「テレビは新しい要素がなく、価格競争に埋没」BCN分析

レコーダも価格が競争軸。タブレットは8型未満中心


BCNの道越一郎アナリスト

 BCNは7日、薄型テレビやBlu-rayレコーダ、デジタルカメラなどデジタル家電市場の調査結果や分析を発表した。

 BCNの市場分析は、家電量販店など全国22社、2,363店舗(2012年10月現在)のPOSデータを集計したBCNのデータをもとに行なっている。Amazonなどを中心としたネット店舗のデータも加味した形で前年同月比を算出。メーカー直販店の売上は含まれない。発表データ内の金額は全て税抜きとなる。

 テレビの市場動向の現状についてBCNの道越一郎アナリストは「(地デジ化の)特需の後、機能は足踏み状態でコモディティ化が進み“同じものなら安い方”ということで単価下落が進んだ。4K/8Kといった高機能化にも大きな期待があるが、普及には時間がかかる。“スマートテレビ”についても、各社本腰を入れられていない状況。3Dにインパクトは無く、新しい要素が無いため、価格競争に埋没して収益が上がらないジレンマに陥っている。価格ではないところでどう戦うかが、見えていない状況」と分析した。


BCNランキングの概要各製品ジャンルの分析「BCN指数」の推移


■ テレビは大型の販売がカギ

薄型テレビの販売台数/金額推移

 薄型テレビ(液晶+プラズマ+有機EL)の台数/金額は、ともにマイナスの状態が1月から続いており、10月時点では台数が前年同月比54.9%、金額が同57.7%。平均単価は5万円台を維持しており、10月時点では51,800円となった。「平均単価の大きな下落トレンドは収束した」と見ている。

 サイズ別では、これまで台数/金額ともに好調だった50型だけでなく、20型台や40型台も回復傾向にあるという。単価で見ると、30/40型台の下落が止まった一方で、50型以上が下落に転じている。機能面では、録画機能搭載モデルが9割近くを占め、そのうち外付けHDD用の端子を備えたモデルが9割に近づいている。

 メーカー別では、トップシェアのシャープが6月以降に販売台数構成比で回復を見せている。台数/金額の前年比で比べると、シャープやパナソニックは8~9月に掛けて回復を見せているものの、10月には半減ベースに戻している。東芝は、8~10月にかけて回復傾向にあり、ソニーは金額ベースで前年同月に近い数値まで戻している。

 大手以外のメーカーでは、20型以下の小型モデルが好調なオリオン電機のデータを紹介。8月以降は台数/金額ともに前年比2桁のプラスを続けている。


画面サイズ別の台数比率と単価変動率メーカー別の販売台数シェア録画対応テレビの構成比など



生産/出荷/在庫指数(出典:経済産業省鉱工業指数)

 道越アナリストは、10月末より順次発表された各社の上期決算などを受けて、テレビに関する'11年7月のデジタル化以降の動向を分析。経済産業省の鉱工業指数を元に、「'11年7月以降の落ち込みに対して生産の絞り方が不十分だった。設備があるため一気には落とせないが、春から夏にかけて在庫が積み上がり、単価下落を招いたのでは」と振り返った。特に、デジタル化に合わせて他社に比べて急激に多くの台数を売ったシャープは、それ以降の極端な変化に対する反応がなかなかうまくできなかったのが、大きな赤字につながった一つの要因では」とした。

 メーカーごとにサイズ別の販売台数/金額構成比を見ると、特に40/50型以上の比重を高め、金額ベースでは40型以上が8割を超えているソニーが、業績についても急回復を見せたことを指摘。一方、春には大型化へのシフトを進めていたが夏以降に小型へ戻ったシャープや、小型の台数比率を高めているが金額では大型の割合が高いパナソニックが苦戦している現状を示し、「大型をうまく売るかが収益構造のキーポイントでは」とした。


メーカー別の台数/金額前年同月比(シャープ/パナソニック)メーカー別の台数/金額前年同月比(東芝/ソニー)小型が好調なオリオン電機が売上を伸ばしている
メーカー別の販売台数指数メーカー別/サイズ別の販売台数構成比メーカー別/サイズ別の販売金額構成比


