ニコ動、5周年迎え「ニコニコ動画(ZERO)」を4月29日開始

-12月13日からカテゴリ刷新。年末年始のアニメ情報も


「ニコニコ動画(ZERO)」のテーマは「原点回帰」

 ニワンゴは、運営する「ニコニコ動画」の5周年となる12月12日に、プレーヤーの機能強化や動画のカテゴリ新設などを含む次期バージョン「ニコニコ動画(ZERO)」を東京・六本木のニコファーレで発表。4月29日よりサービスを開始する。

 さらに、著作権を管理するサービス「ニコニ・コモンズ」をリニューアルし、売上金の一部を動画投稿者に進呈する「クリエイター奨励プログラム」を12月13日より開始する事も明らかになった。

 また、コンテンツ配信関連の発表として、「年末年始は5周年記念アニメ祭り!」として、12月末から1月頭にかけて配信するアニメ作品の無料配信情報も発表。既に発表されているものも含め、以下のタイトルが年末年始に無料配信される予定。


日付配信時間作品名
12月24日(土)14時~20時探偵オペラ ミルキィホームズ
第1期&サマー・スペシャル
12月25日(日)14時~20時ギャラクシーエンジェる~ん
12月27日(火)20時~25時30分School Days
12月28日(水)20時~24時秘密結社 鷹の爪
TVシリーズ 1期&2期
12月29日(木)20時~25時20分灼眼のシャナ III -FINAL-
12月31日(土)15時~22時化物語
1月1日(日)16時~23時トップをねらえ!
トップをねらえ2!
トップ1&2 合同劇場版!!
1月2日(月)10時~24時30分 創聖のアクエリオン
創星のアクエリオン -裏切りの翼-
創星のアクエリオン -太陽の翼-



■ニコニコ動画(ZERO)

発表会の進行は左からドワンゴの夏野剛取締役、川上量生代表取締役会長、ニワンゴの西村博之取締役が担当。ひろゆき氏(西村博之氏)は「モンハンを遅くまでプレイしていて……」と大幅に遅刻して登場。夏野氏から「昔もよく遅刻していて、これも原点回帰」とネタにされる一幕も

 ニコファーレで行なわれた12月12日の発表会は、「ニコニコ動画(ZERO)」で実現される様々なサービスや機能の一部を発表するものと位置付けられており、2012年1月15日と、2012年3月6日にも発表会を開催予定。それぞれの発表会でも追加情報が明らかになる。その集大成として2012年4月28日~29日に、幕張メッセで「ニコニコ超会議」が開催予定で、その場でも新バージョンの詳細を発表。4月29日より、「ニコニコ動画(ZERO)」が本格的に始動する事になる。

 なお、「ニコニコ動画(ZERO)」としてスタートを切るのは2012年4月29日だが、一部の機能強化やサービスはそれに先駆けてスタートする。具体的には、2011年12月13日の朝10時頃から、動画カテゴリが整理され、新カテゴリが追加される。追加されるのは「ニコニコインディーズ」、「車載動画」、「旅行」、「ニコニコ手芸部」、「作ってみた」の5つ。需要が少ないという「歴史」カテゴリは廃止される。


刷新されたカテゴリの一覧

 新設される「ニコニコインディーズ」は、「VOCALOID」や「東方」と括りに属さない、投稿者オリジナルの楽曲を中心としたもので、その派生動画(アレンジやPV等)までを含めている。このタグに該当するか否かの判定は基本的に緩やかなものになるという。

 さらに既存のカテゴリグループを再編。従来は御三家とされる「東方」、「アイドルマスター」、「VOCALOID」が殿堂入りカテゴリという扱いだったが、これを開放。「やってみた」カテゴリも解体され、全カテゴリ平等にジャンル分けを実施する。

 具体的には、「エンタメ・音楽」の中に、「エンターテイメント」、「音楽」、「歌ってみた」、「演奏してみた」、「踊ってみた」、「VOCALOID」、「ニコニコインディーズ」が属する。

 「アニメ・ゲーム・絵」の中に、「アニメ」、「ゲーム」、「東方」、「アイドルマスター」、「ラジオ」、「描いてみた」が所属。「生活・一般・スポーツ」には、「動物」、「料理」、「自然」、「旅行」、「スポーツ」、「ニコニコ動画講座」、「車載動画」が。「科学・技術」には、「科学」、「ニコニコ技術部」、「ニコニコ手芸部」、「作ってみた」。「その他」には「例のアレ」、「その他」、「日記」が入る。この他に、「R-18」と「政治」カテゴリも配置される。


カテゴリ合算ランキングも復活

 これに合わせ、カテゴリ合算ランキングも復活。全動画統一のランキングが見られるようになるほか、新たに24時間以内のポイントを集計したり、1時間ごとに更新するリアルタイム性も強化。話題の動画が見つけやすくなるという。

