ニュース

【Inter BEE】W杯と五輪を見据え、ソニーが新たな4K制作や有機ELモニタなど展示

 ソニーは、11月13日に開幕した放送機器展「Inter BEE 2013」において、4K放送開始に向けた製品への取り組みや、最新の4K対応製品などに関する説明会を開催した。

 既報の通り、ソニーは4Kスポーツ中継などに向けた 「4Kライブ制作ソリューション」の新商品を発表。発売中の4Kカメラ「PMW-F55」をベースに、ライブ制作を可能にするカメラアダプタやサーバー、スイッチャーなどを12月より順次発売する。

 さらに、業務用有機ELモニター「TRIMASTER EL」の新製品として、大幅に薄型/軽量化した25型「PVM-A250」(693,000円)と、17型の「PVM-A170」(441,000円)を2014年1月に発売。こうした製品を紹介するとともに、「Beyond Definition」というキーワードで高解像度だけでなく、放送局などがより効率的に制作/放送できるシステムの実現を推進していく姿勢を示した。

ブラジルW杯決勝は4K制作。30型有機ELモニタは'14年内に製品化へ

ブラジルW杯の決勝は4Kで制作

 9月のIBC 2013でも明らかにした通り、2014年のサッカーワールドカップ ブラジル大会において、決勝戦を4Kで撮影/制作することが決定。ソニーが制作面で支援し、今後は決勝以外の試合も4Kで制作できるかどうか交渉していくという。収録された4K映像は、「コンシューマ製品の部署とも連携し、家庭またはパブリックビューイングなど、何らかの形で視聴できるようサポートしていく」(業務執行役員 SVP プロフェッショナル・ソリューション事業本部 副事業本部長 大西俊彦氏)という。

SRX-T615の上映デモ

 4K撮影の技術を応用した、新しい映像表現も展開。会見が行なわれた国際会議場の201会議室において、4K SXRDプロジェクタの「SRX-T615」(11月発売)を2台横に並べて1つの映像(約200型×2面)を出力するデモを行なった。T615の高コントラスト/輝度の均一性能/隅々までの高解像度といった特徴を活かした高品質な「エッジブレンディング」により、映像のつなぎ目がほとんど目立たない7,680×2,160ドットの1枚の映像を投写していた。なお、このデモは一般入場者も体験可能となっていた。

 今回のようなプロジェクタ2台だけでなく、「4Kプロジェクタを縦置きにして4台並べることで、今まで実現できなかった高精細映像も可能」(大西氏)としている。そのほかにも、4Kや2Kなどの複数の映像をソフトウェア処理によってマルチウィンドウ表示して、新たなテレビ会議を可能にするといった例も紹介した。

SRX-T615
広大なネイチャー映像を投写。2つの映像のつなぎ目はほとんど気にならなかった
高精細なCG映像を大画面で投写すると、ぱっと見ではまるで実写のようだった

 有機ELモニタについては、9月時点で全世界の累計出荷台数が25,000台に達したことを報告。新モデルの25型「PVM-A250」と、17型「PVM-A170」は、軽量化や視野角の広さなどを特徴としており、「CRTのマスターモニターで、いろんな意見をいただいた。視野角は世界最高水準。基準となるモニターがいよいよ出せた」(業務執行役員 SVP ソニービジネスソリューション代表取締役の花谷慎二氏)と自信を見せた。

 Inter BEEのソニーブースには、国内初出展となる30型/4K有機ELモニターも展示。「技術展示」という位置付けで、入力端子などの仕様は決まっていないが、2014年内の製品化を目指すという。展示された試作機では、ソニーのCineAlta Premium 4Kカメラ「F65」で撮影した4K映像を、DVI入力で再生していた。

大西俊彦氏
花谷慎二氏
ソニーの有機ELモニタの進化
ブースには、30型有機ELモニタ試作機を展示している
'14年1月発売の25型「PVM-A250」(左)と、17型「PVM-A170」(右)
現行のPVMシリーズ25型/17型も展示された
従来の有機ELパネル(下)と、新パネル(上)の視野角比較。横から見ると、従来パネルは青みがかって見える

4K映像2枚でサッカーの全フィールドを撮影、HD切り出しも

根本章二氏

 ソニーの執行役 EVP プロフェッショナル・ソリューション事業本部 事業本部長の根本章二氏は、2020年の東京オリンピック/パラリンピック開催決定を受けた4K放送の現実味の高まりに期待を寄せ「日本の放送の進化に大きな刺激を与える。テレビのハイビジョン化がそうであったように、世界が、日本の放送、映像制作の動向に注目している」と述べた。

 「2020年のオリンピックを勝ち取ったことが、業界の後押しになったことを肌で感じている」という前述の花谷慎二氏によれば、かつては衛星放送やCATV業界が4K放送に向けてソニーへ最初にアプローチしてきたが、今では地上波放送局も含めてポジティブな見方が広がっているとのこと。

 4K収録は、既に映画「相棒-劇場版III-」やドラマ「チキンレース」(WOWOW)、プロ野球の巨人戦(日本テレビ)など様々なジャンル/コンテンツで日本においても採用。4K撮影ならではの活用としては、BS-TBSで放送されている「THE 世界遺産 4K PREMIUM EDITION」で、4K素材を高画質のHDにダウンコンバートするという事例や、映画「謎解きはディナーのあとで」での4KからのHD切り出し/ズーム/パンニングといった事例も紹介した。

 今後の取り組みとしては、「スポーツ制作に4K映像を適用できるシステムを近々製品化できる段階にある」としたほか、4K映像を2つ横に並べて1つにつなげる「ステッチング」映像として収録し、サッカーなど広いフィールドの全てをカバー可能なことも説明。その映像から任意の部分をHDで切り出すといったことも今後トライアルとして行なっていくという。

4Kコンテンツ制作の広がり
2014年4K放送実現に向けた取り組み
ファイルベース制作の進化
XDCAM・XAVCファイルベースソリューション
2枚の映像をつなげる「4Kステッチング」。HDで切り出すことも可能
PMW-F55などを使った「4Kライブカメラシステム」を提案
2/3型レンズをF55に装着できるマウントアダプタ「LA-FZB2」
ベースバンドプロセッサーユニット「BPU-4000」(上段)
マルチポートAVストレージユニット「PWS-4400」

(中林暁)