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Amazon、「Kindle連載」開始。300ppi超の新Kindle Fire HDXを披露

「Kindle Fire HDX 7」(左)、「Kindle Fire HDX 8.9」(右)

 Amazon.co.jpは25日、電子書籍サービス「Kindle」の日本展開1周年の振り返りとともに、連載形式の小説やコミックを配信するKindleの新サービス「Kindle連載」をスタート。Kindle事業についての説明会を開始した。

 また、10月16日に発表した300ppiを超える高精細ディスプレイを搭載した「Kindle Fire HDX 8.9/7」や、24日に発売開始した「Kindle Paperwhite」の紹介も行なった。

連載形式で電子書籍を自動配信「Kindle連載」

Kindle連載

 Kindle連載の対象作品は、複数のエピソードで成り立ち、一度購入すると、その後一冊の本として完結するまで。最新号が順次Kindle端末やアプリに配信される。雑誌の定期購読のように、予定時期に定期的にコンテンツが追加され、直近のエピーソードの最後に新しいエピーソードを追加。連載が終了すると、1冊の本として完成する。電子書籍の特徴を活かしたサービスとして、25日から18作品を展開する。

Amazonで購入
高橋敏也の改造
バカ一台大全集 1999-2013

 スタート時のKindle連載作品は、無料の「宮本武蔵」(吉川英治)のほか、「1+1 = Namida」(zopp)、「UNDERGROUND MARKET ヒステリアン・ケース」(藤井太洋)、「磁極反転」(伊予原新)、「東京トイボックス0」(うめ)、「美女入門パート12」(林真理子)、「マスゴミ」(鈴木みそ)など。

 また、インプレスジャパンからはパソコン雑誌「DOS/V POWER REPORT」で'99年から連載している「改造バカ一台」をまとめた「高橋敏也の改造 バカ一台大全集 1999-2013」を発売。「黄金マシン」、「自走PC試作機」など一見無駄な改造で実現された数々の自作パソコンを紹介するもので、価格は3,333円だが、初回限定キャンペーン価格の980円で販売開始している。隔週ペースで連載10回分ずつ配信する。

アマゾンジャパン ジャスパー・チャン社長
藤井太洋氏は、長さの自由度や更新のスピーディさを歓迎。新作にも東京オリンピックの決定というトピックを盛り込めたことなどを紹介し、多様な作品の登場への期待を語った

 Kindle連載の作品数は当初は20程度からスタートし、徐々に拡大する予定。「連載として配信するが、完成品を買っていただいている認識」としており、連載が完結せずに終わってしまう場合などは、ユーザーに返金処理を行なう。そのため、スタート当初は急速な拡大は控え、様子を見ながら展開するとのこと。(Kindle ダイレクト・パブリッシングのような)個人ユーザーへのシステム開放予定も無い。

 また、著者が次回更新時に誤字などの修正を行なうことは可能だが、中味が全く変わるような修正は受け入れないとのこと。

Kindleコンテンツ事業部の友田雄介 事業部長

 Kindleコンテンツ事業部の友田雄介 事業部長は、1年間のKindleの歩みを紹介。「あらゆる時代のあらゆる言語のすべての本を世界中のどこでも60秒以内でお手元に」というKindleの理想を語り、「この目標に向かって努力している」と述べ、マルチプラットフォーム対応や日本での手応えを説明した。ただし、販売数量などの具体的な数値は公開しておらず、紙の書籍との相対比較で一定の割合をKindleが占めていることなどを明らかにした。

 また、1/2冊を連日50%オフにする「日替わりセール」などのマーケティング施策の効果なども紹介。書籍数も数量もサービス開始当初から大幅に増加したが、「気をつけているのは、読みたい本をいかに早く揃えるか」と語る。その一例として提示したのが「失敗の本質」だ。ベストセラーに入らないが、Kindle化のリクエストが多かったため、版元と協力し、紙の本から電子化データを作成して、出版。毎年8月15日の終戦記念日頃に販売数が増えるため、8月2日に販売開始したところ「ドカーンと来た」とのこと。リクエストを出していた人へのメール送信や、Kindleサービス上での若干の告知だけで、大きな販売数量を記録し、15日前後にもかなりの販売数を計上したとのこと。また、電子版と紙の本の同時発売や予約についてもその効果が大きいことを例を上げて紹介した。