 各カテゴリのトップページもリニューアル。カテゴリ別の「人気のタグ」も表示されるようになり、そのタグで絞込み検索も可能。新しくコメントされた動画の情報も、ほぼリアルタイムに反映されるようになる。

 さらに、新ページ「あなたへのオススメ動画」も用意。ユーザーの嗜好を踏まえ、タグ情報に基づいたオススメ動画を提示する機能となる。他にも、お気に入りのタグ検索用ショートカットを保存する機能も追加される。

 また、細かい変更点として、著作権などの問題で削除された動画にユーザーがアクセスした場合、「この動画は削除されました」という説明ナレーション動画・通称“削除動画”が復活。笛の演奏と共にナレーションが流れるものだが、その中味が新しいものになっているという。「昔コンテンツホルダの人から、削除動画が流れるとユーザーが嫌な気分になると指摘されて最近は控えめにしていたが、5周年のテーマが原点回帰という事もあり、復活させた」(ドワンゴの川上量生代表取締役会長)という。




■ニコニ・コモンズ

 投稿を行なうクリエイターを支援する「ニコニ・コモンズ」も12月13日にリニューアルされる。従来、利用許諾の継承関係を示す目的で、作品に使った素材を登録する「コモンズツリー」という機能があったが、それを新機能「コンテンツツリー」に移管。

 さらに、作品の投稿者に、その作品の人気度に合わせて、ニコニコ動画から奨励金がニコニコポイント、または現金で支払われるようになる。また、作品を作る上で、インスパイアされた作品や、リスペクトした元の作品がある場合、それらの情報を登録する事で、派生元となった作品のクリエイターにも奨励金が支払われる。奨励金は「クリエイター奨励スコア」という形で付与され、一定数以上貯まるとニコニコポイントや現金に換えられる。点数は作品ごとに、月単位で付与される。詳細は公式サイトで説明されている

コンテンツツリーへと刷新。親としては自分の作品が、どのような作品でリスペクトされているのかが分かりやすいというメリットもある
影響を受けた作品を親作品として登録。このPVでは、ボカロ曲とニコニコ静画のイラスト、その音楽と静止画にエフェクトをつけた人の作品が、親作品として登録されている

 例えば、VOCALOIDを使ったオリジナル楽曲をAさんが投稿。その楽曲にインスピレーションを受け、ニコニコ静画にBさんがイラストを投稿。その音楽とイラストを見たCさんが、それらを使って動画のPVを作成、そのPVを見たDさんが、自分でその歌を歌って投稿する……という流れがあったとする。

 この場合、イラストを描いたBさんは、インスパイアされた親作品として、コンテンツツリーにAさんのVOCALOID曲を登録。同じように、Dさんは、AさんのVOCALOID曲、Bさんのイラスト、CさんのPVを親作品として登録。

 この結果、Dさんが歌った動画に人気が出た場合、その人気度に応じて、Dさんが登録しているA/B/Cの親3人に奨励スコアが支払われる。これをドワンゴでは「子ども手当」と名付けている。奨励金は、ドワンゴがプレミアム会員の売上を原資とする一定額をプールして用意。プール金の規模は「変動要素が多いが、だいたい4億円くらいになるのではと考えている」(ドワンゴの夏野剛取締役)とのこと。

 なお、奨励金を受け取れるのは投稿者がプレミアム会員の場合のみで、プレミアム会員同士互助システムとなっている。コンテンツツリーの登録は各投稿者が任意に行なうものだが、親設定を行なう事で、他のクリエイターを応援できるため、ドワンゴでは積極的な登録を推奨している。また、受け取り資格として、“自分の作品の二次利用を歓迎する事”も求められている。

 なお、このシステムでは違法動画などをコンテンツツリーに登録するユーザーが現れる可能性があり、それが他のユーザーに二次利用される可能性もある。そこで、「最初に投稿した動画が三カ月間削除されない事」も、奨励金を受け取る資格の1つとされている。違法動画を投稿すれば、三カ月間に削除されるため、奨励金も受け取れないという仕組み。また、親作品を登録し、自分でその子作品も投稿。子作品に何度もアクセスを繰り返すなどして、“人気があるように見せかける”行為が行なわれる可能性もあるが、「人気の度合いは単純な再生数で判断しているわけではないので、工作行為はできないようになっている」(ニワンゴの西村博之取締役)という。




■ニコニコ生放送

β版という扱いだが、ニコニコ生放送が16:9に対応

 ニコニコ生放送も機能強化。16:9に対応したβ版のプレーヤーが、12月13日朝8時から、プレミアム会員限定で先行公開されている。β版であるためタイムシフトなどの一部機能には非対応だが、1月頃を目処に随時対応していくという。

