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オーテク、世界戦略モデル「SonicFuel」やBAマルチウェイ最上位など、イヤフォン/ヘッドフォン発表会

SonicFuelのイヤフォンシリーズ

 オーディオテクニカは10日、都内で新製品発表会を開催。バランスド・アーマチュア(BA)ユニットを搭載したカナル型(耳栓型)イヤフォン新シリーズ4機種や、USB DAC内蔵ヘッドフォン、ゲーム用ヘッドセットなど、多数の製品を発表した。

 発表された主な製品は以下の通り。各製品は、個別の記事で紹介している。

種類/特徴モデル名価格/想定売価
BAイヤフォン
1~4ドライバ
ATH-IM04
ATH-IM03
ATH-IM02
ATH-IM01
実売15,000円前後~6万円前後
デュアル・シンフォ
ニックドライバ
イヤフォン
ATH-IM04
ATH-IM70/IM50
実売6,000円前後~11,000円前後
SonicFuel
ヘッドフォン
ATH-OX7AMP/OX5実売2万円前後~29,800円前後
SonicFuel
イヤフォン
ATH-CHX7/5実売3,500円前後~6,500円前後
USBヘッドフォンATH-D900USB37,800円
レトロ風ヘッドフォンATH-RE700実売15,000円前後
USBヘッドフォン
アンプ
AT-HA90USB47,250円

 また、発表会場ではデジタル一眼カメラでの動画撮影向けに、アクセサリーシューに装着できるマイク、カーオーディオ向けのケーブル、Android端末からMHLを用いてHDMIケーブルで音声/映像のデジタル伝送ができる車載向けのDDコンバータなども発表・展示された。これらの製品に関しては、後日、個別の記事で紹介する。

デジタル一眼向けのマイク「AT9974CM」
iOS機器/Android端末とHDMIで接続するデジタルトランスポート「AT-DL5HD」
楽器用モニターヘッドフォン「ATH-EP300」

 ここでは注目製品の概要と、発表会の模様をレポートする。

世界戦略モデルのSonicFuelシリーズ

 発表会には、各モデルを手がけた開発者が登壇。詳細を説明した。

各モデルを手がけた開発者が登壇。左から國分氏、黄氏、田久保氏、小泉氏

 注力モデルとして特にフォーカスして紹介されたのは、同社が世界戦略モデルと位置付けている「SonicFuel」(ソニックフューエル)シリーズ。日本だけでなく、海外でも同じデザインで展開するシリーズで、コンセプトとしては「聴く喜びを革新するワンランク上のストリートヘッドフォン」を掲げており、デザイン性や音質の高さだけでなく、新たな構造や技術も積極的に取り入れられているのが特徴。

 第1弾として6月から「ATH-CKX」シリーズが発売されており、ハウジング全体を覆うイヤーピースの「Cチップ」や、ノズル部分が稼働するボールジョイント機構などの機構的な特徴と共に、ファッション性を取り入れたデザインも訴求。

「SonicFuel」のロゴとイメージビジュアル
6月から発売されている「ATH-CKX」シリーズ

 今回発表された新製品の中にも、SonicFuelシリーズとして、アンプ内蔵のポータブルヘッドフォン「ATH-OX7AMP」(オープン/実売29,800円前後)、パッシブ型の「ATH-OX5」(実売2万円前後)をラインナップ。さらに、独特のハウジング形状と共に、インナーイヤー型とカナル型の中間のような形状のイヤーピースを採用した「ATH-CHX7」(オープン/実売6,500円)、「ATH-CHX5」(オープン/実売3,500円前後)が発表された。

アンプ内蔵のヘッドフォン「ATH-OX7AMP」

 アンプ内蔵のヘッドフォン「ATH-OX7AMP」を開発した國分裕昭氏は、アンプ内蔵の意図として、「ヘッドフォン関連のイベントなどに行くと、プレーヤーとヘッドフォンの他にヘッドフォンアンプを使っている人が増えている。それならば、ヘッドフォンアンプをヘッドフォンの中に入れてしまうのはどうか? と考えた」と説明。

パッシブ型の「ATH-OX5」

 工夫した点としては、「一度増幅された信号をヘッドフォンに入力し、さらに増幅するので、プレーヤーからのノイズも増幅させてしまっては意味がない。そこで、増幅回路をシンプルにして、音楽信号だけを増幅するように作っている」という。デザイン面では、SonicFuelらしいアグレッシブさと、頭に沿うような形状にする事で、頭部にかかる負荷を分散させている事などを紹介した。

