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Olasonic、音茶楽とコラボしたカナル型イヤフォン

Olasonicサウンドにチューニング。約48,000円

TH-F4N

 東和電子は、音茶楽とコラボレーションしたカナル型(耳栓型)イヤフォン「TH-F4N」を10月上旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は48,000円前後。「音茶楽×Olasonic」ブランドの製品として展開する。

 個性的なイヤフォンを手がける音茶楽は、オーディオ機器だけでなく、お茶や、屋久杉などの木材を使った小物なども取り扱っている。東京の世田谷、経堂にあるそのショールームにOlasonicの製品を展示していた事が縁で生まれたというコラボモデルが、今回のイヤフォン「TH-F4N」。

パッケージの音茶楽缶
OlasonicのNANOCOMPOと組み合わせたところ
TH-F4N

 音茶楽が6月から発売しているイヤフォンの新モデル「Flat4-玄(KURO)」(オープン/音茶楽店舗販売価格42,000円)をベースにしながら、Olasonicが求めるサウンドになるようチューニングを行なっているのが特徴。また、カラーもコラボモデル独自のものになっている。

 主な仕様は「Flat4-玄(KURO)」と同じ。10mm径のダイナミック型ユニットを水平対向で配置。13.5mm径相当の振動板面積を確保し、重低音の再生能力を高めている。また、対向配置する事で、駆動系の反作用により不要な振動を抑制している。

内部構造

 さらに、一般的なカナル型イヤフォンに存在する、外耳道をイヤフォンで塞ぐ事で発生する閉管共振に着目。サ行などが高音がキツく感じられる原因となるものだが、TH-F4Nでは、ツイン・イコライズド・エレメント方式を採用。2つのドライバの間を位相補正パイプで接続し、そのパイプの長さを外耳道の長さに合わせる事で、不要なピークを低減。「付帯音の無い澄み切った音質を実現する」という。

上部にあるパイプが位相補正パイプ
背面
イヤーピースを外したところ
入力プラグはステレオミニ

 さらに、センターキャビネットには制振効果のあるM2052制振合金粉体塗料を用いて防振処理をしており、位相補正チューブにも同じ塗装を施している。これにより、「今まで聴こえなかったかすかな余韻まで美しく再生する」という。

 ユニットの振動板には、タンジェンシャルレス振動板を採用し、歪を低減。磁気回路にはネオジウムマグネットを使用。プレートとヨークには電磁純鉄を使い、駆動力を高めているほか、プレートとヨークには銅メッキ処理も行ない、磁気歪を低減している。

 出力音圧レベルは104dB、周波数特性は3.5Hz~35kHz。最大入力は400mW。インピーダンスは18Ω。重量は約18g。ケーブルは1.2mのY型。入力プラグはステレオミニ。イヤーピースは、コンプライ フォーム イヤーチップ「T-200」のM/Lを同梱する。

音を聴いてみる

 装着感は、ハウジングの形状で耳穴付近にホールドするようなタイプではなく、付属のコンプライ フォーム イヤーチップでしっかりと耳穴に挿入&密着させて固定するタイプだ。ケーブルは柔らかいので耳の裏から掛けるようにする“Shure巻き”も可能だ。ただ、耳の裏に当たる部分に形状を保持するガイドなどは無い。なお、耳穴との密閉度では、コンプライ フォーム イヤーチップは理想的だが、モコモコした装着感が苦手という人もいるだろう。シリコン製ピースは付属していないため、そういった場合は自分で別のピースを用意するのも良いだろう。

AK120で試聴してみた

 ハイレゾ再生に対応したポータブルプレーヤー「AK120」で、「イーグルス/ホテルカリフォルニア」(24bit/192kHz)を再生してみた。

 冒頭から感じるのは音場の広さだ。ダイナミック型は、低域を中心に音が膨らみ、充満しがちなので、バランスド・アーマチュア(BA)型と比べると音場が狭く感じる機種が多いが、このモデルに関しては当てはまらない。広い音場に、ヴォーカル、ギターベースと、各音像が距離を置いて配置。低域もダイナミック型らしい量感豊かに押し寄せるが、その背後にあるギターの音は明瞭で、その音の余韻が広がっていく様子も同時に知覚できる。三次元的な描写だ。

 単に音場が広いだけでなく、個々の音に締まりがあり、雑味が少ない。特に低域がわかりやすく、胸を圧迫されるような重くて分厚いベースがズズンと響くのだが、それがボワンと膨らむ事がなく、パツパツと締まりがあり、輪郭が明瞭。余計な領域まで肥大化しない。「山下達郎/希望という名の光」でも、迫り出すベースが膨らみすぎず、背後のヴォーカルがキッチリ明瞭に再生される。高域も同様で、響きがキンキン、カンカンと余計に反響して残る事がなく、スッと虚空に消えていく。必要な音をキッチリ再生し、余計な音を出さない事ができるイヤフォンだ。

 そのため、音の輪郭がクリアで、SNが良く、聴いているとBAイヤフォンを装着しているような気がしてくる。低域の量感、張り出しの強さもシッカリしているため、マルチウェイの高級BAのサウンドを彷彿とする。それでいて、ダイナミック型であるため、高域の“硬さ”や“金属っぽさ”は無く、ナチュラルな音に仕上がっている。

 実売約48,000円という価格は、ダイナミック型としては高価だが、同価格帯のBAイヤフォンにも負けない、完成度の高いサウンドだ。特にキッチリと制動されたダイナミック型の低域は、迫力と情報量が共存した強い魅力を持っている。サウンドは素晴らしい一方で、イヤーピースの種類の少なさや、ケーブルの着脱ができない点など、他社の高級機と比べると、仕様面のシンプルさが気になるところでもある。

(山崎健太郎)