緑の線がPM1のツイータ。高域の共振周波数がシフトした事がわかる

 マランツブランドの音質担当マネージャーである澤田龍一氏によれば「B&Wもチタン、バナジウム、カーボン、ベリリウムなど、様々な素材を研究していたようだが、やはりアルミが使われる事になった。使いやすい金属である事と、素材固有の音が、人間の生活環境にある響きなので違和感を感じさせないところが利点」だという。なお、カーボンファイバーで振動板を補強するという試みは、'93年の「オリジナルノーチラス」でも使われていたという。しかし、当時は手作業で作られており、今回は量産化できるような工程も考案されている。新ツイータは「カーボンブレース・トゥイーター」と名付けられている。

 130mm径ウーファの振動板はウォーブンケブラーで、同社スピーカーでよく使われているものだが、PM1では中央のダストキャップを改良。発泡体で作られたマッシュルームのような形状のプラグを、ボイスコイルボビンに直接装着したもので、ボビンの補強と、メカニカルダンピングの付加、さらにボビンの振動を低減することで、コーンの共振に起因する振動も低減。これにより、ケブラー振動板のファイバークロス特有のカサカサしたノイズも吸収されたという。

マランツブランドの音質担当マネージャーである澤田龍一氏発泡体で作られたキャップを新たに採用赤線が一般的なダストキャップ、緑がPM1のもの。波形が滑らかになっているのがわかる

 エンクロージャのコア部分である底板や側板、内部のマトリックス補強にはMDFを使用。側板は既に存在するが、そこに合板で作られたサイドパネルを重ね、メカニカルダンピングと重量増を計っている。パネルは木目のモカカラー。フロントバッフルと天面は一体成型で、「800 Diamond」や「802 Diamond」のヘッドと同様の形状を採用。熱硬化型樹脂を使ったバッフルの裏側に、ミネラル充填樹脂を注いで補強している。フロントのバスレフポートには、気流の流れによるノイズを低減するフローポートを採用する。

 ネットワークは最小構成で、空芯コイルやムンドルフのM-Cap Supreme Oilコンデンサ、超低歪薄膜抵抗などを採用。入力ターミナルや内部配線にはOFC(無酸素銅)を採用している。

 システム全体の再生周波数帯域は42Hz~60kHz。クロスオーバー周波数は4kHz。出力音圧レベルは84dB。インピーダンスは8Ω(最低5.1Ω)。推奨パワーアンプ出力は30W~100W(8Ω)。スタンド「FSPM1」のサイズは268×300×620.5mm(同/スパイク除く)。

フロントバスレフでフローポートも採用している内部。フロントバッフルと天面は一体成型側面にはサイドパネルを追加している
スピーカーターミナルはバイワイヤリング接続対応内部のネットワークスタンド「FSPM1」と組み合わせたところ


■音を聴いてみる

試聴の様子

 D&Mの恵比寿リスニングルームにおいて、短時間ではあるが「PM1」を試聴できたので、印象をお伝えしたい。なお、比較試聴は行なっていないが、価格帯的に「805S」の印象と比べてみたい。

 男性ヴォーカルで最初に強く感じるのは、コンパクトなブックシェルフならではの音場の広さ。展開する音場には制約が無く、窮屈な感じは一切無い。そこに浮かび上がる音像もクリアで、定位は極めて良好だ。音像がスピーカーのラインから引込み過ぎず、しっかりと前に主張するのは「805S」を彷彿とさせる。

 音質面では高域の自然さ、クリアさ、付帯音の少なさが印象的。805Sにあったキツさがほとんど感じられず、高域がストレスなく綺麗に伸びる。低域も詰まった感じが無く、十分に沈み込む。中域のカサつきも少なく、クリアな高域と良くマッチしており、ワイドレンジで上下ともに“制約の無いサウンド”と感じる。サイズ的には「CM1」と同程度だが、出てくる音はランクの違いを明確に感じさせるもの。要注目のブックシェルフが登場したと言えるだろう。



(2011年 6月 23日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]