ヤマハ、自立も可能なオーディオ/楽器向け調音パネル

-薄さ3cm。低音吸収&適度な拡散で聴きやすい音へ


「ACP-2N」のブラウンモデル

 ヤマハは、設置するだけで不快な響きを改善するという“調音パネル”の新製品「ACP-2N」を4月下旬に発売する。仕上げによって価格が異なり、リアルウッド仕上げのブラウン(MB)とナチュラル(MN)がそれぞれ63,000円、ホワイト(WH)は47,250円。

 位置付けとして、ブラウン/ナチュラルはオーディオルームやシアタールーム、楽器の練習部屋などへの設置を想定。ホワイトモデルは、音楽教室や企業のミーティングスペースなどでの利用を主に想定している。

長音パネルの表面を透明にして、内部が見えるようにしたもの。開口部と間仕切りを工夫する事で、長さの異なる共鳴管が組み合わさるような構造になっている

 調音パネルは、一般的な吸音材とは異なり、膨らんだ低域などを減衰させるだけでなく、適度な音の反射も行ない、デッドにも、ライブにもなりすぎない、“聴きやすいサウンド”に整えるためのパネル。

 技術的な特徴として、「音響共鳴管」と「堅い反射面」という2つの要素を採用している。「音響共鳴管」は、1本の管の片面の一部に開口部を設け、上下に長短2本の共鳴管を作り出し、2つの周波数で共鳴するようにした細い管の事。これを横に何本も並べて、パネル状にしている。

 開口部から入った音は、パネルの内部に吸収されるが、開口部の周囲は堅い反射面になっており、そこにあたって反射する音もある。この結果、開口部から放射される音と、パネル面で反射した音が組み合わさり、ほどよい音の散乱効果を発揮。開口部で音のエネルギーを消費し、吸音もしながら、適度な反射音を出す事を実現している。

 また、開口部の位置を変える事で、音響共鳴管の長さを調節でき、共鳴する周波数を変更する事ができる。これにより、適切な長さの共鳴管を組み合わせる事で、幅広い帯域において、性能を発揮するパネルになるという。


パネル技術の構造吸音・散乱のイメージ図

 調音パネル自体は既に販売されているが、新モデルの「ACP-2N」は、オーディオファンや楽器練習室への設置を想定し、コンシューマ向けに、より使いやすくなっているのが特徴。具体的には、つり下げ設置が基本だった従来モデル「TCH-501B02N」とは異なり、新たに自立スタンドが付属。壁掛け金具、固定L金具も同梱しており、設置の簡単さや自由度が向上している。また、ブラウン/ナチュラルという、一般家庭に馴染みやすい仕上げを採用しているのも特徴。

 さらに、高さを30cm拡張し、120cmとする事で、トールボーイ型スピーカーと組み合わせやすくなった。さらに、パイプの長さが変化すると、制御できる帯域も変化。現行モデルの制御可能な低域限界125Hzよりも低い、80Hzの低音も制御できるようになった。具体的には80Hz~4kHzまでを制御できる。

左からホワイト、ブラウン、ナチュラル使用イメージ

 外形寸法は587×30×1,200mm(幅×奥行き×高さ)で、トールボーイスピーカーや、アップライトピアノなどとも組み合わせやすくなったという。性能は向上しているが、厚さは従来モデルと同様の約30mmに抑えている。

 ブラウン/ナチュラルモデルに使われている素材は、MDF(表面材基材)、リアルウッド(表面化粧材)、PVCシート(化粧材)、合板(芯材)。重量は5.7kg。ホワイトモデルの外形寸法は587×29×1,200mm(幅×奥行き×高さ)で、5.2kg。


開口部の周囲で音が反射・拡散される事で、音を吸収しすぎず、自然な響きも得られる30mmと薄いのも特徴


■効果を体験してみる

何も置いていない状態
スピーカーの背後のみに設置しても効果がある
正面とスピーカーの背後に調音パネルを立てかけたところ

 従来モデルは、音が反響しやすい電話ボックスのような個室内で、スピーカーを大音量で鳴らし、調音パネルの効果を体験した。これに対し、新モデルでは、より実際の利用に近い、オーディオ機器との組み合わせを体験してみた。

 2chのスピーカーを用意し、それを壁のすぐ前に設置。調音パネルを何も置かない状態で試聴してみると、背後の壁に反射した音まで耳に多く入るため、音場の奥行きが無く感じる。簡単に言うとヴォーカルや楽器が2Dキャラクターのように平面で、壁に張り付き、壁から音が出ているようだ。また、壁の響きが再生音に付加されるためか、ヴォーカルや楽器に木の音がわずかに覆いかぶさり、細かな音色の違いが聴きとりにくい。

 2つのスピーカーの背後に調音パネルを設置すると、くっつき気味だったヴォーカルと楽器の音像がスッキリと分離。音色もクリアに描きわけられ、平面的だった音像に立体感が出てくる。

 さらに、左右のスピーカー間にも1枚追加すると、壁から音が出ているという感覚が無くなり、音場がスピーカーの背後までしっかりと広がっていくのが見えるようになる。まるで壁がバタンと向こう側に倒れ、背後にある程度の空間ができたような感覚だ。

 吸音材と異なるのは、こうした効果がありながら、例えば低域だけが痩せて、音がスカスカしたり、全体の音量が下がったようには感じないことだ。不快に感じたり、明瞭度を低下させる低域の膨張を抑えつつも、音の反射も適度に残されているためだろう。

 また、設置場所によって効果の出方は変化するものの、専門の知識が無くてもスピーカーの近くにとりあえず置くだけで効果が期待できるのも利点と言えるだろう。


(2012年 4月 11日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]