 さらに、ニコニコ生放送の検索機能を強化。検索を行なうと、1つのコミュニティの放送が沢山ヒットする問題を解消し、同一コミュニティの検索結果を一度に出さず、他のコミュニティを見つけやすくする機能を追加。放送中の番組だけでなく、放送終了後に話題になった番組、タイムシフトの予約数が多い番組など、話題の番組を優先的に検索結果として提示するようになる。公式の配信番組だけ、ユーザーが配信している番組だけといった検索もできるという。




■その他

Ustreamで、楽曲が完成するまでの模様も含めて配信し、話題を集めている向谷実氏が、ニコニコ動画に“移籍”する事も発表。向谷氏もゲストとして登場。日本生まれのサービスであるニコニコ動画に対する熱い想いを語ると共に、「(ニコニコ動画に移籍する事で)アクセス数はUstream時代の5倍になるのではと言われたが、そんなものではなく、10倍を目指したい」と意気込みを語った

 5周年記念のキャンペーンも実施される。ニコニコ動画内でamazonのアフィリエイトが設置されているが、閲覧者がこの「ニコニコ市場」で買い物をすると、40円ごとにニコニコポイントが1ポイント、購入者と、そのページの動画のクリエイターに付与される(一部商品を除く)。このポイントを使い、クリエイターの動画を広告するといった使い方も可能。このキャンペーンは12月12日から2012年1月31日まで実施される。

 また、発表会では年末年始にかけての配信コンテンツも発表。政治家の与謝野馨氏が、囲碁やパソコンの自作、カメラなど、自身の趣味分野でニコニコ動画のユーザーと対決するという「与謝野トライアスロン」(1月22日17時~)や、格闘技イベント「元気ですか!! 大晦日!! 2011」(12月31日15時~)のネット中継、やまだひさし氏が司会を務める「ニコニコ大忘年会」(12月31日22時開始)なども配信予定。

 さらに、既報の通り、12月28日からワーナーの「フリンジ」、「ゴシップガール」、「ターミネーター:サラ・コナー・クロニクルズ」、「SUPERNATURAL The Animation」などの海外ドラマ配信を開始する事も紹介。さらに、12月28日~1月3日までは、既に配信している映画や海外ドラマが全作品半額で配信される事も発表された。

 発表会の最後では、スタジオジブリにも入社している川上氏が、ジブリのアニメーターである大塚伸治氏に制作してもらったという、川上氏を主人公にした短編アニメ「キュッキュの大冒険」も上映。川上氏の癖をとらえた、短いながらも可愛らしいアニメで、「正真正銘の、ジブリアニメの最新作」と誇る川上氏に、「ジブリで1年働いた給料がこれですか!?」とひろゆき氏がツッコミを入れ(川上氏はジブリから給与を得ていない)、会場の笑いを誘う一幕もあった。


「正真正銘の、ジブリアニメの最新作」(川上氏)という「キュッキュの大冒険」。作品の冒頭に表示されるジブリ作品恒例のイラストが、トトロ……ではなく、ニコニコ動画仕様に川上氏をモチーフとしたキャラクターが歩いたり、走ったり、細かい仕草もする「キュッキュの大冒険」

ドワンゴの小林宏社長
 また、ドワンゴの小林宏社長は、ニコニコ動画のID登録者数が12月12日時点で2,505万人になった事、プレミアム会員数が同時点で147万人になった事を発表。「5年前のこの日に密かに、さり気なく開始したサービスだが、こんな事になるとは思わなかった。4期連続の赤字もあったが、サービスも会社も黒字化できたのはユーザーの皆様のおかげ。まだまだチャレンジし続けたい」と語る。

 さらに、「当初から、これは5年、6年で終わるサービスではなく、“30年の計”だと言ってきた。まだ5年だけれど、ちょうど一周かなという気持ちもある。スタート地点に戻るのではなく、2週目に入ろうかなという意味合いで、5周年のテーマである“原点回帰”をとらえている」と語った。

 質疑応答では、ユーザーから「プレミア会員の上級会員制を作って欲しい」、「一般向け低画質モードの画質改善」、「Android端末から生放送がしたい」、「Adobe Flash Media Live Encoderを使わずに高画質配信がしたい」など、様々な質問が寄せられた。この中から、Flash Media Live Encoderの話題についてひろゆき氏は、「今後発表される新サービスに期待して欲しい」という趣旨の発言を行なった。また、12月9日にテレビ放送された「天空の城ラピュタ」のクライマックスシーンでの「バルス!」書き込みが、ニコニコ動画で難しくなった事について話題が及ぶと、川上氏が「バルスは(ニコニコ動画)敗北ですよね」と語る一幕もあった。


(2011年 12月 13日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]