 同じくSonicFuelシリーズのイヤフォン「ATH-CHX7」と「ATH-CHX5」を手がけた黄氏は、カナル型とインナーイヤー型の中間のような装着感・遮音性を持つイヤーピースについて、「カナル型は装着感・遮音性は高いが、長時間着けていると耳穴が痛くなったり、周囲の音が聴こえないなどの弱点がある。インナーイヤーでは開放感があるが装着感が今ひとつだったり、音漏れが気になる事がある。2つの方式の弱点を克服できないかと考えた」と、開発のキッカケを説明した。なお、新しい形状のイヤーピースには特に名前をつけていないという。また、独特の形状を持つハウジングについては、「これまでの製品のようにハウジングを小さく目立たなくするのではなく、大きく見せる事でフアッション性を追求した」という。

ATH-CHX7
ATH-CHX5
カナル型とインナーイヤー型の中間のようなイヤーピースを採用している

BAユニット搭載イヤフォン4機種が一気に登場

 BAユニット搭載のイヤフォンシリーズでは、4ドライバ搭載の「ATH-IM04」(オープン/実売6万円前後)、3ドライバの「ATH-IM03」(約4万円前後)、2ドライバの「ATH-IM02」(約2万円前後)、シングルドライバの「ATH-IM01」(約15,000円前後)が一挙に発表された。

4ドライバ搭載の「ATH-IM04」
3ドライバの「ATH-IM03」
2ドライバの「ATH-IM02」
シングルドライバの「ATH-IM01」

 特に、低域用×2、中域用×1、高域用×1で、計4基の新開発BAドライバを搭載したシリーズ最上「IM04」や、ライバル製品も多い3ドライバ「ATH-IM03」などが注目となる。

 開発を担当した田久保陽介氏によれば、これら4機種には機種により、それぞれまったく異なるユニットを搭載。4機種に使われているユニットの種類は、合計10個にのぼり、「シングル構成のイヤフォンならば、シングルに適したユニットを。トリプルならトリプルに向いたユニットを組み合わせています。一番良い音を出すために、ネットワークもそれぞれのモデル用に試行錯誤して作りました」とのこと。

 筐体を作る際も、日本の職人芸により、精密な金型を作り、その金型もピカピカに磨いた上でハウジングを作っており、見た目や質感、様々な人の耳にマッチするようなデザインを追求したという。

BAユニット搭載イヤフォン4機種が一気に登場

広報宣伝課の松永貴之マネージャー

 広報宣伝課の松永貴之マネージャーは、同社の2012年度売上高が220億6,900万円になった事を報告。その売上構成比の43.2%をヘッドフォンが占めており、「ヘッドフォン市場でどう戦うかが当社の重要な課題」と説明。

 その上で、台数ベースの国内シェアでは、オーディオテクニカが24%、ソニーが23%、JVC/ケンウッドが10%、パナソニックとエレコムが各6%、ボーズ/パイオニア/ロジクールが各3%と続いている事を紹介。オーディオテクニカは4年連続ナンバーワンになっているという。

 その上で松永氏は、シェアの23%、4分の1近くがアザーズ、つまり様々な海外メーカーで占められている事を強調。「今までになかったようなスタイル、デザイン、そして高価格でも高付加価値を謳った製品が日本でも受け入れられ、人気になっている。このように、国内外の多くのヘッドフォンメーカーと切磋琢磨して、日本のヘッドフォン市場で勝ち抜いていかなければならない。しかし、我々には半世紀に渡り、オーディオの道を切り開いてきた自負があり、他社に負けない製品を作る自信もある」と力強く語った。

売上構成比の43.2%をヘッドフォンが占めている
台数ベースの国内シェア

 一方で、同社の日本における販売数量は、全世界からすると10%程度で、ビジネスとしてはEUや北米、アジア圏の比率が大きい。「特にアジア圏での伸びしろは大きく、今後さらにシェアを拡大しけると考えている」と語り、世界戦略モデルであるSonicFuelシリーズの重要性もアピールした。

松下和雄社長

 松下和雄社長は「ヘッドフォンのニーズは多様化し、音楽を聴く状況も多岐にわたる。飛行機の中やジョギング中など、そしてハイレゾなどソースも沢山の種類がある。国内の市場では内外100ブランド以上のヘッドフォンが毎日激しい競争を繰り広げている。今回発表するSonicFuelは知恵を絞って、世界各地で一斉に販売できるように開発した製品」と説明。

 一方で、「創業時から行なっているアナログピックアップ(アナログカートリッジ)の開発は、1つの立派なビジネスモデルになったが、デジタル全盛の現代では大幅に生産量は減少している。部品メーカーの縮小、撤退もあり、なかなか難しい部分もあるが、世界中にあるアナログレコードという膨大な文化遺産を皆さんに楽しんでいただくためにも、引き継き生産していきたい」と決意を語り、今年はMCカートリッジの生産量を30%増やしている事も紹介した。

(山崎健太郎)