300ppi超の新Kindle Fire HDXを披露

Kindle Fire HDX 8.9

 また、KindleやAmazonの各サービスに最適化したタブレット「Kindle Fire HD」の新モデル「Kindle Fire HDX」も紹介。7型/1,920×1,200ドット液晶の「Kindle Fire HDX 7」と、8.9型/2,560×1,600ドット液晶の「Kindle Fire HDX 8.9」を11月28日より発売する。16/32/64GBが用意され、価格は7型が24,800円~33,800円、8.9型が39,800円~51,800円。

 Kindleストアで購入した電子書籍の閲覧や、MP3ストアで購入した楽曲の再生に加え、FacebookやSkype、Hulu、TuneIn Radio Proなどのアプリを利用できる。クアッドコア2.2GHzのSnapdragon 800を採用し処理能力を前モデルの3倍にしたほか、OSはAndroidをベースにしたFire OSの最新版「Fire OS 3.1 Mojito」を採用し、各種Amazonサービスへのアクセス性の向上やパフォーマンスの改善を図った。

 実際に触れてみると、7型で332ppi、8.9型で339ppiという高精細ディスプレイは確かに魅力的。8.9型は重量が374gと、従来モデル比34%で軽量化しており、9~10型のタブレットとしてはかなり軽量に感じられた。

Kindle Fire HDX 7
Kindle Fire HDX 7の背面。片手で軽く持てる303g
Kindle Fire HDX 8.9の背面。スピーカーや800万画素カメラなど
Amazonで購入
西田宗千佳の
Random Analysis
第040号

 いずれも、ステレオスピーカーとDolby Digital Plusを採用し、音量調整やバーチャルサラウンド再生、映画などのセリフを聞き取りやすく再生する機能などを装備。また、8.9型には、1080pの動画撮影も可能な800万画素デジカメを背面に搭載。7型/8.9型のいずれも720p撮影が可能なフロントカメラを備えている。バッテリの持続時間は7型モデルが11時間(書籍表示のみの場合は17時間)、8.9型が12時間(同18時間)。外形寸法と重量は、7型が128×186×9mm(縦×横×厚さ)、303g。8.9型が158×231×7.8mm(同)で、374g。

 なお、メルマガ/電子書籍の「MAGon西田宗千佳のRandom Analysis 第040号[2013年10月23日発行]」では、「Kindle Fire HDX」シリーズの開発の狙いや、Amazonのオリジナルハードウエアを手がける同社子会社「Lab126」についての取材記事を収録している。こちらも参照して欲しい。記事の一部はMAGonブログで紹介している。

 Kindle Fire HDX用にスタンドにもなるカバー「ORIGAMI」も発売。カバーの折り目にあわせてたたむと、そのままスタンドになるというもの。マグネットでKindleを固定するため、外れにくいが少しずらして上げるとするっと外れるというなかなかおもしろいデザインだ。

スタンドにもなるカバーORIGAMI
ORIGAMIは多くのカラーバリエーションが用意される
ORIGAMIカバーの動作
撮影:西田宗千佳
新Kindle Paperwhite

 6型のE Ink電子ペーパーを搭載した読書端末「Kindle Paperwhite」の新モデルも22日より出荷開始した。価格は9,980円。

 E-inkの新電子ペーパーやフロントライトの改善などで視認性を向上したほか、タッチセンサーの精度を19%向上させ、誤認識などを低減。また、読んでいるページを開いたままポップアップウィンドウでページ/章ごとにめくれる「PageFlip」機能などを追加した。ストレージ容量は4GB。Kindleデバイス&アクセサリー事業部 小河内亮 事業部長によれば、「日本以外ではストレージ容量は2GBだが、日本はコミック需要が多いため、日本のみ4GBにしている」とのこと。

PageFlip
Kindle Paperwhiteの背面
Amazonで購入
Kindle Fire
HDX 7
Kindle Fire
HDX 8.9
Kindle
Paperwhite

(臼田勤哉)