■ レコーダも価格中心の市場。DTCP-IP対応NASは3年間で5倍

岩渕恵アナリスト

 8月以降、台数/金額ともに前年比4~5割減のペースで推移。種類別の台数構成比は、「BDXL」が10月時点で81.4%、「BD」(XL以外)が9.7%、「その他」が8.9%。「その他」には、バッファローのレコーダが含まれているほか、DXアンテナのVHS搭載モデルが直近で増えているという。

 平均単価は、4万円を切る水準で推移。容量別では、一時は割合を落としていた500~750GBが10月に6割まで上昇している。

 メーカー別では、10月にシャープが19カ月ぶりとなる首位に戻っており、ソニーは2位から3位に下がった。要因について岩渕恵アナリストは「シャープは旧モデルの値下がりが貢献した。ソニーは10月の新製品で単価が上がり、シェアが下がった。メーカーシェアは価格が中心になっている」としている。

 レコーダ周辺の話題では、DTCP-IP対応のNAS(LAN HDD)がこの3年で約4.76倍に増加したことを挙げ、岩渕氏は「家庭内でのネットワーク連携機能などで、レコーダにとってもストレージとしての役割が注目されるのでは」と述べた。


レコーダの販売台数/金額推移販売台数/金額指数、平均単価容量別販売台数構成比
メーカー別台数シェアDTCP-IP対応NASの販売台数指数など



■ 立ち上がりが鈍いWindows 8。ビデオカメラは台数/金額ともに減

PC/スマートフォンなどを説明した森英二アナリスト

 10月26日に発売されたWindows 8については、これまでの新OS発売に比べ「立ち上がりが鈍い」とし、プリインストールされたノートPCで見た場合、Windows 7に比べ約2倍という単価の差が大きな要因と見ている。ノートPCはWindows 8に合わせてタッチパネル搭載モデルがデスクトップを上回った。

 タブレットについては、初代iPad発売の時点('10年5月)に比べて市場規模が約3倍となり、iPad miniやKindleの登場などで、今後もさらに成長していくと見込む。OS別の台数構成比では、Nexus 7発売により、10月に初めてAndroidがiOS(iPad)を上回った。また、画面サイズ別では、iPad miniやNexus 7などの登場により、主流がこれまでの「8-10インチ未満」から、「8インチ未満」へシフトしており、最新の週次データでは「8インチ未満」が73.8%、「8-10インチ未満」が18.7%、「10-12インチ未満」が7.3%となっている。


パソコンタブレットスマートフォン

 デジカメは、スマートフォンの影響などで、レンズ一体型(コンパクト)が10月に前年比2桁のマイナスとなった。内訳では高級タイプ(センサーサイズ1/1.7型以上を分類)の割合が増えており、台数では3%程度だが、金額では1割近い構成比となっている。一方、レンズ交換型(一眼レフ+ミラーレス)は3月からの2桁成長を維持している。一体型/交換型を合わせた台数シェアでは10月にニコンがトップを獲得した。

 デジタルビデオカメラは、直近3年間の傾向として、台数が伸びて金額が伸びないという状況が続いていたが、10月は台数も前年割れとなり、需要期である9月からの反動も大きく、「コンパクトデジカメと同じ状況に突入しかねない」(道越氏)としている。メーカー別では首位のソニーと3位のJVCケンウッドが10月に増加し、パナソニック(2位)やキヤノン(4位)が減少した。

 各社から発売されている「アクションカム」の動向を調査するため、重量帯別の販売台数についても紹介。年初には200g未満の割合も増えていたが、夏以降は大きな伸びは無く、200~300gが中心となっており「アクションカムという市場はできたが、全体としては揺り戻しがきている」(道越氏)としている。

デジカメ(レンズ一体型)デジカメ(レンズ交換型)メーカーシェア(一体型/交換型合計)
デジタルビデオカメラ販売台数/金額指数、平均単価メーカーシェア、重量帯別販売台数構成比


(2012年 11月 7日)

[AV Watch編集部 中林暁]